わが国は、国土周辺で世界の地震の2割が発生するなど、世界の中で地震災害のリスクが極めて大きい国である。なかでも、近い将来、発生する蓋然性が高い首都直下地震は、人的、物的被害のみならず、経済の中枢機能の障害によってわが国の経済全体に多大な影響をもたらすものと予想されることから、官民あげた対策が急務となっている。地震対策は、いざという時の保険という視点ではなく、起こることを前提に、企業や社会が生き残るために必要な経費という考え方に立って、安全・安心を優先した抜本的な対策が求められる。
日本経団連が、2007年6月に、防災に関する委員会のメンバー企業を対象に実施したアンケート調査(参考資料2参照)では、多数の企業で、災害発生時の対策本部の立ち上げ、事業継続計画(BCP)を含めた対応計画の整備を進めていることが判明した。特に、地震発生直後の対策については緊急連絡網の整備、社員への対応マニュアルの配付、建物の耐震化、什器などの固定化、物資や食料の備蓄といった独自の対策を進めており、防災担当者の間では防災に対する意識が高いことが判った。しかしながら、事業の復旧・継続に関してより実効性の高い対策を立てるためにインフラ関係をはじめ異業種や行政との情報共有・連携や、防災意識の社員への一層の浸透の必要性を指摘する声が多く出された。
そこで、防災に関する委員会では、業種横断的な約40社の実務担当者によるワーキング・グループを設置し、ヒト、モノ、カネ、情報の4つの切り口から、各社に共通する課題や固有の課題を洗い出すともに、(1)自社・同業種内で対処できる事項(自助)、(2)業種横断的な連携・協力や地域の連携・協力が求められる事項(共助)、(3)行政が果たすべき役割(公助)の3つの観点から、事業の早期復旧や継続に向けて取り組むべき具体的な方策を整理した。
その結果を「中間とりまとめ」として公表することにより、企業ごとの首都直下地震対策が一層充実し、業種間や地域での連携がより強化され、さらには、行政の施策の改善につながることを強く希望する。
(1) 内閣府の中央防災会議並びに東京都では、マグニチュード7.3規模の東京湾北部地震を想定して対策を立てている。そこで、当委員会での検討に当たっては、地震によって発生する事象に対する具体的なイメージを共有し、国や東京都の被害想定と平仄を合わせるために、東京湾北部地震に関する公的な公表資料を活用した。もっとも、実際には、地震の発生時刻、場所(震源からの距離、地盤、周辺の立地環境等)や構造物の耐震性によって被害が大きく異なることから、対策に当たっては、個社の置かれた状況を十分に把握し、様々な状況に応じた臨機応変の対応が求められる。
(2) 国や東京都の被害想定では、東京湾北部地震が発生すると、死者3,700〜11,000人、負傷者14〜21万人、建物の全壊・火災焼失被害が25〜85万棟、経済被害は約112兆円発生する。特に、荒川沿いの区部東部を中心に地震動による建物の全壊被害が広範囲に発生する他、環状6、7号線沿いの木造密集市街地で延焼被害が甚大となる。一方、都心部のビルは耐震化、不燃化が進展しており、相対的に被害が軽微に止まることが想定されている。また、都心部を中心に帰宅困難者が最大で約650万人(昼12時)に達すると想定されている。
(3) したがって、ひとたび地震が発生すれば、公的機関(警察、消防、自衛隊など)は被害が大きい地域の人命の救助・救出業務を最優先する結果、軽傷者の処置や帰宅困難者・滞留者の対応などについては、民間企業に期待される役割が大きい。
(4) 帰宅困難者や集客施設周辺の滞留者への対応については、目下、中央防災会議や東京都で対策を鋭意検討しており、当委員会としては、それらの検討状況を踏まえて、官民連携した対策のあり方を最終報告の中で盛り込んでいきたい。
(5) また、今回の中間とりまとめでは、主に企業の事業の早期復旧と継続に焦点を当てているが、企業が地域コミュニティの一員として存立しているという観点から、地域コミュニティへの貢献という視点も盛り込んでいる。地域貢献に関する具体的な対策は、引き続き、社会貢献推進委員会とも連携して検討していく。
(1) 社員とその家族の安否確認、負傷者の救助、帰宅困難者や滞留者への対応、復旧要員の確保などが課題となる。社員とその家族の安全が確認されて、初めて社員は安心して事業の復旧に取りかかれることから、安否確認対策は極めて重要である。
(2) 社員や顧客に負傷者が発生した場合には、応急処置や重傷者の搬送などの対応が必要となる。また、エレベーターに人が閉じ込められる事態が多発した場合、救出まで一定の時間を要することが想定される。
(3) 次に、事業の早期復旧や継続の観点からは、復旧要員の確保のため、社員の迅速な招集と、被災地内での移動を伴う適正な配置・展開が最重要課題となる。道路や鉄道などの交通手段に支障が出れば通常どおり移動することが困難となり、専門技術を持った復旧要員の絶対数が不足する。また、通信回線の混雑や制限などにより、社員の安否確認や招集連絡が平時に比べて困難となる。
(4) 特に、首都圏の通勤距離は相対的に長く、夜間や休日に地震が発生した場合には参集までにかなりの時間を要する。平日の昼間に地震が発生した場合でも、帰宅者や滞留者で道路が大混雑する中、復旧要員を現場に迅速に移動させることは、非常に難しい。自社の要員が確保されたとしても、物資やサービスの仕入れ先、販売先、輸送、維持・修繕などに関わる協力会社の要員が整わなくては、事業の早期復旧や継続に支障が出る。さらに、被災地外からの代替・応援要員を招集する場合には、宿泊施設などを確保する必要も生じる。
(1) 複雑で多様なサプライチェーンの現状を鑑みると、原材料の調達から、加工、製品・商品などの供給に至るまでのプロセスは社内だけでは自己完結せず、事業継続を1社のみで対応することは、不可能である。
(2) 特に、電力、ガス、水道、通信、交通など基幹インフラの早期復旧は、経済活動全般の正常化にとって、最優先される。上下水道の復旧までに長期間を要する場合には、飲料水や災害用トイレを確保することも派生的な重要課題となる。
(3) 地震発生直後、交通など緊急的な規制が行われることは当然であるが、画一的、硬直的な規制が長期にわたり施行されれば、人の移動や物流が阻害され、事業継続に支障を来たすばかりではなく、飲食料の確保など生活必需品の十分な確保が困難となる。
(4) 建物や設備に被害が生じた場合には、応急処置や修繕のために重機や資材を確保する必要も生じる。建物や設備に大きな損傷がない場合でも、余震や火災などの二次災害の防止という安全面の観点から、応急危険度判定を早急に実施する必要がある。さらに、設備の使用が長期間できない場合には、代替設備の確保による機能維持を早急に図る必要がある。
(1) 事業を進めるうえで、手持ち現金などの流動性資金の確保はもとより、手形、為替などの決済、証券取引などの機能が維持されることが、極めて重要である。特に、決済の電子化が進んでいる今日、システム障害や支払の処理遅延などの不測の事態を念頭に入れた対策が求められる。
(2) また、地震発生による建物や設備の被害、商品の破損といった直接的な損失に加え、生産不能による売上げの減少といった多額の間接的な損失の発生も想定される。さらに、業績の悪化から資金繰り面などで企業経営に大きな影響が及ぶ畏れもある。
(3) 中長期的には、巨額の復興資金が必要となる場合もある。
(1) 地震発生時には、社内の被害状況や社外の被災状況(震度、火災、交通情報など)の全体像を把握することに時間を要することが想定され、正確で迅速な情報の収集・提供手段の確保が最大の課題となる。
(2) 社員とその家族の安否確認、復旧要員への連絡、人の移動や物流ルートの確保、取引先や協力企業との連絡など、必要な情報をいかに収集し、伝達するかが、事業活動の早期復旧や継続の鍵を握る。
(3) 本社の情報発信機能が麻痺した場合には、被災していない支店業務など、全社の業務にも影響が波及する畏れがある。このため、情報の司令塔としての本社機能を代替するバックアップ・オフィスを早急に立ち上げる必要がある。
(4) さらに、モノの課題と関連して、情報機器の破損や重要書類の滅失への対処も重要課題となる。
(1) これまで首都直下地震が発生した場合に想定される課題について、ヒト、モノ、カネ、情報という4つの切り口から眺めてきた。これらは、相互に関連しており、総合的な視点から対策が求められる。
(2) 企業は、これらの多様な課題に真摯に対処する必要があるが、企業単独では、すべての課題に対応することはできない。しかし、それを理由に1社でも対応を怠ると、それがサプライチェーンの一角に穴を開けることになり、経済活動全般の復旧を遅らせる要因となる。
(3) そこで、まずはそれぞれの企業が自社で解決できる事柄から取組むことによって、経済社会全体の対応能力を高めていくことが求められる。
(4) また、復旧に必要な物資や要員を同業種間で相互に融通するために業界団体などの場で連携のあり方を事前に検討していくことが有用である。基幹インフラ関係については、首都圏外の企業との連携による応援体制を構築することが円滑な復旧につながる。
(5) このような自社や同業種内の取組みに加えて、取引先、販売先、維持・修繕、輸送など異業種間の横断的な連携が重要である。
(6) さらに、近隣の企業間の協力や、立地する地域との連携を通じて、地域コミュニティ全体の防災力を高めていく必要がある。企業活動は、地域社会からの信頼の上に成り立っており、地震発生の際には、施設の提供や社員による被災者支援活動への参加など、地域の期待に積極的に応えていくことが求められる。その一環として、企業は地元自治体と事前に協定を締結し、具体的な協力の方法を確認しておくことが重要である。
(7) 行政は、地震発生時に緊急規制措置を発する主体となるので、規制の内容とその例外措置について平時から関係者に周知することが求められる。企業側も行政の対応を熟知することで、行政の施策と整合性が取れた事業継続計画を策定することが可能となる。行政は、企業の事業の早期復旧や生活必需品の配送などに配慮した柔軟な対応が取れるよう体制を整備する必要がある。
最優先課題である安否確認に関しては、災害用伝言ダイヤル、災害用伝言板、携帯電話メール、電子メール、専用ホームページなど、複数の通信手段を活用して、社員とその家族の安否確認方法を多層化できる。
負傷者の対策に関しては、社内の医務室の活用や自社所有の緊急車両の提供を通じて負傷者の救護に努めるとともに、外来の負傷者も念頭に入れて、十分な医薬品や救急機材を備蓄する必要がある。
円滑に社員を招集するためには、事前に社員の出社場所(最寄りの事業所など)や出社ルールを災害対策マニュアルなどで明確化する必要がある。
災害対策本部の要員に関しては、早期に本部を立ち上げる必要が高いことから、拠点近辺に社宅や宿泊施設を常時手配して、確実に出社できるような対策を取ることも有効である。また、地震発生直後に初期対応に当たる社員を広範な地域で展開する蓋然性が高い場合には、社宅を適正に分散配置しておくことも有効な対策となる。
また、自社の優先事項や重要業務に従事できる専門技術者を平時から十分に育成しておくことが、地震発生時の復旧要員の確保につながる。
原材料・部品の調達を確実に履行できるように適正な在庫管理に努め、取引先を分散化させることも、事業継続の観点からは有効な対策である。
建物や設備に関しては、平時から耐震・免震・不燃化を推進することが重要である。また、万が一の場合に備えて、代替施設(バックアップ・オフィス)の確保や、ライフラインの供給停止を想定した自家発電による予備電源の確保なども有効な対策である。
建物や設備本体だけではなく、什器に関しても器具の固定などの転倒防止対策を取ることが重要である。
復旧要員向けの食料、飲料、災害用トイレ、医薬品などの生活必需品に関しては、平時から十分に備蓄しておく必要がある。
取引を円滑に継続できるように、流動性資金を確保しておく必要がある。
また、システム障害によるオンライン決済の停止という不測の事態に備えて、自社の経理処理システムを強化するとともに、緊急支払い方法に関する対策も練っておく必要がある。
被災者への生活必需品の供給を担う小売業においては、釣り銭不足による決済不能に陥らないように小銭を準備し、釣り銭が発生しにくい金額でのパッケージ商品を提供することが有効である。
また、当面の資金繰り以外にも、中長期的な復興資金を確保するために、平時から復興資金融資について金融機関と調整を行う必要もある。
効率的に情報を収集するには、通信手段を多層化させることが重要である。例えば、通常の固定電話や携帯電話の他に、衛星電話・無線・専用回線の活用などで通信手段を多層化し、回線を強化することができる。また、電話、インターネットの使い分けなど、目的別に手段を切り替える必要もある。
行政と連絡を取る際には、双方の窓口を一本化することが重要である。
また、データが消失しないように、情報機器を固定し、重要なデータのバックアップを取ることが重要である。
自助に関する取組みを実践するために、社内のマニュアルや計画を策定して、社内に周知徹底を図る必要がある。
また、実効性を高めるために、図上演習のほか、定期的な実地訓練(避難訓練、帰宅訓練、安否確認訓練、招集訓練など)を実施することも有効である。その際、経営トップ自らが参加し、率先して社員に防災意識の向上を働きかけることが重要である。
社員や応援要員を招集するために、輸送会社などと事前に協定を締結して交通手段(バス・船舶など)を確保しておくことが有効な対策となる。
専門技術を持った応援要員の協力に関する協定を関係会社などと事前に締結しておくことも有効である。
また、ホテルや旅館業界と事前に協定を締結して、社員や応援要員の宿泊施設を確保することも重要である。
原材料・部品の調達に関しては、共通のサプライヤーが罹災した場合、相互に連携して早期の復旧を支援することが重要である。また、平時からサプライヤーに対する事業継続計画の構築を支援することが、災害時の安定供給の促進にもつながる。
被災した建物や設備に関しては、専門技術者を確保して、その利用可否を早急に判断することが事業の継続にとって欠かせない。また、建物や設備の応急処置や修繕が必要と判断された場合に備えて、工事業者、保守・点検業者と事前に協定を締結し、必要な復旧資材を確保して早期復旧を図れるような協力体制を構築しておくことが重要である。工事に際しては、自社の遊休地を工事業者などの活動拠点(資材置き場など)に転用して有効活用し、重機の融通などによって工期を短縮し、復旧情報の共有化によって作業の効率性を高めることもできる。
サプライチェーンの関係企業やインフラ関係の企業間で情報ネットワークを構築し、復旧に向けた情報を共有することが重要である。
また、メディアとは、平時から連携して地震発生時の緊急措置について広報活動を展開するとともに、地震発生時に緊急情報ラインを構築して情報発信の円滑化を図ることも有効な対策である。
自助に関する取組みと同様に、異業種間で共同訓練を実施することで、実効性を高められる。
企業が地域コミュニティと積極的に連携して、課題を解決できる場合がある。例えば、地域コミュニティにおける住民の安否確認は、企業が実施する社員の安否確認と相互補完的な関係にあり、企業が社員と直接連絡を取れない場合に特に効果を発揮する。
一方、企業は地域の一員として、保有する敷地や研修施設などを開放して避難住民などを受け入れ、一時的な休憩所を提供できる場合がある。企業で発生する帰宅困難者についても、自社施設内で吸収して地域の避難所への負担を最小限に止め、地域コミュニティへの負荷を軽減できる場合もある。ただし、地震や二次災害による負傷者の発生が想定されるため、重傷者の搬送などの対応について、事前に最寄りの医療機関と協議をしておく必要もある。
企業の社員やOBが、地域コミュニティにおけるボランティアの担い手として活動することも重要である。もっとも、企業は事業の継続と復旧という使命を第一義的に負っているため、地域コミュニティとの共助に当たっては、協定を締結して事前に役割分担を明確化する必要がある。
企業が地域住民の避難者などに施設を開放する場合には、仮設トイレを融通することなどもできるが、社員、応援要員の利用も念頭に置きつつ、事前の協定内容に応じて生活必需品の備蓄量を検討することが重要である。
復旧要員向けの生活必需品に関しては、近隣企業間で共同の備蓄拠点を設置することも有効な対策である。
地域コミュニティから消火や復旧活動の応援の要請があった場合には、自社機材の提供可否を検討する必要がある。また、建設・住宅・不動産業界が協力して、建物復旧や住宅提供を行うことも重要である。
地域住民向けの自社施設の見学会の開催や地域の販売店などでの広報活動を通じて平時から情報提供の場を設け、リスク情報などの共有化を図ることが重要である。
また、災害時には、被害情報や復旧見込みについて情報交換を行い、二次災害のリスクが存在する場合には現状と対策について情報公開を進めることが大切である。
地元自治体は、業界団体との協定締結に止まらず、その延長線上として個別企業との緊密な関係を構築し、実現可能性を加味した具体的な対策について協議することを心掛けるべきである。地元自治体が個別企業と協定を締結する際には、協力企業の受入体制や事務フローを同時に構築することが求められる。
安否確認に関しては、小中高等学校や幼稚園、保育園などに通う学童・生徒の多くが独自の通信手段を持っていないことから、学校単位での安否確認システムを早急に確立すべきである。
負傷者対策に関しては、負傷者の受入れ体制に関する事前協議を行って救急救命体制を整備し、地震発生時の対応力を強化すべきである。
企業の事業継続・復旧の観点からは、被災地外から社員を招集し、被災地内で社員を適正に配置することが重要な課題である。内閣府の中央防災会議では被災地外に流出する帰宅困難者対策に焦点を当てて検討を深めているが、むしろ逆方向に流入する復旧要員の円滑な業務遂行のための支援策について検討すべきである。帰宅困難者対策に関しても、企業の費用負担などを考慮し、一時滞在場所などについて実態に即したルール作りを行うべきである。
また、遠隔地から応援要員を輸送する手段として観光バス(一般貸切旅客自動車)を活用できるように臨時の営業区域を柔軟に設定することや、水陸運両面の大量ピストン輸送網を早期に確立することを検討すべきである。
電力、ガス、水道、通信などのライフラインに関連する建物や設備の他、避難所に指定されている小中学校などの公的施設の耐震・免震・不燃化について一層の促進を図るべきである。建物や設備の応急危険度判定を担う人材に関しても、判定員の更なる確保・育成を通じて、地震発生後速やかに判定が進められるような体制を確立すべきである。また、建物や設備の修復に際して工法の事前承認制を導入し、復旧作業を早められるようにすべきである。
交通規制に関しては、環状7号線以内の一律的な全面車両通行禁止措置は、物流を阻害し経済の混乱を招くため、現実的ではない。緊急車両以外の車両についても優先順位に応じた交通規制の除外車両を設定し、空輸や水陸運の優先的な使用許可など、柔軟で機動的な交通規制に改正すべきである。また、緊急車両の事前届出制の運用を柔軟化するとともに、災害現場での緊急車両の通行許可に当たっても通行の円滑化に資するよう、運用ルールを柔軟化・簡素化すべきである。災害時の移動には原動機付自転車が有効であり、交通規制の対象から除外する措置を講じることを求める。
生活必需品に関しては、地方自治体においても災害時の支援物資の円滑な供出に資するべくより一層、計画的な備蓄を求める。
当座の決済資金や復旧に必要な資金調達に関しては、被災地への緊急融資などの経済対策を実施することを求める。
また、事業所における耐震事業や自家発電設備設置などの支出に関しては、税財政的なインセンティブを与えて事前の備えを促進すべきである。
中央政府は、被災情報や復旧情報を迅速かつ的確に収集し、容易にアクセスできる方法で公開する体制を構築すべきである。
また、断片的な情報の伝達を避け、交通規制、火災情報、医療機関の体制、航空機・人工衛星を活用した画像・映像などを、総合的かつ網羅的に提供することを心掛けるべきである。
有事においては、画一的で硬直的な対応ではなく、法令や行政手続きの特例措置などによる適時・的確な判断と柔軟な対応を求める。
今回の「中間とりまとめ」では、主として事業の早期復旧や継続の観点から、首都直下地震発生時の課題と対策について、明らかにした。今後は、業界に共通するテーマとして、帰宅困難者対策、集客施設やその周辺の滞留者対策、社員の防災意識の向上に関する対策の検討を深める。
また、防災に関する委員会では、検討結果を基に、関係企業、業界団体や行政機関と連携を図りながら、より実効の上がる対策について、引き続き検討する。その際、近隣の企業や地域コミュニティが一体となった共同避難訓練、サプライチェーンの構成企業が参加する図上演習、徒歩による一斉帰宅訓練や招集訓練、基幹インフラの停止状況下での待機訓練など、具体的な行動の可能性についても検討し、提案する。
| 自助 | 共助 | 公助 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
異業種間 | 地域コミュニティ | ||||||
ヒ ト | 安否確認 | 安否確認方法の多層化 | 地域住民による安否確認 | 学童・生徒の安否確認 | |||
負傷者救助 | 社内医務室の活用 医薬品・救急機材の備蓄 | 地元の医療機関との連携 | 救急救命体制の整備 | ||||
要員の招集 | 出社ルールの明確化 社員の適正な配置 | 応援要員の確保 交通手段の確保 | 復旧要員の招集支援 | ||||
モ ノ | サプライチェーン | 適正な在庫管理 取引先の分散化 | サプライヤーの共同支援 | ||||
物流 | 交通規制の柔軟化 | ||||||
生活必需品 | 飲食料や災害用トイレの備蓄 | 共同備蓄拠点の設置 生活必需品の提供 | 物資の計画的な備蓄と 円滑な供出 | ||||
建物・設備 | 施設の耐免震・不燃化 什器の固定化 代替施設の確保 | 応急危険度判定 工事業者との連携 | 自社施設の活用 復旧機材の提供・協力 | 避難所の耐震化促進 応急危険度判定制度の確立 | |||
カ ネ | 流動性資金 | 現金・小銭の確保 | 緊急の経済対策 | ||||
決済システム | 経理システムの強化 | ||||||
復興資金 | 復興資金の確保 | ||||||
情 報 | 収集・発信 | 通信手段の多層化 広報窓口の一本化 | 復旧情報の共有 | 広報活動と情報公開 | 的確な情報収集 総合的な情報提供 | ||
データの保管管理 | データのバックアップ |
防災に関する委員会加入 315企業・団体
2007年5月18日〜6月18日
190企業、15団体(回答率:65.1%)