[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「電子政府構築計画(案)」に関する意見

2003年7月7日
(社)日本経済団体連合会
   情報通信委員会
    情報化部会

行政の「業務改革なき電子化」は不要な業務や手続を温存することにつながり、かえって弊害が大きいと考えられることから、日本経団連としては、電子政府の実現にあたって業務改革を徹底するよう、繰返し要望してきた。この点、今般、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議において、「利用者本位の行政サービスの提供」と「予算効率の高い簡素な政府の実現」を目標に、「国民の利便性・サービスの向上」、「IT化に対応した業務改革」などを施策の基本方針に据えた「電子政府構築計画(案)」 が取りまとめられたことを歓迎する。
この上は、下記の意見を参酌し、府省のみならず国・地方が一体となった真に「一つ」の電子政府を実現することによって質の高い効率的な行政サービスを提供するよう、取り組まれたい〔カッコ内の頁は「計画案」のそれを示す〕。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pc/comment_c.html

  1. 今年度中にほぼ全ての行政手続がオンライン化される中で業務改革を急ぐ必要があると考えられることから、(1) 申請・届出等手続の簡素化・合理化の徹底(4〜6頁)、(2) 業務の最適化やシステムの統合化等の効果が大きいと見込まれる業務に関する「業務・システム最適化計画」の策定(14〜15頁)をはじめ各種施策の実施時期をできる限り前倒しされたい。

  2. オンライン利用の向上方策(6〜7頁)として、「業務・システムの効率化により行政経費の低減を図り、オンライン利用について実費を適切に反映した手数料を設定する」にとどまらず、オンラインを利用する場合に手数料、税額等を割引くなどのインセンティブ措置を導入すべきである。

  3. 日本経団連として予ねて主張してきた輸出入・港湾手続のワンストップ化(8〜9頁)については、シングルウィンドウシステムが今月より供用開始されることになっているが、これを業務改革のベストプラクティスモデルとすべく、複数の官庁に提出が必要とされているデータの当該官庁への同時送信と当該官庁間における共有化など、業務改革を一層推進すべきである。併せて、FAL条約(国際海運の簡易化に関する条約)の早期締結に努め、これを業務改革推進の梃子とすべきである。
    また、自動車保有関係手続のワンストップ化(9頁)の一環として、車両登録確認が保険加入等の手続に必要とされる場合に、自動車登録事項等証明書の電子的手段による交付および照会が可能となるよう、措置されたい〔なお、本件については、「規制改革推進3か年計画(再改定)」(2003年3月28日閣議決定)において、2005年に予定されているワンストップサービス・システムの稼動開始に間に合うよう結論を出すことになっている〕。これに関連して交通事故証明書の申請・交付の電子化も可能とされたい。

  4. 「人事・給与等業務の電子化に関する基本方針」〔「電子政府構築計画(仮称)の策定に向けて」(2003年3月31日各府省情報化統括責任者連絡会議決定)の別添資料〕について、例えば内部管理業務の業務・システムの最適化(13〜14頁)の中で言及することによって、同基本方針に盛り込まれている給与の全額振込化を推進していく旨を明確にすべきである。

  5. 情報システムに係る政府調達の改善(17頁)に関して、「情報システムに係る政府調達制度の見直しについて」(2002年3月29日情報システムに係る政府調達府省連絡会議了承。2002年4月22日、2003年3月19日改定)において、「引き続き検討」とされているサービスレベル契約やインセンティブ付契約の導入等について、早期に結論を得て実施すべきである。また、「可能な案件から逐次適用していく」とされている事項についても着実に実施されたい。

  6. 技術的共通課題(18頁)の一つに、企業の代表者以外の者による電子申請・届出等の手続を取りあげ、代理申請等の方法に関する府省統一的な解決方策を示すべきである。なお、本件については、「『e-Japan戦略II』(案)に対する意見及びそれらについての考え方」〔2003年7月2日IT戦略本部(第19回)資料〕において、「代理申請については、その方法について整理・検討したところであり、各府省において実施に向けて取り組んでいるところ」とされているが、整理・検討した代理申請の方法を計画に明記するとともに、各府省において利用者の意向を踏まえた上で早期に実施すべきである。

  7. 計画は各府省を対象にしたものであるが、国民、企業にとって接する機会が多い地方公共団体の行政についても、情報セキュリティ対策を含めて国と一体的な電子化が不可欠である。この点、2003年8月までに設置することが謳われている「電子政府・電子自治体推進のための国、都道府県、市町村協議会(仮称)」(20〜21頁)の役割が重要であり、協議の節目節目でIT戦略本部に対して進捗状況を報告されたい。国・地方一体となった「一つ」の電子政府の実現に向けて、協議の実があがることを期待する。

  8. 業務改革の断行をはじめ、今般の計画を実効あるものとするためには、計画の進捗状況の評価とその結果を踏まえた見直しがとりわけ重要である。計画においても、評価と見直しを毎年度行う旨が明記されているが、計画に基づく各種施策は現在策定中のe-Japan重点計画−2003にも盛り込まれることになっていることから、行政機関による自己評価に加えてIT戦略本部の下に設置される専門調査会による事後評価の対象にすべきである。
    その際、行政の効率化や国民、企業の利便性向上といった電子化がもたらす成果の評価に努めるとともに、評価の結果を要員計画(行政需要の高い分野への人材の再配置など)や予算(重複投資の排除など)に反映することが重要である。

以上

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