経団連の最近の動き

(1998年6月)

「経団連インフォメーション」の記事より


No.179 ( 6月26日発行)より

コーポレート・ガバナンスに関する商法改正の動向

経団連では、昨年9月以来、監査役制度の強化、株主代表訴訟制度の見直しを柱とする商法改正を求める意見書を公表し議員立法による実現を働きかけてきた。これを受け、自民党では、先の通常国会での法案提出・成立を目指していたが、他の重要法案山積のため、提出は果たせなかった。そこで、自民党は、参議院選後に予定されている臨時国会への野党との共同提案に向けて調整を行なっている。経団連でもこれを全面的にバックアップしていく予定である。
現在検討されている商法改正案の骨子は、以下の通りである。

  1. 社外監査役の人数を半数以上とする。
  2. 監査役の同意を得て、取締役会は、通常過失に基づく取締役の責任の軽減を株主総会に提案できることとする(定款による事前の減免は引き続き検討する)。
  3. 監査役会が訴訟を不当とみなした場合には、会社は補助参加できる。
  4. 監査役制度の強化は公開会社に、株主代表訴訟制度の見直しは全ての会社に適用する。

経団連PRTR調査結果を公表
−化学物質管理の新しい潮流・適切なリスク管理に向けた産業界の取り組み−

経団連では、昨年12月から、45業界団体の協力を得て、環境汚染物質排出・移動登録(PRTR:Pollutant Release and Transfer Register)調査を実施してきたが、今般、その結果を取りまとめ、公表した。
今回の調査の成果として、

  1. 対象とした174の化学物質について、全国規模での排出・移動量のオーダーが初めて把握出来たこと、
  2. 世界で初めての広範且つ自主的な産業界の取組みであること(45業界団体が参加を表明、38団体から報告があった)、
  3. カバー率を推算したところ、物質あたり平均約80%という高い値であったこと、
以上3点が挙げられる。
今後の課題としては、データ解説の実施、データの整合性の確認等が挙げられる。毎年、継続的に実施して経験を積み、本調査結果を各業界・企業における化学物質リスク管理に活用していただけるように努めていきたい。

ハイテク犯罪対策に関する説明会を開催

情報ネットワーク化により産業競争力の強化や国民生活の質的向上を図ることができるが、一方で情報ネットワークを活用した犯罪の増加が懸念されている。そこで、こうしたハイテク犯罪について、本年5月のバーミンガム・サミットでも各国が協力して対応することが合意され、警察庁でも、取り組みを強化している。
そこで、下記により、警察庁の五十嵐官房審議官を招いて、ハイテク犯罪対策に関する警察庁の方針について説明を伺うとともに、種々懇談する予定である。(経団連会員企業のみ)

日 時:7月6日(月) 10時〜11時

場 所:経団連会館 12階 ダイアモンド・ルーム

問合せ先:産業本部 情報・新産業グループ

TEL 03-3279-1411
FAX 03-5255-6257

No.178 ( 6月19日発行)より

総会屋対策について
〜関口警察庁長官講演ならびに今井会長からの呼びかけ

多くの企業での株主総会の開催を控え、6月16日開催の理事会において、関口警察庁長官から総会屋対策について聞いた。続いて、今井会長から、総会屋との関係遮断について、会員各位に対して呼びかけがあった。

【関口長官講演概要】

  1. 総会屋は現在、表立った活動を控えているように見えるが、今後、種々な形に化身しながら、企業に近づいてくることが危惧される。
  2. ひとたび企業が総会屋の力に屈すれば、経済秩序が著しく乱れるおそれがある。また、グローバル化が進む今日、国際社会の中で、総会屋が内在する経営体質は到底通用しない。
  3. この際、企業のトップは、「暴力団、総会屋等の一切の反社会的勢力と決別する」決意を新たにし、その姿勢が内外に見える形で具体的行動を起こすことが必要である。
  4. 警察は、総会屋による不法事案の徹底検挙を図るとともに、企業との連携を一層強化し、暴力団や総会屋等の反社会的勢力を企業社会から排除することに全力を尽くす。
  5. 総会屋対策にあたっては、昨年創設された利益供与要求罪を活用することが極めて有効であり、企業においては、利益供与要求があった場合速やかに警察に相談されたい。

【今井会長発言概要】

  1. 経団連では、「企業行動憲章」において、「市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決する」ことを掲げ、機会ある毎に、会員各位に、総会屋との断絶をお願いしてきた。
  2. 総会屋との絶縁は、個々の企業で実践されなければならない問題であり、各企業の取組みの上に、経済界全体への信頼が成り立つ。そして、これを具体的に推進するのが経営トップの役割である。
  3. その意味で、企業のトップの方々には、ごく一部の企業や個人の違法行為や反社会的行為であっても、経済界全体のイメージダウン、ひいては社会からの信頼喪失につながるという認識にたち、総会屋等の反社会的勢力との関係遮断に引続き全力を挙げていただきたい。
  4. 幸い、各企業の努力の結果、絶縁のための取組みは相当進んでいる。現在多くの企業では株主総会を間近に控えているが、株主総会は総会屋との絶縁の成否が問われる場である。従って、総会屋の介入を断固排除し、株主との実りあるコミュニケーションができる開かれた株主総会を、是非とも実現していただきたい。

No.177( 6月12日発行)より

意見書「短期金融市場の整備と円の国際化」をとりまとめ

昨年のアジア通貨危機、来年のユーロ発足や、わが国の金融ビッグバンの進展などにより、円の国際化に関する議論が高まってきている。
そこで金融制度委員会(樋口委員長、橋本・石原共同委員長)では、円の国際化のための条件整備の一環として、短期金融市場の整備に焦点をあてた意見書を取りまとめた。
意見書では、構造改革の推進による日本の経済力の回復が、円の国際化の前提であるとした上で、わが国短期金融市場を「使い勝手の良い」市場に変革すること、具体的には、

  1. FB、CD、CP、レポの商品性の改善、
  2. 源泉徴収税、有価証券取引税等の関連税制の見直し、
を主張している。

「税制改革の早期実現を求める」を提言

経団連では、去る11日税制委員会(前田委員長)を開催し、林 義郎自民党税制調査会長を招いて、今後の税制改革の課題について懇談するとともに、席上、税制改革の早期実現を求める標記提言を手渡した。
提言のポイントは、

  1. 最高税率の65%から50%への引き下げを含む各所得層にわたる所得税率の引き下げを内容とした所得税の制度減税、
  2. 1.5兆円程度の実質減税を伴った法人実効税率の40%への引き下げ、
  3. 特別法人税の廃止、
  4. 連結納税制度の導入、
である。
税制委員会では、引き続き税制改革の推進に努めていくこととしている。

企業人政治フォーラム第3回総会開催
〜加藤紘一自民党幹事長講演〜

企業人政治フォーラム(川勝堅二会長)は、1996年7月の発足以来、政治家と企業人のコミュニケーションの促進、企業人の政治参加意識の高揚を目的に、各種シンポジウムの開催等、様々な活動を展開してきた。 設立3年目を迎え、下記により第3回総会を開催する。来賓には自民党の加藤幹事長を迎え、ご講演頂く。非会員の方も含め奮ってご参加いただきたい。

期日:6月23日(火)
○ 総会および講演会
時間:16時〜17時30分
場所:経団連会館 11階 国際会議場
○ パーティ
時間:17時30分〜18時30分
場所:経団連会館 12階 ダイアモンド・ルーム

連絡先:社会本部 政治グループ
TEL 03-3279-1411
FAX 03-5255-6255

第5回日本・ラ米諸国経済交流促進シンポジウムの開催

6月30日、7月1日の両日、東京にて、米州開発銀行および日本輸出入銀行の共催、経団連他の協賛により「第5回日本・ラ米諸国経済交流促進シンポジウム」が開催される。ペルーのフジモリ大統領、ウルグアイのサンギネッティ大統領、その他中南米各国の経済閣僚多数を迎え、

  1. 中南米諸国の経済成長、
  2. 地域統合とインフラ整備、
  3. 貿易・投資と産業競争力、
  4. 資源開発、
  5. 経済・社会開発と国際協力、
等のテーマをめぐり議論を行なう。
自由で開放的な経済政策による安定成長と地域経済統合の進展により大きな可能性を秘める中南米諸国との経済関係の強化を考えていく上で、有意義な機会と思われるので、多数のご参加を賜りたい。

No.176( 6月 5日発行)より

新産業・新事業委員会訪米調査を終えて

経団連新産業・新事業委員会では、米国における新産業・新事業隆盛の背景と日本に求められる取り組みにつき調査するため、5月25日から29日まで、訪米調査団(団長:高原慶一朗共同委員長)を派遣し、シリコンバレー、ボストン、ニューヨーク地域の企業ベンチャー、独立ベンチャー、ベンチャー・キャピタル、大学等と意見交換を行なった。その結果、社会・企業の風土改革ならびに起業のための人的インフラの充実を図るとともに、産学連携の推進、大企業のベンチャー化、ベンチャー企業支援ビジネスの発展が重要であることが明らかになった。当委員は、この調査結果を踏まえて、今月中に緊急提言をとりまとめる予定である。

PFIに対する取組み

自民党は、今般の経済対策の重要な柱の一つに、民間の資金や能力等を活用した社会資本整備(いわゆるPFI)を掲げ、これを推進する法律(通称 PFI推進法)を制定すべく、法案のとりまとめ作業を精力的に行なってきた。その結果、5月26日、本法案が議員立法として衆議院に提出されたが、本通常国会の会期末が迫っているため、本格的な審議は臨時国会で行なわれる見通しである。
この過程で経団連は、国土・住宅政策委員会内に実務家レベルの研究会を設け、法案とりまとめ作業に経済界の考え方が反映されるよう検討、働きかけを行なった結果、概ね取り入れられた。今後、PFI事業を実際に行なうにあたっての課題など、さらに具体的な検討を重ね、国会論議の動向を注視しながら、秋にも経団連としての意見を公表する予定である。


日本語のホームページへ