[ 日本経団連 ] [ 意見書 ] [ 目次 ]
子育て環境整備に向けて
〜仕事と家庭の両立支援・保育サービスの充実〜

参考事例1  株式会社資生堂


1 企業概要

○ 主要な事業内容
化粧品、トイレタリー製品、理美容製品、医薬品等の製造・販売

○ 従業員の状況(2003年3月末日現在)

【資生堂連結会社の状況】
事業の種類別セグメントの名称従業員数
化粧品事業20,947名
トイレタリー事業941名
その他の事業3,025名
全社(共通)289名
合 計25,202名

【資生堂単体の状況】(パート・アルバイト等を除く)
合計男性女性
従業員数2,106名1,027名1,079名
平均年齢43.6歳38.1歳
平均勤続21.1年16.4年

2 企業における男女共同参画に関する考え方

資生堂グループは全従業員の約7割、資生堂単体に限っても約4割が女性である。また、顧客も約9割が女性となっている。
機会均等状況については、本社、工場、研究所、国内外の関係会社等すべての事業所に男女問わず配属している。化粧品の営業活動をはじめとして、物流等すべての職域で女性が活躍しているものの、意思決定の場に女性の参画が少ないことが課題の一つであった。
1997年に、全社的な行動指針として「THE SHISEIDO WAY」を制定し、その中で、会社と社員の関係性について目指すべき姿を明らかにした。「THE SHISEIDO WAY」の実現度合いを測る「1998年ステークホルダー調査」で、会社に対する満足度が男女で異なっていることが明らかになった。満足度に差が生じる原因としては、仕事における「性差」が挙げられ、男女のジェンダー意識が女性社員の能力発揮を阻害していることが認識された。(注:ジェンダーとは生物学的な性別ではなく、社会的・文化的に形成された性別のこと)
また、同社の人員構成は、男性社員のうち50歳以上の割合は約4割にものぼっており、女性の活躍を促さなければ将来的に会社の競争力を確保できず、経営戦略の観点からも女性社員の能力発揮は不可欠の課題であった。以上を踏まえ、同社では企業内の男女共同参画を推進することとした。

3 男女共同参画を推進するうえでの具体的な施策の概要

企業内の男女共同参画を推進するために、まず、1998年に社内横断的なプロジェクトである「女性エンパワーメント2000」を発足させ、性別役割分担に関する課題の整理を行なった。2000年には、推進プロジェクトと事務局を設置し、ポジティブ・アクションとして5つの目標を掲げ、意識改革と人事制度の改革を実施している。
具体的な施策としては、意識の面では、社内のイントラネット上へのサイトの開設、啓発冊子である「ジェンダーフリーブック1・2・3」の作成、管理職に対する研修の実施、女性管理職育成のための研修の実施などが挙げられる。
また、人事制度改革では、社員一人ひとりの能力・意欲を引き出し、成果・能力主義を徹底し、賃金や昇格運用等のメリハリを拡大することを通して、組織活力の向上を図っている。特に男女に中立な新人事処遇制度の設計に配慮をし、従来は、「総合職」「事業所限定職」など6つに分けていた職種を3つに統合した。また、「全国」「地域」「事業所」の3つから選べる勤務コースのいずれを選択しても評価や人材育成では差をつけないことにした。

4 今後の課題

これらの施策の実施により、社内調査でも、ジェンダーフリーな風土(女性も男性も共に「自分らしさ」を発揮できる風土)に変化したと回答する社員の割合が増加しているほか、管理職に占める女性の比率も2003年には約10%(237名)と増加している。また、お客さまからみた資生堂のイメージも「女性が働きやすい職場」との回答割合が高くなっている。
しかし、子育て期の働きやすさという実態面では、未だ障害があることが社内調査で判明している。そのため、同社では「子育てをしながら働く男性・女性の育児支援」を重要なテーマとして取り組んでいる。具体的には、仕事と育児の両立を支援する制度の充実(次頁図表参照)や意識改革を行なうとともに、各種の支援制度を実際に利用しやすくする環境整備、多様化する保育ニーズに応えるべく事業所内保育所の開所(2003年9月予定)などを行なうこととしている。

制度名制度の概要備考
育児休業制度生後3歳まで。子供1人につき1回。通算5年を限度。無給。340名が取得男性の取得者がいない点と無給である点が検討課題
育児休業者の職場復帰支援「wiwiw」システム育児休業中の社員が、インターネットを通じて社内情報や育児ノウハウ、職場復帰のためのスキルを自宅にいながら習得できるシステム。社内で利用するとともに、社外にも販売
育児時間制度小学校入学前まで。1日2時間。327名(うち男性1名)が取得フレックス制度があるため利用は比較的少ない
フレックスタイム勤務制度コアタイムは10:00〜14:45。標準勤務パターンは8:30〜17:15管理職は利用しにくい
積立休暇制度無効となった年休の積立て。病気や家族の看護の際使用可能。上限60日
カフェテリア制度メニューに、保育園・学童保育料補助、ベビーシッター・託児所利用補助など育児関連を優遇

日本語のトップページへ