気候変動枠組条約第三回締約国会議に向けての共同宣言

−世界経済人の地球温暖化対策フォーラム−




1997年12月3日(水)
於 ホテルグランヴィア京都


経済団体連合会会長豊田章一郎
国際商業会議所会頭ヘルムート・マウシャー
世界環境経済人協議会理事長 ビヨン・スティグソン

  1. 気候変動:産業による自主行動
  2. 温室効果ガス排出量を削減するための自主行動が世界各地で行われている。そうした自主行動はあらゆるセクターや地域に適用可能な柔軟性を持っているため、硬直的な一方的な規制よりも効果的に成果をあげる事ができる。気候変動問題は複雑であり、ありとあらゆる対応が求められているのであって、単純で決まりきった解決策というものはない。

    特に産業界は、天然資源やエネルギーの効率的利用、経済成長の創出、革新的技術および国際技術協力の促進・普及により、想定される気候変動の問題に対して独自かつ積極的な役割を果たしてきた。ビジネス・産業界の全てのセクターがそのような活動を更に促進し、それらに広く参加する事は、気候変動の緩和に大いに貢献するであろう。こうした産業活動は、将来の世代がニーズを満たしていける能力を損なうことなく現代のニーズを満たす持続可能な発展の実現に貢献している。

    依然として不確実性が残っているとはいえ現在最も信頼し得るIPCCの第二次アセスメントリポートで報告されている科学的知識をもとに、産業界をはじめとする社会の多くの部門は、協力して温室効果ガス排出量削減のための費用効果的な対策を既に実施している。これら地球温暖化対策は、その効果と結果が長期間を経て現れるものであり、長期的な観点にたって実施されている。

  3. 自主的な対応
  4. 気候変動枠組み条約の施行は、多くの社会的ニーズを満たすための経済活動に依存している企業活動、従業員、顧客、株主、政府などに影響を及ぼす。将来政府が決定する政策の実行と、それに伴う消費パターンの変化に対応する仕事も多くは産業界が担う事となる。とりわけ産業界は、技術の開発、商業化、普及において、また自らの持つ幅広い経験と技術、経営に関する専門知識を環境面での挑戦に適用させていく上で、必要不可欠な役割を果たす。

    自主行動とは、企業や産業による具体的な目標に向かっての行動であり、それぞれの地域、経済、社会の状況に適応した「最善策」(best practice)の実現のための取組みである。自主行動には様々な形態があり、企業の誓約もあれば政府との協定などに基づく場合もある。更に、透明性、定期的な報告や審査を伴う場合もある。

    要するところ、企業は気候変動問題に対応するために自主計画を通じて積極的かつ責任ある対策を講じつつある。自主計画は、成果を測定したり、結果を説明することが可能となるような枠組みである必要がある。また、こうした自主行動は、温室効果ガスの排出量を削減する革新的技術、その他の技術オプションの開発にも貢献し得るものである。各国政府は、国の気候変動対策にこれら自主行動を進んで織り込むべきである。

    産業界がその技術や知識を最大限に生かせるような枠組みを政府が整えれば、自主行動は最大の効果を上げることが出来る。政府の対策(例えば規制や経済的手法)は自主的で柔軟な産業界の取り組みを妨害したり、貿易パターンや産業間の競争を歪めることがあってはならない。

  5. 効果的な自主行動の例
  6. 自主行動は、既存の効果的な技術の利用と普及を通じて、温室効果ガスの排出削減に貢献している。これまでに採用された、もしくは将来採られるであろう技術例としては以下のものがある。

    自主行動計画にも様々な種類があり、例えば以下のものが挙げられる:第一に米国の「Climate Wise」計画のような企業別計画。第二に欧州化学工業連盟協議会(CEFIC)のエネルギー効率改善計画のような部門別自主計画。第三に、企業と事業者団体、更に政府が参加して締結される様々な自主協定。これには例えば経団連による「環境自主行動計画」、ドイツ産業連盟(BDI)による「温暖化防止宣言」、そしてオーストラリアの「温暖化への挑戦」等がある。第四にオランダで行われているような国家規模の計画である。

    気候変動枠組条約で規定されている、パイロットフェーズにおける“共同実施活動”と“共同実施”の計画は、温室効果ガスの排出量削減を目的とする自主行動を世界的規模で推進することになり得る政策的枠組みの例である。

    とりわけ発展途上国や移行経済国にとって研修と教育は国際的な技術移転を円滑に促進する上で不可欠である。自主的な取組みもこれをしうるものである。

  7. 要 望
  8. 自主行動が十分な成果をあげるためには、政府、企業、市民が協力すること、更に現在、国際的に検討されている政策と措置が費用効果的な自主行動を奨励するものとなることが重要である。

    自主行動が、京都で開催されるCOP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)において定められる目標を達成するための効果的な政策オプションの一つとして位置づけられることを望むものである。

以 上

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