規制緩和の経済効果に関する分析と雇用対策
（要旨・全文）

規制緩和の基本的な考え方とその位置づけ

• 現在のわが国経済に強く求められているのは、第一に、産業、雇用の空洞化 を回避し、経済・産業の活性化を図ること、第二に、自由で国際的に開かれた透明、 公正な経済社会を構築し、対外不均衡の是正に努めることであるが、このような課題 の克服に向け、規制緩和は最も有効な手段として位置づけられる。

• 企業や国民の意識を規制依存型から自己責任型へ転換する必要がある。

• 規制緩和が断行されない場合には、購買力平価と市場レートの乖離がさらに 拡大する形で、当面の円高が進展し、産業の空洞化が不可避となることから、失業が 増加するおそれが強い。この結果、日本経済は成長しつつある世界の市場から脱落し 、縮小均衡と生活水準の悪化、経済活力の低下という斜陽化の道を辿る危険性が高い 。従って、このような事態を回避するためには、規制緩和は避けては通れない道であ る。

規制緩和の経済効果

• 規制緩和により、中長期的には、企業は、新しいビジネス・チャンスの拡大 、　生産性の向上による体質の強化などが可能になり、消費者は、内外価格差是正に よって利益を享受できる。

• しかし、短期的には、競争激化によって企業の整理・淘汰や生産性の低い分 野における摩擦的失業、雇用のミスマッチなどの問題が表面化する惧れがあるため、 雇用対策の充実など、これを克服する努力を行うことが必要である。規制緩和に伴う このようなマイナス面を最小限にとどめるための適切な対策が実施されれば、その全 体としての経済効果は、プラス面がマイナス面を上回る。

• 因みに経団連の分析によれば、規制緩和によって、規制産業において生産性 が向上する効果と、内外価格差が縮小する効果を合わせると、95年度〜2000年 度の累計では、実質GDPが177兆円増加し、雇用者数は74万人増加する。

規制緩和推進のための環境整備

• 規制緩和によるプラス効果を最大限に引出し、雇用への影響など一時的なマ イナス要素を抑制していくためには、経済の活性化を通じ、できるだけ高い経済成長 率を達成していくことが、何よりも重要である。そこで、経済活性化のために新しい 社会資本の整備が急務であり、併せて、新事業、新産業の育成により新たな雇用を 創出する必要がある。

• 規制緩和の過程で生じる時間的、職能的、地域的、年齢的な雇用のミスマッ チに対しては、官民が一体となって、万全の対策を講じる必要がある。

• より広い視点に立った雇用対策の観点からは、雇用流動化のために役立つ教 育システムの構築、社会人教育の拡充を図るべきである。併せて、新しい産業を担う 創造的人材を育成するためには、教育制度全般にわたる改革が急がれる。