「PFIに関する公開意見募集」に対する意見

2009年12月25日
(社)日本経済団体連合会
都市・地域政策委員会
PFI推進部会

経団連は、社会資本の効率的な整備方法の導入と、それに伴う公共サービスの質的向上、民間事業領域の拡大と経済活性化、小さな政府の実現といった観点から、PFIの拡大を求めてきた。
現在、検討が進められている「PFI標準契約1(公用施設整備型・サービス購入型版)」(以下、「標準契約」という。)は、PFIの拡大を図る上での大きな課題である契約書の標準化を進め、契約書の質の向上や作成コストの縮減に資するものであり、大いに歓迎するところである。
PFI事業契約は、官民の権利義務関係を明確にするものであり、PFI事業の要となるものである。標準契約の策定にあたっては、民間の能力、創意工夫を最大限発揮することが可能となるような魅力あるスキームを構築するため、過去の官民契約の実例にとらわれることなく、民間事業者の意見を十分踏まえる必要がある。本意見においては、標準契約の策定にあたっての基本的な考え方を提示するとともに、標準契約の個別の条項に対する意見を示す。

1.標準契約の策定にあたっての基本的な考え方

(1) 標準契約の対象の明確化

PFI事業契約は、事業内容、事業構造等によって、その内容が大きく異なる。契約内容については、事業の性質に応じて、官民の協議と合意の下、柔軟に定める必要がある。
標準契約は、施設整備型、サービス購入型、BTOなど対象を限定した形で策定されており、その内容を病院PFIなどの他の事業内容、事業構造の契約にそのまま当てはめることは適切ではない。地方自治体等実際の現場において、契約の対象事業の性質を十分精査することなく、運営重視型の事業等、標準契約が対象として想定していない事業の契約に対しても、標準契約がそのまま用いられるおそれがある。
したがって、標準契約が想定外の契約に適用されることのないよう、十分に周知徹底を図るべきである。

(2) 官民の対等なパートナーシップの構築

PFIは官民の協働事業であり、VFMを最大化するためには、官民が対等な立場で事業の実施にあたる必要がある。官民の間で十分に意思疎通を図り、両者の合意の下に事業を行うことが重要であり、専ら一方が意思決定を行うようなことは避けなければならない。
標準契約には、一定期間内に官民の協議が整わない場合は、費用や対応措置等につき暫定的な対応として、管理者が決定し、選定事業者に通知するものとするなど、官側に有利な契約内容となっている部分が散見される。官民が対等かつ公平な立場で事業に臨むことができるよう、当事者間の協議をもって合意に至らない場合は、係争の対象となる部分について、ADR(裁判外紛争解決手続)をはじめとする第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の紛争解決手段を用いるべきである。

(3) 発注者・事業者間の適正なリスク分担

現状のPFI事業では、民間側でコントロールできない不可抗力によるリスクや、裁量権がない業務の事業リスクなどを民間側に負担させる事例がみられる。事業者側に過度にリスクを負担させれば、リスク回避のためのコストが委託料に上乗せされ、事業全体のコスト上昇につながる。民間のリスク負担能力を超える場合には事業が成立しないことにもなりかねない。
発注者・事業者間のリスク分担については、業務裁量権の所在や保険料などの民間側で発生するリスク回避まで含めた総コストを勘案し、最適かつ公平なリスク管理の観点から、契約上、リスク分担を適正に位置づけるべきである。

(4) 契約内容の文書化・明確化

入札説明書等及び事業者提案書等について、内容が曖昧であったり、口頭で変更がなされたにも拘わらず、契約締結時点で内容の整理や文書化を行わなかったりするため、契約後、官民間で誤解や矛盾が生じ、問題が生じることがある。
契約前の段階で官民間で合意した事項については、契約時点で入札説明書等及び事業者提案書等にすべて反映させたものを契約の付帯文書とする必要がある。また、契約後、契約内容を変更した場合についても、官民間で合意した変更内容を文書化すべきである。
また、標準契約において、「別に定めるところにより」(第五十条、第六十二条、第六十八条ほか)とあるが、契約の別条項を指すのか、別紙を指すのか定かでない。契約時点で明らかにすべきであり、契約に明確に記載すべきである。

2.個別の条項に対する意見

○ 総則(第一条)

定義がなければ誤解を受けやすい表現や理解できない用語もあるため、契約全体を通じての用語の定義を第一条に明記すべきである。
特に「関係図書」については、入札説明書または事業者提案書の中の曖昧な表現や口頭でなされた変更が原因となって係争が生じることを回避するため、「入札説明書等及び事業者提案書等に、契約時点までに加えられたすべての変更点を反映させた文書」と定義すべきである。現状の慣行では入札説明書や質問回答書の中には、そもそも回答が曖昧で何を言わんとしているのか不明な項目も多く、一部真摯な回答を除きそもそもこれらすべてを契約の対象とするという考え方自体が誤解や矛盾を招く要因にもなっている。すべて必要な項目は契約締結の時点で整理し、矛盾ない関係図書を作成すべきである。

○ 契約の保証(第六条)

常に契約保証金が必要なわけではない。債務の履行が確実に見込まれ、その他の手段で履行が確保できる場合には、制度上の要請を免除できることとすべきである。
また、履行保証保険については、工事着工までに付保すればよいこととすべきである。SPCが保険契約者となる場合は連帯保証が必要となり、誰が連帯保証するかが問題となるが、建設会社が保険契約者となるためには工事請負契約の締結が必要であり、PFI事業契約締結時点で工事請負契約を締結することが難しいからである。

○ 権利義務の処分等(第七条)

選定事業者が、完工後、一定の持分比率を保持したまま、金融機関や既存株主への譲渡など一定率の株式処分権を保持することは、合理的な権利義務の処分として認められるべきである。したがって、一律に「管理者等の承諾」を要件とするのではなく、(1)管理者は選定事業者の申出を合理的な理由なくして拒否することができない旨の規定を入れる、(2)一定の範囲内で選定事業者の裁量に委ねることと、管理者等の承諾が必要なことを明確に分けて定義する等、選定事業者に一定の選択の余地を残すべきである。
また、第3項の「持株会社への組織変更又は…」の部分は、想定外の行為の発生も考えられることから、「持株会社への組織変更又は…株式移転等を行うこと」とすべきである。

○ 資金調達(第八条)

補助金、地方債、税制等についてより明確な記述が必要である。補助金の場合、いつ確定し、交付されるか、単年度か複数年度か、完工時一括補助金とするか次第では、契約対価を調整せざるを得ないこと、対価支払いに伴う権利義務関係の条項が大きく変化する旨の注意を喚起すること、地方債の場合は、当初から地方債による資金調達部分を前提とするのか、あるいは完工後、地方債によるリファイナンスを前提とするのか、如何なるスキームを前提に何を考えるか次第では、支払い対価の考えを大きく修正せざるを得ず、対価そのものも大きく変わることに関し、注書きに明記し、注意を喚起する必要がある。

○ 許認可等の手続(第九条)

許認可等の手続に関する協力について、第2項は管理者の立場、第3項は選定事業者の立場から規定している。両者の公平性を担保するために、第2項で「管理者等は…必要に応じて協力する」と規定するのであれば、第3項も「選定事業者は…必要に応じて協力する」とすべきである。

○ 事業用地等の引渡(第十条)

事業用地が期限まで引き渡されない場合、当然管理者等による債務不履行事由を構成すること、ないしは単純な債務不履行事由とせず、管理者等による修復の義務を規定すべきである。

○ 土地の調査(第十一条)

実務上は、予め管理者が測量、地質調査その他の調査を実施し、後にその内容を選定事業者が検証する、あるいは別途再確認するなど、多様な権利義務関係が存在している。選定事業者に全面的に調査義務を負わせるのは一つの選択肢にすぎず、ほかにも多様な選択肢が実践されているという事実を注記するか、代案等も規定すべきである。
また、第1項の「測量、地質調査その他調査」の範囲が不明確であり、明確化が必要である。

○ 条件変更等(第十二条)

第1項第一、二号と第三、四号とは、本質的に異なる。
第一、二号については第一条でコメントしたとおり、本来は契約書を締結する時点で入札説明書等および事業者提案書等の矛盾を精査し、修正して、統合すべきである。それにもかかわらず、矛盾や誤謬が残ってしまった場合の措置と位置付けるべきである。
一方、第三、四号はこれらとは全く関係のない条件変更事由である。この場合、 事前には予測または想定できない事業用地の瑕疵が判明したことによる追加費用については、間接損害費用(金融費用、SPC運営費用等)も含めて、管理者等が負担する旨、明確に規定すべきである。
第2項において、前項各号に「掲げる事実が確認された場合において、必要があると認めるときは、管理者等は、業務要求水準書の変更案の内容を選定事業者に通知して、業務要求水準書の変更の協議を請求しなければならない」とあるが、管理者等が「必要がある」と認めないときは協議が請求されない可能性がある。管理者等により一方的、恣意的な措置を可能とし、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。第1項に掲げる事実が確認された場合は、管理者等を選定事業者との協議を義務付けるべきである。

○ 業務要求水準書の変更(第十三条)

要求水準書の変更については、前条に定める通知を受けた後、まずは当該通知の内容を踏まえて、協議に応じるかどうかを検討する必要がある。したがって、管理者等から通知を受け、第2項は「○日以内に業務要求水準書の変更に対する意見」等について管理者等と協議をするのではなく、「当該通知の内容に係る協議に応ずるか否かについて、○日以内に選定事業者から管理者等に通知する」とすべきである。
第3項で「協議が整わない場合において、管理者等は、必要があると認めるときは、業務要求水準書、事業日程又はサービス対価を変更し、選定事業者に通知することができる」とすることは、管理者等による一方的、恣意的な措置を可能とし、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。管理者側の費用・リスク負担により、行うべきであり、協議が整わない場合は、管理者側の要請により、第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の手続を規定すべきである。これに関連し、(注4)において、「第三者の協議が整わない場合において管理者等が定めるのは、暫定的な対応」とされているが、ADR(裁判外紛争解決手続)をはじめとする第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の紛争解決手段を用いるべきである。
また、官側の担当者が交替した際、前任担当者と合意した内容を新任担当者が覆す(要求水準未達と判断される)場合もあるため、官民が業務要求水準の変更または追加について合意した場合は、その都度、業務要求水準書等を変更・追加するか、変更の合意文書を残すことを規定すべきである。
なお、入札説明書等として公表された事業用地のボーリングデータのポイント不足に起因して、落札後に設計変更に伴う工事費増加が発生した場合は本条に該当することが明確になるような規定とすべきである。あるいは注書きとして明確にすべきである。

○ 業務要求水準書の変更協議(第十四条)

第3項で、「通知の日から○日を経過しても前項の協議が整わない場合には、管理者等は、業務要求水準書、事業日程又はサービス対価の変更について定め、選定事業者に通知する」とあるが、管理者等により一方的、恣意的な措置を可能とし、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。これに関連し、第十三条の(注4)において、「第三者の協議が整わない場合において管理者等が定めるのは、暫定的な対応」とされているが、ADR(裁判外紛争解決手続)をはじめとする第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の紛争解決手段を用いるべきである。
前条第4項及び本条第4項を「業務要求水準書の変更が行われた場合において、管理者等は、必要があると認めるときは、理由を示して設計図書又は第三十四条第一項の維持管理・運営業務の体制書若しくは計画書を管理者等の費用負担により変更する旨を選定事業者に通知することができる」とすべきである(第三十四条第6項をみなければわからないのは契約の構成として不適切である)。

○ 近隣住民に対する説明及び環境対策(第十五条)

第1項において、選定事業者は工事のみに関して説明責任をもち、それ以外のPFI事業全体の説明責任は管理者等にあることを明確に規定すべきである。近隣説明を実施する費用及び合理的範囲での近隣対策費用は選定事業者負担とするが、社会通念を逸脱した対応に関する費用及びそれに伴う設計変更・工期変更リスクは管理者側の負担とすべきである。これに沿って、契約書中により正確に記載する必要がある。
また、公共施設であるPFI事業の場合、近隣住民は管理者等を発注者と認識しており、管理者等不在による説明は説得力に欠け、混乱を招く可能性があるため、近隣住民に対する説明には管理者等が立ち会う旨を規定すべきである。
さらに、特に迷惑施設と一般的に呼称される公共施設は、施設の整備後も、住民の反対運動が継続して存在することがあり得ることから、この場合も管理者等が説明責任を担うこと、選定事業者はこれに協力することを規定すべきである。

○ PFI施設の設計(第十六条)

設計変更に伴う費用は、明らかに設計内容が業務要求水準に適合しないことが理由である場合を除き、すべて管理者側の負担とすべきである。落札後に露見した要求水準書の解釈の相違に起因する設計変更の費用は、選定事業者側が当該変更を合理的と認めた場合以外は、管理者側が負担すべきである。したがって、第6項は、「設計変更に伴う費用は、本条第4項の通知を受けた場合(=関係図書に適合しない場合)は、選定事業者の負担とし、それ以外の場合は、すべて管理者の負担とする」とすべきである。

○ PFI施設の建設(第十八条)

管理要素を細分化し、これら情報の提出、管理をすることは不当ではないが、内容、手法次第では過度な関与になり、民の創意工夫・努力を減退させるとともに、官側のリスク負担が大きくなることを、留意事項として明記すべきである。

○ 工事期間中の第三者の使用(第十九条)

第2項は「業務委託契約又は工事請負契約書の写し及びこれらの変更契約の写し」と定義すべきである。
第4項は入札時の資格要件の確認の際に、一括下請負がないことを確認すればよく、本項は削除すべきである。

○ 中間確認、報告等(第二十一条)

第4項で「管理者等は、工事の施工部分がこの契約、設計図書又は関係図書に適合しないと認める場合においては、選定事業者に対して、適合しない事項及び理由並びに是正期間を明示して、その是正を請求することができる」とし、第6項で当該費用は「選定事業者の負担」とすることは、管理者等による一方的、恣意的な措置を可能とし、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。関係図書との適合性に関し、疑義が生じた場合、まず協議により合理的な解決策を見出す努力をしたうえで、解決策が見いだせない場合は、第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の手続を規定すべきである。

○ 工事の中止(第二十二条)

第4項で、「○日を経過しても協議が整わないときは、管理者等は事業の継続についての対応を定め、選定事業者に通知する」のは、管理者等による一方的、恣意的な措置を可能とし、第5項で「必要があると認めるときは…費用若しくは選定事業者の損害を負担する」としていることを考慮しても、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。協議が整わない場合は、第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の手続を規定すべきである。これに関連し、第十三条の(注4)において、「第三者の協議が整わない場合において管理者等が定めるのは、暫定的な対応」とされているが、ADR(裁判外紛争解決手続)をはじめとする第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の紛争解決手段を用いるべきである。
第5項では「選定事業者の責に帰すべき事由でなく、工事が中止された場合の増加費用若しくは選定事業者の損害についての管理者等による負担」が規定されているが、他の条項(例.第十六条第3項、第三十二条、第三十三条第3項、第四十八条等)を含めて、選定事業者の責に帰すことが出来ない事由により生じた増加費用若しくは選定事業者の損害に対する管理者等の補償範囲は、須らく直接損害費用だけではなく、金融費用等の間接損害費用を含むことを本標準契約において明示すべきである。

○ 事業用地が不用となった場合の措置(第二十三条)

「事業用地等」の定義なしに、不用意に「不要になった場合」を規定しているため理解しづらい。建設用に使用する暫時的な土地を指すのであれば、その旨明記すべきである。

○ 引渡予定日の変更(第二十五条)

選定事業者の責に帰すことが出来ない事由(例.引渡予定日の遅延)により生じた損害及び増加費用に対する管理者等による補償金額をより明確化させるために、予定損害賠償条項(例.「選定事業者の責によらず引渡予定日が遅れた場合には、管理者等は引渡予定日の遅延一日あたり○○円を選定事業者に支払うものとする。ただし、実損害がこれを超えた場合、選定事業者は管理者等に対し差額を請求できるものとする。」)を設けるべきである(第六十六条の規定とあわせて修正が必要である)。

○ 引渡予定日の変更等に係る協議(第二十六条)

第1項で、「○日以内に協議が整わない場合には、管理者等が定め、選定事業者に通知する」とすることは、管理者等による一方的、恣意的な措置を可能とし、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。協議が整わない場合には、第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の手続を規定すべきである。これに関連し、第十三条の(注4)において、「第三者の協議が整わない場合において管理者等が定めるのは、暫定的な対応」とされているが、ADR(裁判外紛争解決手続)をはじめとする第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の紛争解決手段を用いるべきである。
第2項で、管理者等が協議開始の日を通知しない場合は、選定事業者が定め管理者に通知するとあるが、そもそも管理者等が引渡予定日の変更等に係る協議を行うことを義務化すべきである。

○ 建設期間中の不可抗力による損害(第三十条)

不可抗力により発生した損害額(選定事業者が受領した保険金額を除く)に対して施設整備に係るサービス対価の100分の1まで選定事業者の負担と規定したのでは選定事業者が保険付保によりリスクヘッジを図る動機づけとはならない。入札要項に規定されておらず、選定事業者が任意で掛けた保険金額は選定事業者の負担金額に優先的に充当される旨を規定すべきである。

○ 管理者等が行う完工検査(第三十二条)

完工検査は一旦合意した設計図書に照らし合わせて実施すべきである。さもなければ、数が膨大でかつ曖昧な表現が多い関係図書を管理者等が都合良く解釈し、設計図書が反故にされるおそれがある。
第3項は、管理者等による一方的、恣意的な措置を防ぐため、「管理者等は、PFI施設がこの契約、設計図書又は関係図書に適合しないと認める場合においては、選定事業者に対して、適合しない事由及び理由を書面で示した上で、是正内容及び是正期間につき選定事業者と協議するものとする」とすべきである。
第5項の完工確認書の交付については、「…完工確認書を速やかに交付しなければならない。」と下線の文言を追加すべきである。

○ 維持管理・運営業務体制の整備等(第三十四条)

第1項は、体制書および計画書の内容を、より具体的に記載し、業務内容、役割分担を明確に官民で合意すべきである。維持管理・運営業務では、体制書に官民の詳細な役割分担、業務報告ルール、異常発生時のエスカレーションルールを定めることが必要であり、計画書には、年次/月次/日次の定例業務のスケジュール/マニュアル、緊急事態マニュアルを例示し、業務の詳細について明らかにすべきである。
第4項は、管理者等による一方的、恣意的な措置を防ぐため、「管理者等は、PFI施設がこの契約設計図書又は関係図書に適合しないと認める場合においては、適合しない事由及び理由を書面で示した上で、是正内容及び是正期間につき選定事業者と協議するものとする」とすべきである(当初の関係図書や業務水準書の曖昧さが原因であることも多く、この場合、一方的な判断は好ましくない)。
第7項で、維持管理・運営業務の体制書及び計画書を選定事業者が変更する場合、管理者等の「承諾」ではなく、「確認」を要件とすべきである。

○ 瑕疵担保(第三十五条)

BOTに関し、事業期間を超えての瑕疵担保保証を求めることは無理がある。商慣習上の瑕疵担保期間の設定をベースに対応すべきである。BOTの場合、瑕疵担保の対象を引渡前の2年間に行われた修繕工事に限定すべきである。
第2項で瑕疵の修補又は損害賠償の請求は、PFI施設の引渡しから「○年以内」に行うとされているが、「○年」の定め方については、標準工事請負契約約款等慣例に基づき定める旨、注書きをすべきである。

○ 維持管理・運営期間中の第三者の使用(第三十七条)

第2項は、「業務委託契約又は業務請負契約書の写し及びこれらの変更契約の写し」と定義すべきである。

○ 業務報告(第三十八条)

維持管理、運営業務の履行状況の確認のため、業務報告書の提出・報告のほかに、施設利用者のアンケート調査を実施する場合、アンケート項目に業務要求水準の項目と達成レベルを正確に盛り込むことは難しいため、主観・直感に左右されるアンケート結果を減額に反映するのは不適切である。

○ 第三者に及ぼした損害(第三十九条)

対象が宿舎・庁舎等の公用施設である場合、選定事業者はそもそも利用者を管理できないサービスに従事しているのが通例で(特に、維持管理・運営期間において)、「騒音」をもって選定事業者による第三者への損害とするのは不当である。

○ 維持管理・運営期間中の不可抗力(第四十条)

第4項で、不可抗力事由発生の日から、例えば6カ月以上の長期にわたって協議が整わない場合は、管理者等あるいは選定事業者のいずれかの発意により、契約解除できるようにすべきである。

○ 維持管理・運営期間中の不可抗力による損害(第四十一条)

建築期間中の不可抗力の損害については、選定事業者が加入する建設工事保険でカバーされ、選定事業者が費用負担をするケースは少ない。一方、維持管理・運営期間中の業務向けの保険は、保険会社と個別設計する必要があり、カバー範囲、支払い保険金額、保険料率について、既製保険と比べて制約が多く、カバーできる業務が限定され、低額の保険金しか設定できず、保険料が収入に比べて高額になる(不動産及び一部の動産は既製保険でカバー可能)。そのため、大規模な不可抗力が発生した場合、選定事業者が損害を最小限にとどめる努力をしても、保険では損害がカバーされず、選定事業者の収益を圧迫する恐れがある。
維持管理・運営期間中の不可抗力の損害については、第七十条で規定される選定事業者が加入する保険でカバーされないものは、管理者負担とすべきである。

○ 第三者の責に帰すべき事由によるPFI施設の損害(第四十二条、第四十三条)

少なくとも、BTO方式の場合は、管理者等が100%負担すべきである。

○ 法令変更等(第四十四条)

第5項で、「○日を経過しても協議が整わないときは、管理者等は事業の継続についての対応を定め、選定事業者に通知する」のは、管理者による一方的な措置を可能にするものであり、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。協議が整わない場合は、第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の手続を規定すべきである。仮に、不可抗力事由発生の日から、例えば6カ月以上の長期にわたって協議が整わない場合は、管理者等あるいは選定事業者のいずれかの発意により、契約解除できるようにすべきである。

○ 法令変更等による増加費用(第四十五条)

第1項は、限定列挙方式とするのは適切ではない。「当初想定されない法令変更で、事業に直接的なインパクトをもたらし、費用を管理できないもの」を要件とすべきである。
第2項で「通常妥当と認められるものについて、サービス対価を変更し、又は増加費用を負担」とすることは、管理者等の一方的、恣意的な判断を可能とし、公平性、公正さの観点から不適切である。法令変更等に伴う費用は将来発生する費用や事業者が評価しなければ分からない費用等もあるため、管理者等と選定事業者との間で協議を行う仕組みを設けるべきである。
法令変更により維持管理・運営費が増加する場合(専門資格者の常駐が必要となる、点検回数が増える等)についても管理者等に請求できるものと規定すべきである。

○ 法令変更等による減少費用(第四十六条)

「資本的支出」で法令変更による「費用減少」が成立しうるのは、未だ資本的支出がなされていない時点であり、極めて限られたケースであることを注記すべきである(資本的支出がなされた後で、費用減少となる場合には、当初の枠組みを崩すことになり、融資金融機関を含めて多様な問題が起こる。一旦、資本的支出がなされた場合には、これを削減することは容易ではない。なお、事業契約締結時点でその他の契約も固定すれば、基本的にはこの段階で資本的支出が固定することになる)。
なお、資本的支出に関係しない法令変更による費用減少も理論的にはありうることに留意する必要がある。

○ 維持管理・運営に係るサービス対価の支払(第四十八条)

管理者等は、モニタリングに関して、契約中に明確な指針を提示すべきである。特にベンチマーク、サービス対価を減額するメカニズム等を契約時点までに決定すべきである。
モニタリングにおいては、サービス対価の減額だけでなく、選定事業者にインセンティブを付与するため増額の仕組みも設けるべきである。

○ 物価の変動に基づく施設整備に係るサービス対価の変更(第五十一条)

第1項の単品スライド条項、第2項のインフレスライド条項に加え、いわゆる全体スライド条項を追加すべきである。
第1項、第2項は「請求することができる」とあるのみで、管理者等が拒否できる可能性を含意しており、条項の効果が見えない。請求に応じることを原則として、変更額等をめぐる協議の手続を規定すべきである。
また、物価変動に基づくサービス対価の変更については、用いる指標や改訂の判断基準等変更メカニズムを予め明確化しておく必要がある。その際、事業者は入札日に工事費をコミットするため、それ以降の変動を考慮し、物価変動を算定する起算日を入札日と定義すべきである。

○ 金利の変動に伴うサービス対価の変更(第五十二条)

事業者の金利変動リスク極小化の観点からも、融資契約調印又は融資実行のタイミングへの配慮が必要である。
第1項、第2項の内容では、契約時から融資実行時までの金利変動時のサービス対価の変更について考慮されていない。(注3)に記載するのではなく、入札時から契約を経て融資実行時に至るまでの金利変動リスクを管理者等が担う旨、本文中に明確に定義すべきである。
また、(注1)の記載については、資金調達は金利スワップ市場に限らず、幅広い金融マーケットが存在するため、「金利スワップ市場を含む金融市場における資金調達の状況」とすべきである。

○ 技術の進歩によるサービス対価の変更(第五十三条)

選定事業者が積極的に技術進歩を取り入れ業務効率を向上させることは民間ノウハウの活用であり、その費用削減額の全てをサービス対価から減額したり、契約期間を短縮したり、あるいは一部解除権を行使したりすることは、民間の参加意欲を著しく減じることにつながる。したがって、協議により費用削減額の一部を選定事業者の収益に反映させる方式を採用すべきである。また、すでに一定の投資を行っている場合においては、サービス対価の変更の範囲を施設整備費以外の部分に限定する必要がある。
また、サービス対価を変更すべき状況は、技術の進歩以外にも、例えば、環境の変化、市場のニーズの変化、政策の変化等多様な状況が考えられる(例えば大規模な庁舎や宿舎を作っても、環境変化、政策の変化次第では、庁舎ではなく他の用途に変更し、選定事業者との関係も変えた方が良い場合等はおこりうる)。そのような状況を想定した規定も置くべきである。

○ サービス対価の変更方法(第五十四条)

第1項で、「○日以内に協議が整わない場合には、管理者等が定め、選定事業者に通知する」とすることは、管理者等による一方的、恣意的な措置を可能とし、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。協議が整わない場合は、第三者による専門家裁定、仲裁、調停等の手続を規定すべきである。これに関連し、第十三条の(注4)において、「第三者の協議が整わない場合において管理者等が定めるのは、暫定的な対応」とされているが、「暫定的な対応」とは具体的に何を指すか明確にすべきである。

○ サービス対価の変更等に代える業務要求水準書の変更(第五十五条)

第3項で、「○日以内に協議が整わない場合には、管理者等が定め、選定事業者に通知する」とすることは、管理者等による一方的、恣意的な措置を可能とし、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。協議が整わない場合は、第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の手続を規定すべきである。これに関連し、第十三条の(注4)において、「第三者の協議が整わない場合において管理者等が定めるのは、暫定的な対応」とされているが、ADR(裁判外紛争解決手続)をはじめとする第三者による専門家裁定、調停、仲裁等の紛争解決手段を用いるべきである。

○ 管理者等の解除権(第五十六条)

  1. (1) 条項の内容について
    管理者が契約解除できる場合として、第1項第三号に「別に定めるところにより管理者等がこの契約を解除する権利を取得するに至ったとき」とあるが、「別に定める」のではなく、契約に明確にその内容を記載すべきである。
  2. (2) 契約解除の場合の選定事業者の株式、契約上の地位の第三者への譲渡
    国の合同庁舎案件の事業契約(案)では、「法令変更・不可抗力による契約解除の場合でも、管理者等の指名した第三者に選定事業者の株式や、契約上の地位を譲渡できる」との記載があるが、選定事業者、レンダー、管理者等の三者が協議の上、合意する条件で第三者に譲渡すべきである。
  3. (3) 違約金額の適正化
    第2項第2号で違約金算定の根拠を残存期間相当額と定めるのは行き過ぎである。算定方法により幅広い選択肢を認めるような規定とすべきである。例えば以下のような算定方法も考えられる。
     ・ 施設整備に係る違約金は利息を除いた施設整備費の10%
     ・ 維持管理に係る違約金は1年分のサービス対価の10%

○ 任意解除(第五十七条)

  1. (1) 損害賠償の明確化
    第2項を、例えば「管理者等は、前項の規定により契約を解除する場合には、施設整備費相当分の残存サービス対価、解除日までの金利相当分対価、解除に伴い実際に生じた全ての費用、損害を全て補償することを基本とし、下記等が補償の範囲として含まれねばならない。
     1. 融資契約解除に伴う全ての費用(金利スワップ解除費用等を含む)
     2. ・・・・
     3. ・・・・
     4. 逸失利益相当額」とするなど、損害補償の概念を明確化すべきである。
  2. (2) 任意解除の場合の補償範囲
    任意解除の場合、少なくとも、選定事業者が対象事業の運営に割いている人員等経営資源を代替案件で活用できるまでの期間の得べかりし利益は補償すべきである。
    注書きに、「逸失利益についても…範囲は限定されるという基本的考え方」とあるが、提案時には、事業計画を審査し、SPC経営の計画性・安定性等を確認していること、プロジェクトファイナンスを通じ金融団も同様の確認をしていることを考えれば、事業計画通りの利益がSPCに発生する蓋然性が高い。従って、事業計画通りの利益をSPCの逸失利益として補償することを基本的考え方に据えるべきである。
    逸失利益は、事業者としての将来のインセンティブとして利益を想定しており、補償対象とすべきである。また、事業契約締結前に双方協議の上、範囲を明確に規定すべきである。

○ 選定事業者の解除権(第五十八条)

第1項第三号の規定は、ニのみ必要で、イ、ロ、ハは不要である。一見、民間事業者に解除権を付与することになるため、公平に思えるが、管理者等が一定レベルまでの要求水準やサービス対価の減少が大きな契約的効果をもたらさないと判断した場合、これを安易に考える可能性も高まる。

○ 不可抗力又は法令変更等による解除権(第五十九条)

第1項で、管理者等と選定事業者との協議が整わない場合、管理者等は、契約の全部又は一部を解除することができるとあるが、管理者等により一方的、恣意的な措置を可能とし、選定事業者の利益を著しく損なうおそれがある。「管理者等ないしは選定事業者はいずれかの発意により、この契約の全部又は一部を解除することができる」とすべきである。
また、一部の維持管理・運営業務のみが実施できない場合は、単純に一定期日経過後に一部または全部を解除するのではなく、一定期間を定め、この間に、(1)実施できない当該維持管理・運営業務を解除することが適切か否か、(2)修復や代替案はあるか否か等を協議、検証の上、その他の手段がないこと、契約の一部または全部を解除することが合理的な解決策であることを双方が確認した上で解除すべきである。

○ 契約の解除の場合の施設整備費相当分の支払方法(第六十条、第六十二条)

  1. (1) 契約解除の場合の出来形部分の支払方法
    法令変更、不可抗力による契約解除の場合は、施設の出来形部分の対価については、選定事業者に対して一括払いで支払うこととすべきである。また、支払時期を明記すべきである。契約解除後も、出来形代金を受け取るためだけにSPCを残せば、SPCの存続費用等余分なコストがかかる。従って、仮に分割払いとする場合、出来高代金の受取債権を選定事業者が第三者へ譲渡し、選定事業者を解散することを認めるべきである。
    選定事業者の帰責事由による契約解除により、担保権を実行して、出来高代金の受取債権を選定事業者から取得しても、管理者等の信用リスクにより当初の支払い条件(提案スプレッド等)を変更すべきではない。
  2. (2) 施設引渡後の契約解除の際の割賦再計算利息
    本来、割賦利息は「基準金利+提案スプレッド」だが、最近の国の合同庁舎案件の事業契約(案)では、選定事業者の帰責事由による契約解除の場合には、「割賦再計算利息」は「基準金利」のみで、「提案スプレッド」が認められず、法令変更及び不可抗力による契約解除の場合には、「基準金利+融資スプレッド」となっている。金融機関が選定事業者帰責による金利変更リスクを負担することはなく、エクイティによるリザーブ等を要求するため事業費が増加することとなり、管理者等・選定事業者ともにメリットはない。したがって、管理者等が当該支払を分割払いとする場合の再計算利息については、契約解除の理由の如何(選定事業者帰責を含む)を問わず、入札時の割賦金利(提案スプレッド)とすべきである。
    また、維持管理費がモニタリングで減額した場合、割賦代金の支払が留保される規定もある。これらの規定はレンダーの融資条件(利率、借入額)を悪化させるものである。従って、財務局の公務員宿舎の事業契約(案)にあるように、維持管理費の減額にかかわらず、割賦代金(元本+利息)は当初の予定通り支払われるべきである。
    (注2)記載のBOT方式の場合の「施設買取価格」については、その原資たる施設整備に係る借入金残高、未払利息、ブレークファンディングコストの合計金額相当を上回る水準とすべきである。

○ 遅延損害金(第六十六条)

遅延損害金の計算利息が管理者等と選定事業者で異なるのは、管理者等と選定事業者の対等な立場という理念に反しており合理的でない。同じ計算利率とすべきである。

○ 関係者協議会等(第六十八条)

第5項については、別項を設け、紛争解決の仕組みについて、「別に定めるところ」ではなく、契約上明確に定めるべきである。

○ 経営状況の報告(第六十九条)

経営状況の把握は、監査済会計報告により、その推移と現状、予測を推することが可能である。また、選定事業者に問題が生じたときは運営協議会等を通して、適宜、管理者等に連絡され、レンダーが選定事業者の財務状況の悪化を把握した場合は、直接協定に基づき、管理者等に報告することになっている。したがって、管理者等が選定事業者の経営に過度に関与すべきではなく、年度毎の経営計画、資金計画まで管理者等に提出する必要はない。

○ 守秘義務(第七十条)

第3項の情報開示を例外的に認める先として、協力企業と関係金融機関(アレンジャーや融資検討金融機関を含む)を加える必要がある。

○ 著作権の利用等(第七十一条)

第6項で、選定事業者が「成果物又はPFI施設の内容を公表すること」をしてはならないと規定されているが、金融機関等が当該事業についてプレス発表等を行うことがあり得るため、金融機関も一定程度著作権の利用ができるよう修正すべきである。

○ 直接協定(第七十二条)

レンダーは選定事業者の事業計画等で財務状況等を常時モニタリングでき、重大な問題が発生すれば、直接協定に基づき管理者等に報告することになるので、従来の直接協定の内容で十分である。

【標準契約以外にPFI事業全般について検討すべき項目】

○ 地方自治体に対する支援について

PFI事業は複雑で多岐にわたる高度な専門性が求められているにも関わらず、PFI事業を実務面でサポートする仕組みや体制がないため、PFIに乗り出せない自治体が多い。既にPFIを手掛けていても、PFIの実施に必要な実務知識が十分でないため、期待した効果を得られていない自治体も多い。
英国では、PUK、4Psと呼ばれる公的なPFIの支援組織が中央・地方政府のPFI事業を手厚くサポートしており、PFIの拡大に大きく寄与している。
地方自治の原則を踏まえながら、地方自治体に対してPFIのノウハウの提供、案件の形成から運営に至る一連のプロセスの実務支援などを行う組織を設立するなど、PFIの案件創出や運営を支援する体制を構築すべきである。

○ 多段階選抜・競争的対話方式の本格的な導入について

PFIの進展に伴い、事業内容が複雑になっているが、発注者側にノウハウの蓄積が十分でなく、民間の知見がなければ要求水準や契約内容に事業の運営内容を十分規定できない事業もでてきている。しかし、現行制度の下では官民間で十分かつ円滑な意思疎通を図り、要求水準をつくり上げていくことは難しい。そのため、民間側が必要な情報を得られず優れた提案をしようにもできず、発注者側も意図したサービスの提供を受けることができない。英国では、官民が業務仕様や契約条件を綿密に話し合い、明確化し、事業の円滑な遂行につなげている。
また、事業者の選定の過程で、欧州等では一般的な、複数段階にわたる入札参加事業者の絞り込みがなされない。そのため、入札に係る事業者のコスト負担が嵩むとともに、落札できなかった場合の損失も大きい。
さらに、政府が発注するPFIでは、予算決算及び会計令により、予定価格が原則として非公開となっている。また、会計法や地方自治法により、入札価格が予定価格を上回る場合は、提案内容が優れていても失格となる。そもそも現行制度では、発注者と受注者が十分な対話をできないため、事業者が発注者の設定する予定価格の範囲内に収めることは極めて難しい。
従って、発注者と事業者が詳細な業務内容、契約条件について、対話、交渉しながら、事業者が提案を行い、それを基に段階的に優良な事業者が絞り込まれていくような多段階選抜・競争的対話方式の本格的な導入を、PFI関係法令の改正により可能にすべきである。また、PFIにおいて高度で優れた提案が正当に評価、採用されるためには、発注者と事業者の対話を通じて予定価格を弾力的に運用するようにすべきである。

○ PFI税制について

BTO方式のPFI事業により整備される公共施設等に関しては、建物の建設完了後に所有権の移転を受ける主体が国や地方公共団体である場合には、固定資産税、都市計画税、不動産取得税について非課税とされている。
このうち、不動産取得税に関しては、原則、課税当局の判断により、課税・非課税が決定されるが、事業者(SPC)が原始取得した場合には、非課税扱いとされることがある。この「原始取得」の判断対象が落札〜建設完了後という将来の話であることもあり、課税当局のその時点での判断が判然とせず、課税と扱われる可能性が払拭できない。
具体的には、国のある案件のQ&Aにおいて、主催者側は「不動産取得税については、課税対象と認識している。」との回答がなされた。この解釈が上記と相俟って混乱を招来した。
また、固定資産税についても、同様の問題が発生している。具体的には、9月末の施設整備完了時から翌年2月までリハーサルが行われ、3月1日の開業と同時に施設の引き渡しを受けるとの要求水準が設定された事例で、BTO案件であるにもかからず、竣工後半年を経過すること、また、1月1日時点で建物は使用されていることから、課税当局から所有権がSPCにあるとされ、固定資産税が課税されると判断されうる事例があった。
BOT案件の場合、不動産取得税、固定資産税、都市計画税の軽減措置について、地方税法附則の第11条ならびに第15条にそれぞれ明記されているが、BTO案件の場合、地方税法あるいは同附則に課税されない旨の明記がない。
従って、BTO案件においては、例えば、地方税法第73条の3または4、あるいは地方税法附則第11条などに明記する、あるいは政府が地方自治体に周知徹底するなど、運用上、事業者が納税義務者とならないよう対応する必要がある。

○ 参加資格審査(指名停止)の緩和について

民間が参加しやすい環境を整えるため、資格充足期間の短縮、あるいは参加資格要綱の見直し(指名停止を問わない)の検討が必要である。併せて、構成企業・協力企業の参加申請後の変更についても、柔軟な対応ができるよう検討が必要である。

○ 建設技術者の配置について

PFI事業の場合は建設着工が1〜2年後となるため、着工時に、参加時に申請した技術者と同等の資格、施工実績を保有する別の者に変更できることが望ましい。

以上

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