「世界最先端研究支援強化プログラム」(仮称)の執行に係る
枠組みのあり方について

2009年4月17日
(社)日本経済団体連合会
産業技術委員会

日本経団連産業技術委員会では、「世界最先端研究支援強化プログラム」(仮称)の創設を提言した。このたび、4月10日に決定された「経済危機対策」(「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議)において、底力発揮・21世紀型インフラ整備の一環として「研究に集中できるサポート体制、多年度に自由に運営できる研究資金など、従来にない全く新しい『研究者最優先』の制度の創設」として提言の趣旨が盛り込まれたことを産業界として高く評価する。

この国難とも言うべき状況を打破し、新たな成長と雇用の創出を実現するためには、政治のリーダーシップの下、同プログラムをオール・ジャパンの叡智を結集して早急に具体化していくことが不可欠である。そこで、本プログラムの執行に係る制度的枠組みについて、下記のとおり提言する。

1.ステアリング委員会の創設

わが国の成長力強化に不可欠な課題を迅速に設定し、効果的に執行する観点から、わが国の官民を代表する有識者からなるステアリング委員会(「国際競争力強化のための研究開発会議」(仮称))を総理大臣および科学技術担当大臣の下に設ける。同委員会は、研究開発課題の候補案の策定や公募、評価に至るプログラムの一連の執行を担うものとする。メンバーは、同プログラムが経済危機対策の一環であることに鑑み、産業界出身者を少なくとも半数とする。

2.専属事務局の設置

ステアリング委員会の執行を強力にサポートする観点から、関係府省、産業界、公的研究機関、大学等の精鋭で構成される専属の事務局を設置する。事務局は、プログラムの執行に係る詳細な制度設計を行なうとともに、研究開発課題に関する国際ベンチマーク等の情報収集・分析、中心研究者(研究開発課題の解決を先導するわが国を代表する研究者)の公募、特区的な運用を必要とする制度的課題の検討等、執行に付随する業務を担う。

3.研究開発のアドミニストレーション機能の強化

先の提言では、中心研究者を核に、基礎から開発、実証までを視野に入れた産学官による拠点・体制(中心研究者支援チーム)を公募により整備することを提言した。本プログラムでは各プロジェクトに100億円規模の資金が投資されることが想定されることから、実務能力の高い強力なアドミニストレーションが必須となる。そのため、大規模な研究開発を実際に実施した経験がある産業界出身者等をアドミニストレーションにあてる。

4.研究開発の成果の実用化の促進

本プログラムは経済危機対策の一環である以上、「研究のための研究」であってはならない。わが国の産業競争力強化や安全保障、ライフラインの強化等に繋がる「国家として担うべき研究課題」を選定し、明確な目標設定のもと研究開発が効果的に行なわれるとともに、その成果が市場化につながることが極めて重要である。こうした研究開発を実現するためには、欧米における研究開発コンソーシアムやテクノロジー・プラットフォーム等の成功事例も参考にして、コンソーシアムの成果が3〜5年後には見えるように運営し、研究成果の産業移転、ビジネス化を視野に入れた戦略と体制を構築する。同時に、特区の活用等を通じ、研究開発の推進および事業化において障害となる制度的制約の解消を図る(研究開発システム改革、社会システム改革)。

5.長期的なイノベーション創出力の基盤強化

本プログラムは、経済危機対策としての時限プロジェクトとしての性格が強い。しかしながら、本プログラムでは、多額の投資が行なわれるのみならず、多年度運用を可能とする等、わが国研究開発システムの課題を打破するための施策も実施されるため、それらの成果を具体的な制度改革や、産学官協働の研究開発拠点の整備等に着実につなげ、わが国の長期的な成長の基盤に発展させていく。

6.イノベーション人材の育成

ポスドクを含む産学官の研究者が共同研究の経験を積むことは、イノベーションを牽引する人材の育成にも資する。各種支援措置を組み合わせ、本プログラムを人材育成の場としても活用し、プロジェクト終了後の人材の処遇にも可能な限り配慮しながら、ポスドクの産業界への就職促進、産学官の人材の流動性の向上にもつなげていく。

以上

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