景気関連インフォメーション

1996年6月分


  1. 最近の注目指標のポイント
    〜日銀短観(96年5月調査)〜
    1. 業況判断:
    2. 主要企業・製造業、非製造業ともに前回調査時点の予測を上回る改善。中小企業においても前回調査に引き続き改善。先行きについては、主要企業・製造業では4年ぶりに「悪い」超が解消される見通しにあるなど、全般的に改善の見込。

      業況判断=「良い」−「悪い」、( )内は前回2月調査時点の予測
      95/295/595/895/1196/296/596/9



      製造業▲21▲16▲18▲14▲12▲ 3(▲ 6)  0
      素材▲29▲19▲21▲19▲15▲ 6(▲ 9)▲ 2
      加工▲14▲14▲15▲10▲10▲ 1(▲ 4)  1
      非製造業▲29▲27▲28▲22▲18▲ 9(▲12)▲ 3

      製造業▲24▲22▲30▲30▲25▲19(▲19)▲14
      非製造業▲14▲14▲19▲17▲13▲ 6(▲ 9)▲ 4

    3. 96年度設備投資計画:
    4. 主要企業は2年連続増加を計画(電機、自動車、鉄鋼、運輸・通信、リース等で前回調査に比べ上方修正)。中小企業についてはほぼ過去のパターン並の上方修正。

      前年度比、%
      91年度92年度93年度94年度95年度96年度計画
      2月調査段階



      全産業  7.7▲ 7.4▲11.3▲ 8.3 1.2  6.0  0.6
      製造業  3.0▲17.2▲20.6▲13.3 7.8  6.7▲ 2.0
      非製造業 11.0▲ 0.9▲ 6.2▲ 6.0▲1.6  5.7  1.9



      全産業 12.4▲16.2▲17.7▲ 3.8▲7.1▲10.8▲20.4
      製造業 21.2▲21.2▲24.4▲ 6.0▲4.1▲10.9▲21.1
      非製造業  8.4▲13.6▲14.5▲ 2.9▲8.3▲10.8▲20.0

  2. 第118回景気動向専門部会の概要(6月11日開催)
  3.  官庁、日銀の報告は次の通り

    1. 高橋通産省課長
      〜鉱工業生産速報(4月分)〜
      1. 4月の生産は前月比3.9%増、前年比0.9%増とプラスに戻している。3月は前月比6.0%減と調査開始以来最も大きな低下幅となったが、この反動もあって4月は大幅な上昇となった。業種別では、電気機械工業(とくに車両用通信装置、パソコンなど)、一般機械工業(とくに印刷機械、コンベア、射出成形機など)が大きく増産に寄与した。
        4月の出荷は前月比3.9%増となっている。
        4月の在庫及び在庫率指数はともに、過去の景気回復局面と比べ、依然高水準である。但し、在庫は前月比で2ヵ月連続して改善しており、良い方向にあるといえる。
        5、6月の生産予測をそのまま当てはめると平成8年第II四半期は前期比1.0%増(第I四半期は0.4%増)、前年比1.9%増(同1.0%増)となり、緩やかな生産の上昇を確認できる内容となっている。

      2. 5月の生産は前月比3.4%増を予測しているが、6月は同4.2%減と大幅なマイナスを予測している。輸送機械(同9.3%減)の寄与が大きい。この理由としては、6月は稼働日が2日少ないことがあげられる。これは加工組立型、特に乗用車の生産にとって大きなマイナス要因となった。その他、化学工業では大型の定期修理が入るなど、様々な要因が影響し、全体としてマイナスが大きくなっている。
        しかしながら、予測修正率をみると7ヵ月連続でプラス基調(1月のみ横ばい)となっており、こうしたことから生産が緩やかながら上昇基調にあることが確認される。生産全体の総評は「緩やかながら上昇傾向」としているが、この表現は3ヵ月変えていない。先行きの動向については、様々な業界のヒアリング等を踏まえた結果から、やや慎重に見ていく必要があると判断している。

    2. 早川日銀課長
      〜日銀短観(96年5月調査)〜
    3. 今回の短観の第1の特徴は景気回復に広がりが出てきたということである。主要企業製造業の業況判断は9ポイント改善し、大方の予想を上回る数字であった。但し、過去の景気回復局面と比較すると際立った改善というわけではない。業況判断の2月から5月の変化幅は全体的に良くなっている。中小企業では電機以外は改善している。このように景況の改善に広がりが出てきている。企業収益、設備投資について、94年、95年は大企業だけが改善していたが、最近は非製造業及び中小企業に広がりがみられる。今回調査では96年度設備投資計画でも主要企業製造業が前年比6%増となったが高く評価されているが、日本銀行としてはむしろ中小企業の修正率に注目していた。短観には、5月時点の中小企業の設備投資はよほど好況期でもマイナスであるという癖がある。今回の調査では中小企業の設備投資は10%減程度であるが、修正率は13%上方に修正されている。今回の短観だけでなく他の統計からもこうした傾向は感じられたが、中小企業の設備投資も今後流れが変わってくるのではないか。これまで製造業、大企業だけがリード役であったが、横に広がってきたとみている。

      全体として勢いが加速してきている感じはない。これが今回の短観の第2の特徴である。業況判断が回復していくとき、ゼロを通過するあたりで角度が最も急となるが、今回は過去と比べて現状は緩やかである。また製品需給判断、生産設備判断、雇用人員判断の水準をみると、依然として大きい需給ギャップを抱えていることがわかる。こうした中での景気回復の勢いは早いものにはなりにくい。むしろ、これだけの需給ギャップを抱えながら設備投資が出てくるというのは興味深い動きである。企業はバブル期に積み上げたために、設備の過剰感があるが、その設備は役に立たず、結局、新規設備投資を行わなければならない状況にあるのだろう。例えば、自動車業界では生産はバブル期のレベルまでは回復しておらず、増設の必要はなくても、ニューモデル生産のための新規設備が必要になっているようだ。設備投資は全ての業種で増加しているわけでなく、このため景気回復は緩やかなものにとどまるといえる。

      今回の短観の第3の特徴は、最近の半導体市況の悪化などは十分に織り込まれていないことである。短観は5月の初めから調査票を回収している。電気業界においては、96年度の見通しについて減益、増益がまちまちであるなど、各社がまだ方向感を決められない状況にあるようだ。今後、設備投資、収益など様々な面で下方修正される可能性もあると考えている。関連業界、あるいは米国の関係者に聞いてみても、半導体市況の値崩れがどれほど深刻なのか確たることはわからず、予想しづらい状況にある。

    4. 鳥生労働省課長
    5. 完全失業率は昨年11月以降3.4%が続いた後、2月3.3%、3月3.1%と2ヵ月連続で低下し、景気の遅行指標である完全失業率も改善過程に入ったと見る向きもあったが、4月は3.4%(3.44%)と0.3ポイント悪化した。

      失業者数が増加するなかで、4月の雇用者は68万人増、就業者は21万人増となるなど労働需要は回復している。4月の雇用者数は製造業で減少となる一方、サービス業では大幅増加となるなど、業種別の跛行性がみられる。パートは伸びているものの常用労働者の伸びは堅調でない。景気の回復に対する確信はまだ持てない。雇用統計は慎重な内容である。

      有効求人倍率は0.67倍である。求人が増加したものの求職者も増加したため、有効求人倍率は横ばいとなっている。求人が増加していることで先行き明るさが見えてきたのではないか。

      日銀短観の雇用人員判断DIはやや改善であったが、労働経済動向調査でも、雇用調整の実施、事業所の割合など、わずかな改善となっている。新規学卒採用予定者数の対前年増域区分別事業所割合をみると、増加とする事業所の割合が高まってきているとの結果となった。新規学卒の労働市場は改善すると思われ、雇用の内容も含めて明るい兆しである。

    〔文責 経済本部経済政策G 小川〕


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