経団連の最近の動き

(1995年 4月)

「経団連インフォメーション」の記事より


各国の関心事は3点に集約
− 訪ASEAN第2次ミッション総括

訪ASEAN第2次ミッションは、4月10〜19日にかけてフィリピン、マレーシア、インドネシアを訪問し、各国の政府・経済界首脳と政策対話を行ったが、最も話題に上ったテーマは以下の3点であった。
第1に、各国とも民間経済の役割を重視しており、(1)サポーティング・インダストリー、部品産業等の中小企業、(2)インフラ開発部門、(3)技術移転、人材育成に資する分野への日本の投資を要望した。
第2は、円高問題である。特にインドネシアは高い関心を抱いていた。「円高は日本のみならず、アジア諸国に大きな影響をもたらすものであり(円建て債務の増加、日本からの輸入価格の上昇等)、単に日米間の問題ではない。円・ドルを安定させるグローバルな共同作業が必要」との指摘もあった。
第3に、各国ともAPEC大阪会議への期待が大きく、経団連他が主催する「APECビジネス・コングレス(APB-Net II)」(10月22〜23日、於大阪)への賛意を得た。

消費者・生活者と企業の「よりよい関係」に関する事例調査とりまとめ

消費者・生活者委員会(福原義春委員長)では、5月12日、昨年秋に会員企業を対象に実施した消費者・生活者との「よりよい関係」作りの具体的事例に関するアンケート調査のとりまとめを行う。これは、さまざまな事例を情報として共有し、各企業でのさらなる取り組みの契機とすることを目的とするものであり、185社より875件の事例が回答された。
また、当日は「経済社会の変化とシニアマーケットの拡大」をテーマに喜多村治雄シニアルネサンス財団会長より話を聞く。

ベトナムが投資環境改善9項目に回答
− 第3回日本ベトナム合同会議 −

経団連は、日本ベトナム合同経済会議を93年にハノイ、94年にホーチミンで開催したが、今年はドー・ムオイ共産党書記長の訪日に合わせて、3回目の会議を4月19〜20日に東京で開催した。
今回の意義は、(1)日本の工場や展示場の見学をアレンジするとともに、会合でも日本企業の発展の経験について話してもらい、市場経済システムへの理解を深めてもらったこと、(2)訪ASEAN経団連ミッションが2月にベトナムを訪問した際、「日越経済交流のさらなる発展に向けた経団連の要望」と題する9項目を手渡しており、今回、文書でその回答を貰ったことである。
回答は全項目に誠意をもって答えたものであり、ベトナム側の投資誘致に対する熱意を伺わせるものであった。投資手続の簡素化、高い土地使用料の是正、立ち退き料の早期解決、外貨バランス維持等について真剣に検討されており、民間の未払い債務の存在も認めている。
今後ともこの回答をベースに進捗状況をフォローしていくこととしている。

新産業・新事業委員会 アメリカに調査団を派遣

新産業・新事業委員会(大賀典雄委員長)では、アメリカにおいてハイテクベンチャー企業を中心にニュービジネスが起こり、経済の活性化に大きな役割を果たしている実情について調査を行った。
調査団(団長:古見多香郎企画部会長、企業の実務者等計11名)は、4月5日〜14日、サンフランシスコ、シリコンバレー、ワシントンDC、ボストン、ニューヨークを訪れ、ハイテクベンチャー企業の創業経営者、ベンチャーキャピタル、SBA(連邦中小企業庁)、法律家、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学、コロンビア大学等のアントレプレナーシップ教育の専門家等と20回をこえる意見交換を行い、事業創造に係わる制度的条件、社会的環境、文化的背景について実態を探った。

「投資環境整備に努めたい」
− 第3回日本ベトナム合同経済会議 ドー・ムオイ書記長挨拶のから −

経済の改革開放(ドイモイ政策)を通じて工業化と近代化を推進し、開発の立ち遅れと貧困から脱却することが現在のベトナムにとっての最重要課題である。ベトナムと日本は同じアジアの国であり、ともに教育を重視している等共通点も多い。日本などの先進国における経済の発展過程に学び、技術開発と国際化を進めたい。
ベトナムは優れた人材に恵まれ、天然資源も豊富で、地理的にも有利な条件下にある。ASEAN加盟を控え、7000万の人口を持つベトナム市場の将来は有望だと思う。今年2月に提示された投資環境改善に関する経団連の9項目要望に沿う形で投資環境の整備に努力している。日本からの投資を歓迎する。

日本からの投資への強い期待と円高に対する懸念
− ASEAN各国が表明

訪ASEAN第2次ミッションは、18日、スハルト・インドネシア大統領との会談を最後に全日程を終了した。
訪問したフィリピン、マレーシア、インドネシアはいずれも高い経済成長を遂げているが、さらに外資規制の緩和など自由化政策を進め、外国の資本・技術を導入して、さらなる経済発展につなげようとしており、わが国の投資、技術移転、人材育成に対する支援などについて強い期待が表明された。特に、ラモス、スハルト両大統領からは、サポーティング・インダストリーとしての中小企業の育成について協力を求められた。
円高については、円借款の返済、日本からの資本財の購入等において困難が生ずることから、各国において強い懸念が表明された。
今後、経団連としては、今回のミッションでの議論を参考に、アジア諸国の経済発展や同地域の安定にどのような貢献できるのか、具体的に検討していくこととしている。

実効ある総合経済対策を要請

経団連では、4月6日、豊田会長が、川勝、歌田、米倉、関本の各副会長とともに、村山首相を訪問し、景気の立ち直りの遅れ、急激な円高、金融システムの不安、証券市場の不振の4つを見据えた総合的な経済対策の策定を強く要請した。これに対し、村山首相は、景気対策、円高対策、株式市場対策を含めた抜本的措置を取ることを約束。4月14日に総合経済対策が決定される運びとなった。
また、総合経済対策の検討が大詰めを迎えた4月12日には、三田副会長が、橋本通産相、高村経済企画庁長官、加藤自民党政調会長を訪問。対策の策定にあたっては問題解決に取り組む政府の決意を示し、内外から評価される思い切った内容とするよう申し入れた。

経済協力政策提言に強い期待

昨年12月に公表した政策提言「冷戦後のわが国の国際貢献と経済協力の役割」に対し、15名の在京大使、アメリカ、カナダの援助実施機関、世銀、国連等からその内容への支持、コメントが寄せられている。同提言は、冷戦後の国際社会においてグローバル・グロースの実現のための経済協力の重要性を再認識し、日本の経済協力において、民間部門(企業、NGO)の役割を重視した新たな展開を図ることを提案している。
ボリビア、タンザニア等の途上国の大使からはその革新的な提案の実現と日本のリーダーシップの発揮、また、デンマーク等の先進国の大使からは援助国間の連携について強い期待が寄せられた。さらに、世銀の副総裁からは日本の民間部門との協力を推進したい旨のコメントが寄せられている。

訪ASEAN第2次ミッション、フィリピンの日程を終える

4月10日に日本を発った訪ASEAN第2次ミッションの最初の訪問国は、ラモス政権の下で経済成長著しいフィリピン。外資規制の緩和を始めとする自由化・開放政策等により、同国の財政赤字は解消され、諸外国との貿易・投資関係も着実に拡大している。こうした背景からフィリピン経済人・政府関係者との会合では、経済発展に向けての強気の見通しと自信が示されたほか、さらなる発展のために日本からの投資・支援が必要との期待が表明された。
また12日、マラカニアン宮殿での豊田会長との懇談の席上、ラモス大統領からは、APECが検討している「中小企業技術移転センター」をフィリピンに設置することへの日本の協力につき期待が表明された。
なお同ミッションは、13日からマレーシアを、16日からはインドネシアを訪問。19日に帰国の予定である。

証券市場活性化に向けて緊急提言

経団連では、証券市場不振を打開すべく、アンケートの実施、関係者との緊急会合の開催など活発に活動を進めてきたが、それらを踏まえ4月3日の正副会長会議で緊急提言を取りまとめた。
提言では、総合的な対策を果敢に実行するよう政府に強く求めるとともに、経済界としてもできる限りの対応措置を自ら講じていく決意を明らかにした。
4月6日、豊田会長が川勝、歌田、米倉、関本各副会長と共に村山総理を訪れ、提言の実現を申し入れ、総理からは総合的な抜本対策が必要であり、政府としてリーダーシップを発揮して取り組んでいくとの発言があった。

環境NGOへの人的協力活動を開始

自然保護基金運営協議会では、内外の環境NGOの活動を支援するための人的協力プログラムを開始する。協議会は環境NGOからの要望を受け付け、NGOに協力する用意のある登録企業と連絡を取りながら活動を進めていく。


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