震災対応において金融面での万全の措置を求める

2011年4月22日
(社)日本経済団体連合会

東日本大震災は、非常に広範囲な地域に未曾有の被害をもたらした。企業活動の面から見ると、産業の基盤となる電力業、全国的にも高いシェアを占める農林水産業、さらには国際競争力を持つ製造業の工場設備など供給サイドに大きな打撃を与えた。

さらに、サプライチェーンの分断や首都圏を含む東日本における電力供給制約の長期化により、震災からの復旧・復興に向けた動きが本格化するまでの間、企業活動や個人消費全般が停滞する恐れがあり、日本経済を巡る不確実性が高まっている。

いうまでもなく、国民生活の安定、円滑な企業活動を確保していく上で、金融市場や金融システムの安定性確保は極めて重要である。震災後、政府・日本銀行において金融面での緊急措置が迅速に講じられたこともあり、今のところ、金融市場の流動性や緩和的な金融環境は維持されている。ただし、経済の先行き不透明感が増しており、金融市場や金融システムの今後の動向に注視する必要がある。

とくに、震災後に投資家のリスク回避姿勢が強まり、社債の新規発行による資金調達が行いにくい状況となっている。仮にこうした状況が長期化すれば、社債を保有する投資家、ひいては金融システム全体に大きな影響を及ぼす恐れがある。一方で、今後、サプライチェーンの早期復旧、企業活動の維持・回復に向けた資金需要の高まりも予想される。

したがって、早期の復旧・復興を金融面からより確実にし、かつより強力に支援して行くため、震災対応において下記のような政策措置を講じることで、金融市場や金融システムの安定確保、円滑な資金繰りや緩和的な金融環境の維持に万全を期していく必要がある。

政府においては、まずは金融面での対応を含む補正予算ならびに関連法案を早期に成立させ、早急に実行できるようにすべきである。

あわせて、わが国財政の厳しい状況に鑑みれば、日本国債のソブリンリスク、価格変動リスクにも注視が必要である。政府は、一定の財政規律を維持しつつ、復興財源のあり方を検討し、内外市場からの信認確保に努めるべきである。

1.金融市場・金融システムの安定

  1. (1) 日本銀行による強力な金融緩和
    • 外貨を含む潤沢な資金供給の継続
    • 資産買入基金の必要に応じた増額
  2. (2) わが国財政規律の維持
    • 予算編成時における歳出の徹底的な見直し
    • 中長期的な財政健全化方針の堅持
  3. (3) 為替相場の安定
    • 過度な変動に対する国際的な政策協調の継続
  4. (4) 被災の影響が大きい金融機関に対する支援
    • 金融機能強化法の活用による被災地における金融機能の強化

2.企業の円滑な資金繰り・資金調達支援

  1. (1) 中小企業向け
    • 信用保証制度の拡充、利用手続きの柔軟化
    • 政府系金融機関による災害復旧貸付等の拡充
  2. (2) 中堅・大企業向け
    • 危機対応業務等を活用した日本政策投資銀行・商工中金による適切な対応ならびに民間金融機関との連携強化
    • 被災の影響が甚大で、早期復旧にかなりの困難が見込まれる中堅・大企業に対する債務保証の枠組み等の整備
  3. (3) 関連対策
    • 貸金業法の対象緩和による企業グループ内での資金貸付の柔軟化
    • 被災企業の既往債務に対する柔軟な対応の推進
    • インフラ復旧・整備に向けたPFI等による民間資金の活用
以上

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