ミャンマーの経済発展のために

−「ミャンマーの投資環境等に関する調査」に基づく要望−

1995年12月15日
社団法人 経済団体連合会
ミャンマー研究会


はじめに

ミャンマー政府は89年3月以降、経済開放政策を取り、憲法制定に向け民主化のプロセスを進めている。われわれは、日本とミャンマーとの相互理解、経済交流の拡大を通じて、ミャンマーの安定的発展を図ることで、こうした動きを支援したいと考える。それがインドシナひいてはアジア全体の成長と発展につながる。
経団連では、94年6月に「経済調査ミッション」を派遣し、ミャンマー政府首脳との政策対話を行い、さらに95年2月には「ミャンマー研究会」を設立して最新情報の収集に努めるとともに、ミャンマーとわが国経済界との架け橋となるべく活動を続けている。
その一環として、ミャンマー研究会では95年11月、日本とミャンマーとの経済関係を拡大するうえで必要となる政策措置について、メンバー企業を対象に「ミャンマーの投資環境等に関する調査」を実施した。
以下は、調査結果に基づき、ミャンマー政府、日本政府等に対する要望を取りまとめたものである。

【記】

  1. ミャンマーとの取引関係を拡大するうえでの問題点
  2. 今後、わが国企業がミャンマーとの取引関係を拡大するうえでの主な障害として以下の5点が指摘される。

    1. インフラの不足(空港、港湾、鉄道、道路、電力、通信、物流等の未整備)
    2. 二重為替問題(公定レートと実勢レートとの乖離)
    3. 政治情勢(民主化の遅れ)
    4. 日本のODAの原則停止
    5. ミャンマーに関する情報の不足

  3. ミャンマー政府に対する提言
    1. インフラの整備

      長期的な経済開発計画のもとに、空港、港湾、鉄道、道路、電力、通信、物流などのインフラ整備を早急に進めることが求められる。また、輸出加工区、経済特区、工業団地の設置も外資誘致には有効である。

    2. 二重為替の一本化

      わが国企業が対ミャンマー直接投資を行うに当たり、二重為替の存在が大きな障害になっている。マクロ経済政策の適切な運営により、インフレの昂進を未然に防止しながら、公定レートを切り下げ、実勢レートとの一本化を図るよう要望する。

    3. 民主化の推進による政治情勢の安定化

      国民各層を代表する国民会議での十分な審議を通じて、早期に新憲法が制定され、名実ともに民政移管が実現することを期待する。

    4. 情報の公開

      ミャンマーに関する情報の不足が、同国に対する理解を深めるうえで大きな障害になっている。広報活動の強化とともに、対外開放政策や投資環境に関する情報、各種の経済統計を積極的に公表していく努力が求められる。

  4. 日本政府に対する提言
    1. ODAの拡充

      わが国からのODA供与は、海外からの直接投資の呼び水ともなり、ミャンマーの経済成長を促進するだけでなく、経済の安定化を通じて政治問題の早期解決にも資すると考える。ミャンマーに対するODAをすみやかに拡充することを要望する。当面は継続案件を中心に円借款を再開し、以後、延滞債務問題、その他状況の改善に応じて新規案件にも積極的に取り組むよう期待する。

    2. 貿易保険の拡充

      貿易保険については、対象の拡大と保険料率の引き下げを行うととにも、付保条件の緩和を期待する。

    3. 租税条約、投資保護協定の締結

      ミャンマーへの日本企業による安定的かつ持続的な投資を促すために、ミャンマー政府との間で租税条約、投資保護協定を早急に締結するよう要望する。

おわりに

95年12月のASEAN首脳会議へのミャンマー、ラオス、カンボジアの参加にもみられるように、この地域における協力関係は一段と緊密化している。各国政府や国際機関は同国に対する理解を深めるとともに、ミャンマーの経済発展を促進する措置を採るよう期待する。


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