逆境を飛躍の好機に変える

2008年度総会決議

2008年5月28日
(社)日本経済団体連合会

わが国は大きな変化の真っ只中にある。グローバル化のさらなる加速とあいまって、経済が減速しつつある中でのエネルギー・資源価格の高騰や地球温暖化問題への対応、国際金融不安など、企業の経営環境は一層厳しさを増している。加えて、少子化・高齢化の進行とともに、深刻な財政赤字や社会保障制度への不信が、この国の将来に影を落としている。

こうした厳しい状況下にあっても、われわれは未来の世代に対する責任を果たすため、持続的な経済成長を確保し、「希望の国、日本」を造り上げなければならない。

採るべき政策は明らかである。われわれは、断固として改革を継続し、グローバル化のもたらす市場の拡大や資源の自由な移動等を活用する。そして、民間や地域の活力を最大限に引き出す。これこそが、成長力を高める唯一の処方箋であることを、すでに学んでいるからである。

逆境の中にこそ好機が生まれる。われわれは、各界各層との透明で公正な関係を確立しながら、引き続き、改革の旗手として着実に前進を続ける。そして、未来への飛躍を確かなものとするために、総力を結集して、以下の諸課題に全力を挙げて取り組むことを決意する。

1.成長力強化に向けて民間活力を引き出す

  1. (1) 先進的な電子行政・電子社会の実現を起爆剤として、社会全体の効率性・生産性を向上させ、産業の競争優位を確保する。
  2. (2) 研究開発の促進、人材育成の強化、産学連携や知的財産政策の強化、教育の充実などを図ることで、イノベーションを加速する。
  3. (3) 洞爺湖サミットの議長国として、低炭素社会実現に向けて、省エネルギー、原子力、再生可能エネルギー等におけるわが国の技術的な強みを活用しつつ、革新的な環境・エネルギー技術の開発・普及を促進し、すべての主要排出国が参加する地球温暖化防止のための国際的な枠組み作りをリードする。

2.経営環境を整備して競争力を高める

  1. (1) 国際競争基盤を整えて持続的な経済成長を確保するため、法人税制や経済法制の見直し、国際標準化政策などを戦略的に推進する。
  2. (2) 金融サービス業の国際競争力強化に向けて、東京市場の整備を進める。
  3. (3) 労働力人口の減少が加速する中で、女性や高齢者を含む全員参加型社会を構築し、良好な労使関係のもとで、働き方の多様化や従来の人事・賃金制度の見直しを通じた仕事と生活の調和を推進し、経済の活力を維持する。
  4. (4) 産業の国際競争力強化や地域の活力向上に向けて、規制改革・民間開放を推進するとともに、総合的な物流インフラを効率的かつ戦略的に整備する。

3.国民の安心・安全・希望を確保する

  1. (1) 持続的な社会保障制度の確立、財政の健全化を図るため、消費税等の安定財源の拡充を含め、歳出入両面にわたって抜本的改革を実行する。
  2. (2) 少子化傾向を反転させるため、政府・企業・国民がそれぞれの役割を果たし、実効ある少子化対策に取り組む。
  3. (3) エネルギーの安全保障や食料の安定確保のためにも、戦略的な資源外交や農業の活性化・競争力強化等に取り組む。

4.地域の活力で日本全体の豊かさを向上させる

  1. (1) 自立した広域経済圏の確立と真の住民自治を実現する道州制の導入を推進するとともに、国と地方、地方間の重複事務の排除などを通じた行財政改革に取り組む。
  2. (2) 産業クラスターの形成や社会インフラの効率的整備、地域資源を活用した産業・観光振興等を進める。
  3. (3) こころ豊かな生活の基盤を整備するため、魅力的で安全・安心な地域づくりや快適な住環境の実現に取り組む。

5.世界経済のダイナミズム発揮を担う

  1. (1) 主要国を含めた経済連携協定の拡大と深化を図るとともに、ASEAN+6を中核とする東アジア経済共同体の実現やWTOドーハラウンド交渉の推進を目指す。
  2. (2) 対日直接投資の促進、外国人材の活用、留学生の受け入れ・送り出し拡大、貿易諸制度の改革等を通じて構造改革を促進し、日本経済の成長につなげる。
  3. (3) 途上国の成長に資する国際協力を戦略的に展開する。

6.透明で公正な経済社会を構築する

  1. (1) 政策を軸にした政党支援を通じて、各政党が政策面で切磋琢磨し、建設的な協議を積極的に進め、迅速な改革が実現するよう働きかける。
  2. (2) 企業倫理の確立、社会的責任の遂行に全力を傾注する。
以上

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