[経団連] [意見書] [ 目次 ]
第4回経団連環境自主行動計画フォローアップ結果について
― 温暖化対策編 ―


(参 考)

温暖化問題についての基本的な考え方


1.産業界の温暖化対策について

(1) 温暖化対策は自主的取り組みを中心とすべき

 経団連環境自主行動計画には現在48業種が参加し、温暖化問題に積極的に取り組んでいる。このうち、産業・エネルギー転換部門の36業種が「2010年度にCO2排出量を1990年度レベル以下に抑制するよう努力する」という統一目標を設置している。2000年度のCO2排出量は景気拡大が大きく影響し1.2%増加したが、CO2排出原単位やエネルギー原単位の向上あるいは炭素含有量の少ないエネルギーへのシフトの面で着実に成果をあげている。したがって、産業界の温暖化対策は、今後とも自主的取り組みを中心とすべきである。

(2) 透明性を確保するための仕組み

 経団連では毎年、自主行動計画の進捗状況を業種毎に詳細にフォローアップし、インターネット等を通じてその結果を広く公表している。また、各業種の自主行動計画の進捗状況は、毎年関係審議会の場でレビューされており、その結果は地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議にも報告されている。
 今後も、一層の信頼性を確保しつつ中長期に自主行動計画の枠組みの中で産業界の取り組みを続けるために、民間による第三者認証を視野に入れたスキームとして、自主行動計画参加企業・業界が自主目標、排出実績等を登録する国内登録機関の設置を検討している。

(3) 技術開発による貢献

 温暖化対策は長期的には技術開発が鍵となることから、産業界としては技術開発によって引き続き貢献していく考えである。しかしながら、石油危機以降、すでに20%以上の省エネを達成し、諸外国に比して非常に高い省エネを達成したわが国の産業界が、一層のCO2削減を実現するためには、原子力をはじめとした既存の技術を総動員するとともに、革新的な技術開発が不可欠である。地球温暖化防止技術を国家の技術開発戦略の柱の一つとして位置付け、民間の技術開発を促すよう政府が中長期的な支援を行なっていくことが求められる。

(4) 原子力利用の推進

 CO2を排出しない原子力利用の推進が、温暖化対策のうえで最重要の課題となる。引き続き産業界が安全性の確保に最大限の努力を傾注するとともに、国民の理解を得る上で、国・地方自治体がその役割を果たし、原子力利用の推進を図るべきである。

2.民生・運輸部門の温暖化対策について

(1) 民生・運輸部門の対策の遅れを産業部門にしわ寄せすべきでない

 環境省発表の1999年度のCO2排出量の部門別内訳によると、エネルギー転換部門と産業部門のCO2排出量は1990年度以降ほぼ横ばいであるにも関わらず、民生・運輸部門のCO2排出量は大幅に増加し、1999年度実績で見ると日本全体の46.4%を占めるに至っている。これらの部門における対策の遅れを、自主行動計画に参画し自ら温暖化対策に取り組んでいる産業にしわ寄せすることがあってはならない。

(2) 民生・運輸部門における実効ある対策が必要

 政府は民生、運輸の対策の多くが国民生活に直結する性格のものであることを認識し、我が国の目標達成の厳しさと国民が果たす役割の重要性について教育・啓蒙に努めるとともに、交通渋滞解消のためのインフラ整備など、CO2削減に効果のある対策を策定すべきである。

3.国内制度について

(1) 計画の協定化・義務化は自主的取り組みのメリットを損なう

 英国等では、温暖化防止への取り組みにつき、業界または企業が政府との間で協定を結ぶ方法が導入されており、わが国にもこれを導入すべきとの議論がある。しかし、わが国の場合の協定は、従来の例を見ても、柔軟性のない、規制的・拘束的な意味合いの強い、片務的なものとなるおそれが大きい。温暖化対策をこのように協定化すれば、従来の自主的取り組みのメリットである柔軟性が損なわれるおそれがあり、安易に導入すべきではない。
 また、行動計画の策定を義務付けるべきとの議論もあるが、産業界の温室効果ガス排出抑制の取り組みは、自らの業を最もよく知る事業者自身が、自主的に実行計画を策定し、実施するのが最も効果的である。これを義務化することは、自主的取り組みのメリットを著しく損なうこととなり、望ましくない。

(2) 強制的な排出枠の割当を前提とした国内排出量取引は不適切

 強制的な排出枠の割当を前提とした国内排出量取引制度の構築は、きわめて経済統制的であり市場経済になじまないこと、割当における公平性の確保が困難なことなどから、不適切である。また、特にわが国の場合、企業の省エネ目標が相当高いレベルにあり、国内市場に放出するほど排出枠に余裕は生じないことが予想される。

(3) 環境税の導入には慎重な検討が必要

 CO2排出抑制の手段として、環境税(炭素税、炭素・エネルギー税を含む)を導入すべきとの考え方があるが、環境税の導入には、以下の通り、種々問題があり、慎重に検討すべきである。

  1. 石油危機前後のエネルギー価格の動向とガソリン、電力の需要推移などを見てもエネルギー需要の価格弾力性は低いことから、環境税のCO2排出抑制効果は疑わしい。
  2. 新たに税を課すことは、産業の国際競争力の低下を招くだけでなく、省エネのための技術開発や設備投資など産業界の自主的な取り組みをも阻害することとなる。また、環境コストの低い途上国への生産移転を促進し、かえって地球規模でのCO2増加を招くという矛盾も生じる。
  3. 環境税の導入は、エネルギーおよび自動車関連諸税を含めた既存の歳出入構造の抜本的な見直しの中で議論すべきものである。

4.京都メカニズムについて

 京都メカニズムは有効な対策の選択肢の一つであり、国際ルールの具体化を早期に実現する必要がある。京都メカニズムが効果を上げるには民間の自主的な参加が不可欠であり、民間が参加しやすい仕組みを構築することが求められる。

以 上

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