〜わが国の規制改革の必要性〜
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新ラウンド交渉の早期実現の必要性
GATT/WTOを中心とする自由で多角的な通商体制は、戦後の世界経済の健全な発展に大きく貢献してきた。わが国は、その恩恵を最も強く受けてきた国の一つである。
こうしたことから、経団連は、昨年5月の提言「次期WTO交渉への期待と今後のわが国通商政策の課題」のなかで、WTOの機能を更に強化すべく、2000年から包括的な新ラウンド交渉を開始し、(1)モノ・サービス両面にわたる貿易自由化の一層の推進を通じた市場アクセスの改善、(2)アンチダンピング措置の規律強化や国際投資ルールの構築を始めとするルールの整備・強化を実現するよう求めたところである。
昨年シアトルで開催された第3回WTO閣僚会議において、次期交渉の範囲や方式をめぐる各国の意見の対立から、新ラウンドの立ち上げに至らなかったことは非常に残念である。
しかし、各国内の保護主義的な圧力に屈し、自由化へのモメンタムを失うべきではない。政府、産業界は、包括的な新ラウンド交渉の早期実現に向けて、強力なイニシアティブを発揮していく必要がある。
他方、途上国や市民社会の一部に、グローバル化の急速な進展に対する不安の声があることに留意する必要がある。われわれは、貿易や投資の自由化がもたらす利益を十分に説明するとともに、グローバル化が各国の経済、社会に深刻な影響を及ぼすことのないよう、自由化の進め方やセーフティーネットのあり方などについての議論を深めていく必要がある。2月中旬のUNCTAD総会において採択された「バンコク宣言」のなかにも言及されているとおり、WTO活動全般において開発の視点が考慮されるべきである。
発展途上国への配慮
新ラウンド交渉を推進していくうえで、途上国のWTO体制に対する信頼性の確保が不可欠である。特に、途上国が自由化の果実を十分享受出来るように、先進国は積極的に市場開放を進める必要がある。こうした意味から、日欧が中心となって進めている、後発開発途上国産品に対する関税無税化のイニシアティブを高く評価する。日欧にとどまらず、多くの先進国が協調して実施していくことが強く望まれる。
また、アンチダンピング措置の保護主義的な発動により、市場開放の効果が損なわれるようなことがあってはならない。こうした懸念からシアトルの閣僚会議では、多くの途上国がアンチダンピング協定の見直しを主張していた。同協定の修正及びアンチダンピング委員会の強化を通じ、各国のアンチダンピング措置の適正な実施を確保していく必要がある。
更に、労働基準が先進国より緩やかな国からの輸入を制限すべきであるといった保護貿易主義的考えには強く反対する。労働問題については、引き続きILOを中心に議論していくことが適当である。
他方、シアトルの閣僚会議において議論が中断したままとなっている、TRIMs(貿易関連投資措置)協定等の途上国に対する経過措置期間については、安易な延長を認めるべきではない。各途上国からの要請をそれぞれ関係する理事会で個別に審査し、各協定の実施にあたり特別の困難があると認められる場合に限り、延長が認められるようにしていく必要がある。
WTOの意思決定方式の改革
WTOの意思決定方式の改革は、効率性と透明性のバランスをとった形で進められるべきである。しかし、抜本的な機構改革に時間をかけることにより、新ラウンドの立ち上げが大幅に遅れるような事態は避けなければならない。
なお、WTOが加盟国政府間の組織である以上、交渉は、各国の政府が責任を持って行なうべきである。各国政府は、産業界、NGOをはじめとする利害関係者との対話を強化し、その意見を適宜自らの政策決定に反映させる責任を負っている。他方、WTOは、交渉に支障をきたさない範囲内で可能な限り積極的な情報公開を進め、NGO等の活動の参考に供していく必要がある。
サービス産業の重要性
サービス関連産業は、わが国の国内総生産や就業人口の7割以上を占めており、企業や消費者が行なう経済活動の基本的インフラとしてますます重要なものとなっている。
わが国の全世帯の消費支出に占めるサービスの比率は約40%、また、製造業の中間投入に占めるサービスの割合も年々増大し28%となっている。効率的で生産性の高いサービス産業は、国民生活の質を向上し、また、製造業の競争力を高めていく上でも重要である。
これは決して先進国に限るものではない。途上国においても、経済発展が進むにつれ、企業や消費者によるサービスの外部委託が進み、これがサービス産業の拡大と効率化をもたらし、更なる経済発展に結びつくという好循環が見られる。事実、一人当たりのGDPの高さとGDPに占めるサービス産業の比率にはかなりの相関関係がみられる。
経済活動がグローバル化する中で、サービス貿易は急速に拡大している。特に1995年に発効したサービス貿易一般協定(GATS)は、サービス貿易に対する初めての多国間の協定として、各国の自由化や制度の透明化を通じ、サービス貿易を促進していく上で大きな役割を果たしてきた。
わが国の国境を超える貿易の約2割はサービス貿易によって占められるようになった。加えて、GATSでは、サービス貿易を単なるクロスボーダー取引よりも広くとらえ、海外におけるサービス関連の拠点設置やサービス提供者の移動もその自由化の対象としている。ちなみに、1998年度の日本の対外直接投資の約7割、対内直接投資の8割弱は金融・保険、商業などのサービス産業によって占められている。
サービス交渉と新ラウンドとの統合化
サービス貿易自由化の重要性に対する各国の認識は次第に高まっている。ウルグアイ・ラウンド交渉後に行なわれた金融サービス交渉や基本電気通信交渉では多くの途上国が積極的に自由化約束を行なった。自由化を通じ、国内のサービス産業の競争力を高めるとともに、外資の誘致を促進することができるためである。
こうした状況の中で、合意済み課題(ビルト・イン・アジェンダ)であるサービス貿易の自由化交渉が2月より開始されたことは歓迎される。
しかし、今後各国間の様々な利害の対立から、サービス交渉が期待ほど進捗しないおそれも強い。包括的な新ラウンド交渉を早期に立ち上げ、サービス交渉をこの中に包含することにより、全ての加盟国がWTOでの交渉において様々な利益を見出す可能性が増え、交渉の進展を促すものと思われる。こうした意味からも、次期WTO交渉がサービス交渉等の合意済み課題のみに限定されることには反対である。
サービス交渉への期待
日本の産業界は、今後のサービス貿易自由化交渉の行方に強い関心を有している。企業は、諸外国とのサービス貿易を行なう上で、様々な障害に直面しており、交渉を通じ、外国企業の事業活動に対する差別的規制の撤廃及びサービスに関連する諸制度の透明性の向上が実現していくことを特に強く期待している。
同時に、交渉を成功に導くためには、途上国の積極的な参加が不可欠である。サービス貿易に係る障壁の削減は、途上国の経済発展に重要な役割を果たすものであるとの基本的な認識の共有に向けて働きかけていく必要がある。他方、交渉にあたっては、途上国の各産業の実情に十分配慮すべきである。先進国は、法整備、人材育成などの面での技術支援を更に強化することが望まれる。
また、デジタルネットワークの拡大は、サービス産業の更なる発展に寄与するものである。いわゆる「デジタル・ディバイド」を拡大するような制度上の障害が設けられてはならない。途上国を含む世界の人々が、こうした新たなリソースを利用し、事業機会を拡大していくことができるよう、自由な制度を確保する必要がある。
自由化交渉では、各国の約束表の改善を通じて、(1)外資出資比率の制限、(2)役員・従業員の国籍・居住要件、(3)国外への送金規制、(4)パフォーマンス要求(技術移転等)、(5)資材・サービスの国内調達義務、といった各国市場における障害が除去されていくことを強く希望する。
これを効果的に実施するためには、従来から行なわれてきたリクエスト・アンド・オファー方式(二国間の交渉による自由化交渉の結果を最恵国待遇によって多数国間の成果とする方式)に加え、フォーミュラ方式(多数国間で一定の取り決めを行ない、その取り決めに従って各国が一斉に自由化約束を行なう方式)についても検討する必要がある。
特定のモードについて分野横断的な自由化を進めることも検討に値する。例えば、商業拠点の設置(モード3)に際し、事業を行なう上で不可欠な経営管理者や技術者等の人材(キーパーソネル)の当該国への移動に関連し、問題に直面するケースがある。拠点設置を認めたサービス分野については、経営管理者や技術者等の自由移動(モード4)が認められる必要がある。
また、電子商取引の急速な進展によって、従来のモード3(拠点設置)やモード4(自然人の移動)を通じてしか提供できなかったサービスの多くが、次第にモード1(越境取引)またはモード2(海外消費)により提供しうるようになっている。こうしたサービスはこれまで約束表に「技術的に可能でないために約束しない」と書かれているケースも多いが、今後各国が電子商取引の促進を目指して積極的に自由化約束を行なっていく必要がある。なお、電子商取引の発展が阻害されることのないよう、電子商取引とモードの関係を十分検討することが重要である。
最恵国待遇(MFN)の義務の免除は、そもそもGATSの基本精神に反するものであるにもかかわらず、多くの国が様々な分野で免除登録を行なっている。第二条の免除に関する附属書にある通り、次期交渉において最恵国待遇免除も自由化交渉の対象とし、免除登録を行なっている国に対し原則として廃止をするよう求めていく必要がある。また、少なくとも、GATS発効後10年以内の撤廃は確保されるべきである。
透明性の向上
企業は、諸外国においてサービス関連の事業を行なう際に、(1)法制度の不備、不透明性、恣意的な運用、突然の変更(根拠法令の不在、口頭による新規規則の説明、不公正なサービスの許認可制度等を含む)、(2)免許要件・手続の不透明性、不合理性(免許基準、免許料金等を含む)などの様々な問題に直面している。こうした問題を改善するために、透明性に関するGATS第3条の規定の「了解」もしくは「ガイドライン」の策定を通じ、透明性をより高めるためのルールを確立する必要がある。
具体的には、(イ)国内法及び政省令等による規制の制定・改廃に係わる事前申立て手続き(いわゆる「パブリック・コメント制度」)の整備、(ロ)法制度・手続に関わる不透明性や不公正な取扱いに関する苦情窓口の設置・明確化、(ハ)加盟国による約束内容の実施状況の定期的公開、(ニ)サービス理事会への通報義務実施の厳格化および結果公表の迅速化、(ホ)わが国の行政手続法的なルール(例えば、許認可等の審査基準の設定・公表、審査開始義務、標準処理期間の設定・公表、情報提供義務、許認可等を拒否する際の理由の開示等)の導入の奨励、等が考えられる。
競争促進的な国内規制
基本電気通信分野の「参照ペーパー」に見られるような競争促進的な国内規制に関するルールは、これから自由化を進めようとする国に一定の指針を提供するなど、自由化促進という面で成果をあげた。しかし、これを他のサービス分野に導入する場合は、各分野の実態を踏まえた詳細な検討が必要である。また、採用する場合には、用語の定義(例えば、「関連する市場」はどこまでを指すかといった対象範囲等)や挙証責任の所在(例えば、「参照ペーパー」の関係では、誰が「ユニバーサル・サービスを確保するために必要である以上の負担」かどうかを判断するのかといった点)をできる限り明確化するとともに、必要に応じて一定の留保を付すべきである。
GATSのルールはモノの貿易を対象とするGATT(貿易と関税に関する一般協定)に比べて整備が遅れており、交渉を通じて議論を深めていくことが重要である。
政府調達
わが国企業は、特に、建設、運輸等の分野で第三国における政府調達の参入制限や手続きの不透明性等の問題に直面している。GATSでは、最恵国待遇、内国民待遇、市場アクセスに関する規定はサービスの政府調達に適用されないこととなっている。他方、複数国間協定である政府調達協定は、アジアをはじめとする途上国の参加が限られている。サービス分野の政府調達ルールの策定あるいは既存の政府調達協定の参加国拡大を通じて、問題の解決を図っていく必要がある。
補助金
各国政府の補助金政策と内国民待遇との関係について検討を行なうことが重要である。
セーフガード
途上国が自由化を進める上で国内産業への急激な影響を緩和するためにセーフガードを発動せざるを得ないケースも想定される。そこで、恣意的な発動を防止することに主眼を置いた、明確で客観的なルールを構築していく必要がある。なお、セーフガード措置は、すでに拠点設置を行なっている企業から提供されるサービスには適用すべきではない。同時に、セーフガード措置によって、こうした商業拠点を通じ事業活動を行なう上で必要なキーパーソネルの移動も制限されてはならない。
また、措置の長期化を避けるべく、セーフガード協定第7条4項のようなセーフガード措置の見直しに関する規定を盛り込み、経済、社会状況の変化を反映し、措置の早期撤回ないし緩和を図る余地を残す必要がある。
その他
サービス分野のアンチダンピングについては、各国が独自に制度を導入し保護主義的な適用を行なうことのないよう、議論が必要である。
自由化交渉の基本となる約束表は、電子化による提供等を通じ、利用者である企業にとって入手し易いものとする必要がある。同時に、産業界の意見も踏まえ、企業活動の実態に即したわかりやすいものとしていく必要がある。但し、現行の分類の大幅な見直しによって、既存の約束との関係において透明性を損ない、不要な混乱を招くといった事態は避ける必要がある。
また、各国が独自の判断で行なっている各サービスの定義の明確化と可能な範囲での統一が図られる必要がある。
電子商取引の健全な発展のためには、政府による規制を必要最小限にとどめ、民間産業界の自主的な取り組みによる枠組み作りを進めていくことが重要である。
WTO基本電気通信交渉によって、先進国のみならず途上国においても電気通信分野の自由化の原則が確立したことは評価できる。基本電気通信サービスの世界的な自由化が進み、料金の低廉化、サービスの多様化をもたらした。また、参照ペーパーは途上国等における規制の指針となるなど各国の自由化促進の上で大きな成果をあげた。
しかし、企業が各国の通信事業に参入する上で、依然として様々な問題に直面しており、交渉を通じて、以下の点が実現していくことを期待する。特に、自由かつ公正な競争、透明な行政手続の確保が重要である。
なお、インターネットの国際接続に関して、米国以外の事業者が米国の事業者と接続する場合、国際回線費用及び接続料を一方的に負担することとなっている。各国の通信事業者間の公正な競争を確保する観点から、インターネットに係る国際回線費用負担等の改善措置を早急に講じる必要がある。
オーディオ・ビジュアル(音響・映像)産業は各国の社会的、文化的性格を強く反映することから、多くの国が活発な保護、育成政策をとっている。
オーディオ・ビジュアルに関し、GATS上約束している国はわが国を含め約20カ国にすぎない。ただし、約束表のなかに、外資出資比率の制限、外国作品に対する上映時間割当制限、国内補助金に関する内国民待遇例外、自然人の移動を伴なうサービス提供の例外扱いなどを記載している国も多い。
他方、EUを始め多くの国は一切の約束を行っていない。また、多くの国が最恵国待遇の免除登録を行なっている。
オーディオ・ビジュアル分野が持つ社会的、文化的問題に一定の留意をする必要はあるものの、各国の強い保護的政策によってオーディオ・ビジュアル産業の自由な国際取引が阻害されることのないよう、諸外国に自由化を求めていく必要がある。特に、最恵国待遇義務の免除は多国間通商システムの基本原則から逸脱したものであり、早期撤廃が望まれる。
建設サービスの提供形態は、拠点設置か人の移動によるものが中心であり、これを阻害するような各国の措置が海外での事業上の障害となっている。
特に、
なお、一級建築士等のエンジニア免許の相互承認は、同等の水準を確保している国に限定される必要がある。
交渉を通じ、諸外国における流通分野の自由化が進むことを期待する。
具体的には、途上国市場等における、輸入業・小売業・アフターセールスサービス業への外資参入の制限の改善が望まれる。他方、先進国における、国・地方(中央政府・地方政府)を通じた商業調整的な出店規制および商業関連施設に関する用途規制・建築規制についても、緩和が求められる。
海外市場、特に途上国市場において、
信用秩序維持のための措置について、各国間のハーモナイゼーションや、特に途上国における発動のルールについて検討していく必要がある。
情報化の進展により、従来型の拠点設置によるサービス提供から、クロスボーダー取引への関心が高まっている。特に、電子商取引との関連の検討が重要である。
97年金融サービス合意は、各国金融政策の安定性と投資家の予見可能性を高め、金融市場の安定的発展に大きく寄与するものである。自由化の進展は進出企業・現地企業の双方にメリットをもたらす。
損害保険分野で活動するためには、基本的にサービスを提供する市場に拠点を設置する必要がある。また、保険業は、その高い公共性に鑑み、免許制が一般的であることから、免許要件・発給手続及び基準における客観性と透明性が高いレベルで確保される必要がある。また、免許発給に際して公式、非公式を問わず数量制限が行なわれるべきではない。
ところで、保険業については、各国の中央政府の監督ではなく、国内の自治(州)政府の監督に服すべき国も存在する。この場合、自治(州)政府毎に規制内容にばらつきがみられ、効率的事業運営の見地から問題が多い。自治(州)政府間の規制の調和を図ることが重要である。
わが国では、金融ビッグバンにより規制緩和、自由化が進展した。また、日本政府が96年日米保険合意の内容をWTO上も約束したことは、WTOへの強いコミットメントの表れと言える。
こうした状況に鑑み、交渉を通じ以下の進展を期待する。
グランドファザー条項(先行者の既得権益を例外扱いとして擁護する条項)については、大幅に認めると公平な競争条件の確保が難しくなるので、一件ずつ内容の精査が必要である。
保険契約者保護のための必要な規制を含め、信用秩序維持のための措置については、GATS金融サービスに関する附属書第2条において、「加盟国は、信用秩序維持のための措置をとることを妨げられない」旨規制されており、WTOサービス交渉の対象とならないと考えるが、各国は監督者の参加する国際機関等の場で協調しつつ、適切な規制を実施すべきである。
また、信用秩序維持のための措置を電子商取引を通じた保険販売に適用する場合に適切に機能するか、各国当局者による検討が必要である(契約者への重要情報の提供、プライバシー保護、契約の有効性、管轄権等)。
途上国については、監督体制、契約者保護、消費者責任等の確立といった市場環境の整備の状況に合わせて自由化を進めるよう考慮する必要がある。また、途上国にもたらされる自由化の経済的利益を可能な限り検証し、途上国の交渉への積極的な参加を促すことも重要である。
生命保険会社によるサービス提供を考えるうえで、業界固有の事情(例えば、死亡率や疾病率が国によって異なること)を勘案した規制が必要である。
97年金融サービス合意による自由化進展を評価する。一方、一部先進国における州別監督規制、途上国における外資出資比率の制限、免許基準の不透明性等も依然として存在している。
そこで、交渉を通じ以下を実現すべきである。
なお、
海外市場において様々な事業上の障害がみられることから、交渉を通じ、
海運においても、GATSの適用を通じ、最恵国待遇や内国民待遇が保証されていくことが重要である。しかし、ウルグアイ・ラウンド交渉の不調や、それに続く海運継続交渉の中断の結果、海運は現在もGATSの対象外となっている。
日本については、自由な市場参入が認められているが、他方、自国海運業の保護・育成策を維持するため、海運自由化に消極的な国もある。そこで、GATSルールの適用を確保すべく、海運を交渉対象としていく必要がある。
交渉において想定される主な論点としては、
航空運送サービスは二国間協定によって規律されているため、運輸権および運輸権に直接関係するサービス(航空サービスの中心となるいわゆる「ハード・ライト」)はGATSの枠外におかれている。この結果、GATSルールの枠内にあるのは、
交渉では、「ソフト・ライト」の3分野の自由化を含む、航空運送サービス附属書のレビューを行なうこととなっているのでまずこれを実施し、対象分野についての交渉は同レビューの後で行なわれるべきである。
なお、
電力・ガス市場のあり方を検討する際には、電気・ガスという商品の特質や国によって地理的条件や資源制約等の異なる事情を考慮する必要がある。電力・ガスの自由化は、各国が各々の実情を踏まえて公益的課題(セキュリティの確保、環境との両立、ユニバーサル・サービスの提供、供給信用度の確保)と効率化との両立を図りながら進めることが不可欠である。
こうした理由もあり、エネルギー・サービスは、一部を除きウルグアイ・ラウンド交渉の対象とならず、約束表上も単独の分類となっていない。したがって、交渉においては、先ず、エネルギー・サービスの定義を明確化するとともに、適正な公益的課題の達成を念頭におきながら、交渉の対象項目を検討する必要がある。
仮にエネルギー分野に基本電気通信と同様の参照ペーパーを導入することとなった場合には、わが国のエネルギー政策との整合性を図ることはもちろん、基本電気通信合意の「参照ペーパー」にみられるような曖昧な規定は避け、明確化を図るとともに、必要な留保条件を付すことが重要である。
以上でとりあげた業種以外でも、例えば観光サービスや環境サービス等の分野において、各国の参入規制を緩和し、制度の透明性を向上すべく、検討を行なっていく必要がある。
経済活動のグローバル化の中で、サービス貿易の重要性が急速に拡大していることから、日本の産業界はサービス貿易自由化交渉の行方に強い関心をもっている。そこで、経団連では、昨年10月に国内の主要サービス産業の代表から構成されるサービス貿易自由化協議会(JSN - Japan Services Network)を設置した。同協議会は、今後国内サービス産業間の業種横断的な課題及び業種固有の課題についての意見・情報交換を活発化するとともに、欧米をはじめとする諸外国のサービス産業団体との連携を強化していくつもりである。
サービス貿易自由化交渉は、諸外国における市場アクセスや透明性の向上の実現とともに、わが国市場の規制改革と自由化を促す好機である。経団連では、1999年10月19日に約450項目の規制改革要望を取りまとめ政府に建議した。この中には、
現在、わが国には、例えば地方自治体による規制等、新規参入の障壁となっている諸制度が散見される。
国内の環境関連産業の活性化、効率化を促す意味からも、外国企業を含む新規参入が促進され、提携の機会が増大することを希望する。そのためには、自由化交渉を通じ、内外企業の日本市場への新規参入を促すようなわが国市場の規制改革を実現していく必要がある。
経団連が政府に提出した規制改革要望には、環境関連で20項目の要望が含まれているが、廃棄物の広域処理の実現が特に重要である。
今回の交渉を機に、わが国においても、保険者と医療機関の直接契約、外資を含め営利法人の病院・施設介護サービス(特別養護老人ホーム、老人保健施設)の経営など、競争原理に基づく医療・介護サービスの質の向上、効率化が求められる。
これにより、国民の多様なニーズに合わせた医療・福祉サービスの提供が可能となる。また、外資との競争あるいは提携を通じ、競争力を有する医療・福祉関連企業が国内に育てば、今後急速な拡大が見込まれる国際市場への積極的な展開も可能となろう。
2000年6月1日から大規模小売店舗法に代り大規模小売店舗立地法が施行されるが、地方における上乗せ・横だし規制(特に商業調整的な規制)の排除、届出書類等の簡素化、関係法令との同時並行処理の推進等、その適正な運用が強く求められる。運用上、従来より厳しい出店規制が課せられることはあってはならない。また、例えば、酒税法による酒類販売業免許の規制(需給調整的な参入規制、販売製品や広告・販売方法の制限)、たばこ事業法による製造たばこ小売り販売に関する規制(需給調整的な参入規制、小売定価制)、薬事法による医薬品販売に関する規制(薬剤師の必置義務、構造設備規制等)など、販売品目毎に設けられた各種規制の改革が必要である。
欧米流通業の海外進出上の一般的問題点として、