1997年11月分
第133回 景気動向専門部会・議事概要(11月4日開催)
〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜
- 「景気動向指数(1997年8月分)について」
淺見・経済企画庁景気統計調査課長
- 一致指数は、百貨店販売額がプラスとなった以外は全てマイナスで、2ヶ月振りに50%を下回り、10.0%となった。4月以降、50%超えと50%割れを繰り返している。背景としては、一致指数の主力である生産関連指標がこのところ横ばいで推移していることの影響だろう。なお、今回の数字は、比較月の5月の大口電力消費量、原材料消費等の経済活動水準も高かったために低く出てしまったということには留意が必要であろう。
- 先行系列は、新車新規登録・届出台数がプラス、マネーサプライがプラス、日経商品指数が保合いということで27.8%となった。これで3ヶ月連続50%を切っているが、9月は今のところかなり指数水準が切り上がると見込まれる。先般発表されたIIP速報で、最終需要財在庫率指数がかなり下がったことが、かなり明るい材料であるといえる。ただ、これがトレンドとして定着するかどうかは慎重に見ていく必要があるとは思っている。
- 「最近の経済情勢等について」
古澤・大蔵省大臣官房企画官
- 先週の世界的株価急落の一つの要因は、不安定なアジアの経済情勢といわれている。タイについては、8月に支援パッケージが取りまとめられたが、このたびインドネシアについても支援パッケージが取りまとめられた。その内訳は、IMF100億、世銀45億、アジア開銀35億と、インドネシア政府の緊急準備基金50億ドルの合計230億ドル。更にこれを補充する目的で日本50億、シンガポール50億、アメリカ30億の計130億ドルの準備的な資金支援が表明された。また、昨日我が国は、シンガポール外為市場にて、シンガポール当局との協調介入を実施した。これらの協調的な努力が、アジアの経済安定化に資することと期待をしている。
- 「鉱工業生産指数(1997年9月分)について」
中西・通商産業省統計解析課長
- 9月の生産は民間シンクタンクの事前の予測より高い、1.6%増(前月比)であった。在庫も久々に前月比マイナスとなった。品目別に見ると、これまで在庫の動きを懸念していた品目(エアコン、乗用車)が下がってきている。
- 製造工業の予測調査中の実現率及び予測修正率は、いずれについても4ヶ月ぶりにプラスに転じ、中でも9月の実現率は1.2%も上振れした。その影響もあって、10月の生産見込みは見かけ上前月比で微減となったが、10月の生産水準自体は前回の予測よりも上振れしている。11月の生産見込みは、前月比マイナス2.6%であるが、通例の11月より平日数が2日少ないということで稼働日の影響を強く受けているので、この特殊要因を割引いて見る必要がある。
- 総括判断は、その時々の情勢に応じて作成しており今回のものが特に異例というわけではなく、同様の前例もある。
- 「最近の雇用情勢について」
村木・労働省労働経済課長
- 従来は、雇用者数が年初来前年比大幅増を続けていたこと、失業の中身を見ると、非自発的離職が減り、自発的離職が増加していたことに鑑み、雇用情勢は厳しいながら改善基調にあると判断していた。
- しかしながら、先月あたりから感じが変化してきた。現在は黄信号になってきていると認識している。雇用者数の伸びは、8月に大きく落ち込み、9月も落ちた。特に、男性がマイナスになってきていることには注目している。また電気機械、輸送機械、卸売業、小規模、常用雇用が減少していること、男性の失業者が増加していること、残業が増えないので、所定外給与の増加が止まっていることも注意して見ていく必要がある。
- 本来、雇用は遅行性のあるものである。IIPで先行きに明るい見通しが出ていることもあり、景気が今後腰折れしないでほしいと願っている。
- 「最近の経済金融情勢について」
早川・日本銀行経済調査課長
[景気情勢について]
- 消費税率を引き上げた春以降、最終需要が落ち込み、これが予想より長引いたため、生産、所得形成への悪影響が波及しているということだろう。
- 楽観シナリオでは、家計支出減は一時的ショックで、回復に向かっているとの捉え方であり、事実、前月比ではプラスに転じてきている。ただ、いつ頃からどれくらいのテンポで回復するかは微妙である。在庫調整が遅れれば、来年前半までもたつくこともありえる。在庫のポイントは、耐久消費財と建設財、特に耐久消費財がどう戻ってくるかが分かれ目である。早めに在庫調整が終われば好循環につながるが、遅れると川上の方に悪影響を及ぼす可能性がある。現在は、判断が難しい微妙な状況にある。悲観シナリオでは、前述の、在庫循環が川上まで波及するパターンとなる。
- いずれにせよ、大局感では、日本経済は大崩れすることはない。景気後退の日付がついたとしても、その原因は消費税率引き上げではあるものの、現象としては、純然たる在庫循環であるといえよう。
[アジア情勢について]
- 今後どうなるかは、率直にいってわからない。タイ・インドネシアなどファンダメンタルズに問題がある国については、通貨のdevaluateと国内引き締めという処方箋でよく、悪影響は大きくないはずである。しかし、マーケットにはマーケットの論理があり、問題のある国以外にも悪影響が波及することもある。
- ASEAN向け輸出は、日本企業の生産拠点向け輸出が多いが、こうしたASEANの日系企業は、NIES内需向けだけのために全てを作っているわけでない。内訳としては、大雑把にいうと日本向け1/3、アメリカ向け1/3、ASEAN内需向け1/3といってよい。この意味で、ASEANがへこんだ時に日本が本当に大きな影響を受けるのは、ASEAN内需分1/3だけである。実際、現状ではタイ向け自動車輸出の不振が伝えられているくらいである。一方、通貨不安がNIESへ波及した場合、日本のNIES向け輸出が、必ずしも日本企業の生産拠点向けの輸出ではないことから、これら諸国で内需がへこむと、日本は非常に大きな影響を受けることになる。
(文責・経済政策グループ)
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