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国際投資ルールの構築と国内投資環境の整備を求める

【別添資料2】二国間モデル投資協定


以下の協定は、わが国経済界が、二国間投資協定に原則として盛り込まれることを求める規定を列挙したものであり、網羅的なものではない。また実際の交渉に当たっては、締結相手国に応じた柔軟な対応をする必要がある。なお、当モデル協定は、米国政府モデルBIT、日本シンガポール経済連携協定、日韓投資協定等を参考に作成した。

〔前文〕

締約国は、両国間の経済関係を強化するために投資を更に促進することを希望し、両国の投資拡大のための良好な条件を更に作り出すことを目的として、次の通り協定する。

〔定義〕

投資とは、投資家(自然人及び法人その他の団体)により直接または間接的に所有または支配されているあらゆる資産を含む。具体的には、以下のものが含まれる。

  1. 企業(法人その他の団体)
  2. 株式、出資その他の形態の企業の持分
  3. 債権、社債、貸付金その他の形態の貸付債権
  4. 契約に基づく権利
  5. 知的財産権
  6. 探査・採掘権
  7. 上記以外の有形及び無形資産、動産及び不動産、抵当権等の財産権
  8. 投資財産から生ずる価値

〔範囲〕

原則として、あらゆる分野の投資を対象とする。安全保障に係る分野は例外とすることができる。締約国が合意した場合には、特定の分野を留保することができる。留保した分野に関するリストを作成する。留保した分野を漸進的に削減・撤廃するよう努める。

〔透明性〕

  1. 締約国は、法令、規制、行政手続き及び司法判決等を含む投資に関連する又は影響を与える全ての国内措置に関して、速やかに公表し、公に利用可能とする。
  2. 締約国は、投資に関連する行政許認可手続きに関して、不必要な障害とならないことを確保するため、客観的なかつ透明性を有する基準に基づき、国内法令に沿った申請には合理的な期間内に決定を通知する等、透明性の確保に努める。
  3. 締約国は、投資に関連する国内措置に関して、投資家の要請に応じて、苦情を申し立てることを可能とする、立法及び行政機関から独立して、無差別、透明、時宜を得たかつ効果的な審査を行なう訴訟手続きを国内に設定する。
  4. 締約国は、投資に関連する法令、規制及び行政手続き等の国内措置の導入又は変更を、速やかに、少なくとも毎年、WTOに通報する。
  5. 締約国は、投資に関連する国内措置に関して、他の締約国または投資家から具体的な情報提供の要請があった場合に情報を提供する照会所を設置する。
  6. 締約国は、投資に関連する法令及び規制等の国内措置を制定する前に出版物に公告し、他の締約国の投資家が書面による意見を提出した場合、こうした要請に応じて討議し、意見及び討議の結果を考慮する。

〔投資保護〕

締約国は、他の締約国の投資家が行なう投資に対し、公正かつ衡平な待遇と十分かつ継続的な保護及び保障を与える。

〔収用・補償〕

締約国は、以下の条件を全て満たさない限り、投資を収用しない。

  1. 公共の利益を目的とする。
  2. 無差別原則に基づく。
  3. 正当な法の手続と国際法の原則に従う。
  4. 収用直前の投資の公正市場価格に等しい補償を、遅滞なく国際的に交換可能な貨幣で完全に支払う。

〔送金の自由〕

締約国は、投資家が、投資利潤を含む全ての送金を自由に遅滞なく国際的に交換可能な貨幣で行なえるよう保証する。また、締約国は、投資家が、いかなる通貨への換金も自由に行なえるように保証する。

〔最恵国待遇〕

締約国は、投資の許認可及び投資後の事業活動(投資財産の設立、取得、拡張、運営、経営、維持、使用、享有、清算、売却その他の処分)に関して、他の締約国の投資に対し、他の第三国よりも不利でない待遇を与える。
最恵国待遇は、国内裁判を受ける権利、税制に関しても適用される。

〔内国民待遇〕

締約国は、投資の許認可及び投資後の事業活動に関して、他の締約国の投資に対し、自国よりも不利でない待遇を与える。ただし、締約国が合意した場合には、特定の分野を例外とすることができる。
内国民待遇は、国内裁判を受ける権利、税制に関しても適用される。

〔パフォーマンス要求〕

締約国は、以下に掲げるパフォーマンス要求を課さない。

  1. 合弁要求(自国の現地企業との合弁企業の設置を要求)
  2. 国内販売規制(輸出または外国為替収入の量・価額に関連付けることによって、投資により生産された物品または提供されたサービスの販売を制限)
  3. 技術移転要求(技術、製造過程または財産的価値のある知識を自国領域内の自然人または法人に移転することを要求)
  4. 輸出要求(一定水準・割合の物品またはサービスの輸出を要求)
  5. 供給地指定要求(生産する物品または提供するサービスに関し、供給できる地域を特定する要求)
  6. 本社設置要求(特定地域または世界市場のための本社を自国内に置くことを要求)
  7. プロダクトマンデート要求(生産する物品または提供するサービスに関し、特定地域または世界市場に対する独占的な供給者の役割を果たすことを要求)
  8. 研究開発要求(自国地域内において一定レベルまたは価値の研究開発の達成を要求)
  9. 自国民雇用要求(自国民を一定水準雇用することを要求)
【以上に掲げたパフォーマンス要求は、わが国経済界にとって優先度が高い順に列挙したものでおり、1〜9の順に禁止規定が盛り込まれるよう交渉に当たることを望む。】
また、締約国がWTO非加盟国の場合には、WTOのTRIMs協定(ローカル・コンテント要求、輸出入均衡要求、為替規制、輸出入制限等の内国民待遇及び数量制限の一般的廃止に違反する要求)を遵守することを求める。

〔キーパーソネル〕

締約国は、他の締約国の投資に対して、キーパーソネルに関する国籍要件、居住要件及び数の制限を維持または導入しない。
締約国は、他の締約国の投資に必要な投資家及びキーパーソネルの自国への一時的入国及び滞在を認め、速やかに労働の許可を与える。
キーパーソネルには、経営者、管理職、専門職その他一般的なホワイトカラー等が含まれる。

〔紛争処理手続き〕

協定の解釈、適用その他協定に関する事項をめぐり、締約国間、またはいずれかの締約国の投資家ともう一方の締約国との間に紛争が生じた場合には、当時者間によって協議及び交渉を行なう。当事者間の協議及び交渉によって解決できない場合には、仲裁機関を設置し、裁定を行なう。


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