G8ビジネス・サミット総括

〜未来のために〜

〔仮訳(英文正文)/共同声明
2008年12月3日、4日

御手洗 冨士夫日本経団連会長
ペリン・ベッティカナダ商業会議所理事長
ローレンス・パリゾフランス経団連会長
ユルゲン R. トゥーマンドイツ産業連盟会長
エンマ・マルチェガリアイタリア産業連盟会長
アレクサンドル・ショーヒンロシア産業家企業家連盟会長
マーティン・ブロートン英国産業連盟会長
トーマス J. ドナヒュー全米商業会議所理事長
ピーター・ロビンソン米国国際ビジネス評議会理事長
エルネスト・アントワヌ・セリエール  ビジネス・ヨーロッパ会長

1.現在の危機は、開かれた市場経済の基本原則に疑問を投げかけるものではなく、主として技術的、規制上の早急な対応を求めるものである。

金融・経済危機の原因は複合的である。11月15日に開催された金融サミット(G20)の宣言は、その多くを強調している。即ち、マネー市場に過度の流動性をもたらした金融・為替政策、特定の機関あるいは活動分野に関する規制の欠如あるいは不適切な規制、市場の様々な機関あるいは規制・監督当局による正確なリスク評価のないままに過度の流動性から高い利益を得ようとする行動、行過ぎたレバレッジ、マクロ経済政策の不十分な調整、構造改革の不徹底である。これらこそ深刻な結果をもたらした機能障害であり、開かれた金融市場における各種機関、製品、活動に関するルールの改正を具体的な形で求めている。他方、これら機能障害は、開かれた市場経済に疑問を投げかけるものでは決してなく、むしろ民間企業や企業家が自由に創造、成長、革新を遂げるための明確で共通のルールを要請している。企業には、危機以前と同様、優れた人材、技術、成功を収めようとする意欲がある。これこそ我々が楽観的立場をとる根拠である。

2.今日、生産、投資、輸出の継続によって経済を後退局面から救い出すことができるのは企業だけであり、この点を強調しておきたい。

生産、投資、輸出、研究開発、人材訓練・育成を引き続き行うことによって経済を後退局面から救い出すことができるのは企業であり、企業において他にはない。そのように野心とダイナミズムを示し続けることが危機からの脱出に備えることになる。こうした中で国家の役割は、まず、金融市場の正常な機能を回復させることであり、これはまだ完全には実現していない。その次は経済が再び成長軌道に戻るために不可欠な規制枠組みを整えることである。企業を経営することが国家の役割であってはならない。

3.政府のマクロ経済政策は大胆であると同時に財政赤字への配慮が重要であり、また、他国への影響にも留意しなければならない。

まず、我々は、景気の後退を防ぐために各国における財政・金融面の刺激策が必要である点を支持する。しかし、各国経済が相互に依存し経済の低迷がグローバルな規模で起こっていることに鑑みれば、世界経済の効果的な回復には、次のような条件を満たすことが不可欠である。

世界経済にとって引き続き重要なリスクとなっている経常収支不均衡へ強い関心を払うこと

4.我々は、G20共同宣言(11月15日ワシントン金融・世界経済に関する首脳会合)を全面的に支持するとともに、グローバル経済において重要な役割を担う国際機関に対し貢献する。

G20宣言に盛り込まれた、期限付きの野心的な作業計画は、最近数週間、我々全員が表明してきた懸念に答える内容である。数週間前から、我々諸団体は共同して金融市場改革に関する多くの提言を行ってきた。我々として検討を深め、共同して取り組みたいと考えているテーマは、金融市場の規制の収斂、国際金融機関の改革である。金融市場が円滑に機能することは企業にとって不可欠であり、企業としては、様々な国際機関が進めている作業に参加したいと考えている。我々G8ビジネス・サミットのメンバーは、G8、G20、金融安定化フォーラム、IMF、OECD、WTO、世界銀行といったグローバル経済に関する国際的な機関・会議の金融や実体経済に関する専門知識が活かされるよう建設的な貢献を行うことを約束する。

5.WTO加盟交渉およびドーハ開発アジェンダの野心的でバランスのとれた早期妥結を求める。

WTOドーハ開発アジェンダに関し最終的に合意することは各国が実現しなければならない主要な責任であり、そうすることによって、いかなる保護主義も拒否するという強力なシグナルを打ち出し、多国間主義へのコミットメントを明確にすべきである。貿易の拡大およびモノ、サービスの流通は成長と安定を回復するための前提条件である。我々は、ドーハ・ラウンドの妥結を可能にする条件を満たすよう交渉者に対して強く要請するものである。本年末においてドーハ・ラウンドが成功を収めることは世界経済回復にとっても画期的である。

6.我々は、開かれた市場経済の中で企業が倫理の徹底、責任ある行動を誓う。

日常の事業活動において、民間企業は、ステークホルダーおよび社会全体に対する責任をかつてなく感じている。ステークホルダーとは、事業パートナー、従業員、株主、下請け業者、サプライヤー、消費者である。企業は、事業の自由の基礎となっている根本的に重要な倫理観、即ち責任、自らリスクをとる用意、透明性、良きコーポレートガバナンス、を尊重し、それら責任を果たす決意である。今後、企業は持てるエネルギーをすべて動員して現在直面している危機に対処するとともに、気候変動問題にも取り組んでいく。

以上

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