日本経団連では、かねてから企業倫理の確立を重要な使命として位置付け、企業行動憲章の策定とその普及に大きな努力を払ってきた。このような取り組みは、反社会的勢力との決別等の点で成果をあげたが、昨今、特に消費者・ユーザーとの関係で企業不祥事が相次いで発生し、当該企業のみならず、経済界全体が社会の強い批判にさらされている。企業活動の存立の基盤は、社会の信頼と共感にある。最近の事態は、これを損ねるのみならず、市場経済への不信にもつながりかねない。
このため、日本経団連としては、企業行動憲章の実効性をより高めるべく、(1)企業倫理に関する経営トップのイニシアチブ強化、(2)不祥事防止のための実効ある社内体制等の整備促進、(3)不祥事が起きた場合の対応の観点から以下の具体的対策を実施し、改めて会員企業の自発的、積極的取り組みを促すこととした。特に経営トップに対しては、法令遵守に誰よりも高い感度を持ち不祥事の防止に努めるとともに、問題が生じた場合には、事実関係を早急に把握し社会に説明すること、ならびに有効な再発防止策を講じること等を求めたい。
企業行動憲章の精神を実践する観点から、特に会員企業の経営トップが実施すべき社内体制の整備・運用について、以下の7項目を要請する。なお、具体的取り組み例を実行の手引きにおいて示す(実行の手引き「第9条について」p.44-47、「第10条について」p.49-50参照)。
新規入会時に、文書にて企業行動憲章を遵守する旨を確認する。
企業不祥事防止に向けた各社の自発的取り組みを促進する観点から、日本経団連として、直接、以下の支援活動を行なう。
(1) 会員企業による企業行動自己診断の推進企業行動に関わる問題について、会員企業代表者が日本経団連会長もしくは企業行動委員長と個別に相談する機会を設ける。必要に応じて、弁護士等の専門家を紹介する。
(3) セミナーの開催等企業行動に関する会員企業の継続的な取り組みを促すため、「企業倫理月間(仮称)」を設ける(憲章改定を機に毎年10月とし2003年10月より実施)。期間中、日本経団連では上記アンケートやセミナー等を実施する。また、会員企業においては、企業行動の総点検や研修等を行なうよう、要請する。
(5) 日本経団連事務局内に企業倫理専門部門の新設事務局内に、企業倫理を専門に取り扱う部門を新設し、同部門において各社に対する上記の支援活動および関連業務等を行なう。
従来、企業行動憲章に反する事態が生じた場合、会員の自己責任に基づく申し出をもとに措置が決定されてきた。今後は、ケースによってはこれに止まらず、定款13条委員会が独自の判断で、日本経団連としての措置を会長に具申し、決定していく。
また、措置の内容としては、これまでは厳重注意、役職の退任、会員企業としての活動自粛を実施してきた。今後は、これらに加えて、会員資格の停止、退会の勧告、除名も行なう。
なお、措置決定に関わる判断基準については、別途内規を定める。
措 置 | 会員資格 | 役 職 | 委員会への参加 | 総会への参加 |
厳重注意 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
---|---|---|---|---|
役職の退任 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
会員としての 活動自粛 | 〇 | 〇 (自粛期間中は活動停止) | × (自粛期間中) | 〇 |
会員資格停止 | × (停止期間中) | × | × (停止期間中) | × (停止期間中) |
退 会 | × | × | × | × |
除 名 | × | × | × | × |
(注) 企業行動委員会、社会貢献推進委員会、1%クラブ、海外事業活動関連協議会(CBCC)等が主催する会合。前述のセミナー(4.(3))等を含む。 |
事態の改善がみられると判断された場合には、措置を解除する。