世界では人、モノ、カネ、そして情報が国境を越えて活発に行き交うグローバル競争が一段と激化している。国内では、超高齢社会、人口減少社会の到来が現実のものとなった。これらの状況に一刻も早く対応するため、いま、わが国には、さらなる構造改革と新たな成長戦略が求められている。
わが国がグローバル競争に勝ち抜いていくのは容易ではない。しかし、企業が、活力の源泉であるイノベーションを通じて世界の成長力をとらえ、それを取り入れた経営を行っていけば、経済のさらなる発展は十分可能である。そうした観点から、将来にわたり国を支える産業を創出するとともに、対外戦略を確立し、遂行することが急がれる。わが国の強みである製造業の競争力をさらに高め、併せてサービス産業の質的向上を図るために、絶えざる技術革新と経営改革に努めることが肝要である。
小泉政権の下で構造改革は進展し、企業の努力とも相まって民主導による持続的な安定成長の基盤が整いつつある。しかし、改革はいまだ道半ばである。政府には引き続き、企業の競争環境や国民の意識、行動の変化を踏まえ、小さな政府を目指した改革をさらに前進させることが強く望まれる。構造改革が新たな格差を生んでいるとの指摘も聞かれるが、「結果の平等」を是としてきた国民の価値観が変化し、「機会の均等」と「公正な成果の配分」を求めるようになっていることを認識すべきである。
いま企業人に求められるのは、より良い未来を求めて、変化を恐れず果敢にリスクに挑戦する姿勢であり、わが国社会が伝統的に持つ良さや強みを活かしつつ新しい価値を創造することである。そのために時代を切り拓く若い世代の育成が急がれる。人を育て、人を信じ、人間力を最大限に発揮させる社会や企業の組織・文化こそ、経済社会発展の基盤となるものである。
こうした観点から、日本経団連は、本年度、以下を重要課題と位置付け、その実現に向けて総力をあげて取り組む決意である。その際、政治への働きかけをさらに強め、企業の社会貢献としての政治寄付を促進するとともに、政策本位の政治の実現を支援する。
同時に、企業が自己規律の強化と公正な競争を通じて内外から信頼される存在となるよう全力を尽くしてゆきたい。