[経団連] [意見書]

今後の地球温暖化対策に冷静な判断を望む

2001年11月19日
(社)経済団体連合会

 COP7で京都議定書の運用ルール等についての合意が成立したことを受け、政府は、地球温暖化対策推進本部の方針として、2002年締結に向けた国内制度の整備・構築のための準備を本格化することを表明している。

 経団連は、かねてより、地球温暖化問題は、世界各国が一致協力してはじめて実効性があり、米国を含む国々が参加できる国際的な枠組みを構築するよう求めてきた。下記は、今般の合意を受けて、今後の温暖化対策のあり方に関し産業界の見解を改めて記したものである。

1.国際的枠組みへの米国などの参加は不可欠である。

 世界のCO2排出量の4分の1を占める米国が参加せず、2010年にはCO2の排出量が先進国に匹敵するといわれる中国、インドなど途上国の将来の参加も約束されない議定書では、実効性があがらない。
 また、今回の合意では、将来の法的拘束力を伴う遵守制度の受け入れをはじめ、京都議定書を締結した先進国のみが義務を負うことになり、著しく国益を損なう。

2.産業界の自主的取り組みを基本とすべきである。

 産業界は、1997年に策定した経団連環境自主行動計画に基づき対策を推進し、過去4回のフォローアップを通じ、90年比でCO2排出量をほぼ横ばいに抑えるなど成果を挙げている。産業界としては、自主行動計画の着実な実施、ならびにその透明性・信頼性の向上に引き続き努めていく考えであり、産業界の対策については、自主的取り組みを基本とすべきである。

3.地球温暖化対策は経済や雇用へ悪影響を及ぼすものであってはならない。

 雇用対策が内閣の最重要課題となっている中、環境税の導入や規制的措置などさらなる対策を産業界に求めれば、環境コストの上昇により国際競争力は失われ、空洞化に拍車がかかり、国内の雇用情勢はさらに悪化する。追加的な温暖化対策は、経済や雇用へ悪影響を及ぼすものであってはならない。
 経済の活力を削ぐ政策の導入は、省エネのための技術開発や設備投資など産業界の自主的な取り組みをも阻害するとともに、CO2の削減義務を課せられない途上国の生産が増大し、かえって地球規模でのCO2増加を招くという矛盾も生じかねない。

4.民生・運輸部門について政府の実効ある温暖化対策が期待される。

 民生・運輸部門については、産業界は、自動車や家電製品のトップランナー基準の達成などに成果をあげており、今後とも省エネ型製品の開発に努力する。しかしながら、CO2排出総量の伸びが著しい民生・運輸両部門の対策の多くが国民生活に直結するものであることから、政府は、我が国の目標達成の厳しさと国民が果たす役割の重要性について理解を求めるとともに、交通渋滞解消のためのインフラ整備など、CO2削減に効果のある対策に取り組むべきである。

5.原子力利用を推進すべきである。

 CO2を排出しない原子力利用の推進は、最も有効な温暖化対策である。産業界が安全性の確保に最大限努力することを前提に、国・地方自治体は、国策として、原子力利用を積極的に推進すべきである。

以 上

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