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司法制度改革「法曹養成制度」に関するコメント

2002年6月7日
(社)日本経済団体連合会
  経済法規委員会
   経済法規専門部会

経済界としては、司法制度改革を通じて「身近で公正で迅速な司法」が実現されることを期待している。そのためには、法曹人口の大幅な拡大が不可欠であり、これに歯止めをかけるようなことがあってはならない。特に、知的財産といった日本経済の将来を担う分野でも、技術と法律の双方に専門性をもつ法曹の育成が切望されている。これからは、専門性と国際性を備えた法曹を多数輩出することが必要である。
また、優秀な法曹の育成には教育プロセスも重要であるが、最終的には競争原理の導入により法曹の質の向上と維持を図ることができると考える。安価で良質な司法サービスをユーザーに提供するために、「競争原理」の視点を忘れてはならない。
以上の観点から、下記の通り法曹養成に関する意見を申し述べる。

1.法科大学院について

(1) 法科大学院の定員

卒業者の7割程度が司法試験に合格するということになれば、法科大学院の入試が逆に狭き門となることはないか。これによって法曹人口の増員幅を制限することのないようにして欲しい。また、法科大学院を併設する大学の卒業生と他大学の卒業生を同等に扱う入試制度とすべきであるとともに、法曹の多様性をはかる点から、法学部以外の学生の入学を促進するような設計をして欲しい。

(2) 法曹資格取得までの期間の短縮

現行の法曹養成プロセスと比べると、法科大学院の期間と司法試験受験年(合計3〜4年間)分だけ、法曹資格を取得するまでの年限が長くなっている。これから検討される司法修習も含めてプロセス相互間のやりくりをして、できるだけ修学期間の短縮を図るべきである。

(3) 幅広いカリキュラム

法曹人口が拡大し、将来的には、卒業生が多数企業に入ることも予想される。企業は、思考の柔軟性、創造性、事実調査能力、交渉力、国際感覚、健全な常識・倫理感に裏付けられたバランス感覚などを備えた人材を必要としており、民商事法の基礎の修得とともに、倒産法、知的財産法、独占禁止法、金融関連法、税法、契約実務、国際取引等の知見を有すれば、即戦力に近い能力を期待できる。民商事法の基礎と多様な選択科目を取り入れた幅広いカリキュラムが準備されることが期待される。特に、知的財産技術と法律の双方の分かる人材や国際感覚の備わった人材の育成に力をいれて欲しい。

(4) 実務教員の派遣体制の整備

実務教員の派遣について、日弁連や各裁判所の協力を十分得られるようにする必要がある。

2.第三者評価のための情報公開

経済界としては、法科大学院の競争を促すことによって、教育内容の多様化を実現する必要があると考える。そのためには、教育の質の維持・向上を図るという視点で評価する複数の自主的機関の立上げを容認・督励することが必要であり、そのためにも各法科大学院の情報公開が必要である。

3.司法試験について

(1) 試験時期

司法試験の時期が現行通りとすると、法科大学院卒業後、資格取得までにさらに半年以上を要することとなるため、時期を見直すべきである。

(2) 幅広い選択科目

経済界では、知的財産権、独占禁止法、金融関連法、税法等の専門知識のある法律家を必要としている。このような法曹の多様性確保のニーズに応えるためにも、選択科目を幅広くすることが求められる。

(3) 資格試験であることの明確化

司法試験の性格を資格試験であることを明確にし、一定のレベル以上のものは合格させ、その後の研鑚や実力により競争を通じて淘汰されるという形にすることが望ましい。

(4) 司法試験受験資格者について

様々な事情で法科大学院に行けない者についても司法試験を受けられる道は必ず開いておくようにして欲しい。

以 上

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