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環境にやさしい日中関係をめざして

2008年12月16日
(社)日本経済団体連合会

グローバル化が進展する中、日中関係はあらゆる分野において拡大しており、とりわけ経済関係について言えば、日中両国は今や切っても切れない関係にある。こうした中、環境問題が世界の重大関心事となっているが、日本や中国も例外ではない。

日中関係において「環境」が重要な協力テーマとなって久しい。日中政府間の環境協力は議論の段階から実行、そして成果の検証の段階へいよいよ移行しつつある。

こうした政府の動きの一方で、わが国の素材産業や消費財産業に属する一部企業は自ら持てる技術や製品によって中国の環境問題に取り組み、成果をあげつつある。これらの経験をベストプラクティスとして広く共有化して、一層の関係強化を図っていくことが日中両国に求められている。 

無論、中国における環境問題は一朝一夕に解決できる課題ではない。しかし、手を拱いていては解決は進まない。問題解決に向けて対話を深めるとともに、実効ある行動を速やかに起こさなければならない。

そこで、日本経団連は下記の意見をとりまとめ、日中ハイレベル経済対話などの協議を通じて日中両国政府が密接に協力しあって問題解決に向け、実効ある行動を起こすよう促したい。

今の中国における環境問題はもちろん政府の力だけで解決できるものではない。様々なステークホルダーの協力を得て「環境」を日中両国共通の価値にしていくべきであり、この点に関しては経済界も大いに貢献していく所存である。

本意見書を契機として、この分野に関わる幅広いステークホルダーの間で議論が更に高まることを期待する。

1.日中環境協力における産官学連携の強化

中国における環境ビジネスや中国との政府間協力を進めていくためには、中国の環境問題をめぐる状況の把握や環境政策の動き並びにこれまでの協力の実績に対する正確な理解と評価が必要であることは言を俟たない。中国の動きを専門家が分析した上で、幅広い人々が理解できるように研究成果を発信する。行政が専門家の知見をベースとして中国との政策対話を通じて制度的インフラを構築する。政府によって構築された制度的インフラの上で企業が持てる能力を最大限に発揮する。政府、企業の取り組みが深化、促進されることによって専門家の研究が資金面を含め更に活性化されるという好循環を早急に創り出す必要がある。

このような好循環を創り出すために、日本政府は、自らの持てる人材と財源および政策手段を最大限駆使して産官学連携のためのプラットフォーム(日中間の環境協力・対中環境ビジネス促進の基礎となる中国環境政策を理解するための共通基盤)の構築に取り組むべきである。

2.ビジネス・モデルの構築

中国での環境ビジネスが成果をあげるために、両国政府は政策協調を進め、民間企業が両国にメリットのあるしっかりした成果を生み出せるようなビジネス・モデルを構築する必要がある。そのためには、これまでの企業の経験を学者・専門家によって分析・整理した上で、日中政府間で政策対話を行い、企業等に対してしっかり広報を行い、もって企業の環境ビジネスを促進する総合的政策体系を構築すべきである。

ビジネス・モデル構築に当たっては、とりわけ知的財産権の保護をはじめ、代金回収の保障メカニズム、エネルギー会計監査報告など中国個別企業の情報開示、個別プロジェクトにおける環境・省エネ実績の正確な計測と集計などが強く求められる。

また、日本政府が公的資金によって、中国政府の協力の下、環境・省エネに関する日本企業等の専門家を中国の大手国有企業に派遣し工場診断を行うのも有効な方策と考えられる。

さらに、中国において実施したパイロット事業によって企業のブランドイメージを明確に打ち出して普及させる手法も有効であり、日本政府の支援スキームの創設や拡充が求められる。

3.環境価値を共有するための活動

「環境」は日本だけでなく、中国においてもビジネス上の重要なキーワードとなっている。中国において都市を中心に中産階層が消費の中核を担うようになった現在、「環境」という価値観に対して、日中両国の政府や企業だけでなく消費者から幅広く理解を得ることが重要であり、大きな意義を有する。

中国は産業構造の高度化を政策として推進しているが、そのためには消費構造も高度化させなければならないことに気づき始めている。中国政府はこれまで整備してきた環境ラベルや省エネラベルを基礎として、2007年よりグリーン購入制度を本格的に導入したが、「グリーン購入法」制定も中国政府の視野に入ってきている。

環境ラベルやグリーン購入が中国において広く認知され始める一方で、「環境にやさしい製品」である「エコプロダクツ」という概念も確立されつつある。中国が環境を経済に内在化させるためには、グローバル企業の叡智の結晶とも言える「エコプロダクツ」の意味を中国の政府、企業、消費者により良く知ってもらうことが必要である。

そこで、経済界は、日本において10年の歴史を持つ「エコプロダクツ展」を中国政府とともに2009年秋を目途として中国の北京で開催することを検討する。

併せて、中国での「エコプロダクツ展」に向けて、(1)エコプロダクツの普及、(2)クリーンファクトリーの推進、(3)エコ行動の実践、などを促進することを旨とする「日中環境貢献宣言(仮称)」をとりまとめ公表することを検討する。

なお、中国の環境政策の動きの把握とわが国経済界としての情報発信の一環として、中国の関係機関等と直接対話の機会を持つことを検討する。

以上

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