合併法制の改正に関する意見

1996年4月16日
社団法人 経済団体連合会


現下の厳しい経済情勢を克服し、経済構造改革を進め、企業経営の効率化を図る上で、合併・分割は重要な方法であり、これを機動的に行えるよう法改正を早急に進める必要がある。そこで、まず、ほぼ審議を終えている合併法制について緊急に改正を行うこととし、分割法制の整備についても引き続き早期に実現すべきである。

法制審議会商法部会において現在検討されている、(1)報告総会の廃止、(2)債権者保護手続の簡素化、(3)簡易合併制度の導入といった、合併手続の簡素化については経済界として高く評価しているが、さらに下記の点についても実務界の意見を十分踏まえて改正を行うべきである。

  1. 報告総会の廃止に伴う合併事項の報告
  2. 合併に関する事項を記載した書面を本店に備え置く案と株主に合併に関する事項の通知を行う案とが検討されているが、株主に通知することは、実務上、通知先の株主をどのように確定するのかという問題があるのに加え、多額の費用がかかる。また、合併後最初の定時総会において報告を行えば、その招集通知において合併に関する事項を記載するのであるから、別途株主に通知を行うことは通知の重複になる。したがって、合併に関する事項を記載した書面を本店に備え置けば十分であり、株主への通知を義務づける規定は必要ない。

  3. 債権者保護手続の簡素化
  4. 債権者異議の公告は官報で行うものとし、定款所定の公告方法である時事に関する日刊新聞紙でも公告を行った場合には個別の催告を省略することができるという方向が望ましい。
    合併手続の円滑化の観点から、債権者保護手続の終了を待たず、合併登記を行うことができること(事後手続)とすべきである。

  5. 簡易合併手続
    1. 簡易合併手続に関しては、存続会社株主への通知、存続会社株主の株式買取請求権を必要とする案があるが、存続会社株主へ大きな影響を及ぼさない合併については合併手続を簡便なものとするという本制度の趣旨からいって、その要件については消滅会社の株主に与える新株の総数が存続会社の発行済株式総数の20分の1を超えないこととして、存続会社株主への通知、存続会社株主の株式買取請求権は不要とすべきである。通常の合併手続においては、承認総会において合併に反対した株主のみが株式買取請求権を行使することができるが、簡易合併においては承認総会を省略することから、濫用される危険性が高い。また、株式買取請求権を行使できる株主を確定することが困難である。

    2. 100%子会社同士の合併についても、株主である親会社の持ち分に影響を及ぼさないことから、簡易合併制度の対象とすべきである。

  6. その他
    1. 合併による計算の承継
      現在、遡及期間を合併期日前6カ月とし、みなし決算を強制する方向で検討が進んでいるが、合併期日の設定時期によっては、消滅会社に決算作業を2度行わせることとなり、過重な負担である。その結果、例えば、消滅会社が3月決算の場合、10月以降に合併期日を設定することは困難となり、合併期日に事実上制約を設けることとなる。遡及期間を合併期日前1年とすべきである。

    2. 債務超過会社の吸収合併
      分社化・子会社化が進行している現在、企業グループの経営の円滑化の観点から、評価替えによって債務超過を解消できない場合であっても、債務超過会社が100%子会社である場合については、親会社あるいは他の100%子会社による吸収合併を認めるべきである。

    3. 存続会社の有する消滅会社の株式への新株の割当
      現行法では規定がなく、実務上、存続会社の有する消滅会社の株式への新株の割当が行われている。これを行えないとすると、存続会社は、その保有する消滅会社株式を売却する場合、合併前の短期間に、保有する消滅会社の株式を売却せざるをえず、株価に大きな影響を及ぼすおそれがある。現在、これを禁止する規定を新設する方向で検討されているが、存続会社の有する消滅会社の株式への新株の割当を認めるべきである。


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