ISO環境管理・監査規格の普及に向け政府の一体的な取り組みを望む

1995年12月11日
社団法人 経済団体連合会
環境安全委員会
委員長 関 本 忠 弘


  1. 現在、ISO(国際標準化機構)では、環境管理・監査システムの国際標準化が進められている。これは、政府の規制によらず、民間が自主的に国際的な規格を作成し、これに基づいて各企業が社内体制を整備することによって環境負荷の軽減を図ろうとするものである。経団連としても、環境問題に関する経営方針の確立と社内体制の整備等を掲げた経団連地球環境憲章の趣旨に鑑み、このような民間ベースの国際的なルール作りに積極的に参画してきた。

  2. 先般、そのISOの会議がオスロにおいて、世界の主要50カ国が参加して開催され、環境管理システムと環境監査についての国際規格案がまとまり、来夏に発行することとなった。経団連としては、わが国における審査登録体制の確立を支援するとともに、今後導入が予定される環境ラベル、環境パフォーマンス評価、ライフ・サイクル・アセスメント等の規格作りにも積極的に取り組み、わが国企業が日々の事業活動において絶えず環境負荷の軽減に努力するよう働きかけを続けていく所存である。

  3. このような折、政府においては、いくつかの省庁が、環境問題への自主的な取り組みを促すとの建前の下に企業に対して環境行動計画の作成・公表、あるいはフォローアップを求める動きが見られる。政府が企業による環境問題への取り組みを勧奨すること自体、直ちに否定されるべきものではない。しかしながら、従来の行政と企業の関係に鑑みれば、そのような勧奨自体、実際上は強制的なものとなりかねない。ましてや企業が作成・改訂した行動計画を政府・自治体に提出することが半ば義務づけられるとすれば、その懸念はますます強まろう。例え自主的な制度でも実際上は強制的なものとなりかねないばかりか、独自の基準やシステムが非関税障壁となり競争を歪めかねないことは、WTOやISO等の国際機関において議論されているところである。

  4. 各企業はこれまでも積極的に環境対策に取り組んできており、ISOの環境管理・監査規格発行を前に社内体制の整備に本腰を入れつつある。また、ISO規格については、関係省庁や経済界、消費者団体、労働組合の代表者も含む環境管理規格審議委員会において日本としての対応を決定しており、国全体として尊重すべきものである。したがって、政府においては、世界で唯一の環境管理・監査規格としてISO規格の普及・啓蒙に各省庁一体となって取り組み、規模の大小、業種等を問わず数多くの企業が市場メカニズムの中で正に自主的に環境対策を進めていくための基盤作りを行うことが先決であり、ISO規格の普及を妨げることになりかねない独自の行政指導は、国際的整合性の確保と規制緩和の推進の観点からも厳に慎むべきである。


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