[経団連] [意見書] [ 目次 ]

21世紀のわが国観光のあり方に関する提言

−新しい国づくりのために−

2000年10月17日
(社)経済団体連合会

はじめに

わが国において観光は単なる物見遊山とみなされ、観光振興のための政策・制度や意識面での環境整備が、生産活動に比べて著しく軽視されてきた。このことは、毎年1,600万人以上の日本人が外国を訪れる中、日本を訪れる外国人観光客が依然としてその4分の1強に止まっていることなどにも現われている。
しかしながら、ゆとりや潤いのある生活を求める近年の国民意識の高まりや価値観の多様化、経済的・時間的に余裕のある高齢人口の増大に伴い、観光は21世紀の成長産業の一つになると目されている。また、観光を通じた余暇活動の充実は、国民の明日への活力や創造力を生み出す源泉となるばかりではなく、家族の絆の強化、地域づくりにおける参加意識の向上などを通じて、社会の安定をもたらす。さらに、自然や歴史など地域の資源を活用して観光の振興を図ることは地域経済の活性化にもつながるとともに、自然との触れ合いは情操教育、環境教育の一環ともなる。これらに加えて、観光を通じた諸外国との人的交流は、日本人の「内なる国際化」と国際的な相互理解の増進、ひいては平和の促進にも寄与する。
こうした観光の意義は、人と人が「交流」し、様々な活動に「参加」することにより自己の確立と連帯意識が醸成され、広い意味での良好なコミュニティ(人間社会)が形成されることにある。また、観光は、非日常の世界に身を置くことにより、自らの生活のみならずわが国の歴史や文化を見つめ直し、国や社会のありようを問い直す機会を提供する。それゆえ、ここで改めてこうした観光の意義を再認識し、わが国の観光を振興するための環境を整備することが求められる。
以上の観点から、広く国民各層において今後の観光のあり方、新しい国のあり方を検討する材料として、本提言を提起する。


I. 観光の意義と重要性

  1. 産業としての重要性
  2. 産業としての観光は、旅行総消費額としてみると、わが国国内総生産(GDP)の4.8%に相当する約20兆円の直接経済効果をもたらすほか、波及効果として約48兆円の生産高と約410万人の雇用を創出する裾野の広さを有している1。これは、観光が単に旅行業やホテル・旅館業のみならず、航空、鉄道、船舶等の運輸業、農業、外食産業等のサービス業、物産や旅行グッズ生産に関わる業界を含め、広範な業種にまたがる総合産業であることを示している。
    今後、経済的・時間的に余裕のある高齢人口の増大に伴い、観光関連市場のさらなる拡大が期待されることなどから、観光は21世紀の成長産業の一つになると目されている。こうした中、地域づくりの柱となる地域総体産業としての観光の重要性に着目し、関係者が一体的かつ総合的に観光を振興する機運を醸成することが求められる。

  3. 地域振興に果たす役割
  4. 観光は、まちづくり・地域づくりの重要な柱であり、地域振興の基盤となる。それは、観光が本質的に異文化交流をもたらす行為であり、観光客の眼差しを意識することによって「僕のお家も景色の一つ」という地域の公共心が育まれる契機となることを意味する。加えて、その地域ならではの特色を外から訪れる人に示し、交流を図ることによって、地域が有する観光資源や強みを再認識できるという利点も指摘できる。こうした観光の特色は、観光の語源が中国の古典「易経」の「観国之光。利用賓于王」(国の光を観<しめ>すもって王の賓たるに利<よろ>し)に由来し2、地域が光り輝くことによって繁栄し、外部から人が集まるという思想に基づいていることからも裏付けられていると言えよう。
    このように、まちづくり・地域づくりの重要な柱に観光を取り込むことによって、外部者(観光客)からの助言・批判等をフィードバックしながら魅力的な観光地を整備すると同時に、そこに住む人にとっても日常的に住み心地が良く、かつ誇りに思えるまち・地域をつくるインセンティブが働き、郷土愛が育成されることが期待される。

  5. 社会の安定化の意義
  6. これまでの観光政策審議会答申において、観光は「いまや人間の生存条件の一つとさえなっている」3と位置付けられたほか、「観光は国民にゆとりと活力を与え、また、多様な価値観への寛容性と多彩な創造力を育み、ひいては我が国の生存能力を高めていく」4とまで強調されており、一人一人の国民およびわが国の生存にとって欠くべからざる活動であることが認識されている。
    このような「生存」に深く関わる観光によって、生活の真のゆとりと潤い、充足感がもたらされ、摩擦や緊張、対立が減少する結果、安定的な社会が創出されることが期待できる。
    例えば、家族全員で旅行に出かけ、日常とは異なる環境において対話したり、共通の体験を通じて互いの理解を深め合うことは、しばしば見られがちな家族内の意思疎通の欠如に対して、無視できない効果を持つと考えられる。また、グリーンツーリズム(自然・農林漁業体験観光)については、児童生徒が農村に一定期間滞在し、農作業等を手伝いながら自然に触れ合い、生命の意味を問い直すなど、情操教育としての機能を果たすことなどから、少年犯罪に対する一つの処方箋にもなり得るものと期待される。
    さらに、今後のわが国社会においては、仕事から離れ、様々な交流を通じて心身ともにリフレッシュする機能を有する観光の重要性を積極的に評価し、非日常の異なる世界や文化との接触を通じて知識を深め、国民生活の高質化、成熟化を図ることが益々重要となろう。

  7. 国際的な相互理解の促進に果たす役割
  8. 国際連合は1967年を「国際観光年」と定め、「観光は平和へのパスポート(Tourism, Passport for Peace)」というスローガンのもと、国境を越えた観光往来の促進が国際的な相互理解を増進し、平和維持に貢献することを世界に強く訴えた。観光を通じて国際的な人的交流が促進され、それぞれの国の社会、文化、言語、習慣等に対する理解が深まれば深まるほど、無知や不信感が払拭され、紛争や対立の芽を事前に摘み取ることが可能となる。
    来るべき21世紀は、国際化、情報化の飛躍的な進展に伴い、世界的な「大交流時代」を迎え、ヒト、モノ、サービスの流れが益々活発化することが予想される。世界観光機関(WTO)の調査によると、全世界の国際観光旅行者数は2000年が約6億6,700万人、2020年には約15億6,100万人と、20年間で実に2倍以上の伸びを示すと予測されている。
    これを、わが国への外国人観光客誘致を図る絶好の契機と捉え、国際観光交流の促進を図ることが重要である。グローバリゼーションの進展の中、「平和外交」を推進する媒体として、また、わが国の「内なる国際化」を進める一つの方策として、観光が果たす役割の重要性を充分に認識すべきである。

以上、広範かつ多様な意義と重要性を有する観光の特質を踏まえた上で、次章では、21世紀のわが国がとるべき具体的な観光振興施策について提言する。


II. 21世紀におけるわが国観光のあり方

本章においては、まず第1節から第3節にかけて、今後、わが国として重点的に推進すべき観光のあり方を提起し、続く第4節においては、全ての観光形態に共通する課題を取り上げ、具体的な施策について言及する。

  1. 誰もが楽しめる観光(ユニバーサル・ツーリズム)の推進
  2. 観光は健常者にのみ許される活動であってはならない。「国の光を観る」行為がもたらす効用は全ての人たちに遍く享受されるべきである。従って、政府、地方自治体、観光関連業者をはじめ観光に携わる全ての人たちが、この観光の意義を認識した上で「ユニバーサル・ツーリズム」(どのような人であれ楽しむことができる観光の形態)の実現に向け、取り組んでいくことが必要である。
    わが国において65歳以上の高齢者が全体に占める割合は2000年現在の17.3%から2020年には27%に上昇し、2050年には32%にまで達すると予測されている5。可処分所得が大きく、余暇を自由に使うことができる高齢人口の増大は、観光関連市場の拡大をもたらすものと考えられる。しかしながら、わが国の観光をめぐる環境は、様々な面において、高齢者向け観光(シニア・ツーリズム)促進に適した基盤を備えているとは言い難い。
    こうした観点から、まず、高齢者ならびに身体障害者等が困難を伴うことなく移動できるような環境づくりを急がなければならない。空間的バリアを解消するためのデザイン手法であるユニバーサルデザインを導入し、観光のもたらす効用を誰もが等しく享受できるよう、国・地方自治体が中心となって、徹底したバリアフリーの観光まちづくりに取り組むことが必要である。具体的には、駅、空港、港湾、周辺道路、旅客施設のバリアフリー化として、エレベーター・エスカレーターの普及拡大、コンコース等の移動に供する歩行空間の段差解消など、移動し易く人に優しい環境づくりを目指した整備を行なう必要がある。
    また、視覚障害者をはじめとする利用者の視点に立って、分かりやすい案内サインを設置することが求められる。具体的には、文字サイズの大型化、ピクトグラム(案内絵表示)の使用を拡充するとともに、身体の不自由な人や高齢者等が利用し易い多目的トイレの整備・美化に取り組むことが期待される。
    他方、高齢者を対象とした旅行商品については、高齢者の趣向や体力などにきめ細かく配慮した多様なメニューの提供が今後益々求められよう。
    受入側の観点からは、リストラあるいは定年後に第二の人生を模索する中高齢者を積極的に活用すべきである。実際、地域を知悉したUターン者、あるいは職歴の中で培った経営感覚をタウンマネージャーとして活かせるJIターン者がまちづくりに果たせる役割は大きい。例えば、地域の歴史・文化・みどころなどを紹介する観光ボランティアガイドとしての積極活用、まちづくりに係る民間非営利団体(NPO)の組織化・運営などへの参加が挙げられる。しかし、観光ボランティアガイド団体の大多数がここ10年以内に組織されたものである6ことや、特定非営利活動促進法(NPO法)が1998年12月に施行されたものであることなどから、わが国における取組みはまだ緒に就いたばかりであり、今後、こうした活動の意義をユニバーサル・ツーリズムの枠組みの中で改めて捉え直し、中央・地方政府を中心に、積極的に支援していくことが必要である。

  3. 自然環境や歴史遺産に配慮した持続可能な観光(サステイナブル・ツーリズム)の推進
  4. (1)文化遺産保全、まちなみ整備、景観保存のための取組み強化

    観光を通じたまちづくり7を行なう上からは、観光資源の保全等に努め、「持続可能な観光」(サステイナブル・ツーリズム:まち・地域が本来的に有する観光資源を有効に活用し、将来にわたって無理なく長続きできる観光)を実現していくことが重要である。欧州諸国においては、歴史を今に伝える文化遺産の素晴らしさや緑豊かな街並みが貴重な観光資源となっている。米国、英国、ドイツ等、欧米に住んだ経験のある日本人女性を対象に行なった現地と日本との生活比較調査(建設省実施)によると、街の中の緑の多さについて「日本より外国の方が優れている」と回答した数は、実に全体の91.6%に上るほか、公園などのオープンスペースや建物の形・高さ・色などの調和についても、外国の方が優れていると答えた人が90%前後に達している8。こうした生活環境の差が、外国を訪れる日本人観光客数(約1,600万人)と日本を訪れる外国人観光客数(約400万人)の差になっている面もあろう。
    例えば、古代ローマ時代以来の歴史的文化財を有し、世界中から観光客を引きつけているイタリアの諸都市では、景観維持のため、広告物の材質、文字の大きさに至るまで事細かな規制を条例によって定めており、歴史的市街地と近代的商業地とを複合的に開発することによって都市の魅力を高め、人口を呼び戻し、経済活性化を実現している。また、同国では、自然美保護法(1939年制定)などによって、対象物の公共的価値に配慮した財産権の制限などを定めており、文化・歴史・自然環境に係る国民共有の財産の保全を進めるための先進的な法律となっている9
    わが国においても、自然や農村等が織り成す景観および独自の歴史遺産は、他国や他地域には見られない日本が誇るべき観光資源であり、次世代の資産として継承、保存していくことが重要である。地域の具体例として、大分県湯布院町における観光まちづくりを見ると、リゾート開発を規制するため、既に90年に「潤いのある町づくり条例」を制定して以来、安易に商業主義的な観光地をつくるのではなく、まず自分たちが住み易く、訪れる人に対して誇れるようなまちづくりをすることによって地域の振興を実現している10
    これらイタリア諸都市や湯布院町の実例は、観光を通じたまちづくりに取り組もうとしている他の地域にとっても大いに参考になるものと考えられ、今後、地方自治体が中心となり、各地で持続可能な観光に取り組むことが期待される。

    (2)グリーンツーリズムの推進

    大規模リゾートに比して環境に対する負荷が少なく、地域の自然環境や農業と結び付いたグリーンツーリズム(自然・農林漁業体験観光)が近年注目を集めている。グリーンツーリズムは、都市と農林漁村の人的交流の促進、山村地域の活性化等、様々な側面から重要性を有するほか、21世紀の農林漁業問題を考える重要なヒントを与えるものである11。また、10年後、20年後に観光に携わることを期待される若年層が、グリーンツーリズムを通じた観光、中山間地域の活性化の意義や素晴らしさ、農産物等の生産者としての喜びに共感して、自らも観光を通じた地域づくりに携わろうとする意欲を持つような機会をより多く創出することは重要な試みである。
    大分県安心院<あじむ>町では、96年にグリーンツーリズム研究会を発足させ、村おこしと一村一品運動を一体化した活動を展開している。安心院町では、自然環境を保全しながら都市と農村をいかに結びつけるかというテーマのもと、名産のぶどう農家に都会からやってきた人を安価な農業・農村文化体験料で会員として泊めており、自家製の野菜、米、鶏等でもてなす農村民泊を実施している。
    現在、安心院町のみならず各地でそれぞれの特色を生かした様々なグリーンツーリズムの形態が見られるようになっているものの、わが国ではまだ法制度的にシステムが確立されていない。ドイツ等と異なり、日本では不特定多数を対象に宿泊客を募集すると旅館業法に抵触するため、グリーンツーリズムについても会員制という仕組みで運営せざるを得ないなど、課題が多い。グリーンツーリズムの推進に当たっては、人工的構造物に偏重しがちな公共事業のあり方を抜本的に見直し、自然環境が織り成す景観の保全に最大限配慮するとともに、グリーンツーリズムの展開を妨げる要因となっている各種規制12の見直しに着手すべきである。これによって、農林漁業自体の活性化に加えて、グリーンツーリズムなど、農村を舞台とした新しい事業の創出につながることが期待される。

    (3)環境に対する意識の向上

    欧州諸国と比較して、未だに消費型観光の傾向が強いわが国においては、観光によってまちが活性化するどころか、かえってまちが汚され、観光が立ち行かなくなるというケースが生じることも懸念される。また、観光地において旅館・ホテル業等が潤う一方で、観光産業に関わる地方自治体の下水やゴミ処理の負担をどのように軽減するか、検討すべき課題となっている。
    そこで、観光客の最大の受皿ともいえる宿泊施設が主体的に、観光に関わる環境問題の改善に取り組むことが期待される。例えば、石鹸やシャンプー等の有効利用をはじめ、連泊する際、衛生面で問題のないタオルの再利用などを行なうなど、自然環境に必要以上に負荷をかけないホテル・旅館をモデル施設として公的に表彰する制度を設ければ、宿泊施設側にとっても、経営効率化を図る大きなインセンティブになるものと考えられる13

  5. 国際観光交流の推進
  6. 観光を通じて外国人を受け入れることは、国際旅行収支の改善や観光産業の振興のみならず国際的な相互理解の増進に寄与する。しかしながら、わが国の国際観光をめぐる現状をみると、邦人海外旅行者数約1,600万人に対して、訪日外国人旅行者数は約400万人(世界第32位、1997年)に過ぎない。これには、日本に関する情報の不足、受入側の国際化意識の立ち遅れ、ハード・ソフト両面のインフラ未整備など、様々な要因が挙げられる。受入側の国際化が立ち遅れている例として、旅館など伝統的宿泊業者が外国人の予約を受け付けないケースなども見られる14
    こうした問題を解決し、わが国が観光立国に向けて「内なる国際化」を推進するためには、以下の点の改善が必要である。

    (1)基本的なインフラ整備

    1. 外国人観光客の視点に立った外国語表示の充実
      わが国に外国人観光客が来訪する際、ほとんどの場合、国際空港が玄関となる。しかし、成田空港をはじめ日本の空港における外国語表示、案内板等のソフト面の機能は十分とは言えない。英語等の外国語表示が不十分な諸施設は、「観光後進国日本」を象徴していると言っても過言ではない。これは首都東京の顔であるJR東京駅についても当てはまり、成田エクスプレス乗り場を探して迷う外国人の姿を見掛けることは珍しくない。何よりもまず、空港、港湾、駅をはじめ観光関連施設について、外国人観光客の視点に立った外国語表示、ピクトグラム等を早急に整備することが不可欠である。

    2. 外国人に対する観光関連情報システム等の整備
      現在、インターネット上には日本各地の観光関連情報を紹介する多種多様なサイトが存在するが、各地の観光資源やホテル・旅館等が提供するサービス内容、料金体系等を外国語によって一括的かつ網羅的に提供する情報システムは十分に整備されていない。今後、関係者が協力して、外国人のための統一的なポータルサイトを開設し、旅行費用やアクセスをはじめ、外国人観光客が求める情報を利用者本位の立場から分かり易く提供することが肝要である。また、外国人観光客が快適に過ごせるように、ホテル・旅館側の受入体制の改善、通訳案内体制の整備、英語をはじめ各国語でのチラシ・リーフレット案内等を充実させることが求められる。

    3. 外国人観光客を受け入れる法的・心理的環境整備
      他国との友好を深め、国際社会の平和推進に先導的な役割を担うことによって、わが国が「顔の見える日本」として世界の信頼と尊敬を獲得する上からは、外国人観光客の出身国・地域、人種、性別、宗教などにとらわれることなく、分け隔てなく接することが求められる。すなわち、21世紀に向けて観光が「平和のパスポート」であることを具現化する上からは、観光客を満足させ、再び訪れたいと思わせるもてなしの心(ホスピタリティ)が求められる。
      また、日本を訪れる外国人の内、約6割がアジア人であるとともに、今後のアジアの経済発展に伴ってアジア諸国との交流が益々重要性を増していることを勘案すると、とりわけアジアからの観光客を戦略的に捉え、ビザ取得等に係る法制度ならびにアジアの隣人に対するホスピタリティの発揮など、受け入れ体制の整備に努める必要がある。
      こうした中、将来の市場として有望視されている中国の訪日団体観光客について、制限的ながら2000年9月より観光ビザの発給が解禁された。今後の対日観光需要や実際の滞日動向などを見据えつつ、段階的に規制を緩和し、日中文化観光交流の促進を可能とする環境を整備していくことが求められる。併せて、中国以外のアジア諸国についても、日本の観光ビザを取得するために必要な手続きの透明化ならびに簡素化を図るべきである。

    (2)「高コスト観光」の是正

    1. 日本旅行商品の多様化
      わが国の国際観光において、訪日外国人旅行者数と邦人海外旅行者数のギャップを解消するためには、とりわけ内外価格差の是正に取り組むことが必要である。例えば沖縄をタイのプーケットやマレーシアのペナン等、近隣のアジア諸国のリゾート地、あるいは、東京、大阪をパリ、ロンドン、ニューヨーク等の諸都市と比較したとき、わが国観光の価格競争力の欠如は歴然としている。また、割高な旅行費用に加え、観光地の魅力不足、外国人旅行者のニーズにマッチしないサービスなど、改善すべき点は多い。
      従って、訪日客の誘致を促進するためには、国内の旅行会社等がコスト面で国際競争力を有する旅行商品を提供していくことが求められる。これには、個々の旅行会社の営業努力に加えて、宿泊施設、交通機関、観光施設等の観光関係業界が一体となって、費用の低廉化およびサービスの高質化に取り組むことが必要である。例えば、英国で一般的なB&B(Bed&Breakfast)など、低廉で、一人でも泊まり易い宿泊メニューの多様化を図ることによって、外国人が気軽に宿泊できる環境を整備することが重要である。
      一方、旅館・ホテルによっては、浴衣、タオル、ボディソープに至るまで、必ずしも必要でないサービスが過剰供給されるケースもしばしば見られる。これが宿泊料金に転嫁されている現状に鑑み、切り捨てるべき過剰サービスは合理化し、宿泊料金の低廉化を図るべきである。
      また、インターネットを通じて外国から予約した客には、割引料金での宿泊等、様々な特典を設けるとともに、国内各地の同一チェーンのホテルに5泊すると6泊目が無料になるといったタイプのホテルパスの開発も、利用者にとって長期滞在のインセンティブとして作用すると考えられる。
      さらに、訪日外国人の観光形態について見ると、欧米人の主な観光目的が伝統的な祭を見たり、古寺を訪ねたりする異文化体験であるのに対して、アジアからの訪日客は東京等、大都市の有名百貨店での買物やテーマパーク巡りに重点を置く傾向が強い。一部のアジア諸国・地域では、日本のテレビドラマ、ファッション雑誌が人気を呼び、そこに登場するライフスタイルや街並みに憧れて訪日する外国人も多い。ほかにも、九州は韓国等の新婚旅行客を多く受け入れ、北海道も冬の雪や夏の花畑を観光資源として、主にアジアからの訪問客を誘致している。
      受入側はこうした外国人観光客の多様なニーズに留意し、十分なマーケティングを行なった上で、多様な観光ルートの提供および国内外に対する情報発信を心掛けるべきである。

    2. 航空運賃引下げに向けた航空利用者負担の軽減
      国内外の航空会社に対するアンケートによると、成田、関空など日本の空港は空港使用料(着陸料+航行援助施設使用料等)、航空機燃料税、固定資産税等の公的負担額が世界の他空港に比して著しく大きく15、アクセス、料金ともに成田は不便との回答が寄せられている16。こうした航空利用者負担の軽減を通じた航空運賃の引下げは、旅行者数の増加、観光関連等消費需要の増大をもたらし、ひいては裾野の広い産業全体の生産増につながるものと期待される17。従って、外国人観光客を積極的に誘致する上からも、政府は航空利用者負担の軽減に取り組むべきである。

    (3)産業観光等の推進

    フィリピンやマレーシア等の東南アジア諸国の観光客は、日本の産業発展の歴史を学びたいという気持ちが強い。こうした中、わが国産業の中枢として発展してきた中部地域等では、日本の産業発展の歴史を物語る文化的価値の高い産業遺産・工場遺構等を観光資源とする「産業観光」が提唱されており、「産業観光」の国際的なキャンペーンを展開することは、とりわけアジアからの観光客誘致を図る上から有効である18。地域資源を有効活用し、その歴史的な産業遺産を保存、公開する産業観光について、今後、観光資源としての位置付け、的確な情報発信に留意しつつ、全国各地で「新しい観光」として取り組んでいくことが望まれる。
    一方、訪日外国客の目的別構成比を見ると、観光目的が約57%であるのに対して、商用客が約27%に達している19ことから、今後、訪日ビジネス客あるいは研修生などを対象に、企業や工場が保有するハイテク施設などを見学する「テクニカル・ビジット」(テーマ別視察旅行プラン)の国際的なキャンペーンを展開することも、日本の持つ多様な顔を提示する上で有効である。
    加えて、国際会議の開催、留学生受け入れなども、国際観光交流促進の一環として位置付け、その積極的な推進を図るべきである。

  7. 観光振興のための環境整備
  8. (1)観光関連情報の受発信機能の強化

    1. 観光情報インフラの整備
      わが国では観光地を標榜している所でさえ、案内板やインフォーメーションセンターがなく観光客が行きたいところに行けない、という事態が散見される。また、わが国観光特有の課題として、外国人観光客の約8割が東京、大阪、京都等を訪れるものの、東北、北陸、九州、北海道等その他の地域について十分な観光情報を与えられていないため、足を運ばないという現象が見られる20
      そこで、地方自治体、観光関連団体等が主体となって、全国の旅行関連施設において案内板、インフォーメーションセンター等を整備拡充することに加え、以下の情報インフラ整備を行ない、日本各地の魅力を国内外に向け発信することが重要である。

      • 国内外の空港、駅など観光情報の受発信拠点となる場所に設置するビデオ装置やインターネットを通じて、有力な観光資源について、季節に応じてタイムリーな情報(例えば、北海道の流氷、渡り鳥、花等)を発信するとともに、域内周辺に設定されたモデルコースを広範に周知。
      • 域内の観光資源について、“5W1H”(When どの時期に、Where どこで、What 何が、Which どのような交通手段によって、Who 誰が[高齢者や身体障害者がアクセス可能か]、How 料金、時間のコストはいくらか)という基準に基づいた詳細なデータを発信。
      • 特に訪日促進の観点からは、グローバルネットワークチャンネル等を活用し、海外向けの観光専門番組等を放送。
      • 視覚に訴えるメディアと併せて、旺盛な旅行需要を持つ若年女性をターゲットにしたクレジットカード広報誌、女性雑誌などの媒体も複合的に活用し、イメージアップ戦略を展開。

    2. 観光統計の整備充実
      観光の経済的波及効果は極めて大きい。その数値を算出する上で重要な役割を果たし、観光産業の重要性を知らしめることにもつながると期待されるのが、観光統計である。従来は、地方自治体によって調査基準・手法が異なるため自治体間の比較が困難であったが、2000年3月、国連の統計委員会においてTSA(Tourism Satellite Account:観光に関する付随経済計算)が承認されたことから、観光の経済的効果を計算する国際的基準が成立した21。今後、国連の勧告のもと、TSA計算を通じて国際的に統一された基準によって国際比較が可能となり、観光の経済的波及効果などについて正確な数値を算出できることとなった。
      地域の活性化という観点からも、各都道府県は早急に観光統計の標準化・統一化に取り組み、観光産業の生産額、就業者数、来客数等の比較により、自らの地域の強みと弱みを把握することが重要である。

    3. 旅行業法における書面交付義務の緩和
      現在、ホテル予約、交通機関予約をインターネット上で行なおうとする場合、旅行業法(第12条の5)が定める書面交付義務のため、ネット上だけでは販売できないという問題が指摘されている。また、単なる手配仲介の場合でも、旅行業法上の免許、旅行業務取扱主任者などを置くことが義務づけられている。わが国が真の「IT立国」への道を目指し、情報化・電子化による観光振興を実現するためには、電子商取引を阻害するこうした書面主義などの規制を適宜見直していくべきである。

    (2)広域的かつ横断的な連携体制の構築

    1. 政府による観光政策の強化
      現在、わが国観光行政は運輸省運輸政策局観光部の所管のもとに行なわれているが、観光行政予算の中で主体となるべき同観光部が占める割合は極めて低い22。また、観光行政の推進に当たっては、観光の多様な意義に対応した多様なアプローチが求められるが、わが国では建設省(交流拠点の整備、街並み・環境整備等)、国土庁(地域戦略プランのとりまとめ)、文化庁(文化財の保護、活用、国立文化施設の設備等)、農水省(グリーンツーリズムの推進、田園空間整備等)をはじめとする多省庁が行政を分担することによって政策的な統一性、一貫性を欠くなど、縦割り行政の弊害がしばしば指摘されている。
      そこで、2001年1月の国土交通省の発足に当たっては、総合的かつ一体的な観光政策の推進が困難となっている現状を是正し、省庁横断的な観光行政の展開を可能とすべく、同省総合政策局観光部の調整機能を強化するとともに、観光先進国の実例に鑑み、観光行政を支援するため、首相直属の観光特別補佐官のポストを創設することも検討すべきである。

    2. 広域観光連携の必要性
      各地域において、県境を越えた広域的な取組みが徐々に見られつつあるものの、自治体によっては、自らの県の観光資源やルートのみを示し、近隣の県を白紙にしたイラストマップ等も見られる。このように、各地方自治体がバラバラに観光に取り組むため、文化などの面である程度一体感を有するにもかかわらず、地域として統一的な観光イメージが構築できていないことがしばしば指摘されている23。県境を超えた地域全体を周遊しようとする利用者の視点が乏しいため、域外からの来訪者に対して極めて不親切かつ周遊しにくい観光コース等が組まれていることなどは典型的な例である。
      そこで、既存の行政区域にとらわれることなく、より広域的なネットワークの構築に取り組むことによって、有機的に地域の観光資源を結びつけ、地域全体の総合的な魅力を高めることが重要である。自らの県以外は我関せずという姿勢を改め、地域全体また日本全体の観光振興を図ることによって、ひいては自らの地域も潤うようになるということを認識しなければならない。また、広域的な観光振興のために、関係自治体が一定額を拠出し、プールするなどの自主的取組みも一考に価する。

    3. 観光振興における産学官連携体制の構築
      今後、わが国が観光を積極的に振興していく上からは、産業界、大学・研究機関、行政等、各々が果たすべき役割について、有機的な連携を図ることが必要不可欠である。
      しかしながら、わが国では観光の文化的価値等を説く教育は著しく遅れているのが現状である。また、産業界と大学との観光教育などに関する交流が乏しいため、旅行業者やまちづくり関係者等が大学で講師として教鞭を取るケースなども依然として少ない。大学等については本来、将来のわが国観光振興に資する人材を育成する機関として、観光の意義および重要性の周知等に先導的な役割を果たさなければならない。また、まちづくりを通じた観光を体系的かつ理論的に研究・教育する大学や専門機関を整備し、観光マーケティングやマネジメントなど、観光を振興するための本質や理念を理解した人材24を一人でも多く育成すべく、観光文化教育を充実させることが課題となっている。
      他方、地域の観光資源を知悉した観光案内ボランティアの積極的な活用等に関して、産業界と行政との間の協力関係はいまだ不十分である。こうしたことから、産業界ならびに行政としては、まちづくりNPO等の参画、連携をより一層促し、国、自治体や観光関連団体との明確な役割分担のもと連携を強化していくことが求められる。そもそも観光まちづくりとは公共施設をつくることではなく、民間の発想を取り入れながら、いかに訪れる人、そこに住む人にとって魅力的なまちを創造するか、ということに他ならない。産業界や研究機関などが観光分野において有機的に連携し、観光のノウハウ伝達など、相互交流を緊密化することが今後益々重要となろう。

    (3)休暇を取得しやすい社会環境の整備に向けて

    他の欧米先進諸国に比べて、わが国では長期のまとまった休暇を取ることは容易ではない。しかしながら、自らを見つめ直すとともに、家族の絆を強化する機会を提供する観光の素晴らしさを国民が広範に共有できるように、休暇取得が困難な社会的な状況を改善していく必要がある。

    1. 「ハッピーマンデー」の拡充
      2000年から導入されたハッピーマンデー制度によって、初の3連休となった2000年1月8日〜10日および2月11日〜13日の各期間、旅客輸送等は軒並み大きな増加を示した25。このことからも、連休と旅行需要とが密接な相関関係にあることが分かる。
      国民が当然の権利として旅行できるよう、観光の効用を享受できる環境を整備することは国の役割である。今後、「海の日」と「敬老の日」をはじめ現在14日ある祝日のうち多くを連休化できるように、国が連休化の拡大を促進していくことが望ましい。さらに、家族旅行を促進する観点からは、現在学校教育において休日として固定されている第2・第4土曜日を、ハッピーマンデーと合わせて柔軟に移動できるようにすることが求められる。

    2. 長期休暇取得制度の確立に向けて
      国連の専門機関として、一般労働者の地位向上のための条約・勧告の採択など様々な活動を行なっている国際労働機関(ILO)では、ILO条約第132号(年次有給休暇に関する条約)第8条において、「年次有給休暇の分割された部分の一は、少なくとも中断されない二労働週から成るものとする。」と定めている。また、バカンス大国と言われるフランスとドイツでは、企業に対し長期休暇の付与を義務付けており、フランスでは有給休暇法で年に30日、ドイツでも連邦休暇法によって24日の有給休暇が保障されている。一方、労働省の調査によると、日本の有給休暇の付与日数は平均で17.5日であるが、実際の取得日数は9.1日で取得率は51.8%に過ぎない26
      21世紀に向けて、勤労一辺倒のライフスタイルから脱却し、休暇を取得しやすい社会環境の整備に向けて、今後の法制度や企業における休暇付与のあり方について検討することが必要である。
      既に一部の企業においては、長期休暇取得の重要性が認識され、制度的な確立が見られつつある。企業としても、従業員が生き生きと働き、創造力を発揮する環境を創出するという意識に立って、有給休暇を積極的に取得させるとともに、例えば2週間以上の長期休暇を取得できるように企業内の環境整備に努めていく必要がある。


結び

われわれは戦後一貫して、欧米先進国に追いつき追い越せという旗印のもと、国の発展と生活の向上に向けて、懸命に働き続けてきた。こうした日本人の勤労観は、今後ともわが国経済の安定的発展を維持する上で重要な要素であることに変わりはない。
しかし同時に、物質的な豊かさを享受できるようになった今日、従来の経済効率至上主義から脱却し、職場を離れて家族や友人とともに、各地の自然や風土、文化に触れ、心のゆとりや精神的な豊かさを取り戻すことも重要である。
この意味で、観光は、見知らぬ自然や文化に触れ、今まで会ったことのない人々と交流したいという人間の根源的な欲求を満たすことにより、人生の喜びや幸せをもたらす活動であると言える。加えて、観光はわれわれが拠って立つ国土、歴史、文化、暮らしなどを見つめ直し、真に豊かで創造力に溢れた国づくりを考える機会を提供する。「顔の見えない日本」が国際社会における信頼と理解を勝ち得るためにも、まず自らを問い直し、自らを理解することが肝要である。
政府、地方自治体、経済界のみならず国民の一人一人が、こうした観光の意義と重要性を見直し、広範に共有することが求められている。「観光」という、ともすれば軽視されてきた切り口から、わが国の地域振興を捉え直し、わが国が真に豊かで多様な地域社会を涵養し、地域間・国際間の触れ合いにおいて「新しい国づくり」に向けた観光が各地で実践されることを期待する。経団連としても、本提言の実現に向け、取組みを強化していきたい。

以  上

  1. 運輸省「景気低迷下においてわが国観光産業が与えている影響とその対応に関する緊急調査」(1994年3月)より。
  2. 須田寛『観光の新分野 産業観光』交通新聞社、1999年、2頁。
  3. 観光政策審議会答申「国民生活における観光の本質とその将来像」1969年。
  4. 観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」1995年。
  5. 総務庁統計局「国勢調査報告」より。
  6. 総理府『平成12年版観光白書』335頁。
  7. 地方分権一括法が本年4月より施行され、各自治体が独自色を持った政策づくりを進めることが容易となったことは評価できる。とりわけ、観光まちづくりを進めるに当たって、看板等、屋外広告物の規制や有害鳥獣の捕獲許可等が各県の判断で市町村の仕事になるなど、地域の実状や環境に配慮した中長期的な観光施策が可能となった。
  8. 『読売新聞』2000年4月9日付朝刊。
  9. イタリアでは、土地収用法(1865年制定)において、歴史的価値の高い財は公共利益の観点から保護すべく、国家による規制、収用の対象となっている。さらに、こうした景観美保全の精神は共和国憲法(1948年制定)第9条にも盛り込まれており、イタリアの国土に存在する文化・歴史・自然・景観・環境を永遠の主権者国民の共有財産とし、国家はその保護を責務とすると規定している。宗田好史『にぎわいを呼ぶ イタリアのまちづくり -歴史的景観の再生と商業政策-』学芸出版社、2000年、93-94頁ほか。
  10. 経団連国土・住宅政策委員会地方振興部会「九州懇談会」(1999年12月8日〜9日)では、視察先の一地域として由布院を訪問し、まちづくりのリーダーとして環境保全に取り組む中谷健太郎氏(亀の井別荘社長)、溝口薫平氏(由布院玉の湯代表取締役)ほかと意見交換を行なった。
  11. 経団連国土・住宅政策委員会地方振興部会「九州懇談会」(12月8日〜9日開催)における安心院グリーンツーリズム研究会との意見交換会より。
  12. 具体的には、旅館業法(第3条「許可制」、第4条「衛生基準」)、消防法(第7条「許可制」、第8条「防火管理義務」)、建築基準法(第6条「建築物の建築等に関する申請及び確認」、第7条「建築物に関する完了検査」をはじめ諸規制)、酒税法(第7条「酒類の製造免許」)など。
  13. 既にコスタリカ政府は、CST(Certification for Sustainable Tourism Programme)に基づき、環境に配慮した運営を行なっているホテルおよびリゾートに対して賞(Green Leaves Prize)を与えている。世界観光機関(WTO)においては、国連のCSD-7(Committee on Sustainable Development)の決定に基づき設置された「持続可能な観光に関するWGT(Working Group on Tourism)」のもと、2002年のエコツーリズム年のための準備と併せて、持続可能な観光開発とエコツーリズムの概念の明確化などについて中心的な役割を担っているが、同WGTではコスタリカ政府のCSTを有効なものと認定し、今後、他国への展開を検討している。“WTO News 2000 Jan-Feb-Mar”より。
  14. 2000年1月26日、フランス政府観光局のカトリーヌ・オーデン局長の経団連における講演より。同局長は、「外国人向けには満室だが、その5分後、日本人の同僚や友人は予約できる」という事態に何度も遭遇し、他の外国人も同様のケースを数多く経験していると言う。
  15. 98年度の日本の航空会社3社の公的負担額は約3,500億円で、総営業費用の14.3%を占める(世界平均は6.5%)。(財)関西空港調査会編『エアポートハンドブック』2000年、532-535頁。
  16. 『朝日新聞』2000年1月5日付朝刊。国内外の航空会社計66社を対象とし、85%にあたる56社から回答を得た。なお、「世界で参考にすべき空港」については、本格的な24時間空港で施設も充実しているシンガポールのチャンギ空港がトップ(56社中12社が挙げた)。逆に「参考にすべきでない空港」では、7社が成田、5社が関空を挙げた。
  17. 日本政策投資銀行『RPレビュー』2000 No.1、vol.1、2000年3月、46-49頁。
  18. この産業観光に関連する他国の事例としては、ハノーバー万博を契機にテクニカル・ビジットのプロモーションを積極的に展開しているドイツ西部のノルトライン・ヴェストファーレン州などがある。過去30年間で、石炭や鉄鋼を中心とした伝統的産業地帯から最先端の産業地帯へと変身を遂げた同州では、レジャー産業、環境技術、バイオテクノロジーなどが今後の州経済をリードすると位置付け、様々な施設見学を中心とした新しい旅を提案している。『サイバー観光業界誌週刊エアコム』99年12月3日号より。http://www.jmd.co.jp/Weekair99/weekly1203.html
  19. 国際観光振興会資料、1998年。
  20. 外客の訪問地として訪問率が10%を超える都市・場所は、1位東京(62.6%)、2位大阪(20.8%)、3位京都(14.2%)、4位名古屋(10.9%)、5位東京ディズニーランド(10.3%)であり、その他の地方は軒並み低位となっている。国際観光振興会「訪日外客訪問地調査」97年度。
  21. “WTO News 2000 Jan-Feb-Mar”より。
  22. 平成10年度の省庁別観光関連予算(観光に資する社会基盤整備を含む)についてみると、建設省が約4兆3,900億円を計上(省庁別構成比68%)している一方、運輸省は約8,000億円(同12%)に過ぎない。財団法人日本交通公社『海外およびわが国における観光行政の研究』1999年、6頁。
  23. 例えば、九州および東北地方において広域連携の必要性が認識されている。経団連国土・住宅政策委員会地方振興部会「九州懇談会」(1999年12月8日〜9日)、同「東北懇談会」(2000年5月11日〜12日)における意見交換会より。
  24. こうした観光マーケティングの考え方を取り入れ、観光による収益を上げている一例として、山形県山寺の風雅の里における観光まちづくりが挙げられる。経団連国土・住宅政策委員会地方振興部会「東北懇談会」(2000年5月11日〜12日)より。
  25. 「ハッピーマンデーと3連休化による旅行需要の喚起について」運輸省運輸政策局情報管理部調査課、『トランスポート』2000年4月号。
  26. 『朝日新聞』2000年8月9日付朝刊より。

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