土地・住宅関連税制の見直し
土地・住宅関連税制は、質の高い住宅ストック並びに良好な居住環境を形成する
ための有効な手段の一つであり、その効果を最大限に発揮させるためには、国民のニ
ーズや社会・経済情勢の変化に対応し適宜適切に制度の見直しを図る必要がある。
具体的には、固定資産税評価の適正化など土地保有課税の見直しを図るとともに、宅
地供給の拡大に資する譲渡益課税の見直し、さらには住宅取得に係わる各種税負担の
軽減、とりわけ住宅取得促進税制の拡充を図るべきである。
- 土地保有課税の見直し
- 固定資産税評価の適正化
94年5月に発表された固定資産税評価額は、94年1月時点での地価公示
価格を基準として算定されたが、この間地価が引き続き下落したため、固定
資産税評価額が直近の地価公示価格(94年1月時点)を上回るという逆転
現象が生じた地域が見られた。このような事態に対応し、併せて土地保有課
税の適正化を図る観点から、負担調整措置の拡充や評価額の引下げ等の緊急
措置を講ずる必要がある。
また今後、このような事態が再び生じないよう、固定資産税評価額の地価公
示価格に対する割合(現行:7割程度)を引下げるとともに、土地の収益性
を重視した評価方法を早急に確立する必要がある。
- 地価税の廃止
地価税創設の際に目的とされた地価の抑制が達成された現在、固定資産税と
の二重課税、負担の特定業種・特定地域への偏重など問題点の多い地価税を
直ちに廃止すべきである。
- 譲渡益課税の見直し
- 個人の長期譲渡所得課税の負担軽減
土地の流動化を通じて地価の適正化を図る観点から、個人の長期譲渡所得課
税の税率を少なくとも91年度税制改正以前の水準まで引下げ(現行:一律
に所得税30%+住民税9%→譲渡所得4,000万円以下は所得税20%+住
民税6%、譲渡所得4,000万円超は所得税25%+住民税7.5%)、併せ
て特別控除額を引上げるべきである(一般の特別控除額現行:100万円→200
万円、居住用財産譲渡の場合の特別控除額現行:3,000万円→5,000万円等)。
加えて、大規模かつ優良な住宅開発を促進する観点から、優良住宅地の造成
等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得課税の特例措置を拡充すべ
く税率を引下げる必要がある(現行:所得税15%+住民税5%→所得税10%+
住民税4%)。
- 法人の土地譲渡益に対する重課税の廃止
91年度税制改正により、法人が一般の土地を譲渡した場合、譲渡益金額の
合計に対し通常の法人税に加え、譲渡益課税として10%の追加課税が行わ
れることとなった。これにより法人の土地譲渡益に対する税負担が極めて重
くなっており、企業の土地売却によるリストラクチャリングを促進するため
にも、この際、本重課税を廃止すべきである。
- 居住用財産の買換特例制度の拡充・延長
ライフサイクルに応じた個人の住替えを促進すべく、居住用財産の買換特例
制度における適用範囲を拡大するとともに、適用期限を延長すべきである(
現行:95年3月31日まで)。具体的には、所有期間並びに居住期間の短
縮(所有期間現行:10年超→5年超、居住期間現行:10年以上→5年以
上)、譲渡資産の価格限度額(現行:2億円以下)の撤廃、買換資産の床面
積制限(現行:50平方メートル以上240平方メートル以下)及び敷地面積制限(
現行:500平方メートル以下)の撤廃、高齢者の居住用財産買換による譲渡所
得の非課税化等を実現すべきである。
- 事業用資産の買換特例制度の拡充・延長
企業のリストラクチャリングを進め、工場跡地など長期保有土地を利用した
再開発事業等を促進し、併せて土地の流動化を進める観点から、長期保有土
地(81年12月31日以前までに取得した土地)から減価償却資産への買
換特例制度について適用期限を延長するとともに(現行:95年3月31日
まで)、現行では認められていない既成市街地内への買換を新たに対象とし
た上で、譲渡益全額を課税繰延べの対象とすべきである(現行:譲渡益の80
%が課税繰延べの対象)。
また既成市街地の内から外への買換特例について、貸付用事業用資産を除外
している譲渡資産要件を撤廃し、併せて譲渡益全額を課税繰延べの対象とす
べきである(現行:譲渡益の80%が課税繰延べの対象)。
- 住宅取得に係わる税負担の軽減
- 住宅取得促進税制の拡充・延長
中期的に、中堅勤労者を対象とした住宅取得支援税制からの脱却を図るべく
、現行の住宅取得促進税制について、住宅ローン金利の所得控除方式など欧
米の住宅税制を参考にしながら、制度の抜本的見直しを図る必要がある。特
に消費税率の引上げが行われる場合には、抜本的な制度拡充の必要性は高ま
ろう。
当面は、住宅取得者の負担軽減を図る観点から、現行の住宅取得促進税制の
控除期間の延長(現行:6年→8年)、所得制限の撤廃(現行:3,000万円)
を図った上で、適用期限を2年間延長すべきである(現行:94年12月31日まで)
。
- 登録免許税、不動産取得税等の負担軽減措置の拡充
94年2月の政府の総合経済対策により、登録免許税と不動産取得税につい
ての負担軽減措置が講じられた(登録免許税:94,95年度には課税標準
を40/100に、また96年度には50/100に減額。不動産取得税:
94年には課税標準を1/2に、95,96年には2/3に減額)。しかし
ながら、両税の課税標準となっている固定資産税評価額が本年5月の評価替
えにより大幅に上昇し、その結果、住宅取得者の両税に係わる負担が増大し
、現行の軽減措置は不十分なものとなっている。したがって、両税の軽減措
置についてさらなる拡充を図るとともに、両税の課税標準である固定資産税
評価額を適正化すべきである。また消費税率が引上げられる場合には、住宅
取得者の負担増を回避する観点から、不動産取得税、登録免許税に加え住宅
取得に係わる印紙税について、廃止を含め整理・合理化を図る方向で検討す
べきである。
- 新築住宅に対する固定資産税の軽減措置の
拡充・延長
新築住宅に対して固定資産税額を2分の1にする現行の減額制度について、
その減額割合を4分の3に拡大するとともに、減額期間の延長(現行:中高
層耐火建築物5年、その他住宅3年→一律7年)、適用対象となる住宅床面
積の上限引上げを図ったうえで(現行:120平方メートル→
150平方メートル)、適用期限を延長すべきである(現行:95年1月1日まで)。
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