[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

香港閣僚会議に向けた共同宣言

経済界は貿易自由化の実質的な進展を望む

英文正文、和文仮訳)
2005年11月21日
日本経団連以外の賛同団体:
〔アジア・太平洋〕
貿易自由化協議会 ( Japan Service Network )
香港サービス産業連盟 ( Hong Kong Coalition of Service Industries )
中華民国全国工業総会 ( Chinese National Federation of Industries )
豪州サービスラウンドテーブル ( Australian Services Roundtable )
〔欧州〕
欧州産業連盟 ( Union des Industries de la Communauté européenne ; UNICE )
欧州サービス産業連盟 ( European Services Forum ; ESF )
在欧州米国商工会議所 ( The American Chamber of Commerce to the European Union ; AmCham EU )
〔北米〕
カナダ製造業者輸出業者連盟 ( Canadian Manufacturers and Exporters )
カナダ商工会議所 ( Canadian Chamber of Commerce )
米国商工会議所 ( United States Chamber of Commerce )
米国サービス産業連盟 ( Coalition of Service Industry )
全米外国貿易評議会 ( National Foreign Trade Council )
メキシコ経営者連合会 ( Confederación Patronal de la República Mexicana ; COPARMEX )
〔南米〕
ブラジル全国工業連盟 ( National Confederation of Industry )
サンパウロ州工業連盟 ( Federation of Industries of the State of São Paulo )
チリサービス輸出業者連盟 ( Service Coalition of Exporters )
〔アフリカ〕
タンザニア産業連盟 ( Confederation of Tanzania Industries )
ケニア製造業者協会 ( Kenya Association of Manufacturers )
ウガンダ経営者連合 ( Federation of Uganda Employers )
地中海企業家団体連合会 ( Union of Mediterranean Confederations of Enterprises )

共通認識:

世界貿易の65%を占める多数の国・地域を代表する経済団体は、共通のビジョンの下に結束して、新ラウンド交渉を通じ、世界貿易の自由化とそれに付随して全ての国に経済的恩恵がもたらされることを訴える。多角的な貿易の自由化を通じて、経済的な機会が引き続き拡大され、世界貿易システムを支えるルールが強化され、非生産的な保護主義や一国主義の蔓延に対抗することができる。

新ラウンドの最終合意では、全ての国、特に途上国が、貿易の自由化に参加し、そこから恩恵を受けることが必要である。このためには、全ての国の市場を真に自由化することが求められる。すなわち、新ラウンド交渉の質の高い合意によって、世界経済全体の実質的な拡大がもたらされるからである。それゆえ、われわれは、新ラウンド交渉を2006年末までに終了させるべく、香港閣僚会議の成功に向けたわれわれの決意をここに明らかにするものである。

世界の経済発展にとっての新ラウンドの重要性に鑑み、われわれは、世界の政治的リーダーに、大きなビジョンと志と責任を明らかにし、新ラウンド交渉によって意味のある結果をもたらすために決断することを求める。今まさに、短期的な政治を横に置き、2006年末までに新ラウンド交渉を終結できるレベルまで、交渉を積極的に推進すべきである。交渉はすでに、非常に遅れている。しかしながら、2006年末の交渉終結時に、全ての国が目に見える経済的な恩典を受けるべく、質の高い具体的な合意を達成することは、まだ可能だ。

香港閣僚会議は、新ラウンド交渉の重要な一里塚であり、そこでは、鉱工業品の市場アクセス、サービス、農業、貿易円滑化ならびにルールの全ての交渉分野で、大枠合意を達成すべきだ。このような成果は、全ての国が交渉を通じて譲歩する意思を示すことによってのみ、実現される。

現在149カ国を数え、ますます拡大しているWTOの加盟国には、先進国、新興市場国ならびに多くの低所得国を包含し、グローバルなコミュニティを真に代表している。WTOのルールは、そうした加盟国間の格差を認識し、途上国への特別な配慮が必要である。われわれは、多国間貿易の自由化が、このように拡大したWTOの全加盟国の経済発展に寄与することを信じ、このラウンド交渉がこうした途上国の経済発展に焦点を当てることを強く支持し、このような経済発展は、包括的な貿易の自由化を通じて、最良な形で実現されうると信じる。このため、加盟各国は、新ラウンド交渉が自国の経済発展に資することを理解しなければならない。われわれは、特に、新ラウンド交渉が後発途上国の貿易機会の改善をもたらすことを希望する。適切かつ効果的な技術支援を行うために、支援国と受益国が密接な協力をすべきである。

分野別課題:

農業

われわれ、世界の経済団体は、貿易の自由化が、中長期的視点から、全てのWTO加盟国に経済的な恩恵をもたらすと固く信じる。かかる観点から、農業の発展も、市場の力によるところが大きく、市場の力に従うと、競争力の比較優位の原則に基づいて、全ての国で、資源の効率的配分がなされうる。それゆえ、農業交渉の最終合意には、実質的な市場アクセスの改善および全ての国の貿易歪曲的なあらゆるタイプの補助金の総合的かつ段階的な削減が含まれるべきである。
新ラウンド交渉の利益の大きな部分は、農業の自由化と市場原理の強力な導入によってもたらされる。農業交渉の3つの交渉事項の全てについて、バランスのある質の高い合意ができてこそ、真の市場開放につながる。低所得国により柔軟性を認めながらも、全てのWTO加盟国が農業の自由化に貢献することが必要である。この目的にそって、高いレベルの関税・補助金などの保護・支持措置を大幅に削減し、真の市場アクセスを確保すべきである。新ラウンド交渉の結果は、世界の農業市場の自由化を実質的に進展させるものでなければならない。

鉱工業

関税、非関税障壁の削減、撤廃は、WTOの大きな目的のひとつである。新ラウンド交渉によって、少なくとも先進国と新興市場国においては、非直線フォーミュラおよび自発的な分野別取組みによって、関税の撤廃もしくは大幅な削減がなされ、新たな市場アクセスの真の確保がもたらされねばならない。われわれは、加盟国の政府に対して、国際貿易を阻害している非関税障壁を効果的に除去するため、非関税障壁の問題に徹底的に取り組むよう求める。非関税障壁を除去するために、分野横断的、分野別、双方のアプローチを用いるべきである。鉱工業品(非農産品)市場アクセス交渉によって、全ての加盟国の貿易機会の拡大がもたらされるべきである。

サービス

新ラウンドのサービス交渉におけるこれまでの進展の質のあまりの低さは、残念であり、これを反転させねばならない。われわれは、全ての加盟国が、GATSのオファーを大きく改善し、新たなビジネス機会がもたらされることを求める。サービスの自由化によって、新たな輸出機会が生まれ、外国からの投資を促進する。このことによって、国内のサービス部門が改善され、全てのWTO加盟国の国内経済の発展に寄与する。交渉のアプローチはどのようなものであれ、WTO加盟国が内外無差別の原則に沿って国内規制をする権利は尊重するものの、サービスの実質的な自由化を促進すべきである。国内規制を現行以上に強化しないことは、最小限の約束に過ぎず、ビジネス界にとっては、具体的な新規の市場アクセスを期待している。

貿易円滑化

貿易に従事する企業関係者は、手数料、規則、通過などの通関手続きに関わる苛立ち、煩雑さ、遅延、費用に対し、快く思っていない。貿易業務に係わる費用を低減し、透明性を向上させ、手続きの自動化を進めることによって、通関業務の効率性を増し、汚職の機会を減らすことができるので、われわれは、WTOの加盟国に対し、定期的な見直しが可能な貿易円滑化協定の制定に向け、交渉に傾注することを求める。われわれは、低所得国も円滑化協定による便益を享受するために、それらの国への技術支援の必要性を理解し、われわれの政府や関係の国際機関に対して、この目的にかなったより効果的な援助をするよう求める。

ルール

ビジネスには、予見可能な透明性の高いルールに基づく貿易環境が必要であり、われわれは、アンチ・ダンピング、補助金や地域協定に関する多角的なルールが、公平な競争条件を確保するために全ての国で、簡潔明快に解釈され、実施されることに賛成する。WTOのアンチ・ダンピング協定ならびに補助金および相殺措置に関する協定は、こうした目的や原則を踏まえて制定されたものだが、WTO加盟国は、引き続き、香港閣僚会議および2006年に建設的な作業を行い、全ての国が同じルールに沿って当該措置を実施し、かかる措置が目的に適合し、事実に基づき、透明性があり、公正で、予見可能性を有し、かつ適正な手続きを踏んで実行に移されることを保障するために、全ての国の同意の下に、必要な条項を整理し、その骨子を提供すべきである。そして、新ラウンド交渉の終結時には、全ての当事国が、ダンピングや補助金の削減を目的とした本件に関し、納得のいく妥協がなされるべきである。

その他

われわれは、新ラウンドで取り上げているその他の事項について、全てのWTO加盟国が同意する包括的なパッケージに向け、進展することを支持する。

香港閣僚会議の成功に向けたわれわれの決意:

われわれは、以上のように香港閣僚会議の成功に向けた意思を明らかにした。香港閣僚会議は、新ラウンドの2006年末までの質の高い合意の締結に向けた最後の山場である。それゆえ、われわれは、今後数ヶ月間、引き続き、連携を図りながら、貿易の自由化と多角的貿易ルールの強化の実現を後押ししていく覚悟である。このため、われわれは、連携をさらに強め、香港にそれぞれの代表を派遣し、交渉の進展と多角的貿易システムの強化を支持し、交渉の速やかな前進をわれわれの政治家に働きかけるつもりである。

以上

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