[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

わが国研究開発システムの抜本改革に向けた検討を求める

2008年10月29日
(社)日本経済団体連合会
産業技術委員会

人口減少、新興国の追い上げ、資源価格の高騰、地球温暖化問題をはじめとする地球規模の課題の深刻化、さらには世界経済の減速等に直面するわが国が持続的な成長を実現するためには、科学や先端技術を基点としたイノベーションの不断の創出が不可欠である。併せてイノベーション・プロセスの複雑化に伴うオープン・イノベーションの重要性の高まりもあり、基盤となる国全体の研究開発システムの優劣が、拠点とする企業の競争力さらには国の成長力にも大きな影響を与えるようになっている。こうしたなか、既に欧米・アジアの主要国では、国を挙げて研究開発システムの改革によるイノベーション創出力の向上に凌ぎを削っている。

わが国においても、3期にわたる科学技術基本計画の下での取組みによる産学連携の進展等の成果が出ているが、国際的に活躍できる質の高い人材の育成・確保やブレークスルーにつながる基礎的・基盤的研究の推進、知の創造の成果の社会への還元等は、未だ不十分である。こうした状況を受け、厳しい国際競争下にある企業においては、海外の大学・公的研究機関との共同研究や研究開発拠点の海外移転の動きが増加している。もはや現行の延長線上での取組みでは、わが国のイノベーション創出の総合力は相対的に低下し、産業技術や基礎研究の弱体化を招くのみならず、中長期的にわが国の成長の源泉を失いかねない。わが国が引き続き科学技術創造立国として存続するためには、今こそ、国を挙げて研究開発システムの抜本改革に着手することが不可欠である。

かかる状況の下、本年6月に、イノベーション創出を通じた国際競争力強化等を目的に「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(「研究開発力強化法」)が成立し、近く施行されることとなったことは産業界として高く評価するものである。しかし、これはあくまで改革の第一歩であり、同法の施行にあたり、附則第6条も踏まえ、総合科学技術会議(CSTP)に対し、わが国研究開発システムの抜本改革に向けた検討を早急に開始することを求めるとともに、下記の通り要望する。

日本経団連としても今後、産業競争力強化に資するわが国研究開発システムのあり方につき改めて見解をまとめるとともに、イノベーション創出の主たる担い手として引き続き積極的な役割を果たす所存である。

  1. 1.CSTPは、早期に研究開発システム改革に関する調査審議の権限を持つ検討組織を新設し、企業、大学、公的研究機関等、主要アクターのバランスに配慮してメンバーを構成する。検討対象は研究開発システム全般とし、質の高い人材の育成・確保をはじめとする諸課題は言うまでもなく、CSTP、国立大学法人、研究開発独立行政法人等の組織のミッション・機能も含め、わが国国際競争力強化や国民生活の向上の観点から骨太の見直しを行なう。なお、検討は、総理大臣の諮問に基づき行なわれることが望ましい。

  2. 2.CSTPは、研究開発システム改革の司令塔としての機能を強化し、来るべき第4期科学技術基本計画はもとより、国立大学法人や研究開発独法の中期計画等に検討成果を反映させる。関係府省に対しては、CSTPにおける検討状況・成果を踏まえ、法で措置が明記された事項は無論、関係法令の改正を含め必要な施策を確実に実施するよう求める。

  3. 3.CSTPは、わが国研究開発システム改革の進捗確認にあたり、わが国国際競争力の向上に関する成果目標や改革工程を設定するとともに、諸外国の取組みのベンチマークを行なう。その上で、わが国の改革状況を定期的にレビューし、改善方策につき意見具申を行なう。

以上

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