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第3回日中通商対話ミッション・ポジションペーパー

2006年3月16日
(社)日本経済団体連合会
中国委員会 企画部会

2001年12月の中国のWTO加盟から4年以上が経過したが、この間、中国政府は、関連法制度の整備・改正等、WTO加盟約束の完全な遵守に向けた努力を続けており、我が国経済界としては、こうした取り組みを高く評価している。今後についても、各種許認可等の手続きの簡素化・迅速化、透明性の向上等、法制度の運用面の改善をはじめ、改革が加速されることを強く期待している。

日中通商・経済関係の拡大に向けた我が国経済界の要望事項については、かねてより様々な項目を指摘してきたが、今次「第3回日中通商対話ミッション」では、以下の4項目を重点要望事項として指摘する(詳細は別紙参照)。

(1) 日中韓投資協定の早期締結ならびに日中韓ビジネス環境の整備

日中韓投資協定に関する政府間交渉の2006年中の開始と早期締結。日中韓ビジネス環境整備に関する「行動計画」の早期公表と着実な実施等。

(2) 法・規制の透明性の確保

許認可基準の明確化、中央・地方政府による統一的行政、基準・規格の国際基準への整合化、流通権の取得基準の明確化、アンチダンピング措置の発動における透明性の確保、コークス輸出規制における透明性確保等。

(3) 知的財産権の実効的な保護

審査の促進・審査手続きの改善、罰則規定の強化、デザイン模倣対策の強化、コンテンツに関する法制度の緩和、ライセンス規制の緩和等、権利の取得段階から執行段階にわたる徹底的な知的財産権保護。

(4) サービス分野の更なる自由化

製造業のビジネスインフラ整備、国民生活の一層の向上等に資するサービス分野の更なる自由化。特に金融(銀行、生命保険、損害保険)、運送・ロジスティクス、建設、電気通信、観光分野の自由化。


これら要望事項については、WTO加盟約束の範疇を超えるものも含むが、我が国経済界としては、日中経済関係を更に緊密化させるためには実現が不可欠と認識している。また、これら要望事項の実現は、中国における一層のビジネスインフラの整備に繋がり、対中投資の拡大基調の維持に資する。また、広く中国国民生活の向上に繋がり、消費の拡大とそれに伴うバランスのとれた経済発展に資する。かかる観点から、中国政府には是非とも善処頂きたい。

以上

日中通商・経済関係の拡大に向けた我が国経済界の要望事項

2006年3月16日
(社)日本経済団体連合会
中国委員会 企画部会

1.日中韓投資協定の早期締結ならびに日中韓ビジネス環境の整備

(1) 日中韓投資協定の早期締結

現状・問題の所在:
2004年11月の日中韓首脳会談を受けて、2005年には「日中韓投資の法的枠組みに関する政府間協議」が立ち上がり、3国間投資協定の含むべき内容等について、4回の会合で検討が行われた。他方、予定していた2005年12月の日中韓首脳会談が見送りとなったことから、当該政府間協議を踏まえた首脳合意がなされておらず、現状、日中韓投資協定の締結に向け、次回会合を模索しているところである。
要望・解決策:
我が国経済界としては、日中韓ビジネスフォーラム等の枠組みで既に主張している通り、日中韓投資協定に関する政府間交渉の2006年中の開始と早期の締結を望む。同投資協定の実現により、法制度の透明性の確保、紛争解決の法的枠組みの整備、知的財産権の保護の促進等を実現することは、日韓企業による対中投資を促進するのみならず、中国企業の競争力強化、中国企業の海外直接投資の保護にも資する。
なお、日中韓FTA・EPAについては、日中韓投資協定に関する政府間交渉の2006年中の開始を前提に、3国産官学共同研究会を2006年中に設置すべきと考える。

(2) 日中韓ビジネス環境の整備

現状・問題の所在:
2004年11月の日中韓首脳会談を受けて、上記の「日中韓投資の法的枠組みに関する政府間協議」と並行して、2005年には「日中韓ビジネス環境改善に関する政府間協議」が立ち上がり、ビジネス環境の改善に向けた各国の取り組み方針を纏めた「行動計画」の作成・公表を目指し、4回の会合で検討が行われている。
要望・解決策:
「行動計画」は、各国が自主的に取り組むべきものであり、必ずしも法的拘束力は伴わないが、3国経済連携強化の実質化の観点からは、日中韓投資協定と車の両輪の関係にあると認識しており、早期の公表と着実な実施を望む。なお、「行動計画」には、日中韓投資協定と同様、透明性の向上、紛争処理、知的財産権保護等の内容が含まれることを求める。

2.法・規制の透明性の確保

(1) 総論

現状・問題の所在:
中国政府は、近年、法令の官報やインターネット等を通じた公表に積極的に取り組んでおり、こうした動きを評価したい。但し、特に法・規制の運用面においては、未だ透明性や迅速性が確保されていないケースも見られる。
要望・解決策:
引き続き、地方レベルを含め、法・規制を一般に入手可能な方法で公開するとともに、新たな法・規制の制定手続については、外資系企業を含む利害関係者に対するパブリック・コメントの実施及びその十分な考慮等により、高い透明性を確保すべきである。また、運用面においても、一層の透明性の向上を図るとともに、手続の迅速性を確保するよう求める。特に、以下の三点が重要である。
1) 許認可基準の明確化
現状・問題の所在:
WTO加盟約束等をふまえ、法制度の整備・改正が進められている。他方、法・規制の運用面に関連して、許認可の基準が不明確等の問題が生じている。
要望・解決策:
行政許可法の精神をふまえ、許認可が付与される基準を明確化し、行政裁量の範囲を可能な限り狭めることを求める。
2) 中央・地方政府による統一的行政
現状・問題の所在:
一部の地方には、中央政府により施行された法・規制が十分に浸透していないケースがある。
要望・解決策:
中央・地方政府において矛盾のない法令が整備され、全体として整合性の取れた運用がなされることが重要である。中央政府が定める法・規制について、いずれの地方政府においても、裁量的な適用や不統一な解釈がなされないことを求める。
3) 基準・規格の国際基準への整合化
現状・問題の所在:
WTO加盟に伴い、関係規制や手続の「貿易の技術的障害に関する協定」への整合化が進められているが、事実上、中国独自の技術規格への適合が求められるケースがある。
要望・解決策:
中国で製造された製品の輸出拡大、中国企業や中国に輸出拠点を置く外資企業の国際展開の促進の観点から、中国独自の基準・規格を制定する際には、国際基準との整合性を確保するとともに、明確かつ簡素なものを採用することを求める。

(2) 各論

1) 流通権の取得基準の明確化
現状・問題の所在:
WTO加盟約束を受けて施行された「外商投資商業領域管理弁法」等により、新規設立の商業企業の他、既存の投資性企業・製造企業・保税区の物流企業が実態として流通権を取得できるようになっている。しかし、同弁法の実施細則が依然として公表されない等、流通権の取得基準や手続きが不明確なままとなっている。
要望・解決策:
実態として流通権の開放が進展していることは率直に評価する。他方、ビジネスの予見性を高めるためにも、同弁法の実施細則を公表する等、流通権の取得基準や手続きを明確化することを引き続き求める。また、同弁法の基準を満たした外資企業には例外なく流通権を付与することを求める。
2) アンチダンピング措置の発動における透明性の確保
現状・問題の所在:
WTO加盟に伴い、アンチダンピング措置に係る規則・手続を「アンチダンピング協定」に整合化することが約束された。これを受けて、「アンチダンピング条例」やその関連規定が施行されているが、特に当該措置の運用に関して、調査開始時の精査、被調査産品及び国内同種産品の認定、損害の認定等で「アンチダンピング協定」と整合的でないと考えられる点がある。
要望・解決策:
安易なアンチダンピング措置の発動は、最終的に中国企業の競争力低下にもつながるとの認識が重要である。「アンチダンピング条例」に基づきアンチダンピング措置を発動する場合には、「アンチダンピング協定」との整合性を確保するとともに、特に当該措置に関する情報開示を進める等、関係企業が十分に意見を述べる機会を確保すべきである。
3) コークス輸出規制における透明性確保
現状・問題の所在:
2003年秋、中国は国内需給のタイト化を理由に、コークスの輸出ライセンス発給量を大幅に削減した。この結果、2003年年末から2004年前半にかけてコークス価格が高騰した。2004年後半以降は順調にライセンスが発給されているものの、発給量は一年毎に決定され、かつ分割発給されることから、依然マーケットの不安定要因となっている。
要望・解決策:
本件については輸出規制の撤廃が最も望ましいが、少なくとも、急激な輸出ライセンス発給量の削減を避ける等、国際貿易に混乱が生じないような規制の運用を要望する。また、割り当てに際しては、高い透明性を確保すべきである。

3.知的財産権の実効的な保護

(1) 総論

現状・問題の所在:
中国における知的財産権保護については、特許法、商標法、著作権法等により、基本的な制度整備が進められているが、実効的な保護については、一層の改善が求められる。
要望・解決策:
知的財産権の侵害は、外資系企業による研究開発投資を含めた対中投資への意欲を減退させるばかりでなく、企業の独自性や創造性の発揮を阻害することにより、中国企業の競争力の低下にも繋がる。知的財産権保護が権利の取得段階から執行段階まで徹底されるよう、引き続き、制度面の整備を進め、運用面での実効性を高めるとともに、知的財産権保護の重要性に関する啓発活動に努めることを求める。

(2) 各論

1) 審査の促進・審査手続きの改善
現状・問題の所在:
審査期間については近年大幅な改善がなされているものの、商標や先端技術分野など一部では、依然として審査の遅延が生じている。また、特許審査の手続きに関しても、改善はなされているものの、依然として妥当性に欠ける理由での拒絶通知例が多く発生している。
要望・解決策:
引き続き、審査期間の短縮化および審査手続きの改善を要望する。
2) 罰則規定の強化
現状・問題の所在:
2004年12月に「最高人民法院・最高人民検察院による知的財産権侵害における刑事事件の処理についての具体的な法律適用に関する若干問題の解釈」が施行され、刑事罰の適用要件における違法所得金額が引き下げられる等、罰則規定が強化される傾向にあるが、知的財産権保護に関し、実質的な効果が現れるまでには至っていない。
要望・解決策:
まずは当該解釈の規定を地方レベルでも着実に実施することを求める。また、再犯防止の観点から、更なる罰則の強化を検討すべきである。
なお、関連して、中国政府には、いわゆる「香港商号問題」(日本の著名メーカーの名称を含む商号登録が香港で可能となっており、内外で消費者に誤認を与えている問題)について、取締りの強化を要望する。
3) デザイン模倣対策の強化
現状・問題の所在:
近年、商品のデザインあるいは商品の外観の一部のみを模倣した巧妙な製品が横行しており、深刻な問題となっている。
要望・解決策:
  1. 「反不正当競争法」にデザイン模倣禁止規定を追加することを求める。
  2. 外観の一部のみの模倣を取り締るべく、「部分意匠制度」を導入することを求める。
4) コンテンツに関する法制度の緩和
現状・問題の所在:
コンテンツ分野の知的財産権侵害が後を絶たない。この一因として、正規品のコンテンツに関する規制が厳しすぎることが指摘できる。
要望・解決策:
コンテンツの流通を促進し、市場の活性化を図ることは、中国におけるエンターテインメント産業の成長にもつながる。市場の健全な発展に向けた関連法制度の緩和、具体的には、外国映画本数・ゲーム作品の制限の緩和、音楽・映像・ゲームソフトの検査プロセスの迅速化等を要望する。
5) ライセンス規制の緩和
現状・問題の所在:
「技術輸出入管理条例」は、(i)技術移転者側が、供与技術が完全で、瑕疵がなく、有効であり、契約に定めた技術目標の達成が可能であることを受入側に保障しなければならないとしており、また、(ii)第三者権利侵害時の供与側の特許保証責任についても、一方的に技術移転者側に負わせることとしている等、移転者側に過度な負担を強いている。
要望・解決策:
中国への技術移転を円滑に進める観点から、関連規定の緩和を求める。

4.サービス分野の更なる自由化

(1) 総論

現状・問題の所在:
サービス分野については、WTO加盟約束に基づき、関連法制度が整備されるとともに、実態面でも一定の自由化が進んでおり、高く評価する。他方、依然として業界ごとに諸規制等が存在しており、ビジネス展開に支障をきたしている。
要望・解決策:
日系企業を含む外資サービス業は、その先進的なノウハウを活用することで、中国における製造業のビジネスインフラ整備、中国の国民生活の一層の向上等に貢献することができる。かかる観点から、中国政府には、WTO加盟約束の範疇を超える要望事項も含め、サービス分野の更なる自由化につき前向きな対応を期待する。

(2) 各論

1) 金融サービス
【 銀行 】
現状・問題の所在:
昨年掲げた要望のうち、デリバティブ業務の認可基準が明確化されたことについては、高く評価したい。他方、現地における業務基盤の違いを考慮せず、実質的に内外差別的な扱いに繋がりかねない規制が依然として存する。また、現地での事業展開に関し、新たな規制が設けられている。
要望・解決策:
  1. 業務範囲毎、支店毎の最低持ち込み資本金に関する規定、人民元業務に関する支店毎の自己資本比率8%制限ならびにインターバンク借入比率規制40%(中国政府部内で検討中)、人民元業務支店の開設要件(開設3年、直近2期連続黒字)の緩和・撤廃を求める。これらの規制は撤廃が望ましいが、規制が存続する場合には、少なくとも支店毎ではなく中国拠点全体で要件を満たせば足りるとすべきである。
  2. 支店設立認可の促進を求める。
  3. 遠隔地における口座の柔軟な開設認可を求める。
  4. 外貨資金の海外調達に関する総量規制(「国内外資銀行外債管理弁法」による)の緩和を求める。
【 生命保険 】
現状・問題の所在:
WTO加盟約束に基づき、外資生保に対する緩和策が実施されてきた。しかしなお、外資生保に対する出資比率50%の制限や保険関係法令の具体的規定・細則の未公布、企業年金税制の問題などが残っており、実際のビジネス展開に支障をきたしている。
要望・解決策:
  1. 外資出資比率制限の緩和ならびに独資・支店形態での進出認可を求める。
  2. 保険関係法令の具体的規定・細則および企業年金に係わる税制の早期整備を求める。
  3. 保険会社の資産運用対象について、一層の規制緩和を要望する。
【 損害保険 】
現状・問題の所在:
  1. 現地法人、支店の設立認可および商品の認可が法律に規定された基準どおり運用されておらず、申請が1年以上先送りされている事例がある。
  2. 自動車第三者賠償責任保険を含む法定保険への外資参入が認められていないため、外資が基幹種目である自動車保険を販売するにあたって、著しい制約となっている。
  3. 規定公布後わずか1ヶ月半の昨年12月に施行された「中国再保険業務管理規定」の第11条、第12条2項、第22条によって、中国国内再保険会社への優先出再、保険契約者および外資保険会社の関連会社への出再の制限など、再保険に係る制限が課されている。
要望・解決策:
  1. 現地法人、支店の設立認可および商品の認可に関して、手続面において一層の迅速化と透明性を確保し、要件を満たした申請については速やかに認可を与えることを求める。
  2. 自動車の急速な普及が見込まれる中、豊富な経験を持つ外資損害保険会社に対する自動車第三者賠償責任保険の開放を求める。これにより、わが国経済界として、中国における自動車保険のインフラ構築への貢献が可能となる。
  3. 「中国再保険業務管理規定」によって新たに定められた再保険に係る各種制限の撤廃を求める。同規制は、中国の約束表の記載内容に反するものと考えられる。
2) 運送・ロジスティクス関連サービス
現状・問題の所在:
  1. 総合物流業に関しては、2002年6月に「外商投資物流企業のモデルケース設立事業展開の関連問題に関する通知」が公布され、最低資本金500万ドル、外資出資比率50%以下等の規制があり、その後も関連する規定は制定されていない。また、本通知の公布以後、それまで認められていた「国際貨運代理業」、「道路運輸業」や「倉庫業」の企業名称に「物流」の文言を冠することが一部の特例を除き不可能となっている。
  2. WTO加盟約束に基づき、昨年12月には国際貨運代理業が外資に対し完全に開放されたが、国際航空貨物販売代理資格については範囲外となっており、外資出資比率は50%以下との規制がある。
  3. 海上運輸サービスに関して、海運業に従事する会社の業務展開については、支店開設地に定期配船が行われていることが条件とされ、内陸には支店設置ができないなどの制限が存在する。
要望・解決策:
  1. 上記、総合物流企業の設立要件の緩和を求める。また、現在の「物流」という文言の社名への使用については、どのような基準で行っているか確認したい。同時に、過去に設立された「物流」を社名に冠する会社と本通知により設立された総合物流業との間で矛盾も生じており、実態に即し、その文言の使用を広く認めて頂きたい。
  2. 国際貨運代理業の開放に即し、国際航空貨物販売代理資格についても、CEPA企業に対する規制緩和のみならず、外資企業についても規制を緩和するよう求める。
  3. 海上運輸サービスについて、上記制限等の早期撤廃を求める。
3) 建設・エンジニアリングサービス
現状・問題の所在:
「外商投資建築業企業管理規定」等により、外資企業は現地法人を設立しなければ開業できない他、厳しい基準に基づき定められる資質等級により取扱うことのできる案件に差異が設けられている。また、独資現地法人には別の受注制限が課せられている。
要望・解決策:
特に以下を求める。
  1. 独資現地法人は外資過半の工事、国際金融機関のプロジェクト等以外を受注することができないが、公共事業等への参入も認めて頂きたい。
  2. 現地法人の資質等級を取得する際の資本金、従業員、工事実績等の要件を緩和し、資本金額の引き下げ等を行うべきである。
  3. ジョイント・ベンチャーの請負工事範囲については等級の高いほうの業者のものを適用していただきたい。
  4. 受注額上限を資本金の5倍以下とする制限を撤廃して頂きたい。
4) 電気通信サービス
現状・問題の所在:
「中国電信条例」、「外商投資電信企業管理規定」の施行等により、外国通信企業の参入に関する規定が整備されつつあるものの、実際の参入は進んでいない。
要望・解決策:
企業活動のインフラを提供する電気通信サービスに対するニーズは高度化・多様化しており、それに応えるためにも、特に以下を求める。
  1. 市場競争原理や利用者の権利保護等、電気通信事業における基本原則を定める電信法の早期制定を求める。
  2. 主に上記規定に基づく資本金・電信業務経営許可書申請要件をはじめとする新規参入要件を緩和して頂きたい。特に、最低資本金の引き下げ、既存の合弁法人による付加価値通信サービスの実施を可能とするための関連規制の緩和を求める。
  3. 付加価値通信サービスでは50%、移動通信、データサービスおよび国内・国際基礎通信サービスでは49%である外資上限について、過半の外資開放を求める。
  4. 新規参入時における既存のネットワークとの「相互接続ルール」の明確化を求める。
5) 観光関連サービス
現状・問題の所在:
  1. WTO加盟約束によれば、加盟後6年以内に外資系旅行会社の支店設立が認められることとなっている。
  2. 外資系の旅行会社による海外旅行(香港、マカオ、台湾を含む)の取り扱いが認められていない。
  3. 現地社員の雇用に際しては、特定派遣会社より派遣を受ける形態以外に選択肢がない。
  4. 旅客に関する航空代理業務について、外資制限が存在する。国際航空代理業務については外資マイノリティしか認めておらず、国内航空代理業務については外資には全く開放していない。
要望・解決策:
  1. 約束通りに支店設立が認められることを求める。
  2. 中国国民による海外旅行を含め、外資系の旅行会社による海外旅行取扱 業務の早期開放を求める。
  3. 現地社員の雇用に際する派遣会社の選択肢の拡大を求める。
  4. 航空代理業務を外資系旅行会社にも開放することを求める。

5.その他の要望事項

(1) 人民元に関わる諸制度の整備

現状・問題の所在:
昨年7月、人民元の管理フロート制への移行が実施された。これは中国経済の更なる国際化へのステップであり、評価する。
要望・解決策:
為替レートの問題については、当面は、送金規制の緩和等、貿易の自由化にあわせて資本取引を斬新的に自由化するとともに、将来的には変動為替相場制度に移行することを望む。また、変動為替相場制度への移行も念頭に、為替リスク軽減や業務の効率化のため、統括拠点における貿易取引に関わる決済の集中管理を可能とすべく、関連規制を見直して頂きたい。

(2) 中古設備の輸出に関する手続きの簡素化

現状・問題の所在:
機械類等の中国への中古設備の輸出に関して、一部禁止品目が存在する他、輸出が認められるものについても、輸出段階での中国の国家基準への適合検査等において、性能面以外に関する資料提出が求められるなど、手続が煩雑となるケースも見られる。
要望・解決策:
中古設備を輸出する際、日本企業は企業の社会的責任を認識し、厳格な品質管理を行っている。また、中古設備そのものの技術水準が国際的基準からみて必ずしも古いものであるというわけではなく、その活用はむしろ、輸入先の中国企業等に対する技術移転促進やコスト削減にも資することとなる。こうした観点からも、中古設備に係る輸出手続の簡素化を求める。

(3) 関税の削減・撤廃

現状・問題の所在:
WTO加盟に伴い、関税を大幅に削減、撤廃することが約束された。
  1. 関税率の引き下げは、概ね譲許表に従って実施されている。写真フィルム等では、従価税で譲許したにも関わらず、実効税率で従量税を適用しているが、2006年度の税率改定でほぼ譲許率相等の税率まで引き下げられた。
  2. 加盟約束の移行期間の終了後も、一部の素材、部品、製品(例えば、オーディオビジュアル機器、フラット・パネル・ディスプレイ式カラーテレビ、カラーテレビ用プラズマ及び液晶パネル、プロジェクション・スクリーン、プロジェクタ、複写機・デジタル複写機、カメラ(一眼レフカメラ、銀塩カメラ)、レンズ、鍵盤、電球、蓄電池、微電子組立機、発振子、ディーゼル・エンジン、トラクター、フォークリフト、熱陰極蛍光放電管、人造繊維短繊維織物、エアコン用部品、時計類)等には10%以上の高い関税が賦課されることとなっている。
要望・解決策:
  1. 関税譲許はWTO加盟に際しての最も基本的な約束であり、譲許表に従い、関税引き下げが遅滞なく実施されることが重要である。従量税の適用については、大幅な税率引き下げは評価しつつ、一部品目に譲許率を上回るものも残っており、問題の根本解決のために、譲許どおりの従価税とすることを求める。
  2. WTO新ラウンド交渉あるいは自主的な自由化を通じて、更なる引き下げに取り組むことを求めたい。
以上

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