[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

2002年度日本経団連規制改革要望

−産業競争力の強化と経済の活性化にむけて−

2002年10月15日
(社)日本経済団体連合会

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1.産業競争力の強化と民間主導による経済活性化を

わが国が現在取組むべき最重要課題は、経済社会の構造改革を断行し、産業競争力の強化と民間主導による経済の活性化を図ることである。そのための政策手段の柱が規制改革である。多くの事業規制や煩雑な行政手続きをはじめ、受注配分などを含めた政府部門等による市場への関与・介入が、高コスト構造の要因となるとともに、民間の自由で効率的な事業展開の妨げとなっているからである。
今改めて、これらを徹底的に排除することにより産業の競争力を強化し、企業や個人の創意工夫の発揮による民間主導の経済活性化を図っていく必要がある。同時に、「民間で出来るものは民間に委ねる」との原則を徹底すべく、政府部門等による関与・介入の強い分野への競争原理の導入を一層推進するとともに、情報開示の徹底と競争条件を整備することにより、民間ビジネスの健全な拡大・発展を図っていくべきである。

2.規制改革の推進体制の充実・強化

(1) 総合規制改革会議への期待

規制改革は、総合規制改革会議などの推進体制の下で、規制改革推進3か年計画の策定、毎年度末の改定などにより着実に進展している。しかしながら、その進捗状況は、経済社会環境や市場ニーズの変化、技術開発の進展等、企業活動を取り巻く急速な環境変化に十分に対応しているとは言いがたい。とりわけデフレや空洞化の進展と失業率の上昇等、現下の厳しい環境の下においては、より「スピード感」ある規制改革への取り組みが求められている。
かかる環境変化に対応した「スピード感」ある改革を実現していくためには、当面は、去る7月23日に総合規制改革会議が公表した「中間とりまとめ ―経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革―」を早期に実現するとともに、新たな課題への積極的な取り組みを進めていく必要がある。そのためにも、政府における規制改革推進組織の中核であり、複雑で幅広い課題を検討する総合規制改革会議について、委員主導による検討体制を一層充実・強化するとともに、経済財政諮問会議等との連携強化を図り、政府をあげて規制改革に取組む体制を整備していかねばならない。

(2) 経済財政諮問会議における定期的な規制改革の集中討議

経済財政諮問会議では、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002 」(平成14年6月25日閣議決定)にも示されている通り、規制改革を通じた「民業拡大」を経済の活性化戦略の重要な柱と位置付けている。政府をあげた構造改革・規制改革への取り組みを促進する上で、総理を議長とする経済財政諮問会議が、その司令塔として果たすべき役割は極めて大きい。去る9月20日には、総合規制改革会議の「中間とりまとめ」等につき宮内議長より報告が行なわれ、規制改革の集中討議が行なわれたが、節目節目にかかる討議を開催するなど、引き続き、経済財政諮問会議と総合規制改革会議の連携を密にして、規制改革を強力に推進していく必要がある。その際には、経済財政諮問会議が、具体の課題を含めた規制改革の基本的方向を示すとともに、各省による規制改革への積極的対応を促していくべきである。

(3) 実りある構造改革特区制度の導入

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002 」や総合規制改革会議「中間とりまとめ」で指摘された「構造(規制)改革特区」制度の導入は、民間企業や地域の創意工夫に基づく経済活性化に極めて重要であり、また、規制改革の突破口となることが期待される。日本経団連では、すでに、特区に関する基本的考えとして、民間・自治体の発意に基づくこと、対象となる規制は可能な限り多くすること、総理のリーダーシップの下で一括処理すること等の基本的考えを明らかにした。
去る10月11日に構造改革特区推進本部で決定された「構造改革特区推進のためのプログラム」では、これらの基本的考えが反映されており、特に、総理による一括処理方式が採られたことを評価している。しかしながら、今回、特区において特例措置を講じるとされた規制の数が、民間・自治体からの提案に比して少数にとどまっており、今後とも、民間・自治体からの提案を検討し、真に規制改革に資する課題については、順次、特例措置に追加していく必要がある。その際には、引き続き、構造改革特区推進本部と総合規制改革会議、更には経済財政諮問会議が十分に連携し、新規の提案はもとより、今回「実施困難」とされた事項についても、民間・自治体からの提案を踏まえ、特区あるいは全国で実施すべく、再度積極的に検討すべきである。各自治体に対しても、特区制度の趣旨を充分に踏まえつつ民間と連携を図り、事業化につながる具体的提案を行なうよう要望したい。
なお、今回、民間・自治体からの提案に対し、「全国で実施」とされた事項については、総合規制改革会議において、その内容を具体的に検討し、「第二次答申」(2002年12月予定)や「規制改革推進3か年計画(再改定)」(2002年度末閣議決定予定)に盛り込む等により極力早期に実施すべきである。また、「現行規制で対応可能」とされた事項については、その内容を精査し再検討するとともに、実際に対応可能なものについては、その旨を周知徹底し、積極的活用を促すべきである。

3.産業競争力強化と経済活性化に向けて重点的に取組むべき課題

(1) ビジネス・ニーズに対応した規制改革課題の重点的検討

かかる体制の下で、重点的に取組むべき課題の一つは、ビジネスの現場からの実需に基づく規制改革である。現実に企業の大きな負担となっている諸手続きや新たなビジネス展開を妨げている規制を改革していくことが、高コスト構造を是正し、積極的なビジネス展開による経済活性化に直結するからである。
幸い、総合規制改革会議においては、石原大臣や宮内議長のリーダーシップにより、日本経団連が5月29日に関係先に建議した「経済活性化に向けた規制改革緊急要望」にも積極的に対応していただいている。また、9月以降の検討においても、重点事項として、事業活動の円滑化に資する規制改革の検討が掲げられており、経済界としてはこれらの取り組みに大いに期待している。その際には、IT関連分野をはじめ新事業等の創出とその円滑化に資する規制改革や、高コスト構造の是正をはじめとするビジネス・インフラの整備に資する規制改革につき積極的に取組まれたい。これらにより、より多くの経済界からの要望が、総合規制改革会議の「第二次答申」や「規制改革推進3か年計画(再改定)」に盛り込まれるよう要望したい。

(2) 官製市場の改革による民業の拡大

公的な主体が独占的に行なっている公共事業、公共サービス等の分野(いわゆる「官製市場」)については、「民間で出来るものは民間に委ねる」との原則を徹底するとともに、民間の創意工夫の発揮と競争を通じたコスト削減、質の向上を図るべく、民営化、PFI、株式会社等の民間参入を促進するとともに、異なる経営主体間の競争条件の格差是正を図り、民間ビジネスの健全な拡大と潜在需要の発掘による雇用創出を図るべきである。
同時に、財政支出の効率化、公共事業改革の観点から、官公需法の見直しやPFIの特性を踏まえた契約方式の導入など、公共事業の発注・契約方式の見直しも喫緊の課題である。
これら「官製市場」の改革にあたって、特に、総合規制改革会議の「中間とりまとめ」での指摘事項については、早急にその実現が図られるよう要望したい。

4.規制改革推進のための必要な基盤整備

(1) 自己責任原則の徹底と規制手法の見直し等

規制改革が遅れがちとなる背景には、(1)既得権者が存在する、(2)一部に不良事業者が存在する、(3)新技術等についての安全性等の確認を要する、などがある。こうした背景や自らの権益とも相俟って、規制当局がその見直しに慎重になる傾向がある。これらを克服するためには、個々の規制改革課題の検討とともに、(1)事業者を規模の大小に着目し保護や規制の対象とする制度から、意欲と能力のある事業者を育成していく制度に転換すること、(2)情報公開を進め、企業や個人の自主・自律・自己責任原則を徹底するとともに、規制の手法として所謂メリット規制を広く導入すること、(3)安全性等の確認については海外の現状や検査データ等の活用を積極的に進めるとともに、他法令との整合性を図ること等により対処していくことが考えられる。同時に、例えば、民主的に形成された住民合意に基づく都市計画の執行には私権の制限が伴うものであり、土地利用に係わる分野を中心に、かかる観点からの規制の改革も必要である。

(2) 競争条件の整備と競争監視機能の充実

より一層の規制改革を推進するとともに、これまでの改革の成果を活用するためには、競争条件の整備をはじめ競争政策の徹底が不可欠である。とりわけ、これまで公的主体がサービス供給の中心となっていた分野については、近年、株式会社の参入が認められつつあるが、公的助成や税制上の取り扱い等が必ずしも同一となっておらず、公正な競争が妨げられている例が見られる。これら競争条件の整備を図るとともに、市場の監視機能を強化すべく、公正取引委員会を、内閣府の機関とするなど、その機能強化を図るとともに、個別市場における監視機能の充実・強化も必要となる。

(3) 規制改革への国民の理解促進

規制改革を一層推進するためには、規制改革による経済効果や国民の利便性の向上、規制改革が遅延することによる問題点やその原因等に関する国民一般の理解促進が不可欠である。総合規制改革会議の「中間とりまとめ」における所管省等の意見の付記はこれに資するものであるが、規制改革白書等のより国民に判りやすい資料の作成や広報媒体の活用等、一層の国民理解の促進に資する取り組みが求められる。経済界としてもかかる取り組みに積極的に協力していきたい。
同時に、規制改革の検討過程の透明性を確保するため、内外からの規制改革要望に対する検討状況を2003年の年初を目途に中間的に公表するとともに、規制改革推進3か年計画(再改定)(2002年度末閣議決定予定)に盛り込まれなかった事項について、その根拠・必要性を公表する際には、極力詳細にその理由を明らかにすべきである。

5.政治のリーダーシップの発揮を

規制改革推進の阻害要因を除去し、政府をあげてより「スピード感」を持った規制改革への集中的・総合的な取り組みのために何より重要なのが、小泉総理をはじめとする政治の強いリーダーシップの発揮である。小泉内閣には、中央省庁等改革において内閣総理大臣の指導性と補佐体制の充実・強化を図るべく導入された制度・組織を充分に活用し、構造改革の要ともいうべき規制改革の断行に向け、政治の強力なリーダーシップを発揮することを期待している。同時に国・地方を通じた規制改革推進の観点から、地方自治体は真に分権の受け皿としての機能を果たすべく自らが積極的に行政改革・規制改革に取り組むとともに、国においても、地方自治体のかかる取組みを強く要請していくべきである。
経済界では、改めて自己責任原則を徹底し、企業倫理の確立と不祥事の再発防止を図りつつ、引き続き小泉内閣の「聖域なき構造改革」を強く支援するものである。

以 上

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