少子高齢化に対応した新たな成長戦略の確立に向けて
―今後の四半世紀における日本経済の展望と課題―
四半期ごとのGDP成長率(実績値)を、成長会計と呼ばれる以下の形によって (1)労働力の寄与 (2)資本ストックの寄与 (3)TFPの寄与――に要因分解した。
GDP成長率= 労働分配率×労働投入量の伸び率+資本分配率×資本投入量の伸び率+TFPの伸び率
労働分配率は「雇用者所得÷国民所得」、資本分配率は「1−労働分配率」である(雇用者所得、国民所得は国民経済計算年報ベース)。
労働投入量は「就業者数」と「労働時間」から、また資本投入量は「資本ストック」と「設備稼働率」から求められる。
製造業、非製造業の成長率も、上記の手法により要因分解した。
TFPの伸び率は、少なからず景気変動の影響を受ける。こうした影響を、景気循環の「山」から「山」、ならびに「谷」から「谷」の期間平均値をとることによって除去した。
資本投入量は、資本ストックと設備稼働率の積として求められる。資本ストックについては、従来は「民間企業資本ストック統計」(経済企画庁)を使用する事例が多かったが、「民間企業資本ストック統計」では、資本の生産能力が耐用年数到来まで100%維持されるとみなすため、実勢に比べて過大推計となっている可能性が高い。この点を考慮して、国民経済計算年報などから算出した「固定資本減耗額」を差し引いた(いわゆる「純資本ストック」の概念)。
※「雇用者所得」「国民所得」「製造業、非製造業の国内総生産」「固定資本減耗」は年次データであるため、上記推計においては四半期分割を行ったうえで使用した。
今後の潜在成長力は、経団連が構築した供給型マクロ計量モデルを用いて推計した。推計の前提条件などは、以下の通り。
以上の結果、2000〜2025年の就業者数変化率(年平均)はマイナス0.5%となる。)
※労働時間指数は、90年代の平均水準を想定した。
「企業収益」「家計部門の貯蓄投資バランス」「前期のストック(資本ストック調整を考慮)」を説明変数として設備投資関数を作成し、毎年の資本ストック増加額を内生的に推計した。
91年第I四半期(第11循環の「山」)から97年第I四半期(第12循環の「山」)までの伸び率(期間平均値)を先延ばしした。
同期間におけるTFPの伸び率は、本文の図表第1によれば1.6%である。これは、「稼働率指数(製造工業)」(通商産業省)を用いて資本投入量を算出した結果であるが、製造工業の稼働率指数をもって全産業ベースの資本投入量を算出することは、厳密には適切でない。そこで、この期間については「全産業活動指数」(通商産業省)が利用可能であることから、同指数などをもとに試算した「全産業稼働率指数 1」を用いて、同期間のTFPの伸び率を1.5%に修正した。
- 「景気指標としての月次GDPギャップ」(日本経済研究センター)で紹介されている手法をもとに試算した。
労働分配率は0.65、資本分配率は0.35で推移することを想定した。