需要面では、経済対策の効果がようやく官公需統計に現れてきた。一方、民需は引続き低調であり、その背景として消費マインドの低迷が指摘されている。
経済企画庁で四半期に一度実施している消費動向調査では、「暮らし向き」、「収入の増え方」、「物価の上がり方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の5項目について今後半年間の見通しを5段階評価で回答してもらい、これを合成して消費者態度指数を作成している。
9月調査では、全5項目が6月調査比で悪化した。しかも、「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」の3項目は、統計開始以来、最悪の指数レベルである。消費者態度指数の低下に最も寄与したのは「雇用環境」であり、次いで「耐久財の買い時判断」である。耐久財については、価格は低下傾向ながら、ボーナスが厳しいという見通し等を織り込んだ判断と思われる。「物価の上がり方」については、大雨による生鮮野菜の高騰などから、これ以上の物価の下落は見込めないと思った世帯が多かったのではないか。世帯属性別には、単身世帯、一般世帯ともに、消費者態度指数の前年比悪化幅が拡大している。
総じて消費者マインドは弱く、これが実際の購買行動にどのように影響するのか、引き続き注意していく。
8月までの生産の低下がやわらいできていることから、総括判断を「低下傾向」から「このところ停滞」と改めた。
9月の生産は前月比2.5%の大幅上昇となり、在庫、在庫率は低下した。生産指数の上昇はほぼ全ての業種にわたっているが、特に全体を押し上げたのが電気機械、輸送機械、金属製品である。電気機械では主に液晶、エアコン、パソコン等による。輸送機械では、鉄道車両、乗用車が上昇要因。
明るい材料として指摘できるのは、第一に、過去2ヶ月上昇していた在庫率が低下に転じたこと。第二に、これまで遅れていた生産財の在庫調整が、そこそこ進展してきたこと。
一方、暗い材料としては、生産水準がまだまだ低レベルにあること。足元の生産指数は平成6年あたりの緩やかな回復局面のレベルである。二つ目に、在庫率が未だ第一次石油危機以来の高水準にあること。在庫管理技術の進展にも関わらず在庫率がこのレベルにあるということは、企業の在庫過剰感はかなり高いものと推察される。
予測調査結果によると、10月、11月と生産減少の見込みであるが、2ヶ月とも寄与しているのは鉄鋼業と機械工業である。鉄鋼については、内需低調のなかで、輸出環境が厳しくなってきていることを織り込んだ予測とみられる。電機機械工業は10月にかなり大幅な生産低下を見込んでいるが、9月に大幅に上昇した反動や、基調としての弱さを反映したものと思われる。ただし、実現率、予測修正率はこのところプラスで推移しており、固めの予測を出してきているように思われる。輸送機械工業については、10月は軽自動車の増産等により大幅上昇の見込み。ただし、11月は大幅低下を見込んでおり、基調としては力強さに欠ける。
全体として、実現率、予測修正率のマイナス幅が小さくなってきていることは好材料である。ただし、この予測調査は10月半ばの調査結果であり、為替レートの急上昇がどこまで反映されているのか、多少割り引いて考える必要がある。総括として、引き続き在庫の負担や需要の低迷に企業は苦労されている時期と認識している。
10月3日にG7が行われ声明が出された。声明の背景には、金融市場の混乱により世界経済が大きなダウンサイドリスクに直面しているとの、各国の認識がある。ここで合意されたのは、
一言で言うと、雇用情勢は大変厳しい状況が続いている。
これまでの動きをやや長めに振り返ってみると、年前半は急激に雇用情勢が悪化した。失業率は、昨年10−12月期には3.5%だったのが、2月頃から上昇し始め、4−6月期には4.2%にまで高まった。1四半期で0.6ポイントも上がったのは、これまでにない現象である。雇用者数は、昨年後半までは年間50万人のペースで増えていたが、今年の第1四半期には1万人増のペースにまで鈍化し、4−6月期には前年比35万人の減少に転じた。このような動きは賃金面にも現れており、現金給与総額は昨年まで前年比プラスを保っていたのに、1−3月期ではほぼ横ばい、4月以降は前年割れが続いている。
今年後半については、水準は依然として厳しいが、動きとしては年前半と異なってきている。失業率が4−6月期の4.2%から7−9月期は4.3%へ、雇用者数も同前年比35万人減から36万人減へと、年前半のような急激な悪化は一応止まってきている。5、6月頃には、年末にも失業率は5%台に突入するという悲観的な見方がマスコミ等に見られたが、そこまでには至っていないという現状である。
ただし、先行きが明るいと考えるわけにはいかない。雇用情勢が引き続き厳しいレベルにあることは間違いないし、中小企業の雇用に悪いサインが出てきている。また、パート中心に比較的堅調だった女性労働についても、足元では労働市場からの退出により労働力率が下がってきている(これが失業率上昇の歯止めになっている)。3つ目に、企業の雇用過剰感が強く、個別企業ベースで雇用調整が計画されている。これは、やや中期的・構造的な動きとしてのリストラと理解している。4つ目に景気の停滞、特に先行き不透明感が払拭されていない。
以上を踏まえると、雇用については厳しい状況が続くことを覚悟しておいた方が良い。
経済対策の効果としては、公共工事請負統計がこの8月、9月にプラスとなり、ようやく動き出してきた感あり。追加経済対策や金融緩和の効果等により、景気の悪化テンポがやわらぐことが期待されるが、速やかな景気回復は期待しがたいということを、これまでも申し上げてきたところ。
まず設備投資は、GDPベースで見て、この1−3、4−6月期と、戦後最も速いペースで減少した。機械受注等から判断すれば、設備投資の減少がしばらく続く見通しである。平成6年頃の設備投資の増え方は控えめだったにもかかわらず、今年に入って大幅な調整が生じている。その背景として、一つ目に、中小・非製造業の不振がある。収益の悪化に加え、金融機関の貸出態度厳格化により、中小非製造の設備投資減少に拍車がかかった。二つ目に、最終需要の低迷から稼働率が低下し、設備の過剰感が大企業も含めて高まっている。先行きについては、
(文責・経済政策グループ)