景気関連インフォメーション

1997年10月分


第132回 景気動向専門部会・議事概要(10月3日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通しについて(官庁報告)〜

  1. 「景気動向指数(1997年7月分)について」
    淺見・経済企画庁景気統計調査課長
  2. 4−6月期のQE(国民所得統計速報)は大方の予想を超えるマイナス幅だった。また、先月のこの場で通産省の中西課長からお話があったとおり、鉱工業生産もこのところ横ばい傾向にある。こうした景気指標を総合的に捉えるためのツールが景気動向指数である。このうちの一致系列は概ね供給サイドの数字が採用されているが、先行系列には需要サイドの数字が多く含まれている。
    景気の現状を示す一致系列は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減の影響から、4月以降、50%を上回ったり、下回ったりという動きが続いている。7月は90%となったが、これは、消費税率引き上げで各指標が大きく落ち込んだ4月との対比で7月の指数を作成しているためであり、やや過大評価。8月の一致指数はおそらく50%を上回ることは難しい。
    一方、先行指数は50%割れが続いている。これは需要の落ち込みを反映したもの。ただし、先行指数の弱い数字がそのまま一致指数に反映されると考えるべきではない。なぜなら、最近の経済を引っ張っている機械投資関連の指標は11個ある先行系列の中の一つ(実質機械受注)を占めるに過ぎない。現在の、特定の需要項目に依存した成長のなかで、採用系列の配分が不適当なのかもしれない(統計の限界を自ら認めてしまうことになるが)。おそらく今の設備投資は、経済全体に対して11分の1以上の影響を及ぼしていると思われる。
    もちろん、先般発表された鉱工業生産速報の結果などを見ると、必ずしも一致系列について楽観視できるとはいえず、今後の動向を注視していく必要があると考えている。

  3. 「最近の経済情勢について」
    大蔵省 古澤・大臣官房企画官
  4. 4-6月期の法人企業統計調査によると、売上高・経常利益・設備投資とも前年比増加。ただし、製造業と非製造業、大企業と中小企業で明暗が分かれている。特に業種別には、建設・不動産、卸小売りの不振が目立つ。
    景気予測調査(8月調査)によると、景況の現状判断は軒並み「下降」超となっている。ただし、先行きについては総じて緩やかな改善が見込まれている。
    こうした状況下、先月20日に、日米蔵相会議、G7、世銀・IMF総会が開催された。米国からは

    1. 日本の景気の弱さ、
    2. 貿易黒字の拡大傾向、
    を懸念する声があった。大蔵省としては、
    1. 景気の落ち込みは消費税率引き上げに伴う一時的な動きであり、1−6月通期でみればそれほど懸念される落ち込みではないこと、
    2. 貿易黒字もここ2〜3ヵ月は前月比で減少しており、今後急拡大するわけではないこと、
    を説明。日本政府として、財政再建と整合的な内需主導型景気拡大を進めるために、
    1. 不動産の証券化、
    2. 金融システム改革、
    3. 法人税改革、
    を推進することを表明した。

  5. 「鉱工業生産指数(97年8月分)について」
    通産省 中西・統計解析課長
  6. 8月の鉱工業生産について、ポイントは以下の3点。

    1. 「生産は横ばい傾向」との基調判断を今月も継続した。8月の生産の落ち込み(前月比▲2.2%)は大方の予想を上回るものであったが、予測調査結果によると9月、10月とプラスとなる見込みである。7−9月期の平均レベルは4−6月期を若干下回る見通しだが、10月の上昇予測も加味して、ほぼ横ばい傾向と判断している。
    2. 在庫の増加テンポが次第に縮小しつつある。もちろん、在庫レベル自体はいぜん高い。財別には、特にエアコンの在庫増加(前月比20%増)が圧倒的に大きい。一方、自動車の在庫については、出荷の持ち直し、生産調整などを反映して低下しており、このあたりは明るい材料といえる。
    3. 予測調査結果において、実現率、予測修正率が3ヶ月連続で下方修正となった。これは最近にない動きであり、懸念材料である。

  7. 「最近の雇用動向について」
    労働省 村木・労働経済課長
  8. 「今後の消費持ち直しに期待出来る」とする根拠として雇用・所得が堅調であることを挙げる声が多いが、雇用・所得についても多少注意が必要な数字が出てきたように思う。懸念すべき動きは以下の3点。

    1. 8月の労働力調査において、就業者数、雇用者数の伸びが下がっている。
    2. 雇用の先行指標である所定外労働時間の伸びが、最近鈍化してきている。
    3. 特別給与(賞与)の落ち込みから、現金給与総額がマイナスとなった。
    ただし、一方でいい材料もある(以下の2点)。
    1. 失業の数字は落着いている。特に非自発的失業(解雇等)は前年比で10万人減少した。
    2. 常用雇用者数の増勢にも変化は見られない。
    労働力調査は月々の振れが激しいので、就業者数・雇用者数の増勢鈍化も一月の数字だけで判断するわけにはいかない。また、賞与の落ち込みも、特に中小企業で支給が間に合わなかった(翌月にずれ込んだ)可能性があり、判断にはまだ時間が必要である。
    総じて、改善の方向であるという判断は変えていない。

  9. 「最近の経済金融情勢について」
    日本銀行 栗原・経済調査課調査役
  10. 日銀短観9月調査では業況判断が軒並み悪化。主要企業製造業では素材型産業の先行き見込みが弱く、加工型から素材型への生産調整の波及が懸念されるところ。非製造では消費税率引き上げの影響を受けた小売業、公共投資・住宅投資の減少を受けた建設業の業況が悪い。また、中小企業の業況判断の弱さが目立ち、大企業から中小への景況悪化波及が懸念される。
    その他の判断項目では、売り上げ・収益計画が下方修正。設備・雇用の過剰感は緩やかながら改善を続けている。今年度の設備投資計画も、着実な投資増加が予定されている。資金繰り判断、金融機関の貸出態度判断はいずれも悪化した。特に北海道での貸出態度が厳しさを増している。
    以上を総括すると、消費税率引き上げ等が足元の企業マインドを押し下げているものの、堅調な設備投資、輸出、雇用情勢などを考えると、企業経営の根幹はしっかりしており、景気は回復基調との判断には変わりない。ただし、収益の悪化が企業の支出行動や雇用の抑制につながるのかどうか、見極めが難しくなってきたのも事実である。

(文責・経済政策グループ)


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