2007年度 環境自主行動計画第三者評価委員会 評価報告書

2008年5月13日
環境自主行動計画
第三者評価委員会

1.はじめに

京都議定書の約束期間が今年から開始され、また、7月には、日本が議長国を務めるG8洞爺湖サミットが開催されて、地球温暖化問題が主要議題として取り上げられる予定である。こうした中、温暖化問題に対する関心はますます高まっており、日本の経済界に対しても日本経団連環境自主行動計画(温暖化対策編)(以下、自主行動計画)の着実な実行をはじめとして、温室効果ガス削減に向けた積極的な取組みが求められている。
第三者評価委員会は、2002年の設置以来、自主行動計画の毎年のフォローアップの進捗状況を確認するとともに、信頼性・透明性の向上に向けて検討すべき点を指摘してきた。今年度の評価報告では、これまでの指摘事項への対応とともに、自主行動計画の一層の充実に向けた課題や経済界への期待を取りまとめた。また、第三者評価委員会として、ポスト京都議定書の時期における産業界の取組みに対して視点を提供し、検討を促すこととした。

2.2007年度自主行動計画フォローアップ結果(2006年度実績)および
第三者評価委員会による調査の概要

日本経団連の自主行動計画には、現在、産業・エネルギー転換部門35業種、業務部門13業種・企業、運輸部門13業種・企業の合計61業種・企業が参加している。産業・エネルギー転換部門35業種は、わが国全体のCO2排出量の45%、産業部門及びエネルギー転換部門全体のCO2排出量の84%をカバーしている。
産業・エネルギー転換部門では、「2008年度〜2012年度の5年間の平均で、CO2排出量を1990年度レベル以下に抑制するよう努力する」という全体目標を掲げて取り組みを行っている。
2006年度の産業・エネルギー転換部門(35業種)からのCO2排出量は、5億458万t-CO2と1990年度比で1.5%減少し、2000年度から7年連続で目標をクリアした。また、産業・エネルギー転換部門の全体目標は達成可能となる見通しであり、35業種の排出量の約9割を占める上位7業種の見通しに基づく試算によれば、2008年度〜2012年度の5年間平均の排出量は90年度比2.9%減となっている。
第三者評価委員会としても、経済界が目標の達成に向けて温暖化対策を進め、着実な効果をあげてきたことを評価する。第三者評価委員会では、今年度、5回の会合を開催し、自主行動計画に参加している業種・企業のうち、産業・エネルギー転換部門の9業種(電気事業連合会、日本鉄鋼連盟、日本製紙連合会、日本ゴム工業会、石油連盟、電機・電子4団体、セメント協会、日本自動車工業会、日本自動車車体工業会)からヒアリングを行うとともに、報告書で指摘すべき事項について検討を行った。また、2月には、日本エネルギー経済研究所を招き、ポスト京都議定書における産業界の自主的な取り組みのあり方に関する勉強会を行った。

3.これまでの指摘事項への対応状況の確認

これまでの指摘事項について、以下の通り、参加業種・企業(ここでは、個別業種版を提出した54業種・企業)の対応状況を確認し、その評価を行った。

(1) 目標設定

  1. 1. 参加業種・企業の目標指標採用および目標値設定の理由説明
    業種別の目標について、参加業種・企業は、業種・業態の違いに応じて、4種の指標から最適なものを選択したうえで目標値の設定を行っている。そこで、指標の選択と目標値の設定の合理性を担保するため、参加業種・企業は、目標指標の選択理由と目標値の設定理由について説明する必要がある。
    今年度は、目標指標の選択理由について50業種・企業(前年度49業種・企業)、目標値の設定理由については47業種・企業(同43業種・企業)から説明があった。残る業種・企業についても、来年度以降、説明が望まれる。

  2. 2. 2008年度〜2012年度の平均としての目標設定
    従来、自主行動計画は2010年度を目標達成年度としていたが、昨年度、産業・エネルギー転換部門の全体目標について、京都議定書の約束期間を踏まえ、2008年度〜2012年度の平均で1990年度レベル以下とすることとした。そこで、産業・エネルギー転換部門の業種の目標についても、2008年度〜2012年度の5年間の平均として達成する目標設定を期待したところである。
    現時点では、35業種のうち30業種が5年間の平均として達成するべく目標設定を行うことを意思決定しているが、残る5業種は、従来の2010年度時点を念頭に置いたものとなっている。産業・エネルギー転換部門の業種の目標は、できるだけ早い段階で全ての業種が全体目標と整合性を取ることが期待される。

  3. 3. 業種別目標の見直しへの対応
    業種目標の上方修正については、産業・エネルギー転換部門で17業種、業務部門で2業種、運輸部門で4業種と、自主行動計画が開始されて以来、目標引き上げ業種の数が最高となったことは評価できる(前年度は産業部門・業務部門で合計5業種)。地球温暖化の防止、京都議定書の目標達成に向けて、引き続き、参加業種・企業のより一層の努力が求められるような高いレベルの目標への取り組みが期待される。
    また、日本経団連として「原則として、上方修正以外の個別目標の見直しは認めない」旨の方針を徹底していることを評価する。新たに設定された目標が「引き上げ」に該当するかどうかの評価に当たっては、温暖化対策の進捗状況の評価を容易にするとともに、恣意的な目標設定との疑念の余地を排除し信頼性を確保する観点から、原則として、日本経団連が従来から採用している基本的な算定方式に基づく数値を用いて行うべきである。

(2) 目標達成の蓋然性の向上

  1. 1. 2008年度〜2012年度の予測に用いる経済指標の統一
    日本経団連では、2008年度〜2012年度平均で達成すべき目標および見通しの計算にあたって、期央の2010年度時点の推計データを統一的に用いることとし、統一指標を採用しない場合にはその理由と根拠の説明を求めている。
    採用した経済指標に関する説明は、前年度と同様、38業種・企業により行われた。そのうち、統一指標を採用せず独自の指標を用いたのは16業種で、そのすべてから理由と根拠が説明された。来年度以降、まだ説明を行っていない業種からの報告を改めて望む。

  2. 2. 京都メカニズムの活用状況
    目標達成に向けた京都メカニズムの活用方針については、前年度と同様に、産業・エネルギー転換部門の35業種全てから報告があった。そのうち、京都メカニズムのクレジットを活用するとした業種が4業種、活用を検討するとした業種が5業種あった。具体的な事例や獲得クレジット量の見通しについて、引き続き積極的な報告が求められる。

  3. 3. 今後実施する対策とその定量的効果
    目標年度が近づくに伴って、全体としてより正確な見通しを得るためには、参加業種・企業からの具体的・定量的な対策効果と見通しに基づく報告が必要となる。
    目標達成の見通しと今後強化する具体的な対策に関する記載について、産業・エネルギー転換部門の35業種中、34業種(前年度34業種)が今後実施する対策項目を開示し、16業種(同15業種)が定量的な効果を記載した。今後は、とくに定量的効果について、より多くの業種からの報告を求めたい。

(3) 要因分析

  1. 1. CO2排出量・原単位の変化理由の説明
    CO2排出量の増減理由の説明は51業種・企業(前年度50業種・企業)、CO2排出原単位ならびにエネルギー消費原単位の変化理由の説明は、49業種・企業(同48業種・企業)が記載を行った。とくに、原単位変化の分析は、参加業種・企業の対策を進める上で有益であるため、報告の充実が期待される。また、可能な限り定量的な内容の記載を併せて求めたい。

  2. 2. 個別の温暖化対策の費用対効果の説明
    費用対効果分析(温暖化対策の具体例、投資費用、CO2削減効果の関係)の記載については、産業・エネルギー転換部門の29業種(前年度と同数)、民生部門の6業種(前年度4業種)、運輸部門の2業種(前年度と同数)から報告が行われた。
    個別の温暖化対策の費用対効果分析は、自主行動計画による取組みについて第三者からの理解や信頼性を高める上で有効であり、分析の一層の充実が期待される。

(4) 業務部門、運輸部門への貢献

  1. 1. 業務部門、運輸部門のオフィスや物流に関するフォローアップ手法やデータ整備、目標のあり方
    業務オフィスや物流等に関する対策の重要性が高まる中で、どの部門の業種・企業であるかに関わらず、オフィスや物流に関するフォローアップ手法やデータ整備、目標のあり方について、早期の整理が求められていた。
    上記の課題については、全ての自主行動計画参加業種・企業(61業種・企業)に対し、本社ビルと自家物流のエネルギー消費に関する基礎的なデータ整備に向けた調査が実施された結果、本社ビルについては、24業種・企業から報告があったが、物流では17業種・企業からの報告に留まった。引き続き、データ整備を進め、目標のあり方について早期の整理が求められる。

  2. 2. 業務部門、運輸部門の参加業種・企業による取り組みの充実
    今年度の業務部門への参加業種・企業には、前年度の12業種・企業に、新たに1企業(KDDI(株))が加わった。業務部門、運輸部門の合計では26業種・企業が参加している。これらの業種の中には、2008年度〜2012年度におけるCO2排出量やCO2排出原単位などの定量的な目標を設定している業種もある(業務部門で11業種・企業、運輸部門で6業種)。

  3. 3. LCA的評価の充実
    製品・サービスの使用・消費段階における排出削減効果は、業種・企業の社会全体のCO2削減に向けた努力を示すとともに、利用者が製品・サービスを選択する際の情報を提供するという観点から重要である。
    今年度、LCA的評価による削減効果を記載した業種数は17業種(前年度16業種)で、削減事例の定量化を進めた業種があった。後述の通りLCA的評価の重要性は高まっており、充実に向けた取り組みを期待したい。

(5) 調査方法等

  1. 1. フォローアップ対象範囲の調整
    参加業種間の重複を避けるためのバウンダリ調整については、産業・エネルギー転換部門の35業種全て(前年度と同数)で確認が行われた。他方、民生部門の7業種、運輸部門の5業種で依然未確認となっている。これらの業種については、来年度以降の確認が求められる。

  2. 2. 拡大推計の廃止・実績値に基づくデータの使用
    50業種で拡大推計でなく実績値に基づくデータを使用していることが確認された。残る4業種においては実績値の割合の向上に努めるとともに、拡大推計を行う理由について説明が必要である。

  3. 3. 「フォローアップ結果概要版」等において用いられる算定方式
    今年度の「フォローアップ結果概要版」においては、日本経団連が従来から採用している基本的な算定方式以外の算定方式に基づいた数値が掲載された業種があった。
    この点については、「フォローアップ結果概要版」における業種横断的な数値評価の必要性、分かりやすさの確保の観点から、すべての業種の算定方式を統一すべきである。少なくとも当面は、削減効果の検証の容易さ、数値の連続性の確保、算定方式を変更する場合に生じるコストの回避という観点から、日本経団連が従来から採用している基本的な算定方式のみを用いることが望ましい。
    他方、各業種の算定方式の統一性を確保すべき要請がある「フォローアップ結果概要版」とは異なり、「フォローアップ結果個別業種版」には、むしろ、各業種の事情に応じた取り組み等をきめ細かに説明する役割があるため、業種独自の算定方式による数値を掲載して事情を適切に説明することは各業種の判断に委ねられるべき事項である。

  4. 4. エネルギー効率等の国際比較
    エネルギー効率等の国際比較は、自主行動計画参加業種におけるエネルギー効率向上の努力や成果を説明する上で重要である。
    今年度についても、前年度と同様に8業種においてエネルギー効率の国際比較が報告された。諸外国における産業構造の違いや、比較に必要なデータ入手の困難さなど対応が容易でない場合も多いが、国際的にも認知されるような報告・データ更新に向け、引き続き検討が望まれる。

4.自主行動計画の充実に向けた課題

(1) 京都議定書約束期間における目標達成の蓋然性の向上

今年から京都議定書の約束期間が始まるため、自主行動計画に対する期待も一層高まっている。3月に閣議決定された改定京都議定書目標達成計画においても、自主行動計画に基づく取組みに大きな期待が示された。参加業種・企業における個別目標の達成と、産業・エネルギー転換部門の全体目標の達成の双方が強く求められる。

(2) 全体目標の引き上げの検討とデータの信頼性の確保

現在、2008年度〜2012年度の5年間の平均で1990年度レベル以下とされている全体目標については、達成の蓋然性が高まってきており、目標引き上げが検討課題となる状況に入ってきている。他方で、鉄鋼や電力を含む上位7業種による目標達成見通しには京都メカニズムのクレジット購入予定が含まれていることや、一部の原子力発電所の停止といった、目標引き上げを困難とする要因もある。そのため、原子力発電所の運転再開等の条件が整ってきた段階で、全体目標の引上げの検討を行うことが期待される。
また、参加業種・企業から提出されるデータが十分な信頼性を有することは重要である。現在でも、産業・エネルギー転換部門の業種の多くは日本経団連と政府審議会の双方によって提出データが確認されているが、データの信頼性確保に向けた方法を検討することが期待される。

(3) 目標水準を達成した業種の対応

今年度は、先述の通り、61業種・企業の中で23業種と、目標を引き上げた業種の数は過去最高となった。各業種・企業が自らの判断において更なる目標の引き上げを行うことは、自主行動計画の優れた特徴の一つであり、高く評価できる。引き続き、目標水準を達成した業種においては、目標の引き上げを検討することが望まれる。

(4) 電力の炭素排出係数に関する考え方の整理

自主行動計画のフォローアップで使用する電力の炭素排出係数については、PPS(特定規模電気事業者)分の発電構成が未だに僅少であることから、電気事業連合会から報告される一般電気事業者の電力排出係数を一律採用している。前年度も指摘した通り、PPSの利用拡大の状況をにらみつつ、次年度以降の電力の炭素排出係数について検討を行う必要がある。

(5) 業務・家庭・運輸部門の対策強化

2006年度のわが国のエネルギー起源CO2排出量は、業務部門において90年度比41.7%増、家庭部門は同30.4%増と大きく増加している。こうした中、政府の改定京都議定書目標達成計画の中では、日本経団連に対し、本社等オフィスにおけるCO2排出削減目標の包括的・業種横断的な設定や、会員企業の社員の家庭における環境家計簿の利用拡大等の取組みを促すことを要請されている。
業務部門に関する対策の推進に関しては、昨年11月の日本経団連会長・副会長会議において、オフィスや家庭の温暖化対策方針を申し合わせ、会長名で要請文が発信されており、評価できるが、自主行動計画の枠組においても、全体目標の設定の検討を含め、本社等オフィスにおけるCO2排出削減の目標設定・深堀りやPDCAサイクルの確立等の取組みを拡大していく必要がある。とくに、物流などの排出量削減についても、データの蓄積などの定量的な管理を期待したい。
家庭部門においては、製品・サービスの省エネ化がCO2排出削減に大きな影響を与えるため、省エネ製品の開発と商品化を進める一方で、後述するように、LCA的評価によって取組みを適切に評価することが重要である。とくに、消費者への働きかけができる小売等の参加業種・企業における取組みや工夫が求められる。

(6) LCA的評価の重要性

産業・エネルギー転換部門の業種は、自主行動計画において、主として製造部門における排出削減に取組み、産業部門全体としても成果をあげてきたところである。他方、排出増が続いている業務部門や家庭部門を含め、社会全体で排出削減を実現していくためには、産業界が低炭素型の製品・サービスを開発・商品化し、提供していくことが重要である。例えば、家電製品では、使用時におけるCO2排出量は、製品製造時の10倍に及ぶため、こうした製品を低炭素型にすることによって、使用時のCO2排出削減に大きく貢献できる #1
他方、低炭素型の製品・サービスの製造においては、製造過程での使用エネルギーが増大し、結果としてCO2排出が増加するケースも少なくない。したがって、CO2排出削減の取組みを評価するにあたっては、製造過程のみならず製品・サービスの使用段階や産業間連携を含めたLCA的評価を積極的に取り入れることが重要な段階に入っている。参加業種・企業においては、生産、流通、消費等の各段階で関係する業種が連携し、外部への委託等も含めて、課題の整理、対策の検討、共有化等に取り組む必要がある。同時に、主要製品・サービスの使用段階での削減効果の定量化を行うことが期待される。自動車の組立が自動車メーカーから自動車車体メーカーに委託されている #2 ように、業種を超えた委託生産等の実情を踏まえた評価も検討に値する。また、LCA的評価等のために産業連関のデータ整備を進めるという観点から、政府・公的機関等において、評価に必要となるデータの整備・収集・メンテナンス等を行うことが期待される。

#1 電機・電子4団体へのヒアリングより
#2 日本自動車工業会、日本自動車車体工業会へのヒアリングより

(7) 京都メカニズムを通じた取組み

海外での温室効果ガス削減の案件に関する取組みに関しては、京都メカニズムの取得クレジットを目標達成に使用する業種もある。その適切性を確保するために具体的・定量的な報告を望む。

(8) 森林に関する取組み

京都議定書の削減目標について、わが国は、3.8%を上限として森林吸収源によって達成することが認められており、そのための国内森林の整備が急務となっている。こうした中、製紙業界に顕著に見られるように、参加業種・企業による企業の森への投資や植林など森林管理への取り組み、国産間伐材の優先利用といった吸収源の増進への貢献が報告されているところである。現時点では国内の吸収源への貢献は自主行動計画における目標達成手段とされていないが、その取り扱いに関して検討が行われることが望まれる。

(9) 二酸化炭素以外の温室効果ガス排出抑制への取り組み

CO2以外のガスの排出削減取組みについては、代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)に加え、メタンや一酸化二窒素についても関係業種からの報告を追加したことを評価する。温室効果ガス全体の削減について、引き続き取り組みを求めたい。

5.自主行動計画に関する情報発信

G8ビジネスサミットや洞爺湖サミット等の機会を捉え、自主行動計画の有効性をはじめ、日本の産業界の取組みに関して積極的にアピールしていくことが重要である。その際、自主行動計画の名称(英文も含む)については、自主行動計画の本質をより的確に伝えるものへの変更を検討することが望まれる。
原単位の国際比較は、日本の産業界が国際比較の中で効率に優れていることを示すうえで重要であるが、具体的な技術など、よりきめ細かなデータの検討が期待される。また、こうした検討にあたって、国内外の有識者・研究機関との連携・協力により客観性の確保を図るとともに、情報発信に努めるべきである。
また、経済界による自主的な温室効果ガス削減の活動について、理解や取り組みを広げていくためには、活動の理念や基本方針、PDCAの検討や事例をまとめたガイドラインの策定についても、検討を期待したい。

6.ポスト京都議定書における温暖化対策のあり方

自主行動計画における全体目標は京都議定書の約束期間での達成を目指し、政府の改定京都議定書目標達成計画にも位置づけられているところである。一方、ポスト京都議定書の国際枠組の交渉がスタートしようとしており、ポスト京都議定書の時期における日本の産業界がどのような取り組みを行うかが今後問われてくる。取り組みの検討を実際に行うのは参加業種・企業であるが、第三者評価委員会として、いくつか検討の視点を提供したい。
第一に、従来の製造工程での貢献のみならず、製品・サービス、国内外での貢献を通じた温暖化対策効果を評価対象とするという視点である。LCA的評価の重要性が増している中で、個別業種や産業の枠組を超えた取り組みについて整理し、適切な評価の仕組みを考えていく必要がある。第二に、取り組みを行う主体の拡大という意味合いから、日本経団連に加盟していない業種や中小企業等ともつながりを深め、自主行動計画の枠組みを拡大することが考えられる。第三に、循環型社会と温暖化対策との関係という視点である。鉄鋼やセメント等の業界に見られるように、廃棄物等のリサイクルを進めることによって、CO2排出を増加させているケースもある。地球温暖化対策という観点からはCO2排出削減のみに焦点が当たりがちであるが、循環型社会の形成という視点も併せて評価するということも考えられる。

以上

〔 別紙 〕

第三者評価委員会 委員名簿

2008年3月31日現在
委員長内山 洋司(筑波大学大学院 システム情報工学研究科教授)
委員青柳 雅(三菱総合研究所 前上席研究理事、名古屋大学客員教授)
浅田 浄江(ウィメンズ・エナジー・ネットワーク(WEN) 代表)
佐藤 博之(グリーン購入ネットワーク 専務理事 事務局長)
真下 正樹(日本林業経営者協会 相談役)
松橋 隆治(東京大学大学院 新領域創成科学研究科教授)
吉岡 完治(慶應義塾大学 産業研究所教授)

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