日・EU経済関係の発展に向け新たな枠組みの構築を求める
―日本経団連・ドイツ産業連盟共同提言―
2007年8月30日
日本とドイツはアジア、欧州それぞれの地域における統合に重要な役割を果たしているが、それにとどまらず、両地域間の関係の発展を主導すべきである。日独両国が直面している共通の課題を克服するため、より緊密な協力が必要である。
グローバル化が進む世界において、また、ドイツがEU加盟国であることに鑑みれば、日・EU経済関係の強化は日独両国の競争力を強化する上で不可欠である。日・EU双方において、現在の良好な経済関係が互いの無関心につながることのないよう、さらに多くの努力が必要である。
以上の観点から、日本経団連とドイツ産業連盟(BDI)は、日独両国政府に対し、日・EU経済関係の発展のための新たな枠組みの構築に尽力するよう求めるものである。
1.日・EU貿易・投資促進のための協定の締結
事業の予見可能性を高め、公平な競争条件を確保し、経済関係の一層の発展につなげるためには、経済活動に関わる日・EUそれぞれのルール・制度の整備・改善やそれらの調和を進めることが重要である。
そのためには、貿易・投資を促進するための協定を日・EU間で締結すべきである。そのような協定は、日・EU関係発展のための枠組みの中核を成すものとして構想され、実際にそのように看做されるものでなければならない。
協定には以下の内容が盛り込まれるべきである。
- 国境措置および国内措置によって輸入者および消費者に課せられている負担を低減すること。
- 日・EU規制改革対話などの成果に基づいて規制改革を一層促進すること。
- 新分野における国際標準に関する協力を深めること。
- 模倣品・海賊版を規制するために知的財産権の実効ある執行を確保すること。模倣品・海賊版に対する第三国における罰則の強化や模倣品・海賊版対策に関する協力の促進に努めること。
- 日本の一般会計原則(GAAP)が、EUが統一基準とする国際会計基準(IAS/IFRS)と同等であると認められること。同様にEUの会計基準が日本において認められること。
- 移転価格税制に関する透明性と国際的に共通の理解を確保すること。資料作成等のコンプライアンスにかかる負担を軽減するとともに、二国間および多国間の事前確認制度(APA)に関する合意を円滑にするため、共同のフォーラムを創設すること。
- 社会保険料の二重払いを回避するための二国間の社会保障協定の締結を促進すること。
- 滞在労働許可の手続きを簡素化すること。事業投資環境の改善のため迅速な処理を促進すること。
2.WTOドーハ・ラウンドの成功裏の終結
日・EU間の協定は、WTO交渉によって得られる成果と相互補完的なものとなるよう、WTO交渉の成果を上回る貿易・投資の自由化を追求するものでなければならない。
WTOを通じた多国間のアプローチの重要性に鑑み、日本そしてドイツを主要加盟国とするEUは、ドーハ・ラウンドの年内妥結に向けて協力すべきである。
3.持続的成長のためのイノベーション
日・EUの持続的な成長にとってイノベーションは不可欠であることから、知的財産権を保護するとともに、イノベーションを推進するための具体的な施策が講じられる必要がある。日独両国は共に高度な技術を有する国として、日・EU間の協力を主導、強化すべきである。
- 知的財産権の保護を強化すべく、模倣品・海賊版の拡散防止を中心とする国際的に共通の法的枠組みを一層改善すること。
- 模倣品・海賊版に対する一般の認識を高めるため、特定の期間を定めて対策キャンペーンを行うこと。
- 各国の特許制度の調和・簡素化を推進すること。現在先進国間で進められている「アレキサンドリア・プロセス(特許制度調和に関する先進国会合)」に沿って、先願主義に関して国際的に速やかに合意すること。
- 研究開発分野における広範な協力を促進することにより、次世代技術の早期実用化を支援すること。
4.環境保護とエネルギー効率
地球的規模の気候変動の中にあって、持続的な経済成長を促進しつつエネルギー効率を高めることは、日独両国の基本的かつ長期的な利益に沿うものである。
- 2013年以降のポスト京都議定書について、すべての主要排出国が参加し、環境保護と経済成長を両立できる柔軟かつ多様な国際的枠組みを確立すること。
- エネルギー効率の向上と新技術の応用を促進すべく、長期的視野に立った市場指向型の政策を推進すること。
- 省エネ製品およびラベリングに関する制度を相互に受入れることを促進すること。
以上
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