第3回IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)への提言

−インターネットの諸課題とその将来−

2008年7月15日
(社)日本経済団体連合会

第3回IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)への提言 概要 <PDF>

I.はじめに

この10年余りの間に、インターネットは急速な普及・発展を遂げ、世界のインターネット利用者は10億人以上に達した。すでに、インターネットは情報社会における中核的インフラとして重要な役割を果たしており、産業界にとってもその安全かつ安定的な利活用は主要な課題となっている。さらに、インターネットの持つボーダレスな革新性は、新たな利活用やビジネス等のイノベーションを生み出し、経済構造のみならず社会構造に大きな変革をもたらしてきた。

一方で、経済・社会活動のインターネットへの依存が高まるにつれ、インターネット利用者のセキュリティやプライバシーに関するリスク、有害コンテンツが青少年に及ぼす悪影響等が深刻になっている。サイバー犯罪も高度化の一途を辿り、また、電子行政の先進的国家に対するサイバー攻撃もすでに現実のものとなっており、国家安全保障的な観点からの取り組みも不可欠となっている。さらには、不慮の人為的事故や自然災害により利用者が被るダメージ等を踏まえ、企業においてはBCP(事業継続計画)の検討や実装も喫緊の課題となっている。また、数年後には枯渇するといわれている現行のIPアドレスへの対応も急がなければならない。

また、国際的には、インターネットへのアクセスができると者とそうでない者との間の格差が、情報面のみならず経済面でも拡大しており、途上国を中心にその是正を求める声が強くなっており、国際社会の具体的な対応が求められている。

このような様々な脅威やデジタル・デバイドの拡大等、インターネットが抱える諸課題に対応するため、国連は世界中のステークホルダー(政府、経済界、市民社会等)が議論を行う場として、2003年と2005年に二度にわたり世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society:以下WSIS)を開催した。WSISでは、IPアドレス、ドメインネームといったインターネット資源の管理のあり方が焦点となり、米国を中心とする現行のインターネット管理体制の継続を主張するグループと、それに反対するグループの間で激しい議論が交わされた。日本経団連では、第2回WSISの開催に先立ち、提言「インターネットガバナンスのあり方について」 #1 を公表し、日本の産業界の意見を表明するとともに、ミッションを派遣し、本会議等で民間主導によるインターネット管理体制の継続や、マルチステークホルダーによる対話の継続を主張し、国際商業会議所(ICC)等の関係団体や日本政府と共同で働きかけを行った。その結果、現行のインターネット管理体制は維持されることとなり、インターネット及び情報社会に関する諸課題について、マルチステークホルダーによる議論を継続するため、2006年より毎年、5年間にわたりIGFを開催することが決定された。

本年12月には、インドで第3回目のIGFが開催される予定であり、IGFにとってはその折り返し点にあたる。本提言では、インターネットの進化と抱える諸課題も踏まえ、IGFのこれまでの取り組みを評価するとともに、国際社会にとって望ましいインターネットのあり方について、日本の産業界の立場から、今後のIGFの場で検討されるべきテーマと方向性について提案を行う。

II.IGFの成果と今後の展開

1.IGFの成果

(1) マルチステークホルダーによる自由な議論の実現

IGFは、国連等においても初めての、マルチステークホルダーによる国際会議として開催されたが、国家の利害を反映する形での宣言の採択や意思決定を伴わないが故に、世界各国のマルチステークホルダーが対等な立場で、インターネットを巡る諸課題について自由な議論を行なう場として有効に機能した。

(2) 現行インターネット管理体制の維持

重要インターネット資源の管理・運営のあり方に関しては、WSISから議論されてきたが、情報社会の健全な発展の継続には、技術革新や環境変化に柔軟に対応できる民間主導によるインターネット資源の管理・運営が重要である #2。一部の途上国を中心に現行の管理体制に対する不満が表明されているが、それを正面から受け止め議論し、その改善を図りつつ、現行の民間部門による管理体制を維持していることは、安全かつ安定的なインターネットを求める産業界の発展にも大きく貢献している。

(3) ベストプラクティスの共有とダイナミック・コアリションの促進

IGFの場では、特に途上国のアクセス改善やセキュリティ向上に関し、参加者から数々のベストプラクティスが公表され、情報共有が図られた。さらに、参加者間で自発的にダイナミック・コアリション #3 が発生し、立場の違いを超えた連携が促進されたことは大いに評価されるべきである。

(4) インターネットの政策形成における日本からの情報発信

インターネットを巡る政策形成においては、中央集権的な政府間組織ではなく、ICANNのような利用者主導のコミュニティ等の果たしている役割が大きい。IGFはそのような影響力を有するステークホルダーが一堂に会する場であり、IGFにおける情報発信は国際社会におけるプレゼンスを向上させる上で有効である。
昨年5月に開催したIGF東京会議 #4 は、日本経団連が主体的に関係者に働きかけたことにより実現したものであり、IGFと同様の議論の場を提供することにより、国内外への情報発信を行うとともに、政策決定に影響力を有するコミュニティとの連携を強化できた点で有意義であった #5

2.今後の展開

(1) 成果を発信する仕組み作り

IGFを通じて生まれたダイナミック・コアリションやベストプラクティスといった成果を、IGFの閉じた輪の中でのみ共有するのではなく、参加者以外のステークホルダーとも共有する仕組み作りを検討するべきである。
例えば、データベースを作成し、そこに成果を蓄積していくだけでなく、それを実際に実践したステークホルダーが、その結果や新たに生じた問題点等をフィードバックできるような仕組みを構築できれば、途上国をはじめ関係者が成果を参照するうえで大変有用な情報源となり、具体的なアクションに繋げやすくなろう。
さらに、IGFの場で得られた成果を目に見える具体的なアクションに発展できるようOECD #6、CoE #7 といった他の国際組織と連携を取り、ネットワークを形成するべきである。

(2) 今後のIGFの役割

今年はIGFの開催から3年目となり、今後のインターネット・ガバナンスの議論の方針を検討すべき時期に来ている。
例えば、これまでは4つないし5つのテーマについて議論を続けてきたが、これらのテーマについて議論を深めるとともに、従来からのガバナンスのテーマに加え、インターネットの利活用を通じたグローバルな問題の解決やベストプラクティスの共有など、新たなテーマについても検討していくべきである。例えば、「インターネットと環境問題」は、今後、重要度を増す世界共通の課題である「気候変動」への対応として、テーマに加えていくべきである。
また、マルチステークホルダーが自由に参加できる、インターネット時代に相応しい先駆的な会合の形式を発展させ、多様な参加者の多様な意見を踏まえつつも、IGFとしての議論を整理し、そのメッセージの発信力を強化していくべきである。

III.第3回IGFへの提案

1.次の10億人への到達

(1) 先進国の役割

先進国とのデジタル・デバイドの解消に向け、途上国におけるアクセス改善に向けた支援を継続的に行う必要がある。特に、途上国におけるインフラ整備に関しては、外国からの投資も含め広く民間投資が進むような環境を整備する必要がある。実際、通信市場が国家独占の場合には、競争原理が働かず、インターネットのアクセス改善に繋がらないケースが多い。民間投資をアクセス改善へと繋げる上で、マーケット原理の導入が有効であることを踏まえ、先進国はその競争政策の経験とノウハウを途上国等へ積極的に移転していくべきである。日本においては、メタル・アクセスのアンバンドルの推進等の適切な競争政策を適用することにより、世界的にも最先端のブロードバンド・インフラを短期間で整備したが、これはブロードバンド化を推進しようとしている国々に対し、政府におけるベストプラクティスとして提示できる事例である。
また、アクセス改善に向けた支援は、インフラ整備に係る技術支援や財政支援のみならず、インターネットの適切な利活用に向けた教育を実施するための人的支援も並行して行うことが重要である。
一方、先進国におけるインターネットの発展の経緯から、回線としては有線回線、端末としてはPCを前提として論議しがちであるが、携帯電話が急速に普及しつつある途上国の実態を踏まえると、回線として衛星通信を含む無線、端末として携帯電話も想定した論議もすべきである。通信機器の電力供給に関しても、発電所からの供給だけでなく、環境対策を考慮した拠点ごとの太陽光発電や風力発電、充電池利用を想定した方策も検討すべきである。

(2) 独自性を活かしたビジネスモデルの構築

途上国が経済発展とアクセス改善を自立的に継続していくには、インターネット環境を多言語化し、誰でもストレス無くインターネットを使える環境を確立することが必須である。その上で、それぞれの国の文化の違いを活かしたオリジナリティのある情報発信やフェアトレード #8 商品のオンラインショッピング等を展開することが考えられる。
先進国は、途上国の文化や言語の多様性を尊重し、途上国自らがそれを武器として持続可能な経済成長に繋げられるようなビジネスモデルの構築を、途上国に対して提案していくべきである。

2.サイバーセキュリティとトラストの推進

(1) 高度化するサイバー犯罪への対応

サイバー犯罪は、コンピュータからの個人情報の詐取、フィッシング詐欺サイトの表示、DDoS攻撃 #9 など、犯罪手口、目的が多様化・高度化しており、一般の個人ユーザーのインターネット・リテラシーの底上げやセキュリティ文化の醸成は必須である。
また、従来から指摘されているように、サイバー犯罪は国境を跨いで行われるため、対策レベルの低い国や地域が犯罪の温床となりかねない。したがって、引き続き、国際社会が連携し、National CSIRT #10 の設置・整備を推進するだけでなく、官民連携をグローバルベースで実現することによって、政府機関や企業などの組織が新たなセキュリティの脅威への対応能力を高め、インターネットに関するリスクマネジメントを全世界的に推進することが不可欠である。

(2) サイバー犯罪等に対する共通規範づくり

現状では、著作権やプライバシー侵害、スパムメールの発信、チャイルド・ポルノの取扱いなどの問題に対し、各国でそれぞれの法や規制に則った対応を行っているものの、ボーダレスに張り巡らされたインターネットの世界では、どのような行為が違反や犯罪に該当するかが各国法で異なっており、国際的に協同でサイバー犯罪対策等に取り組む上で障害となっている。各国の文化や風習を尊重することは重要であり、それらを踏まえると世界共通の判断基準や規範を定めることには大きな困難が伴うと思われるが、IGFのような世界中からステークホルダーが集う場で規範の調和等について議論を行なうことは有意義である。

3.インターネット重要資源の管理

(1) インターネットの管理・運営

重要インターネット資源の管理・運営のあり方については、技術革新や環境変化に柔軟に対応できる民間部門が担当していることが、現在のインターネットの発展に大きく貢献していると考えられる。仮に各国政府が主導する国際機関が管理・運営を行うことになった場合、各国の政治的な利害対立等により迅速な意思決定が妨げられ、市民生活やビジネスに多大な影響が及ぶ可能性がある。したがって、管理・運営の担当組織であるICANNの透明性向上には引き続き努めていく必要はあるが、管理・運営体制に関しては現行の体制を維持するべきである。

(2) IPアドレス枯渇への対応

IPv4 #11 アドレスの枯渇時期の予測には幅があるが、遅かれ早かれ枯渇することは明白である。先進国がIPv4アドレスを先行して確保することによって、途上国のアクセス改善の妨げになるようなことがあってはならず、先進国は率先してIPv6対応を推進し、全ての利用者がインターネットで通信できる環境を構築するべきである。
IPv4とIPv6は互換性がないが、IPv4/IPv6デュアルスタック #12 で運用すれば、IPv4端末、IPv6端末の両方と通信が可能である。途上国の中には、最初からIPv6にしか対応できないケースが出てくると考えられるため、先進国においては当面はデュアル化による対応を推進し、IPv6に対応した端末やアプリケーションの導入・セキュリティ対策に着手し、グローバルビジネスの継続性への影響を最小限に止めるよう努めるべきである。
上述のように、IPv4アドレスを確保できない途上国ばかりがIPv6を導入しても、その普及は難しい。先進国は、率先してデュアル化を進めることで将来にわたってIPv4アドレスの枯渇に影響を受けないIPv6利活用環境の普及を促すとともに、IPv6を利活用できる技術者の育成支援を行う必要がある。さらに、IPv6の特徴を活かした新しいビジネスや活用方法を見出し、世界に発信していくべきである。

4.エマージング・イシュー

(1) インターネットを利活用した環境問題対策
  1. <1> 環境問題におけるICTへの期待
    地球温暖化をはじめ、環境に対する問題意識が世界的に高まっており、温暖化問題に関しては、ハイリゲンダム・サミットの首脳宣言において、2050年までに世界全体の温室効果ガスを半減させることを真剣に検討する、とされたことに見られるように、野心的な長期目標が検討されている。しかし、既存の技術では目標達成は困難であり、イノベーションの活性化が不可欠となる。インターネットをはじめとするICTの活用は、イノベーションを通じて経済発展と環境配慮を両立させる可能性を有するものとして高い期待が懸かっている。
    人間活動に起因する二酸化炭素の排出量を見た場合、ICT産業からの排出量の割合は、現状では社会全体の2%を占めるが、イノベーションを含むICTの活用により効率化を進めることで、他の産業による98%の排出を大きく削減できる。
    しかし、高度情報化社会の進展に伴い、インターネット上の情報流通量が増加することを考慮すると、ICT機器の消費電力量は世界総発電量の15%まで急増するとの予測もあり #13、二酸化炭素の排出量増大が懸念される。一方、データセンターにおける消費電力のうち、ICT機器による消費は30%に過ぎず、空調が45%、UPS #14 や照明等の電力機器が25%を占めることを鑑みると、ICT機器のみならずシステム全体のエネルギー効率をも高める必要がある #15

  2. <2> ICT利活用による産業分野の環境対策
    インターネットをはじめとするICTは、今やあらゆる産業分野に浸透し、エネルギー消費効率化や環境負荷軽減を実現する可能性を有するが、特に注目されているのがセンサーネットワークの活用である。センサーネットワークは、複数のセンサーを繋いで情報収集するシステムであるが、センサーが感知する情報は、温度、音、位置、速度、重量、振動、ICタグ、指紋、ガス、熱など多岐にわたるため、応用分野が非常に広い。さらに、センサーネットワークにインターネットを繋ぐことにより、ユーザーの必要に応じてセンサーが収集した様々な情報を提供するサービスが可能となる。こうしたセンサーネットワークを利用したサービスの普及は、IPv6への対応を加速させることに繋がるとともに、途上国にIPv6活用事例を提供することにもなる。
    日本ではITS #16、BEMS/HEMS #17 をはじめとする21の「エネルギー革新技術」を特定し、一層のエネルギー利用効率化に向け、官民連携で取り組んでいる。

  3. <3> サイバー犯罪等と環境問題
    現在、インターネットの世界を飛び交っている電子メールのおよそ90%はスパムメールであると言われている。スパムメールを含むインターネットの不正利用やサイバー犯罪への対応に、通信キャリアやISP(インターネット・サービス・プロバイダ)ばかりでなく、ユーザーも多大なエネルギーを消費しており、サイバー犯罪等はセキュリティ問題のみならず環境問題にも大きな影響を与えている。
    国際社会はサイバー犯罪等が環境面に与える悪影響も意識し、一致団結してその撲滅に向けた取り組みを継続するべきである。

  4. <4> 環境貢献度の評価
    インターネットやICTを活用すればするほど、社会全体の環境負荷を低減させることができるが、一方でICT産業の電力消費量は増大すると考えられる。また、優れた省エネ製品を作ったとしても、ヒット商品となって大量に売れると、その製造メーカーの二酸化炭素排出量はむしろ増える可能性がある。
    環境に対する貢献度を評価する際には、製品の使用段階における環境への貢献も含めて評価を行い、真の貢献者が報われ、それがさらなる環境負荷の低減のインセンティブになるという好循環を生み出す評価の仕組みが必要である。

(2) 電子行政モデルの普及

企業や政府・自治体においては、インターネットなどを活用した業務の電子化は書類の削減、業務プロセスの所要時間短縮を可能にし、効率性の大幅な向上、ひいてはエネルギー消費量の削減に繋がるものである。さらに、電子入札の導入によって企業間競争が促進される結果、調達コストの削減も期待できる。
企業においては、競争力強化のため、自らインターネット等の導入により業務の電子化に努めているが、政府・自治体においては電子化のモチベーションが低く、電子化が滞りがちである。企業における業務が電子化していても政府・自治体の業務が電子化していなければ、本来電子的なデータの流通で完結するプロセスに紙等が介在することになり、効率性が著しく損なわれるばかりでなく、社会コストが膨らむ要因にもなる。したがって、各国政府・自治体はできる限り業務の電子化を推進し、社会コストの増大を抑えるべきである。また、業務の電子化の際には、電子化を前提とした業務プロセスの見直しを行うことが重要である。
このようにして構築した電子行政の下では、国民は申請した手続き等が、どのようなプロセスにあるのかをインターネットを通じて自ら確認することができるようになり、行政の透明性が非常に高まり、政府・自治体の信頼性の向上にも繋がる。
電子行政のあり方については、すでに電子行政を実現している国の先進事例をモデル化し、他国の参考に付すべきである。

IV.おわりに

産業界にとっては、インターネットはビジネスに不可欠な要素となっており、その健全かつ安全・安定的な発展は国を越えた共通の利益となっている。一方、インターネットによるイノベーションはまだ進化を始めたばかりであり、その経済的・社会的インパクトは産業革命にも匹敵するといわれているが、良い面、悪い面も含め、その可能性は未知数である。したがって、インターネット・ガバナンスに関する国際的な議論が継続的に行なわれることの意義は極めて大きい。

IGFは、世界の公共財であるインターネットを巡る世界共通の諸課題について、多くのステークホルダーの英知を結集し、解決に向けた筋道をつけ、集合知として発信できる貴重な場である。日本の産業界としては、これまでのIGFの成果を踏まえ、引き続き、インターネットを巡る政策や利活用におけるベストプラクティスを発信することにより、国際社会への貢献を続けるとともに、インターネットを巡る諸課題に関する理解をわが国で深めるための触媒としての役割を果たしていきたい。

以上

別紙:これまでのIGFの歩み

1.第1回IGF

(1) 概要

開催期間2006年10月30日(月)〜11月2日(木)
開催場所アテネ(ギリシア)
参加者数約1,200名
テーマ下表の4テーマを設定し、セッションごとに、パネリストと会場が双方向で自由な意見交換を行い、共通理解を深めた。また、並行して諸団体主催による36のワークショップも開催された。
テーマ主な意見等
開放性
  • 表現の自由、情報の自由な流通は最大限尊重すべき。
  • 「表現の自由とその責任ある行使」「知的財産権の保護と公開性」等のバランスについて検討すべき。
セキュリティ
  • マルチステークホルダーによる国際協力の重要性について認識は一致。その具体化を、今後さらに検討すべき。
  • ベストプラクティスを集め、更なるレベルアップを図る。
多様性
  • ユーザーと技術者の協力による、国際化ドメイン名・多言語化の推進。
  • 各地域独自の文化・コンテンツの発信の拡大。
アクセス
  • 途上国にとっての最重要テーマであり、競争環境の整備、アクセス整備のファンド問題、オープン・スタンダード等が課題。
  • 各国政府の役割が重要。Capacity Building、新たな無線技術へも期待。
議長声明(総括)
  • 第1回IGFは、参加者が情報を共有し、対話を促進するための場として非常に有効に機能した。

(2) 経団連の活動

<1> 第1回IGFに向けた意見の表明
<2> 日本経団連ミッションの派遣

2.第2回IGF

(1) 概要

開催期間2007年11月12日(月)〜11月15日(木)
開催場所リオデジャネイロ(ブラジル)
参加者数約1,400名(109カ国の政府、民間、市民社会の代表)
テーマ下表の5テーマを設定し、セッションごとに、パネリストと会場が双方向で自由な意見交換を行い、共通理解を深めた。また、並行して諸団体主催によるワークショップやベストプラクティス・フォーラム等、84の個別セッションが開催された。
テーマ主な意見等
重要インターネット資源
  • 運営主体のあり方については、今後さらに検討を重ねるべき。
  • IPアドレスの枯渇問題については、マルチステークホルダーによる国際協力が重要。
アクセス
  • 途上国にとっての最重要テーマであり、インターネット接続ポイント設置等の具体的な国際援助が望まれる。
  • 途上国側でアクセス改善のイニシアチブをとる推進母体が必要。
  • 極めて貧しい国を支援するためには新たなビジネスモデルと国際協力の枠組みが必要。
開放性
  • 表現の自由、情報の自由な流通は最大限尊重すべき。
  • 表現の自由とプライバシー、知的財産権の保護と公開性等のバランスを取ることが重要。
セキュリティ
  • セキュリティの確保には、法律に頼るばかりでなく、マルチステークホルダーによる国際協力が重要。
  • ISPが果たすべき役割について議論を深めるべき。
多様性
  • 地域格差の解消や独自文化の保護の観点から多言語化の推進を継続すべき。
  • 高齢者や身体障害者への考慮も必要。
議長声明(総括)
  • IGFはマルチステークホルダーが対等の立場で議論に参加し、認識を共有するための場として有効に機能し、参加者間の国際協力の飛躍的な進展にも寄与した。

(2) 経団連の活動

<1> 第2回IGFに向けた意見の表明
<2> 日本経団連ミッションの派遣
以上

  1. 2005年9月公表。詳細は以下URL参照。
    http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/065/index.html
  2. インターネット上での一意性を確保するため、IPアドレス、ドメインネームといった重要インターネット資源は集中管理する必要がある。現行では、民間非営利団体であるICANN (Internet Corporation for Assigned Names and Numbers) が管理を担当している。
  3. IGFにおいてマルチステークホルダーによる議論やワークショップ等を通じて、政府、企業、市民社会の枠を越えて具体的なアクションに繋がる連携や協力関係が築かれたことを指す。OECD、APEC、ITU等による、スパムに対抗するための情報と資源の共同収集を目的とした連携や、ISOC、パケット情報センター(PCH:Packet Clearing House)等による、アフリカの途上国における安価なインターネット・エクスチェンジ・ポイントの設置による国際アクセス料金低減を目的とした連携など多数のダイナミック・コアリションがIGFから発生している。
  4. 講演者として国連のクマーIGF事務局長、ICANNのトゥーミー議長兼CEO等、IGF主要関係者を招き、国連および世界情報基盤委員会(GIIC)の共催、総務省の後援により開催。意見交換を通じ、インターネット・ガバナンスの現状や国際的な議論の動向について国内関係者の理解を深めるとともに、日本産業界の発言力の強化にも寄与した。
  5. 日本経団連は今年4月にも世界情報基盤委員会(GIIC)との共催セミナーを開催し、「持続可能な社会環境の実現に向けたICTの持つ可能性」をテーマとして、川口順子参議院議員、トゥーミーICANN議長兼CEO、ブロスBTグループCTO等が講演・議論を行なった。
  6. Organization for Economic Co-operation and Development (経済協力開発機構) の略。EU加盟国、米国、日本等30カ国が加盟し、経済成長、貿易自由化、途上国支援に貢献することを目的とし、先進国間の自由な意見交換・情報交換を行っている。
  7. Council of Europe (欧州評議会) の略。1949年、フランスのストラスブールに設立。加盟国はEU全加盟国をはじめとする46カ国。人権、民主主義の分野に加え、最近では薬物乱用、生命倫理、サイバー犯罪、人身取引、テロなどの問題に対応している。
  8. 発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動。オルタナティブ・トレード(Alternative Trade)とも言う。
  9. “DDoS”はDistributed Denial of Serviceの略。複数のネットワークに分散する大量のコンピュータが一斉に特定のサーバへパケットを送出し、通信路をあふれさせて機能を停止させてしまう攻撃。
  10. Computer Security Incident Response Teamの略。コンピュータセキュリティに係る事故や不具合への対応、分析、啓蒙、研究開発等を行っている組織の総称。所属する組織や目的によってCSIRTのあり方も異なる。National CSIRTは、その国や地域を代表するCSIRTである。
  11. Internet Protocol version 4 の略。現行のインターネットで利用されているインターネットプロトコル。32ビット表記のアドレスを用い、これで通信相手を特定するため、識別できる通信相手の数は43億台弱に限られる。インターネットの急速な普及に伴い、アドレスの枯渇が危惧されており、128ビットでアドレス管理を行うIPv6へ移行が課題となっている。
  12. IPv4とIPv6を共存させる技術。一本の回線にIPv4とIPv6の両方をサポートする環境を構築することができる。現在の「IPv6対応機器」のほとんどがIPv4にも対応しており、デュアルスタックであると言える。
  13. 出典:経済産業省/グリーンIT推進協議会試算(2008年)
  14. Uninterruptible Power Supply (無停電電源装置) の略。電池や発電機を内蔵し、停電時に電気を供給する装置。
  15. 日本では、製品機器1台当たりの二酸化炭素排出量を削減する手段として、「トップランナー方式」が注目を集めている。これは、同じジャンルの製品中、最もエネルギー消費効率が優れている製品を目標と定め、同ジャンルの全ての製品が決められた期間内にその目標を達成することを求める方式である。現在、適用対象が乗用自動車、冷蔵庫、電子レンジなど21機器に限られているが、経済産業省では今後、適用範囲を拡大していく方針である。
  16. Intelligent Transport Systems (高度道路交通システム) の略。自動車にセンサーを搭載することで、自動車の位置情報、速度、走行方向等の情報を路車間、車車間で通信し、ドライバーへの情報提供や自動車の自動制御により交通事故防止、渋滞回避等を実現するシステム。これにより、より効率的な自動車の運転が可能になり、燃費向上、二酸化炭素の排出量削減が期待される。
  17. Building Energy Management System、Home Energy Management System の略。ビルや住宅など建物全体のエネルギーの使用状況をセンサーネットワークにより把握し、機器や設備の運転効率を最適化することにより、総合的に省エネルギーを実現するシステムである。インターネットを介してエネルギー使用状況の詳細なデータをユーザーに提供することにより、さらなる省エネルギー行動をユーザーに喚起する効果もある。

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