[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]
企業行動憲章

企業不祥事防止への取り組み強化について

2002年10月15日
(社)日本経済団体連合会

I.基本的考え方

日本経団連では、かねてから企業倫理の確立を重要な使命として位置付け、企業行動憲章の策定とその普及に大きな努力を払ってきた。このような取り組みは、反社会的勢力との決別等の点で成果をあげたが、昨今、特に消費者・ユーザーとの関係で企業不祥事が相次いで発生し、当該企業のみならず、経済界全体が社会の強い批判にさらされている。企業活動の存立の基盤は、社会の信頼と共感にある。最近の事態は、これを損ねるのみならず、市場経済への不信にもつながりかねない。

このため、日本経団連としては、企業行動憲章の実効性をより高めるべく、(1)企業倫理に関する経営トップのイニシアチブ強化、(2)不祥事防止のための実効ある社内体制等の整備促進、(3)不祥事が起きた場合の対応の観点から以下の具体的対策を実施し、改めて会員企業の自発的、積極的取り組みを促すこととした。特に経営トップに対しては、法令遵守に誰よりも高い感度を持ち不祥事の防止に努めるとともに、問題が生じた場合には、事実関係を早急に把握し社会に説明すること、ならびに有効な再発防止策を講じること等を求めたい。

II.具体策

1.「企業行動憲章」、「企業行動憲章実行の手引き」の改定

(1) 企業行動憲章改定のポイント
  1. 前文において法令遵守の徹底を強調した。
  2. 財、サービスの提供を通して、消費者・ユーザーの信頼を獲得することを第1条で強調した。
  3. 企業不祥事の防止、不祥事発生後の対応のいずれにおいても、最も重要なのは経営トップの姿勢である。そこで、第9条、第10条において不祥事防止策の確立と発生時の対応及び問題解決について、経営トップが果すべき役割と責任を明確化し強調した。

(2) 実行の手引き改訂のポイント
  1. 上記企業行動憲章改定ならびに最近の状況変化を踏まえて改訂した(全社的に企業倫理・企業行動に取り組む体制の整備、企業倫理ヘルプライン(相談窓口)の整備、企業倫理浸透状況のモニタリング等)。
  2. 各社の参考となる具体的アクション・プランをより充実させた。

2.企業倫理・企業行動強化のための社内体制の整備・運用に関する要請

企業行動憲章の精神を実践する観点から、特に会員企業の経営トップが実施すべき社内体制の整備・運用について、以下の7項目を要請する。なお、具体的取り組み例を実行の手引きにおいて示す(実行の手引き「第9条について」p.44-47、「第10条について」p.49-50参照)。

  1. 行動指針の整備・充実(各社独自の企業行動憲章の策定等)
  2. 経営トップの基本姿勢の社内外への表明と具体的な取り組みの情報開示(ホームページ、年次報告書、社会報告書への掲載等)
  3. 全社的な取り組み体制の整備(企業倫理担当役員の任命、企業倫理委員会・担当部署の設置および権限の明示等)
  4. 「企業倫理ヘルプライン(相談窓口)」の整備(通常の業務ラインとは別に、重要情報が現場から経営層に伝わるルートを整備、相談者の権利保護等に配慮)
  5. 教育・研修の実施・充実(階層別、職種別)
  6. 企業倫理の浸透・定着状況のチェックと評価
  7. 不祥事が起こった場合の適時適確な情報開示、原因の究明、再発防止策の実施、ならびにトップ自らを含めた関係者への厳正な処分

3.新規入会時における企業行動憲章遵守の確認

新規入会時に、文書にて企業行動憲章を遵守する旨を確認する。

4.各社の不祥事防止策確立への支援

企業不祥事防止に向けた各社の自発的取り組みを促進する観点から、日本経団連として、直接、以下の支援活動を行なう。

(1) 会員企業による企業行動自己診断の推進
  1. アンケート、ヒアリング等を通じ、各社の企業行動の現状を定期的に調査・分析し、公表する(第1回調査は2002年11月)。
  2. 日本経団連会員であること自体が企業倫理の徹底した企業であるとの社会的評価につながるよう、各社が独自に企業行動をチェックできる自己診断リストを作成・提供する。また、希望に応じて、各社の企業行動プログラムとその実施状況に関する診断を実施する。

(2) 日本経団連内に会員企業トップ向け相談窓口の設置

企業行動に関わる問題について、会員企業代表者が日本経団連会長もしくは企業行動委員長と個別に相談する機会を設ける。必要に応じて、弁護士等の専門家を紹介する。

(3) セミナーの開催等
  1. 経営トップ向けセミナーの開催
    経営トップを対象として、経営における企業倫理の考え方と実際の取り組みに関するセミナーを開催する(第1回は本年12月に開催予定)。
  2. 企業倫理担当役員向け研修会の開催
    企業倫理担当役員を対象として、企業行動に関する各社の取り組み状況(社内研修事例、不祥事対応事例等)に関する情報交換、各社企業行動指針とその運用に関する事例研究等を行なう研修会を開催する(年2回程度、泊り込み合宿を実施する)。
  3. 企業行動に関する事例集の作成・提供
    各社の具体的取り組み事例、社内研修事例、不祥事対応事例等を集め、会員企業に提供する。

(4) 「企業倫理月間(仮称)」の設定

企業行動に関する会員企業の継続的な取り組みを促すため、「企業倫理月間(仮称)」を設ける(憲章改定を機に毎年10月とし2003年10月より実施)。期間中、日本経団連では上記アンケートやセミナー等を実施する。また、会員企業においては、企業行動の総点検や研修等を行なうよう、要請する。

(5) 日本経団連事務局内に企業倫理専門部門の新設

事務局内に、企業倫理を専門に取り扱う部門を新設し、同部門において各社に対する上記の支援活動および関連業務等を行なう。

5.不祥事を起した企業に対する日本経団連の措置の明確化・厳格化等

(1) 措置の明確化・厳格化等

従来、企業行動憲章に反する事態が生じた場合、会員の自己責任に基づく申し出をもとに措置が決定されてきた。今後は、ケースによってはこれに止まらず、定款13条委員会が独自の判断で、日本経団連としての措置を会長に具申し、決定していく。
また、措置の内容としては、これまでは厳重注意、役職の退任、会員企業としての活動自粛を実施してきた。今後は、これらに加えて、会員資格の停止、退会の勧告、除名も行なう。
なお、措置決定に関わる判断基準については、別途内規を定める。

措 置会員資格役 職委員会への参加総会への参加
厳重注意
役職の退任×
会員としての
活動自粛

(自粛期間中は活動停止)
×
(自粛期間中)
会員資格停止×
(停止期間中)
××
(停止期間中)
×
(停止期間中)
退 会××××
除 名××××

(2) 不祥事を起した会員企業への要請
  1. 再発防止のための企業行動改善報告の提出
    不祥事を起した企業に対しては、企業行動の改善策とその実施状況を日本経団連会長に報告するよう要請する。
  2. 日本経団連の企業・社会関係会合等への出席
    不祥事を起した企業に対しては、企業と社会の関係に関わる会合(注)等、日本経団連会長が指定する会合に参加するよう要請する。
    (注) 企業行動委員会、社会貢献推進委員会、1%クラブ、海外事業活動関連協議会(CBCC)等が主催する会合。前述のセミナー(4.(3))等を含む。

(3) 回復措置

事態の改善がみられると判断された場合には、措置を解除する。

以  上

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