第21回 日タイ合同貿易経済委員会 サマリー

英文正文、和文仮訳)

2008年11月17日(月)
於:タイ シャングリ・ラ ホテル バンコク
  1. 第21回日タイ合同貿易経済委員会が2008年11月17日、タイのシャングリ・ラ ホテル バンコクにおいて開催された。日本側代表団は丹羽宇一郎・日タイ貿易経済委員会 共同委員長をはじめ75名、タイ側代表団は、プラモン・スティウォング・タイ商業・工業・金融合同常任委員会(Joint Standing Committee on Commerce, Industry, and Banking:JSCCIB)会長兼タイ貿易院(BOT)会長をはじめ150名で構成された。

開会式

  1. 歓迎挨拶において、タイ側代表のプラモン会長は、発足以来、日タイ合同貿易経済委員会が二国間の経済協力関係を強化する上で果たしてきた役割の重要性に言及した。また、日タイ経済連携協定(JTEPA)が2007年11月に発効して以来、日タイ間の貿易額が加速度的に拡大していると述べた。その上で、プラモン会長は日タイ双方に対し、JTEPAの成果を補強し、評価を行うジョイント・ワーキング・コミッティーを日タイ合同貿易経済委員会の中に速やかに設置するよう求めた。

  2. 日本側団長の丹羽宇一郎共同委員長は、日タイ間の600年以上に及ぶ歴史的な関係に言及し、JTEPAの活用を通じた二国間関係の強化に期待を表明した。また、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定が2008年12月1日に発効することも踏まえ、東アジア地域経済統合において要となる役割を果たすべき両国が戦略的な連携を推進することの重要性を強調した。

  3. 来賓講演において、小町恭士 駐タイ大使は、東アジア経済統合および大メコン圏(GMS)のインフラ開発の過程において、ASEANのリーダーとしてのタイの重要性はますます増していくと述べた。小町大使はまた、JTEPAにおけるビジネス環境整備の枠組みが効果的に活用されている事例を紹介しつつ、当合同委員会が今後さらに重要な役割を果たすことに期待感を表明した。

  4. オラーン・チャイプラワット タイ国副首相は基調講演において、グローバルな金融市場における現在の困難に触れ、危機克服におけるタイ政府の経済政策パッケージの効果を強調した。また、二国間レベルのEPAならびに地域レベルのAJCEPは、地域経済の安定性を高め、地域統合を加速するために、重要かつ効果的な役割を担うであろうと述べた。

セッション1「マクロ経済概観:日タイ両国経済の現状ならびにグローバル経済における今後の課題」

  1. カシコーン研究所アシスタント・マネジング・ディレクターのピモンワン・マハチャリヤウォン博士は、タイおよび世界の経済の現状を分析し、景気後退に対する世界的な懸念がタイ経済に及ぼすインパクトを詳述した。また、短期および中長期の課題を指摘しつつ、結論として、2009年のタイ経済については、経済成長の減速はあっても景気後退には至らないとの予測を示した。

  2. 日本経団連アジア・大洋州地域委員会の大川三千男企画部会長は、2007年夏以来の金融不安を受けて、日本および世界を取り巻く現在の経済状況を概観した。また、日本が直面している課題に触れつつ、東アジアにおける地域的な経済連携の重要性を強調し、こうした取組みによって、日本がタイとともに持続的な成長を実現することが可能となると述べた。

セッション2「日タイEPAを通じた戦略的経済連携」

  1. 食品加工部会(FDC)、電気・電子関連産業開発部会(EDC)、SIIT(タマサート大学シリントン・インターナショナル・インスティチュート・オブ・テクノロジー)が、第20回合同委員会以降行ってきた活動経過報告を包括的に行った。その要点は以下の通り。

食品加工部会(FDC)

  1. タイ工業連盟(FTI)のパイブン・ポンスワンナ副会長は、JTEPA発効以降のタイ食品産業に関する現状報告を行い、両国経済界に対し、食品の安全や日本でのマーケティング促進などの分野における協力を拡大するよう求めた。また、JTEPAを活用する上で行政手続上の障害を取り除くことの重要性を重ねて強調するとともに、JTEPAがより多くの食品・農産品をカバーするよう問題提起した。併せて、タイの輸出者がJTEPAをさらに活用するよう求めた。

電気・電子関連産業開発部会(EDC)

  1. FTIのカティヤ・クライカーン電気・電子関連産業開発部会長は、同部会が、タイの中小企業向けに工場視察や生産性向上に関する研修をはじめとする諸活動を行ったことを報告した。さらに2009年、同部会として、JTEPAの下で特定の製品の規格を相互に承認する取極めの拡大や、タイの中小企業向けにプロダクト・デザインおよび開発やサプライ・チェーン・マネジメントに関する研修などを実施していくことを報告した。

タマサート大学シリントン・インターナショナル・インスティチュート・オブ・テクノロジー(SIIT)

  1. バンコク日本人商工会議所(JCC)の山辺福二郎会頭は、SIITが、タイ産業の発展と優秀なエンジニア輩出のため、FTIと経団連の財政支援により1992年に設立されたことを報告した。現在、SIITは修士課程と博士課程にも拡大され、経団連はSIITの学生に対し、日本での夏季研修を支援してきた。1996年以降の卒業生は、3,223名の学士、79名の修士、42名の博士の合計3,344名である。

1) 日タイEPA発効後の二国間経済関係の展望
  1. JCCの山辺会頭と山川広会計理事は、JTEPA発効以降の二国間経済関係の展望につき説明した。アジアにおける自由貿易ネットワークの構築に伴い、日本企業がビジネス活動を拡大している模様を概説するとともに、JTEPAにより、日本企業のASEAN域内の統括拠点としてのタイの機能が拡大することに期待感を示した。

  2. タイ貿易院(BOT)のスラポン・ウォンワタナローチュ理事は、12の小委員会と7つの協力プロジェクトから成るJETPAの背景を詳述した。こうした協力プロジェクトの実施を迅速化するため、両国が取り組むべき重要事項を指摘した。これらには、両国間の理解や解釈の不一致を取り除くことや、自動車産業のための研修所など、合意された協力プログラムを実施すること、さらに、加工豚肉ならびに粗糖などの製品の市場アクセス改善に向けて交渉することなどが含まれる。

  3. その後の議論では、日タイ産業界が、ビジネス環境整備小委員会の例に倣い、他の小委員会においても民間の参加を要望すべきとの見解を共有した。また、JTEPAの民間によるフォローアップの重要性を認識し、当合同委員会の下で作業委員会の枠組みを通じて取り組んでいくこととした。

2) タイにおける投資・ビジネス環境整備
  1. タイ投資委員会(BOI)のアチャカ・ブリンブル事務局長は、タイに対する近年の直接投資のトレンドとともに、タイ産業の発展に寄与する日本の役割の重要性に言及した。また、JTEPAの下での投資円滑化の措置に沿って、BOIの調整によって問題が解決した事例を紹介した。さらに、潜在性の高い産業分野などへの投資を奨励する特別なパッケージも示した。

  2. JCCの黒田泰男理事は、タイにおけるビジネス環境改善に向けた現在の取組みや長所に焦点を当てた。日本企業の観点から、タイの投資・ビジネス環境をさらに改善するために求められる政策や措置を指摘した上で、黒田理事は今後、タイのビジネス環境発展の潜在性に対し、期待を述べた。

  3. FTIのマンコーン・タナサンシン副会長は、日タイEPA発効以降、タイから日本への製品輸出が農林水産業、繊維、衣料の分野で飛躍的に拡大していることを述べた。日本からタイへの投資は国内経済の発展、雇用機会の増大、日本からの技術ならびにノウハウの移転といった点で重要な役割を果たしてきた。しかしながら、自動車・自動車部品、鉄鋼、繊維、衣料などの産業において、技術や教育におけるさらなる協力を促進する必要があると指摘した。

3) GMSにおける日タイ両国の戦略的パートナーシップの可能性
  1. BOTのパイルーシュ・ブラパチャイシー名誉事務局長は、2008年3月に開催された第3回大メコン圏(GMS)サミットの成果を報告した。同サミットでは、輸送、エネルギー、情報通信、農業、環境、観光、人材育成などについて具体的なプログラムの実施を加速するビエンチャン行動計画を承認した。また、東西経済回廊における物流網の整備や食品産業推進のための契約農業など、協力可能な分野を指摘した。

  2. JCCの羽島俊秀理事は、JCCのGMS委員会における種々の活動を紹介し、在タイ日系企業にとってのGMS経済回廊のメリットを強調した。こうしたインフラ開発の進捗を詳述した上で、戦略拠点としてのタイの役割を強調した。

第21回合同委員会サマリーの採択

  1. 合同委員会では、両国経済界が、両国政府に対し、11月15日にG20の指導者が合意した線に沿って、これ以上の経済混乱の拡大を防ぐよう、強く要望する必要性を認識した。また、日タイ貿易経済委員会の西松遥共同委員長により提示された第21回合同会議のサマリーを採択した。さらに、第22回合同委員会の日時と場所については、おって決定することが合意された。

以上

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