連結納税制度導入に関する提言

1996年3月26日
社団法人 経済団体連合会


わが国経済の抜本的な構造改革は、21世紀に向けての不可欠の課題である。経済活力の源泉たる企業活動の一層の効率化、活性化を目指し、企業は懸命にリストラを進めている。分社化経営、さらには、純粋持株会社を利用した経営は、企業経営の再構築を図る上での重要な選択肢である。このような企業経営の新たなトレンドを踏まえ、また、国際的な整合性を図る観点から連結納税制度の導入を急ぐべきである。

  1. 導入にあたっての基本的考え方
    1. 分社化を選ぶか、社内部門での経営を選ぶかといった選択に対し、本来、税制は中立であるべきであり、事業形態によって税制上の不利益が生ずることがあってはならない。親子会社の経済的一体性を重視した税制として、連結納税制度を早急に導入すべきである。純粋持株会社が解禁されれば、新たな企業経営形態の選択が可能となるが、この制度を有効に利用するためにも連結納税制度の導入が前提となる。
      先進諸外国においては、子会社所得を親会社所得に合算して、親会社が連結税額を納税する連結納税制度が一般的であり、税制の国際的な整合性をはかる観点からも導入を急ぐべきである。

    2. 連結納税制度は、基本的に個々の会社の決算、個別レベルの法人所得の計算を基礎としていくものである。確定決算主義に影響を及ぼすものではなく、連結財務諸表と直接関係するものではない。経済的に一体である親子会社の公正な法人税負担をおこなって行くための制度であり、大企業のみが優遇されるものではない。

    3. 制度導入に当たっては、連結対象会社の範囲を実質的に100 %所有の子会社に限定して良いと考える。これによって少数株主の権利保護等の問題も解決できる。
      その他、可能な限り簡素な形態とし、早期の導入を実現すべきと考える。

    以下、連結納税制度導入にあたって考えられる基本的な仕組みを提言したい。

  2. 基本的仕組みについて
    1. 連結の対象範囲
    2. 対象とする子会社は、少数株主の権利保護等との関係から、当面は経済的一体性が明白な、実質的に100 %所有の国内子会社のみを対象とする。
      子会社の選択は任意とし、一旦選択した子会社は、原則として継続して対象とする。

    3. 制度の適用
    4. 諸外国の制度においても連結納税制度を適用するか、個別申告とするかについての選択は企業に委ねられており、我が国においても、制度の適用は任意とする。但し、一旦、連結納税制度を適用した場合は、継続適用(5年程度)を原則とする。

    5. 会計年度・会計基準の統一
    6. 経済的一体性、制度の簡便性を考慮し、会計年度は統一する。また、連結納税制度が個別レベルの法人所得計算を基礎とする制度であることから、会計基準については、個別会社の基準の継続を認める。

    7. 内部取引の扱い
    8. 制度をできるだけ簡便な形とする観点から、連結会社間の資産の売買による未実現損益については土地・有価証券等に限って消去することとする。
      損益の繰延べは、売手側で調整し、連結納税範囲外の第三者に売却した時点で実現したものとする。

    9. 繰越欠損金の扱い
    10. 制度適用以前の繰越欠損金については、個別ベースでのみ控除可能とし、制度適用後に発生した繰越欠損金は連結ベースで使用できることとする。
      (繰越欠損を有する会社を利用して租税回避を図るといった行為を防ぐ。)

    11. 地方税
    12. 法人税を基準に計算される法人住民税、事業税は、連結納税制度をもとに計算する。

    13. 納税債務の配分
    14. 連結上の納税は、子会社の代理人として親会社が行い、納税債務については、所得・欠損の比率で配分するなどの契約を親子会社間で行う。


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