優先政策事項 添付資料

優先政策事項【解説】

2007年1月10日
(社)日本経済団体連合会

1.経済活力、国際競争力強化に向けた税・財政改革

経済活力、国際競争力を維持・強化し、雇用の維持・創出、国民生活の安定を図るため、中長期的に潜在的国民負担率を50%以下に抑制する。このため、国・地方を通じた歳出改革・抜本的な税制改正を断行する。

  1. (1) 2011年度までに国・地方を合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化することを目標に、社会保障関係費の抑制、地方財政の計画的な見直し、国・地方を通じた公務員人件費の削減など、徹底的な歳出削減を実行する。
  2. (2) 法人税、所得税、消費税等の税体系全体の抜本的改革を実現する。税制改正においては、減価償却制度の見直し、研究開発の促進など企業活力の向上、国際課税の適正化、信託法改正への対応等に必要な税制措置を実現する。法人実効税率は30%を目標に引下げ、国際競争力を強化する。個人所得課税については低・中所得者層に配慮した減税、控除制度の抜本改革、社会保障番号を活用した公平性・透明性の確保を行う。

2.将来不安を払拭するための社会保障制度の一体的改革と少子化対策

わが国の国際競争力の維持・向上と整合的であり、少子高齢化に対応した持続可能な社会保障制度の確立に向けて、現役世代・将来世代の負担を抑制するために、年金、医療、介護の一体的改革を進め、社会保障給付の伸びを「高齢化で修正した成長率(名目成長率に、公的年金のマクロ経済スライドを考慮した上で、高齢化の進行率を加算したもの)」以下にとどめる。また、重点的・効果的な少子化対策を実施する。

  1. (1) 社会保障制度の再設計にあたっては、国民の自助や互助ではカバーできないリスクへの対応をより重視したものとする。
  2. (2) 医療の分野では、在院日数の削減、医療の標準化、診療報酬の包括化のさらなる推進等により医療費を抑制するとともに、混合診療の導入など医療保険における官民の役割分担を見直す。ICT(情報通信技術)を活用して医療の透明化・効率化を進め、国民に利便性が感じられる医療制度とする。
  3. (3) 公的年金については、給付と負担の関係を見直し、負担能力のある高齢者に支え手に回ってもらうこと等の措置により、国民の信頼感を確保する。また、制度の公平性確保の観点から被用者年金の一元化を実現する。基礎年金の国庫負担引き上げについては、税制の抜本改革による安定財源の確保を求める。さらに、社会保障番号と社会保障個人勘定を整備し、税と年金保険料の徴収を一元化する。
  4. (4) 少子化対策については、従来の諸施策の効果を検証した上で、税額控除等の経済的支援策を講じる。保育・学童保育分野においては、予算配分の見直しや保育サービス利用者の意見を反映できる制度への改革を行う。また、各界各層が連携して国民的運動を展開する。

3.民間活力の発揮を促す規制改革・民間開放の実現と経済法制の整備

政府の役割を再定義し、簡素で効率的な政府を実現するため、行政改革を断行する。あわせて、官主導社会から脱却し、個人や企業の多様な挑戦を促進して経済社会の活性化を図るため、規制改革・民間開放を推進する。さらに、わが国企業の国際競争力を強化するため、企業経営の効率化や資金調達の円滑化を図る。また、経済法制の整備に当たっては、企業の過度な負担の回避と自主的な内部統制の確立を重視する。

  1. (1) 規制改革・民間開放をリードする強力な後継推進組織を設置して、雇用・労働や医療など重点分野における規制改革を一層推進するとともに、構造改革特区、規制改革・民間開放集中受付月間における要望の実現割合を高める。公共サービス改革法に基づき、市場化テストの活用等を通じて官業の民間開放を進める。また、公務員制度の抜本改革や省庁再々編の検討、内閣機能の強化などによって、簡素かつ効率的で、有事や時代の変化への対応能力の高い政府を実現する。2007年10月からの郵政民営化に向けた準備を着実に進めるとともに、政策金融機関を改革し、2008年度から新体制に移行する。独立行政法人について、事業の廃止・縮減、民営化等を積極的に進める。また、特定独立行政法人の非公務員化を推進する。
  2. (2) 日本的経営の強みを活かす観点から会社法を日本社会の実情を踏まえた柔軟なものとする。株主保護の観点から、合併等対価の柔軟化について慎重に対応する。また、独占禁止法を抜本改正し、国際競争の観点から企業結合規制を見直すとともに、より一層適正な手続(デュー・プロセス)を確保する。また、会計基準の国際的な統合(コンバージェンス)を進め、米欧基準との相互承認を図る。

4. 日本型成長モデルの実現に向けたイノベーションの推進

基礎的な研究開発が競争力の向上に円滑につながるイノベーション戦略を確立し、経済発展や生活の質の向上を実現する。このため、バイオ、ICT、環境、ナノテクノロジー・材料、ものづくり、宇宙・防衛・海洋などの先端技術開発とその産業化を促進する。あわせてコンテンツ産業の振興に向けた官民の取り組みを強化する。

  1. (1) 「革新を続ける強靭な経済・産業の実現」など、第3期科学技術基本計画で定められた政策目標を実現すべく、府省を越えて研究開発を推進する体制を整備する。政府研究開発投資について、対GDP比1%を前提とする総額目標25兆円の達成に取り組み、欧米先進国以上の水準を確保する。宇宙・海洋の開発・利用推進に向け、基本法などの法制を整備する。大学や大学院における高度人材の育成、産学官連携の促進策やベンチャー企業育成策を戦略的に実施するとともに、国際競争上重要な戦略重点科学技術について、国際標準化、規制改革、初期需要の創出などの施策を包括的に実施する。
  2. (2) 知的財産政策を強化し、世界特許の構築に向けた制度・運用の国際調和・相互承認の推進、模倣品・海賊版対策の強化などを行う。政府の「経済成長戦略大綱」に基づき、約13.6兆円となっているコンテンツ産業の市場規模を10年後に約5兆円拡大するとともに、情報家電のネットワーク化推進のための研究開発・実証実験の推進、人材の発掘・育成等の環境整備を行う。

5.持続可能な経済社会の実現に向けた真に実効あるエネルギー・環境政策の推進

資源・エネルギーの有効活用を図り、持続可能な成長基盤を確立するため、エネルギー政策と環境政策を一体的に推進し、環境と経済の両立を実現する。イノベーションにより環境・エネルギー関連の成長制約条件の緩和・解消を実現する。

  1. (1) エネルギーの安定供給を確保する観点から、エネルギー安全保障を強化し、戦略的にエネルギー関連の施策や外交を展開する。とりわけ、エネルギー安全保障と地球温暖化対策に貢献する原子力について、原子燃料サイクルを含めて推進施策を講じ、エネルギーの最適な供給バランスを追求する。政府の「技術戦略マップ」に基づき、エネルギーや環境関連の技術開発を推進する。
  2. (2) 民間主導の低CO2経済社会を形成すべく、環境税や温室効果ガスの排出割当てなどの経済統制的な施策は一切採用することなく、経団連自主行動計画や国民運動の展開、サマータイムの導入など、民間の活力を活かした対策を推進する。また、わが国の環境技術で地球規模の温暖化防止への貢献を拡大するとともに、米国や中国、インドを含めたすべての主要排出国が参加する新たな国際的枠組みを構築する。
  3. (3) 有効な資源循環と適正な廃棄物処理を実現する循環型社会の構築に向けて、廃棄物処理法をはじめとした廃棄物・リサイクル法制を整備し、事業者に過大な負担を負わせることなく、政府・自治体・消費者・事業者の各々が適切な役割を果たす仕組みを構築する。

6.公徳心をもち心豊かで個性ある人材を育成する教育改革の推進

公徳心をもち、創造性や国際性に富み心豊かで個性ある人材の育成に向けて、教育の質の向上と教育現場の活性化を実現する。このため、21世紀にふさわしい教育理念を確立するとともに、「多様性」「競争」「評価」を基本とする改革を断行する。

  1. (1) 新しい教育基本法の理念に基づき、国を愛する心や国旗・国歌を大切に思う気持ちを育むべく、日本の伝統や文化、歴史に関する教育を充実する。公徳心を涵養するため、若者が多様な社会的活動に参加しやすい環境整備や税制等による社会教育を担うNPO等の活動の促進を行う。
  2. (2) 学校選択制の拡大、教育の受け手による学校評価制度の導入、学校選択の結果を反映した学校への予算配分の実現により、学校が教育の質的向上に向けて切磋琢磨する環境を整備する。地方や学校への権限委譲、株式会社立学校等の参入促進、学習指導要領の柔軟な運用などを通じ、多様な教育を実現する。同時に、教員免許更新制の導入を含む教員養成・採用制度の改善、教育の受け手による教員評価制度の導入、評価結果の教員配置・処遇への反映を図る。
  3. (3) 高等教育機関(教員を含む)においても教育・研究に対する評価を充実し、予算配分や処遇などに反映する。

7.個人の多様な力を活かす雇用・就労の促進

円滑な労働移動と雇用機会の創出ならびにワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、労働市場・労働基準に関わる規制を改革する。人口減少社会に対応すべく、若年者や女性、高齢者、障害者、外国人を含め、個人の多様な価値観を反映し、雇用・就労形態を改革する。

  1. (1) ホワイトカラーエグゼンプション制度等により、従来の労働時間規制の枠を越えて勤務形態の柔軟性を高め、労働生産性の向上、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現を図る。
  2. (2) 企業・職場の実態に即したパートタイム労働対策を実施する。
  3. (3) 職業紹介・相談や能力開発の民間委託を進めて対象範囲の大幅な拡大を図り、労働市場を活性化させる。若年者雇用の促進に向けては、職場体験やインターンシップなどを推進するとともに、各省庁が重複を廃し連携して政策を実施する。雇用保険制度の失業等給付における国庫負担については、国の責任を堅持するとともに、雇用保険三事業および労災保険労働福祉事業の廃止・縮小を進める。さらに、試行雇用(トライアル雇用)の促進による企業の実態に即した障害者雇用政策に取り組む。
  4. (4) 外国人材を積極的に受け入れる体制整備を総合的に進め、その一環として、(1)専門的・技術的分野の在留資格の拡大、(2)看護・介護分野など、将来的に人手不足が予想される分野における外国人材の秩序ある受入の促進、(3)外国人研修・技能実習制度の改善等を含む措置を講ずる。同時に、外国人の在留・就労管理の一元化を行う。

8.道州制の導入の推進と魅力ある経済圏の確立

地域の自立と地域経済の活性化を促すため、地方分権改革を実現して中央集権・官主導体制からの転換を図る。地方分権の担い手となる地域を実現するため、2015年をめどに道州制を導入する。社会基盤の整備にあたって、地域住民のみならず、利用者の視点を十分に反映させる。各地域の個性を活かし、魅力あふれる都市・地域づくりを推進する。また、美しい街づくり、良質な住宅の供給、治安の向上、防災体制の強化を通じ、快適な住宅・住環境を整備する。

  1. (1) 道州制の導入に向けて、内閣総理大臣の下に幅広く有識者が参加する検討組織を設置して具体的検討を深め、推進計画、工程表を策定する。
  2. (2) 国と地方の役割を明確化し、国から地方への行政権限・税財源の移譲や国の支分部局の統廃合、さらなる市町村合併など、地方分権改革を推進するとともに、国・地方を通じた行財政改革を断行する。
  3. (3) 地域の発意と責任に基づき広域的な連携のもとに社会資本整備を行う。社会資本の整備にあたっては、使い勝手の向上を重視し、民間の経営ノウハウや資金を活用して、サービスの向上や運営の効率化を図る。このような観点から、早急に改正PFI法の運用ガイドラインを整備する。
  4. (4) 国際的水準における都市や地域の魅力、競争力の向上を図るため、税制上の支援措置の導入等により、各地域の個性や創意工夫を活かし、安全、安心な都市・地域づくりを推進する。地域経済の活性化に向けて、産業クラスターの形成、広域観光振興などを推進するとともに、中小企業の自立と活力の向上を図る。
  5. (5) 高コスト構造を是正するために、首都圏三環状道路の整備や港湾・空港へのアクセス改善等、緊急度の高い産業・物流インフラをハード・ソフト両面から戦略的・重点的に整備する。
  6. (6) 観光立国の推進に向けて、基本計画を策定し着実な実施を図る。具体的には、国際空港の早期拡充、ビザ発給手続の簡素化・透明化、対外プロモーション活動の充実、地域の魅力開発に向けた人材育成等を実施し、外国人観光客を拡大させる。
  7. (7) 住生活基本法ならびに基本計画に則り、既存ストックを含めた住宅・住環境の質的向上、住宅の流通市場の整備を図る。新耐震基準、バリアフリー化、環境基準を満たす住宅の取得、建設・改修については、自己資金・借入れを問わず、工事費の一定割合を控除する住宅投資減税制度を導入する。
  8. (8) 治安・防犯対策については、行政のタテ割りを排除するとともに、地域社会のネットワークを生かして犯罪抑止力を高める。テロや自然災害などの緊急事態に備え、省庁の枠を超えた危機管理体制を強化するとともに、政府と企業や住民が効果的に連携する体制を整備する。

9.グローバル競争の激化に即応した通商・投資・経済協力政策の推進

個人、企業が自らの責任と創意工夫の下、国境を越えてより自由かつ円滑に活動できる環境を戦略的に整備する。このため、WTOに基づく多角的自由貿易体制の維持・強化を通商戦略の基軸に据えつつ、それを補完する手段として、わが国にとって重要な国・地域との間で経済連携協定(EPA)を締結する。2011年には東アジア全域に及ぶEPAを成立させる。また、重要な国・地域の安定・発展ならびにわが国との経済関係の強化を促す手段として政府開発援助(ODA)およびその他の政策金融機能を活用する。時代に則したわが国農業のあるべき姿を確立し、農業分野の構造改革を加速する。さらに、対日直接投資の一層の促進を図る。加えて、わが国の国際競争力強化の観点からも、通関制度や港湾諸手続など貿易諸制度について、抜本的改革を行う。

  1. (1) 喫緊の課題として、WTO新ラウンド交渉を本格的に再開し、早期に妥結させるため、わが国としても積極的な役割を果たし、グローバルな貿易・投資・サービスの自由化を促進する。
  2. (2) 農業を含む国内産業の競争力強化に資する構造改革に取り組み、その成果を交渉に有機的に結びつける。
  3. (3) EPAについては、東アジアに重点を置きながら、包括的で自由化度の高い協定の締結に向けて、多国間および二国間の交渉を並行的かつ迅速に推進する。併せて、資源・エネルギー、食料供給国との経済関係を強化する。
  4. (4) 上記の通商政策を推進するためにODAを戦略的に活用する。2008年10月に予定されている新政策金融機関や新JICA(国際協力機構)の設立にあたっては、資源・エネルギー関連および開発途上国のインフラ整備等に関わるリスクの高い民間だけでは対応困難な海外プロジェクト等への有効な支援が実施できるよう体制整備を行う。
  5. (5) 対外経済政策について、民間の意見を継続的に取り入れる仕組みを確立するとともに、対外交渉および必要な国内構造改革を政府一体となって推進する。
  6. (6) 企業のグローバルなサプライチェーン構築や、貿易円滑化とセキュリテイ強化の両立に取組む国際的な動きに対応できるよう、わが国の通関制度や港湾諸手続など貿易諸制度について、ユーザーの視点から抜本的改革を行う。

10.新憲法の制定に向けた環境整備と戦略的な外交・安全保障政策の推進

2010年代初頭までに、憲法を改正し、内外情勢や国民意識の変化に対応した、新たな国家理念を体現したものとする。世界から尊敬される国を目指し、わが国の繁栄と世界の平和に向け国際社会が抱える課題に主体的に取り組むべく、戦略的な外交・安全保障政策を推進する。

  1. (1) 憲法改正の実現に向けて、国民投票法案の早期成立を図るとともに、各界各層における国民的議論を喚起する。
  2. (2) 安全保障体制や自衛隊などの国際貢献に関する基本方針や手続きを明らかにし、内外の信頼を確保するため、安全保障に関する基本法ならびに国際平和協力に関する一般法を整備する。
  3. (3) 内閣総理大臣のリーダーシップの下、省庁横断的に、防衛、経済、技術などを含む総合的な安全保障の実現に向けて取り組むため、現在の安全保障会議を抜本的に強化し、日本版NSC(国家安全保障会議)として機能させる。
  4. (4) 日米同盟を基軸としながら、中国・韓国などの近隣諸国との信頼関係の強化を図る。
以上

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