[経団連] [意見書]

証券市場活性化対策について

2001年1月23日
経団連理事会資料

現下の持合株式解消等を背景とした株価低迷は、企業のバランスシート調整を遅滞させるばかりでなく、金融システムにも深刻な影響を及ぼす。
株価の回復は、基本的に、企業努力による業績回復と、財政をはじめとする構造改革の推進を通じた日本経済への内外の信認回復により、実現される。同時に、証券市場の活性化策として経済界が予ねてから提案してきた施策を実施していくことが望まれる。株式を、財務戦略・組織再編・企業年金充実等の観点から企業にとってより使い勝手の良いものとし、また、1,300兆円を超える個人金融資産の重要な運用先とすることは、単に株価市況に好影響を及ぼすだけでなく、日本経済の自律的回復の鍵ともなる。
なお、自己株式の取得・保有の自由化は、かねて規制緩和の一環として要望してきたものであり、会社法の国際的整合性の確保の点からも実現が求められる。
そのような観点から、下記の施策につき、可能な限り早急に実現していく必要がある。

  1. 自己株式取得・保有の原則自由化
    1. 自己株式取得の原則自由化
    2. 自己株式を、機動的な組織再編、敵対的買収に対する防衛手段、企業年金の拠出・運用手段の多様化等への活用や株主への利益還元のため、商法210条(取得を認める事由の限定列挙)を撤廃して、自己株式の取得を原則自由とし、取締役会決議による機動的な自己株式取得を認める。

    3. 自己株式保有の容認(金庫株)
    4. ストック・オプション以外の取得した自己株式は、相当の時期に処分する等としている商法211条を撤廃し、自己株式の保有を認める。

    5. 自己株式の活用
    6. 保有する自己株式は、自由に処分できることとする。
      これにより、弾力的な活用が可能となり、例えば、確定給付型企業年金への自己株式拠出に関する制度上の障害がなくなる。

    7. 子会社による親会社株式保有
    8. 子会社が被買収、合併、株式交換、株式移転等で取得することとなった親会社株式についても、現状では自己株式と同様の考え方から相当の時期に処分することが義務付けられている。これらについては、期限を限定せずに保有し、取締役会決議で自由に処分できるようにすべきである。

    9. セーフ・ハーバー・ルールの整備
    10. 企業による円滑な自己株式の取得や再放出のため、相場操縦の規制ルールを明確化し、ディスクロージャーを徹底するとともに、セーフ・ハーバー・ルールを確立する。

  2. 個人投資家層の拡大
    1. 配当に係る二重課税の排除
    2. 個人については、二重課税排除の徹底の観点から、インピュテーション方式(法人段階における法人税を所得税の前払いとみなして計算する方式)の導入を含めた具体的検討を進める。
      併せて、法人についても、持株比率25%未満の会社からの受取配当金を含め全額を益金不算入とする。

    3. 配当に係る所得税の軽減
    4. 個人が受取る配当について利子と同様に全て20%の源泉分離課税選択を認める。

    5. 有価証券譲渡損失の翌年以降への繰越し、他所得との通算
    6. 有価証券の譲渡による損失の当該年度の譲渡益からの控除に加え、翌年以降への繰越しを認める。
      有価証券譲渡損について、給与所得、事業所得等の他の所得からの控除を認める措置を検討する。

    7. 確定拠出年金法案の早期成立
    8. 継続審議中の確定拠出年金法案を早期に成立させる。
      また、専ら自己株式を運用対象とする場合について、米国のESOPと同様の税制措置を検討する。

    9. インサイダー取引規制の明確化
    10. 企業の役員や従業員等による株式取得を促進するために、インサイダー取引規制の内容を明確化する。

    11. 証券取引等監視委員会の機能強化
    12. 証券取引等監視委員会の権限と人員を強化すべきである。

以 上

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