[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]
2003年9月4日

WTOカンクン閣僚会議に向けた経済界の共同提言

( Joint Business Charter for Cancun )


「ビジネス界はWTOによる多角的貿易システムを支えていくため団結する」

(仮訳/英文正文

我々、途上国及び先進国の企業を代表する経済団体・組織は、第5回閣僚会議を成功に導きたいとの意思からここに団結する。2005年1月1日の合意期限にドーハ・ディベロップメント・アジェンダ(DDA)が成功裡の下で終結するために、9月にカンクンで147のWTO加盟国が重要なステップをとることを期待する。

カンクン閣僚会議の成功は、以下のことに繋がる。

そのため、我々は、WTO加盟国が協力的で建設的な精神の下、相違や不一致を乗り越えるためにさらなる努力を行うよう求める。DDAの全ての分野において、それぞれの立場を考慮した解決が可能である。貿易と投資の自由化は、先進国と途上国における世界的な経済成長、雇用増加、消費者選択に不可欠である。

ビジネスは、世界的な貿易システムにおける主要な原動力である。国内及び国際的な貿易・投資活動を通じて、ビジネスは、世界で生活水準や環境保護に必要となる雇用や富を創出する。このような立場から、我々は、カンクン閣僚会議に向けて以下の共同宣言を取りまとめる。署名が必要となるが、この共同宣言への参加は、我々のアプローチや目的を共有する全ての経済団体・組織に開かれている。

1.我々は、世界経済のガバナンスにとって重要であるWTOの多角的貿易システムに完全にコミットしている。更なる貿易・投資の自由化は、世界経済の成長にとって不可欠である。

我々は、様々な開発段階にある全ての加盟国が利することを目的とした、野心的で将来を見据えたDDA交渉を支持している。DDAの全ての分野に関して、それぞれの利益や立場等に基づき主張がなされるべきであり、ビジネスにとっては、以下が重要と捉えている。

我々は、特に輸出による利益、経済の成長を確保するにあたり多くの途上国が農業に高く依存している現状をふまえ、農業交渉の進展の重要性を強調したい。それに加えて、農業における成果なしには、将来の経済成長、雇用増加、開発に不可欠である他のDDAの分野が失敗する可能性も高まる。全ての加盟国が農業交渉に真剣に、現実的に対応し、農業の特殊性や途上国への配慮を行う一方で、交渉の柱である市場アクセス、輸出競争、国内支持に関する有意義で、バランスの取れた合意を行うことで、自由化プロセスに貢献すべき時期が到来している。

2.我々はカンクン閣僚会議を以下のように捉えている。

2005年1月までに交渉を終結させるとのロードマップの下、多角的な交渉に対する強いコミットメントを再度確認する。
DDAに道筋をつけ、全ての分野の交渉を進展させる。我々は、WTO加盟国に特に以下について合意するよう求める。

3.途上国の開発に資するというWTO交渉の目的を支持し、開かれた、ルールに基づく多角的な貿易システムが開発上の主要な目的の達成を進展させることを強く信じる。我々は、以下に沿って、これらの目的が達成されることを求める。

WTOは、モノとサービスに関する市場アクセスの改善や経済の担い手に対する明白なルールの策定を通じて、全ての国における開発と経済成長に貢献する。DDAは、途上国、特に後発開発途上国を世界市場に更に統合し、貿易と投資の自由化からより多くの利益を得ることを可能とする。我々は、貿易自由化から十分な利益を得ることを目的とした途上国に対するより力強い、効果的な技術的支援、キャパシティビルディング、その他の必要となる構造改革に向けた取り組みを強く支持する。

実施問題や特別かつ異なる待遇の付与を含めた途上国の重要課題を早期に解決することを求める。新たな義務を課すにあたり、経済発展段階や競争力を鑑みて、途上国に対してフレキシビリティを認めることを支持する。後発発展途上国に対しては、効果のある特別かつ異なる待遇を付与しなければならない。

技術的支援は、キャパシティビルディング、及び、途上国、後発発展途上国、規模の小さい途上国によるWTO交渉への完全な参加を促進することに焦点をあてるべきである。また、既存の協力プログラムとの間で、相互作用や効率が一層向上するように努めなければならない。

4.我々は、二国間・地域協定の加速化及び増大を注視する

地域間・二国間の取り組みは自由化の有効な手段となり得るが、我々の最終目標は多国間での自由化である。そのため、我々はWTO加盟国に対して、2005年1月1日の期限内合意が達成されるように、DDAに全てのプライオリティを置き、必要な資源を投入するように求める。多国間の枠組みの強化は、二国間・地域間の貿易に関するイニシアティブが、世界経済の利益に供することを保障する。

残された時間は短いが、DDAの目標は達成可能である。

以上

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