[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「公益通報者保護法に関するガイドライン案」に対するコメント

2005年7月6日
(社)日本経済団体連合会
経済法規委員会
消費者法部会

公益通報者保護法は、企業のコンプライアンスへの自主的な取り組みを尊重する観点から、これまで一般法理に基づいて判断されてきた、公益のために通報する労働者の保護に関するルールを明確化するものである。本法の施行に際しては、法律の趣旨、内容等について、国民の理解増進に努めるとともに、当事者の予見可能性を高め、適切な利用を図る必要がある。今般、内閣府がガイドラインを策定するにあたって、混乱を防止するとともに、より実りあるものとなるよう、下記のコメントを提出する。

内閣府
公益通報者保護法に関する各種ガイドライン案に対する意見募集
http://www.consumer.go.jp/koueki/koueki_pc.html

I. 総論

(1) コンプライアンスや内部通報システムを実効有らしめるためには、事業者が、自らの職場の特性や実情等をふまえて柔軟に創意工夫を行うことが重要である。「民間事業者向けガイドラン案」が、規範性を持たず、各事業者の自主性を尊重していることは評価できる。

(2) 内部通報制度に焦点を当てるあまりに、職場マネジメントの中で物事を解決していくという本流の活動がおろそかになってはならない。したがって、従業員がコンプライアンス上の疑問を持った場合に、職場の上司にまず相談するという本来あるべき職場マネジメントを強化していくことを妨げない旨を、何らかの形で言及すべきである。

(3) 本法は、従来、内部通報が必ずしも十分には考慮されてこなかった中小企業や、医療法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人等の非営利法人なども対象になる。したがって、公益通報者保護制度や本ガイドライン等について、広く周知徹底を図ることが不可欠である。

II. 各論

1.本ガイドラインの目的と性格

本ガイドラインにおける通報とは「公益通報」であることを、何らかの形で明確にする必要がある。少なくとも、「不正の目的」など公益通報者保護法上の保護要件に該当しない「通報」(不正の目的など)や、誹謗中傷など客観的な事実について指摘のない「通報」への対応について明らかにすべきである。

2.事業者内での通報処理の仕組みの整備

(相談窓口の整備)

(1) 「通報窓口および受付の方法を ・・・ 十分に周知することが必要である」とあるが、混乱が生じないよう、何らかの形で「十分に周知」のレベルを例示する必要がある。

(2) 窓口については、各事業者の自主的な判断で、実情に応じた様々な目的の窓口(例えば、セクハラ窓口など)を設置することを妨げないことを、何らかの形で明らかにする必要がある。

(3) 「グループ企業ではグループ共通の一元的な窓口を設置することなども可能である」とあるが、混乱が生じないよう、何らかの形で個人情報保護法上の扱いを明確にする必要がある。

3.通報の受付

匿名による通報の場合には、公益通報者保護法上は、受領の通知、今後の対応の通知が不要であることを、何らかの形で明確化する必要がある。また、「公益通報をした日から20日を経過」の起算点を何らかの形で明示することが望ましい。なお、小見出しのうち、「個人情報の保護」については、通報に対応する場合、個人情報のほかに、「公益通報の事実やその内容」についても秘密を厳守することが不可欠であることから、「通報者・通報内容の秘匿」の方が実態に適合している。

4.調査の実施

調査の進捗状況や調査結果の通報者への通知については、通報内容に問題がある場合などもあり、事態に応じて事業者の裁量で行う方が、混乱を招くことがない。ガイドライン案が、通報者への通知について、「努める」としていることは適切であり、一律に定めるべきではない。

5.是正措置の実施

是正措置の通知については、プライバシー侵害度合い等によっては、通報者への通知をしない方がいい場合や、通報者へのタイミングを考慮した方がいい場合等もあり、円滑な職場運営のためには、事態に応じて事業者の裁量によって行うようにすることが望ましい。ガイドライン案が、通報者への通知について、「努める」としていることは適切であり、一律に定めるべきではない。

以上

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