4−6月期のQE(国民所得統計速報)は大方の予想を超えるマイナス幅だった。また、先月のこの場で通産省の中西課長からお話があったとおり、鉱工業生産もこのところ横ばい傾向にある。こうした景気指標を総合的に捉えるためのツールが景気動向指数である。このうちの一致系列は概ね供給サイドの数字が採用されているが、先行系列には需要サイドの数字が多く含まれている。
景気の現状を示す一致系列は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減の影響から、4月以降、50%を上回ったり、下回ったりという動きが続いている。7月は90%となったが、これは、消費税率引き上げで各指標が大きく落ち込んだ4月との対比で7月の指数を作成しているためであり、やや過大評価。8月の一致指数はおそらく50%を上回ることは難しい。
一方、先行指数は50%割れが続いている。これは需要の落ち込みを反映したもの。ただし、先行指数の弱い数字がそのまま一致指数に反映されると考えるべきではない。なぜなら、最近の経済を引っ張っている機械投資関連の指標は11個ある先行系列の中の一つ(実質機械受注)を占めるに過ぎない。現在の、特定の需要項目に依存した成長のなかで、採用系列の配分が不適当なのかもしれない(統計の限界を自ら認めてしまうことになるが)。おそらく今の設備投資は、経済全体に対して11分の1以上の影響を及ぼしていると思われる。
もちろん、先般発表された鉱工業生産速報の結果などを見ると、必ずしも一致系列について楽観視できるとはいえず、今後の動向を注視していく必要があると考えている。
4-6月期の法人企業統計調査によると、売上高・経常利益・設備投資とも前年比増加。ただし、製造業と非製造業、大企業と中小企業で明暗が分かれている。特に業種別には、建設・不動産、卸小売りの不振が目立つ。
景気予測調査(8月調査)によると、景況の現状判断は軒並み「下降」超となっている。ただし、先行きについては総じて緩やかな改善が見込まれている。
こうした状況下、先月20日に、日米蔵相会議、G7、世銀・IMF総会が開催された。米国からは
8月の鉱工業生産について、ポイントは以下の3点。
「今後の消費持ち直しに期待出来る」とする根拠として雇用・所得が堅調であることを挙げる声が多いが、雇用・所得についても多少注意が必要な数字が出てきたように思う。懸念すべき動きは以下の3点。
日銀短観9月調査では業況判断が軒並み悪化。主要企業製造業では素材型産業の先行き見込みが弱く、加工型から素材型への生産調整の波及が懸念されるところ。非製造では消費税率引き上げの影響を受けた小売業、公共投資・住宅投資の減少を受けた建設業の業況が悪い。また、中小企業の業況判断の弱さが目立ち、大企業から中小への景況悪化波及が懸念される。
その他の判断項目では、売り上げ・収益計画が下方修正。設備・雇用の過剰感は緩やかながら改善を続けている。今年度の設備投資計画も、着実な投資増加が予定されている。資金繰り判断、金融機関の貸出態度判断はいずれも悪化した。特に北海道での貸出態度が厳しさを増している。
以上を総括すると、消費税率引き上げ等が足元の企業マインドを押し下げているものの、堅調な設備投資、輸出、雇用情勢などを考えると、企業経営の根幹はしっかりしており、景気は回復基調との判断には変わりない。ただし、収益の悪化が企業の支出行動や雇用の抑制につながるのかどうか、見極めが難しくなってきたのも事実である。
(文責・経済政策グループ)