経団連の最近の動き

(2000年11月)

「経団連インフォメーション」の記事より


No.280 (11月24日発行)より

「国際熱核融合実験炉(ITER)の日本誘致実現を求める」を建議

核融合エネルギーは豊富な燃料資源、優れた環境性、ならびに高い安全性を特長とし、未来エネルギーの有力な選択肢の一つとして期待されている。ITERはこの未来エネルギーの実現に向けて、日本・EU・ロシアの3極により共同開発が進められている核融合の実験炉である。
ITERの誘致をめぐっては、カナダとフランスが誘致に向けた検討を進めており、また、わが国においても日本誘致の是非を決める原子力委員会の審議が大詰めを迎えている。
経団連では、1995年9月に日本誘致への要望をとりまとめたが、その後の情勢変化を踏まえ、ITER日本誘致推進会議(会長:豊田 章一郎経団連名誉会長)において改めて標記要望をとりまとめ、さる11月21日の理事会の了承を得て政府・与党関係方面に建議した。同要望では、ITERのわが国への誘致の意義を「長期的な地球環境問題とエネルギー問題への対応」と「国際協力への意義ある貢献」という二つの観点から訴えている。

競争力の観点からコーポレート・ガバナンス(企業統治)を考える

11月21日、コーポレート・ガバナンス委員会(委員長:御手洗 冨士夫 キヤノン社長)は、「わが国公開会社におけるコーポレート・ガバナンスに関する論点整理(中間報告)」を公表した。
これは、同委員会の企画部会(部会長:村山 敦 松下電器産業副社長、部会長代行:田部井 正己 第一生命保険専務取締役)の約1年半にわたる議論を中間的に集約したものである。
報告書は、冒頭、企業活動と資本市場の国際化が進展する中、大規模公開会社は、今後、より株主価値を重視したコーポレート・ガバナンスを構築する必要があると指摘している。その上で、現在進んでいる企業の自主的取組みを検討し、経営の機動性を確保するためには、情報開示を前提として、会社機関のあり方は各企業の裁量に任せるべきであると結んでいる。
なお、法制審議会では、2002年を目途に商法の大幅な見直しを行うことを決定しており、経団連では、会社機関のあり方について、さらに検討を深める予定である。

No.279 (11月17日発行)より

提言「保険者機能の強化への取組みと高齢者医療制度の創設」を建議

経団連は、2002年に予定されている医療保険制度の抜本改革に向けた議論のたたき台とするため、11月14日に標記の提言をとりまとめ、政府・与党関係方面に建議した。
提言では、企業や健保組合などの医療保険者が、医療保険制度の抜本改革を待つこと無く、医療保険コストの合理化や医療サービスの質的向上の実現に向けて、自ら主体的に取り組んでいくことを宣言するとともに、そのための基盤整備や規制緩和を求めている(例:レセプトの電子媒体化や健保組合等による一次審査の容認、政府による医療・介護情報ネットワークの整備等)。
併せて、現行の老人保健制度を抜本的に見直し、持続可能な「高齢者医療制度」の創設を提言した。新制度は、高齢者に能力に見合った負担を求め、世代内保険の要素を高めるとともに、不足分を公費で支えることを柱としている。

教育改革国民会議中間報告に対する見解を取りまとめ

総理の私的諮問機関である「教育改革国民会議」は、さる9月22日に中間報告「教育を変える17の提案」を公表して、国民各層の意見を求めた。
これに対し、経団連人材育成委員会(委員長:浜田 広 リコー会長)は、11月10日、中間報告に対する見解を取りまとめ、教育改革国民会議に提出した。
人材育成委員会見解は、

  1. 道徳を含む社会性の育成と基礎学力の徹底、
  2. 教師、学校に対する健全な競争の導入と教育人材の養成、
  3. 教育改革を大幅にスピードアップさせるための計画、
  4. PTAや学校、地域の教育への親の参加、
等を指摘している。なお、教育改革国民会議は、こうした各界からの意見を踏まえて、年内に最終報告を公表する予定である。

基本法制の整備に向け法務省の体制を強化
−保岡法務大臣と懇談−

コーポレート・ガバナンス委員会(委員長:御手洗 冨士夫 キヤノン社長)は、11月13日、保岡法務大臣と懇談した。
大臣は冒頭、

  1. 2002年度の通常国会を目途に商法の抜本的見直しを行う、
  2. CP(コマーシャル・ペーパー)のペーパーレス化、ストック・オプション制度の改善などについては、全体のスケジュールを前倒して実現する、
  3. 基本法制の整備に集中的に取り組むため、法務省の法案作成機能を強化する、
  4. 代表訴訟制度の見直しについては、与党3党の議員立法で次期通常国会への法案提出準備が進んでいると承知している、
と述べた。
一方、経団連側より、経済法制の整備に対する保岡法務大臣の尽力に謝意を示すとともに、代表訴訟の見直し、会社分割法制の早期施行等を求めた。

No.278 (11月10日発行)より

金属労協首脳と重要政策課題について意見交換

金属労協(IMF-JC、議長:草野忠義 自動車総連会長)は、自動車、鉄鋼、電機などわが国主要製造業の産業別労働組合の連合体である。経団連では、1970年代より、日本経済が直面する政策課題について、機会あるごとに意見交換を重ねてきたが、今般、IMF-JC側から会合開催の申し入れがあり、11月8日、今井会長、草野議長をはじめとする両団体首脳の参加を得て懇談会を開催した。
会合では、双方の重要政策課題について説明、意見交換した。経団連側からは、当面の景気動向、産業競争力強化、商法改正、IT、規制改革、税・財政・社会保障改革などについて説明した。金属労協からは、経済%雇用対策、ものづくり産業の基盤強化、海外事業展開に際しての企業行動規範等の政策要望について説明を受けた。双方は、今後も折に触れて意見交換していくことで合意した。

No.277 (11月 2日発行)より

新時代の日本ブラジル関係を目指す

日本ブラジル経済委員会(委員長:室伏 稔 伊藤忠商事会長)とブラジル全国工業連盟(CNI)は、「21世紀に向けた日伯同盟」構築のための共同報告書を取りまとめ、両国政府ならびに関係方面に提出した。
同報告は、ブラジル経済・産業が1990年代後半以降、大きな変化を遂げ、メルコスール、南米の核としてさらに戦略的重要性を増していることを指摘し、インフラ・プロジェクト、農産物・工業製品輸出、データ通信等の新規産業の分野で、両国企業間の協力の可能性があるとしている。さらに、協力を実現するために、相互理解の促進、グローバル化と現地化、二国間協定の締結、金融面での支援など、具体的な戦略目標を掲げている。
両団体は、11月7日にサンパウロで第9回日本ブラジル経済合同委員会を開催し、報告書に盛り込んだ内容につき、さらに議論を深める予定である。


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