業況判断=「良い」−「悪い」、( )内は前回2月調査時点の予測 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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前年度比、% | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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全体として勢いが加速してきている感じはない。これが今回の短観の第2の特徴である。業況判断が回復していくとき、ゼロを通過するあたりで角度が最も急となるが、今回は過去と比べて現状は緩やかである。また製品需給判断、生産設備判断、雇用人員判断の水準をみると、依然として大きい需給ギャップを抱えていることがわかる。こうした中での景気回復の勢いは早いものにはなりにくい。むしろ、これだけの需給ギャップを抱えながら設備投資が出てくるというのは興味深い動きである。企業はバブル期に積み上げたために、設備の過剰感があるが、その設備は役に立たず、結局、新規設備投資を行わなければならない状況にあるのだろう。例えば、自動車業界では生産はバブル期のレベルまでは回復しておらず、増設の必要はなくても、ニューモデル生産のための新規設備が必要になっているようだ。設備投資は全ての業種で増加しているわけでなく、このため景気回復は緩やかなものにとどまるといえる。
今回の短観の第3の特徴は、最近の半導体市況の悪化などは十分に織り込まれていないことである。短観は5月の初めから調査票を回収している。電気業界においては、96年度の見通しについて減益、増益がまちまちであるなど、各社がまだ方向感を決められない状況にあるようだ。今後、設備投資、収益など様々な面で下方修正される可能性もあると考えている。関連業界、あるいは米国の関係者に聞いてみても、半導体市況の値崩れがどれほど深刻なのか確たることはわからず、予想しづらい状況にある。
失業者数が増加するなかで、4月の雇用者は68万人増、就業者は21万人増となるなど労働需要は回復している。4月の雇用者数は製造業で減少となる一方、サービス業では大幅増加となるなど、業種別の跛行性がみられる。パートは伸びているものの常用労働者の伸びは堅調でない。景気の回復に対する確信はまだ持てない。雇用統計は慎重な内容である。
有効求人倍率は0.67倍である。求人が増加したものの求職者も増加したため、有効求人倍率は横ばいとなっている。求人が増加していることで先行き明るさが見えてきたのではないか。
日銀短観の雇用人員判断DIはやや改善であったが、労働経済動向調査でも、雇用調整の実施、事業所の割合など、わずかな改善となっている。新規学卒採用予定者数の対前年増域区分別事業所割合をみると、増加とする事業所の割合が高まってきているとの結果となった。新規学卒の労働市場は改善すると思われ、雇用の内容も含めて明るい兆しである。
〔文責 経済本部経済政策G 小川〕