企業会計審議会企画調整部会
「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)」
に関するコメント

2009年4月6日
(社)日本経済団体連合会

金融庁企業会計審議会企画調整部会が2月4日に公表した「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)」(以下「中間報告案」)は、経団連が昨年10月に公表した提言「会計基準の国際的な統一化へのわが国の対応」の内容が反映されており、基本的な方向性について賛同する。

経団連では本年3月に、改めて全会員企業(1,307社)に対しアンケート調査 <PDF> を行っているが、IFRSの内容、基準設定におけるデュープロセスをはじめ諸課題の達成状況等を十分見極めることを前提に、大半の企業が、国際会計基準(IFRS)の当面の任意適用や将来的な強制適用を示した中間報告案の内容に理解を示している。一方で、任意適用から強制適用に至るスケジュールの明確化、個別財務諸表開示の簡素化、コスト面の課題等について、さらに検討を深めるべきとの指摘も多かった。以下の諸点について、さらに検討を深め、関係者が連携し、我が国経済の活性化、企業の国際競争力強化の観点を踏まえつつ、国際会計基準(IFRS)の円滑な導入を図るべきである。

1.IFRSの適用に向けた課題

(中間報告案「(1)IFRSの内容」について)

中間報告案に示された通り、IFRSの内容は、「我が国の商慣行、企業の実態を適切に反映したものになっている」ことが必要不可欠である。しかし、現在、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が検討中の中長期プロジェクト(退職後給付、財務諸表の表示など)、いわゆるMOU項目の中には、わが国企業の実態に照らしてさらに十分な検討をすべきものも含まれている。わが国においてIFRSを適用する上で、IFRSの内容がわが国関係者の間で十分なコンセンサスを得られるものとなっているか否かは、極めて重要なポイントである。中間報告案においても、これらのMOU項目の動向が、わが国におけるIFRSの適用上の重要な要件であり、わが国との十分な協議が必要であることを示すべきである。

(「(2)IFRSを適用する場合の言語」について)

適用に向けて、IFRSが日本語に適切に翻訳され、広く認知されていることが必要となるが、基準のみならずIASBのディスカッション・ペーパーやエクスポージャー・ドラフトを含め早期の対応が必要である。また、関係者が容易に基準にアクセスできるようにするためには、安価なコストで入手できることが必要である。

(「(4)IFRSに対する実務の対応、教育・訓練 ハ.監査人」について)

IFRSの適用にあたり、作成者同様、監査人の果たす役割が非常に大きい。プリンシプルベースのIFRSが実務において適切に適用されるためには、監査人が各企業・業界の実情等をより一層理解し、個別の実態に即した柔軟な判断を行うと同時に、監査法人間における判断のバラツキを無くす工夫が必要となる。
IFRSの実務上の取扱いは、一義的には企業の判断によるが、最終的には監査上の取扱いがどのように行われるかが重要となる。監査人は、独立性に反しない範囲で企業に対して、タイムリーかつ的確な助言を行うなど、積極的に関与することの必要性を中間報告案で示していただきたい。

(「(4)IFRSに対する実務の対応、教育・訓練 ニ.当局」について)

中間報告案では「開示規制、監査基準等の見直しの必要性、特に、別記事業等においては、各所管当局が、それぞれの立場から対応の必要性の検討を早めに行っておく必要がある。」とされている。このうち別記事業に係る財務報告制度については、公共性の高い各事業が広く国民経済に与える影響などを踏まえつつ、長年の議論に基づき構築されてきた経緯がある。IFRS適用に係る対応の必要性の検討にあたっては、いたずらに迅速な対応を求めるのでなく、規制や監督との関係、財務諸表作成者の事務負担などを含め、具体的かつ慎重な検討が必要であることを中間報告案で示していただきたい。

2.任意適用

(中間報告案(1)「任意適用の対象」について)

任意適用の対象となる企業の範囲については、基本的な考え方に賛同する。
ただし、IFRSを任意適用するためには、作成者側のみならず、監査側においてもIFRS監査の体制が整っていることが必須であり、作成者側と監査側とがいずれも一定の水準以上にあることを確認する工夫が必要と考える。
なお、上場企業である親会社が任意適用を行った場合でも、上場子会社、上場関連会社が、一定規模要件に該当せず任意適用できないケースも想定される。
このようなケースを任意適用の対象とするか否かについて、さらに柔軟な対応を検討いただきたい。
また、今後、IFRSの適用にあたり、IFRSやこれを設定するIASBの位置づけ、わが国会計基準やこれを設定する企業会計基準委員会(ASBJ)の位置づけを制度上明らかにしていく必要がある。

((2)並行開示について)

任意適用時の並行開示については、企業の負担を考慮して最小限度に止めるべきであり、中間報告案ではその趣旨が反映されている。並行開示が拡大すれば、事務負担の増大から任意適用を決断する企業が大幅に減少すると考えられることから、今後の開示ルールの具体化にあたっても、並行開示の簡素化について十分に配慮すべきである。

((4)「任意適用の時期」について)

中間報告案では、2010年3月期から任意適用を開始することが示されている。日本企業の中には、既にIFRSの適用に向けた準備を開始している企業もあり、可能な企業から適用できるとした点を評価したい。経団連が実施したアンケート調査でも、任意適用を検討している企業が複数存在する。一方、任意適用企業の解釈や実務がその後に続く企業の先行事例として固定化することを懸念する意見もある。2010年3月期から任意適用を開始する場合でも、わが国会計制度に携わる関係者が、開示・移行にかかる条件整備をはじめとする実務上の取扱いについて、十分なコンセンサスを得ながら進めていくことが必要である。
いずれにしても、条件を満たした企業が早期に任意適用することを阻害する要因を軽減し、積極的に任意適用に踏み切ることが可能となるよう、監督当局、監査人の柔軟な対応をお願いしたい。

3.強制適用

(スケジュールの明確化について)

中間報告案では、任意適用の時期や、強制適用の判断時期にかかる例示はあるものの、任意適用から強制適用に至る具体的スケジュールが必ずしも明確に示されていない。経団連のアンケート調査結果からも、強制適用の方向性について中間報告案を支持する企業も多く、強制適用に備えた具体的な準備を進める上でも、強制適用開始時期(「最短で○○年○月○日以降に終了する年度の財務諸表から」など)を明示すべきである。米国の動向を踏まえることは当然であるが、同時に三大市場の一角を担う日本として、IFRS適用に係る国際的なスタンスを明確にすることが非常に重要であり、その観点からもスケジュール明確化が必要である。
スケジュールが明確化された場合でも、強制適用に係る最終判断は、今後の諸課題の達成状況を踏まえて行われるべきであることは中間報告案の通りである。

(移行方法について)

IFRSへの一斉移行は比較可能性の観点から好ましいものの、一時期に関連業務の需要が殺到することでシステム変更や監査対応の物理的な逼迫を招くことも懸念される。また、経理部門の人的リソースに余裕のない小規模上場企業においては、「強制適用の最終的な判断が行われるまで適用に向けた検討を行えない」と考える企業も存在する。経団連アンケートにおいても、全体の約四分の一の企業が、米国SECの判断等が行われる「2011年度以降に検討を開始する」との回答になっている。このように社会的な負荷や企業の対応力に差があることを考慮すると、米国同様、企業の規模等に応じた段階的適用を検討すべきである。例えば、決定から3年間の準備期間をおき、任意適用対象企業から段階的に義務付けていくことなどが考えられる。

4.コストへの配慮

中間報告案において、IFRS適用に伴うコストに関し、「作成者をはじめとする関係者が、教育・研修や経理システム変更を含めた体制整備について、効率的かつ計画的な対応を行い、過大なコスト負担がかからないよう、工夫と努力が必要」とされたところである。IFRS適用に関し、過大なコストがかかれば、それは作成者のみの負担でなく、最終的には投資家を含めた社会全体のコスト増につながる。IASBは、これまでも、IFRSのメリットとして、多国間の資金調達のコスト低減を強調してきたところであり、作成者側のみならず、監査人、監督当局、利用者等、全ての関係者が一丸となって、効率的な適用に向けた体制作りに組織的、計画的に取組む必要がある。

5.金融商品取引法上の個別財務諸表開示

米国をはじめ、証券市場におけるディスクロージャーのグローバル・スタンダードは連結財務諸表であり、経済界としても、かねてより連結財務諸表をベースとした開示、個別財務諸表の簡素化を求めてきた。既に、わが国の四半期報告制度においては、個別財務諸表の開示は求められておらず、IFRSを採用し、国際的な比較可能性を優先するこの機を捉え、金融商品取引法上の個別財務諸表の開示は、抜本的に簡素化することが必要である。中間報告案においてもその方向性を明示していただきたい。グローバル・スタンダードを踏まえても、なお投資家にとって必要な個別財務諸表情報については、注記などの形で補えば足りるものと考えられる。

以上

【資料】

IFRS適用に向けた取組み状況等に関する調査結果概要 <PDF>


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