[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

雇用問題に関する政労使合意

平成14年12月4日

政労使は、平成14年11月26日の内閣総理大臣からの要請に基づき、雇用問題への対処について検討を行い、今般、別紙のとおり、政労使三者が協力しあって取り組むことを合意した。

政労使雇用対策会議
官房長官 福田 康夫、経済産業大臣 平沼 赳夫、厚生労働大臣 坂口 力
日本労働組合総連合会会長 笹森 清
(社)日本経済団体連合会長 奥田 碩

別紙

雇用情勢の悪化は我が国の社会の安定にとって深刻な問題であり、また、今後の経済の健全な発展、構造改革の推進の阻害要因ともなる。このため、雇用維持・確保は喫緊の課題であるとの共通の認識の下に、国の基本をなす勤労者が仕事に意欲を持ち、企業が活力を持って活動できる社会の構築に向けて、政労使が協力しあって取り組む。

政府は、この合意に基づき、補正予算及び平成15年度予算の編成並びに関連法律案の提出など早急に必要な施策を樹立し実施する。労使団体は、政府の施策に理解・協力するとともに、相互理解に立って経営の安定と雇用の維持・確保に一致協力して取り組む。また、円満な労使関係、適正な労務管理のための協議を尽くす。

今後、政労使においてさらに必要な協議を行い、一致協力して合意事項の拡大を目指し、経済発展と国民生活の安定・向上に寄与していく。

1 雇用の維持・確保

経営側は、雇用の維持・確保が社会的使命であることを改めて認識し、これまで以上に雇用の維持・確保に最大限の努力を行う。

一方、経営環境が厳しい中で企業の雇用維持・確保努力には困難があり、雇用に関するコストの軽減が重要である。

労働側においては、企業の雇用維持努力に対応し、ワークシェアリングを含めた就業形態の多様化、生産性の向上やコスト削減など経営基盤の強化に協力する。また、雇用コストを削減して雇用維持を図らなければならないような場合には労働条件の弾力化にも対応する。

なお、労使は、労働時間管理など、労務管理上生じうる個別的問題については協議を尽くして、問題解決に当たる。

また、政府は、上記の労使の取組に対応し、労働保険制度の効率化、重点化を行うとともに、企業による雇用維持・確保努力に対する支援措置を強化する。

2 就職促進

現下の厳しい雇用失業情勢の下にあって、意欲を持って求職活動を行う新規学校卒業者を含む求職者がその意欲を活かして仕事に就けるよう万全の支援を行うことは政府の責務である。

このため、再就職促進体制の整備、雇用就業機会の拡大は急務である。また、雇用保険制度財源の適正な活用が不可欠であり、これらが有機的に連携した就職促進体制を構築する。

(1) 再就職促進体制の整備

就職意欲の高い求職者に重点を置いた総合的、個別的就職促進体制を構築する。
このため、民間の人材も活用しつつ、就職支援要員を増員し、求人開拓、キャリア・コンサルティング、職業紹介等のサービスを一体的に提供するなど公共職業安定所の機能改革を図るとともに、民間職業紹介機関の活用を図る。
また、トライアル雇用やオーダーメイドの職業訓練を積極的に展開するほか、経営側が新卒者の採用や離職者の早期再就職のため講ずる措置に対する支援を強化する。

(2) 雇用創出

今後、高度なものづくり産業の育成、金融の再生、物流拠点整備などの産業基盤の発展につながる構造改革を推進し、あわせてサービス部門を主体とする雇用創出に積極的に取り組む。
また、創業・新事業進出を活性化し、持続的な雇用機会の創出を図るため、創業時の最低資本金の特例等を内容とする中小企業挑戦支援法の円滑な施行を図るとともに、創業・新事業進出への資金供給の円滑化、技術開発による創業・事業化支援、創業・事業再生に資する人材育成、学生等に対する起業家教育、起業支援・評価体制の整備などを強化する。

一方、構造改革にはある程度の時間がかかる分野もあることから、緊急的な雇用創出のための事業を展開する。

  1. 現在の緊急地域雇用創出特別交付金を増額するとともに、同事業における中小企業の活用のあり方についても検討する。
  2. また、不良債権処理の加速化による雇用失業情勢のさらなる深刻化に対応して、現在の緊急雇用創出特別基金を拡充し、離職者の就職・起業に対する支援や子会社、関連会社の設立等を含む雇用の場の拡大に努力する企業に対する支援措置を強化する。
  3. さらに、緊急対応型ワークシェアリングの実施に対する助成の改善・拡充を図るとともに、多様就業型ワークシェアリングに関する政労使の協議を加速する。

(3) 雇用保険制度改革

雇用保険制度については、厳しい雇用失業情勢及び保険財政にかんがみ、将来にわたりセーフティネットとしての安定的運営を確保するため、早期再就職を促進する給付水準の設定、通常労働者とパートタイム労働者の給付内容の一本化、倒産・解雇等による離職者等への給付の重点化、雇用保険三事業の重点化、合理化など抜本的な改革を進める。
なお、制度の安定的運営を確保するために必要な保険料率の水準については、景気の自動安定化装置としての機能も考慮しつつ検討する。また、労災保険料率も併せて検討する。

3 労働市場改革

現下の雇用失業情勢に対応するとともに将来の雇用機会の拡大、経済の発展を考え、就業形態の多様化を進めるため、必要な規制改革を推進し、労働法制の見直しを行う。

また、中高年齢者の再就職が容易になるように現行の慣行の見直しを検討する。


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