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優先政策事項 添付資料

優先政策事項【解説】

2004年11月24日
(社)日本経済団体連合会

1.経済活力、国際競争力強化に向けた税・財政改革

経済活力を維持・強化し、雇用の維持・創出、国民生活の安定を図るため、中長期的に潜在的国民負担率を50%程度に抑制することを目標に、税・財政、社会保障制度の改革を一体的に進める。このため、法人実効税率の引き下げを通じ、国際競争力を強化するとともに、社会保障の給付範囲・水準の適正化、国庫補助負担金改革・税源移譲・地方交付税改革を進め、消費税率を2007年度以降、段階的に引上げる。

2005年度予算においては、国庫補助負担金・地方交付税交付金の縮減、歳出総額抑制の中期的目標設定をはじめとする特別会計改革などを推進する。また、税制改正では、企業年金資産にかかる特別法人税の廃止、日本型LLC税制や人材投資促進税制の創設などを実現する。

2.将来不安を払拭するための社会保障制度の一体的改革

少子化・高齢化の急激な進展に対応した持続可能な社会保障制度の確立に向けて、年金、医療保険、介護保険制度などの一体的改革のグランドデザインを早急に明らかにし、速やかに実行に移す。それにより、国民の社会保障制度に対する信頼を回復させる。

社会保障制度の再設計にあたっては、国民の自立・自助を基本とし、給付は真に必要な部分に重点化する。特に、高齢期の医療・介護保険制度については、自助努力すべき部分は給付から外し、趣旨の重複した給付は整理するなど、制度間の公平を図る。社会保障に関わる負担は現役層の理解が得られる水準とし、高齢者層も必要な負担を行う。厚生年金保険料率は15%相当で固定する。社会保障財源については、消費税を含めそのあり方を決定する。また、社会保障制度に共通する個人番号制と個人会計制度(仮称)を整備する。

3.民間活力の発揮を促す規制改革・民間開放の実現と経済法制の整備

縦割り行政の弊害を排除し、スピード感ある構造改革を推進するため、一層の行政改革を図る。あわせて、官主導社会から脱却し、個人や企業の多様な挑戦を促進するため、規制改革・民間開放を推進する。さらに、企業経営の円滑化に向けて経済法制を整備する。

官業の民間開放を促進すべく、早急に市場化テストの導入に向けた制度を整備する。そのため「市場化テストに関する特別法」を2005年中に制定する。官製市場の改革推進の観点から、医療分野における混合診療の解禁、教育分野におけるバウチャー制度導入などを進める。郵政民営化については、閣議決定された「基本方針」の考え方を堅持し、公正な競争を可能とする法制を整備する。また、構造改革特区、規制改革・民間開放集中受付月間に提出された要望の実現率を大幅に向上させる。さらに、公務員制度改革、特殊法人・独立行政法人改革などの行政改革を推進する。独占禁止法については、措置体系を見直すとともに、より一層適正な手続(デュー・プロセス)を確保し、21世紀にふさわしい競争政策の土台を構築するための抜本改革を図る。株主代表訴訟制度の合理化など、企業経営の円滑化のために会社法制を現代化する。

4.科学技術創造立国の実現に向けた政策の推進

科学技術創造立国を実現し、産業の国際競争力を強化する観点から、バイオ、IT、環境、ナノテクノロジー・材料、航空・宇宙などの先端技術開発とその産業化を促進する。あわせてコンテンツ産業の振興に向けた官民の取り組みを強化する。

このため、政府研究開発投資を拡充するとともに、規制改革、国際標準化、人材育成などの施策を包括的に実施する。また、知的財産政策を強化し、産業レベルでの技術革新を活性化させる。私立を含めた大学に対して、多面的な評価に基づいた予算的支援を行うとともに、産学官連携を促進するための施策を戦略的に実施する。以上の産業競争力強化の視点を十分に踏まえて、政府科学技術関連経費の対GDP比1%を目標とする第三期科学技術基本計画を策定する。

5.持続可能な経済社会の実現に向けた真に実効あるエネルギー・環境政策の推進

国民生活や経済活動の安定・繁栄の基盤として、国益を踏まえたエネルギー・環境政策を一体的に推進する。

エネルギー分野では、原子力を基幹に据えながら、エネルギー源の多様化とベストミックスを進める。あわせて、原子燃料サイクルを着実に推進するとともに、国際熱核融合実験炉(ITER)の日本誘致を実現する。地球温暖化対策にあたっては、企業の活力を奪う環境税や温室効果ガスの排出割当てを伴う国内排出量取引制度などの経済統制的な施策は採用しない。経団連自主行動計画など企業の自主的な取り組みを尊重するとともに、民生・運輸部門などで実効ある施策を実施する。また、米国や中国を含めすべての国が参加する新たな国際的枠組みを早期に構築する。

6.心豊かで個性ある人材を育成する教育改革の推進

創造性や国際性に富み、心豊かで個性ある人材を育成すべく、国の礎である教育の質の向上と教育現場の活性化を実現する。このため、新しい時代にふさわしい教育の理念を確立するとともに、習熟度別指導など多様できめ細かい教育を実現する。また、教育現場に競争原理と評価制度を導入し、学校や授業を改革する。

かかる観点を踏まえ、教育基本法の早期見直しを行う。また、株式会社やNPOによる学校設置の促進、公設民営型学校の実現など、多様な主体による学校設置・運営を推進する。教育委員会については、広域化、権限委譲、立案機能強化などの改革を図る。さらに義務教育から高等教育まで全ての段階にわたって学校評価の質を向上させる。

7.個人の多様な力を活かす雇用・就労の促進

円滑な労働移動と雇用機会の創出に向けて、労働市場・労働基準に関わる規制を改革するとともに、女性や高齢者を含め、個人の多様な価値観を反映した雇用・就労形態を整備する。また、少子化対策を推進する。

この一環として、ホワイトカラーイグゼンプション制度の導入など、従来の労働時間規制の枠を超えて、勤務形態の柔軟性を高めるとともに、労働生産性の向上を図る。また、規制緩和により、民間委託による職業紹介・相談や能力開発の対象範囲の大幅な拡大を図り、労働市場を活性化させる。同時に、労働時間・労働契約などに関する規制緩和を進める。若年者雇用の促進にあたっては、整合性のとれた各省庁の政策遂行を促す。雇用保険三事業および労災保険労働福祉事業については、廃止・縮小に向けて、整理・合理化する。さらに企業の実態に即した障害者雇用政策に取り組む。あわせて専門的・技術的分野や供給不足になる分野を中心に、外国人を積極的に受け入れるための体制を整備する。

8.地方の自立と地域や都市に活力とゆとり、安全と安心を生み出すための環境整備

地方の自立や発展を促すため、中央集権・官主導体制を転換するとともに、地方行革を推進する。社会基盤の整備にあたっては、地域住民のみならず、利用者の視点を十分に反映させる。また、良質な住宅の提供と治安の向上を通じ、快適な住環境を整備する。

基礎的自治体を強化する観点から市町村合併を強力に推進するとともに、地方行政を効率化する。また、州制の導入についても鋭意取り組む。さらに中小企業の自立と活力の向上、地域の特性を活かした観光振興やそのためのインフラ整備を通じて、地域経済の活性化を図る。同時に、大都市圏の交通・物流など都市基盤を戦略的・効率的に整備し、国際的にも魅力ある都市を実現する。特に、首都圏の空港を整備し、国内・国際線の接続機能を強化する。社会資本の整備にあたっては、使い勝手の向上を重視し、民間の経営ノウハウや資金を活用して、サービスの向上や運営の効率化を図る。さらに、住宅政策を国家戦略として位置付け、防災・防犯などの観点も踏まえた「住宅・街づくり基本法(仮称)」を早期に制定する。住宅取得に加えリフォームに対しても、税制優遇の対象とする。

9.グローバル競争の激化に即応した通商・投資・経済協力政策の推進

個人、企業が自らの責任と創意工夫の下、国境を越えてより自由かつ円滑に活動できる環境を戦略的に整備する。このため、多角的自由貿易体制の維持・強化を図るとともに、わが国にとって重要な国・地域との間で経済連携協定(EPA)を締結する。この一環として、時代に則したわが国農業のあるべき姿を確立し、農業分野の構造改革を進める。また、対日直接投資の一層の促進を図る。さらに、重要な国・地域の安定・発展を促す手段として、政府開発援助(ODA)を活用する。

喫緊の課題として、WTO新ラウンドの早期一括合意に向けた交渉を推進するとともに、そのために農業の構造改革を含めた国内環境を整備する。EPAについては、メキシコとの協定を早期に批准・発効させるとともに、円滑な実施を図る。また、東アジア自由経済圏構築に向けて、韓国、タイ、フィリピン、マレーシアとの交渉を早急に妥結するともに、日・アセアン包括的経済連携についても、交渉開始2年以内の妥結を目指し交渉を加速する。これらの通商政策を推進するためにODAを戦略的に活用するとともに、対外経済政策をわが国一体となって推進するための「戦略本部」、「特命担当大臣」を設置する。また、輸出入・港湾諸手続について、ワン・ストップ・サービス化などの業務改革やITの活用を進め、貿易の円滑化とわが国産業の国際競争力の強化を図る。

10.内外の情勢変化に対応した戦略的な安全保障・外交政策の推進

(本項目の解説は、「国の基本問題検討委員会」での結論を踏まえ、決定する。)

以上

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