IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)Sharm El Sheikh会合への意見

2009年8月7日
(社)日本経済団体連合会
情報通信委員会 国際問題部会

日本経団連は、日本の主要企業約1300社からなる日本最大の総合経済団体である。日本経団連は、インターネットの健全な発展に向けたマルチ・ステークホルダーの自由な議論の場であるIGFの趣旨に賛同し、第一回会合から積極的な意見発信を続けてきた。
本年11月に予定されているエジプトSharm El Sheikhでの第四回IGFの開催に際し、日本の産業界として下記の通り意見を表明したい。

1.世界的な経済危機からの脱却への貢献

昨年秋以降の世界的な経済危機から、一日も早く脱却することが各国共通の課題となっている。インターネットやICTに対する投資は、将来の経済社会の発展に大きく寄与するものであり、経済危機下においても、各国において継続的な投資を行うべきである。とりわけ先進諸国においては、GDPに占めるICT関連産業の比率が高いことから、インターネットやICT産業の活性化が不況脱出の重要な鍵となろう。
IGF発足のきっかけとなった国連の世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society :WSIS)のチュニス・コミットメントにおいても、ICTが経済成長に果たす役割の重要性が強調されている。経済危機の脱却に向けて、電子政府、環境、医療、農業、防災、教育などへのICTの利用促進、インターネットを通じて提供される新たなコンピューティング技術について、改めて積極的な議論を行うべきである。

2.地球環境問題への貢献

人類共通の課題である地球環境問題、エネルギー問題に対し、インターネットやICTの果たすべき役割は大きい。電気製品や輸送機器におけるICT活用による省エネのみならず、ビル群や交通網といったネットワーク全体のエネルギー効率を高める上でインターネットの活用が重要となる。また、情報流通量の拡大によって、今後、爆発的に増大すると予想されるICT機器自体の省エネ化も欠かせない。
ICTやインターネットを通じて、地球環境問題や対策の効果に関するデータ収集、分析、可視化を行い、共通の尺度によりグローバルに情報を共有することで、全ての国々が参加する公平で実効的な温暖化対策が実現することが期待される。

3.民間主導のインターネット管理体制の堅持

今日、インターネットは人々や企業の活動に欠かせない社会基盤となっている。社会環境の変化や技術革新に柔軟かつ機動的に対応し、自由で効率的かつ利便性の高いインターネット環境を維持するために、現行通り、民間主導による管理体制を堅持していくことが不可欠である。IGFの活動を通じて生まれた、様々な関係者の連携(ダイナミック・コアリション)を活用し、インターネットの健全な普及を拡大していくべきである。時間や距離を越えたインターネットの管理に各国政府や国際機関が過度に介入した場合、各国の政治的思惑などにより普及が阻害され、世界経済や社会生活に多大な影響を与えることが懸念される。

4.インターネットが抱える課題への対処

(1) サイバーセキュリティーの強化、開放性・プライバシーの共生

国境を跨ぎ張り巡らされたインターネットの世界では、各国毎の法制によってネット上の犯罪を防止することが困難である。有害、違法な情報の拡散や情報の詐取、サイバーテロ等に対しては、各国の有識者が一体となって世界的な規範の調和を形成していくことが重要である。また、若年層に対する健全なインターネット利用のあり方について教育を充実してくことも必要である。
さらに、フィルタリングなどの技術開発や普及に関しても各国の関係者が連携を深め、継続的にインターネットの安全性を高めていくべきである。
一方、行き過ぎたセキュリティ対応が、インターネットの開放性やプライバシーを損なわないよう、関係者が協調し、インターネット社会の健全な発展に向けて対話を継続すべきである。

(2) IPv6への対応

更なるインターネットの利用拡大により、現行のIPアドレスの枯渇への対応が喫緊の課題となっており、IPv6の早期普及が望まれる。先進国が率先して、普及を促進するとともに、新たな活用方法やその支援等について発信を行うべきである。

(3) 途上国のアクセス拡大に向けた国際協力

インターネットはライフラインに匹敵する社会基盤であり、先進諸国からの投資などにより途上国におけるインフラ整備を進める必要がある。そのため、投資に望ましい規制緩和や国際協力が推進されるべきである。インフラ整備と同時に、インターネットの健全な利活用に係る教育など、人的な支援も行うべきである。


2010年の第5回会合がIGFの最終回となる。関係者が連携を図り、IGFを通じて形成されたダイナミック・コアリションやベストプラクティスの共有などの成果につき、評価を行い、改善すべき点への対応を図りつつ、さらに発展させていくことが望まれる。

以上

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