魅力ある国家づくりに寄与する宇宙開発の推進を望む

1996年6月14日
(社)経済団体連合会


  1. わが国が今なぜ宇宙開発を推進するのか
  2. 宇宙開発は科学技術を先導し、幅広い産業の芽を生み出す。宇宙開発政策大綱が改訂され(以下、新大綱)、科学技術基本法が制定されたのを契機に、科学技術創造立国を目指すわが国は、今こそ新技術及び新産業の創出の主柱となる宇宙開発を一層加速して推進すべきである。
    わが国が宇宙開発を推進する今日的意義は、主に以下の通りである。

    1. 「生活の質」が重視されている今日、衛星を利用した通信・放送、地球環境・災害監視、気象観測、測位(カーナビゲーションなど)、高度な宇宙技術から派生する製品(新幹線の先端に装備された高温に耐える炭素繊維強化プラスティック、太陽熱を利用したソーラーシステムなど)等は国民生活の質向上に貢献している。また、今後、加速度的に進むであろうマルチメディア社会においては、通信・放送分野を中心に衛星の活用の場がさらに急速に増えると予想されている。

    2. 国際社会においてわが国が魅力ある国家になるためには、宇宙分野のような高度な先端分野において独自の技術を持ち、単に資金だけの協力ではなく「技術」による国際貢献を行うことが是非とも必要になる。

  3. 推進すべき重要プロジェクト
  4. 国として必要なプロジェクトを継続的に進め、宇宙産業の活性化にも資するため、以下の重要プロジェクトを推進すべきである。

    1. 地球環境保全や阪神大震災のような大規模災害に迅速に対応するため、衛星を利用した地球観測システムを早期に構築する。
    2. 月・惑星探査を含む科学観測計画を今後とも継続的に推進する。
    3. 宇宙環境利用の中心となる「軌道上研究所」であるJEM(宇宙ステーション取付け型実験モジュール)の2002年からの運用開始に先立ち、民間企業が利用しやすいスキームを考える等により、JEMのより有効な利用方針を策定する。また、JEMへの物資補給のための補給機(HTV)の開発を推進する。
    4. 新大綱で強調されたミッション実証衛星シリーズを着実に推進するとともに、同衛星を機動的に打上げる手段という観点からも小型ロケットの開発・活用を進める。
    5. 通信・放送に関する次世代技術に係わる衛星(ETS−VIII)の開発を推進する。今後とも重要性の増す測位技術についても継続的に研究を進める。
    6. 宇宙開発をより効率的に進め、かつ多様性を高めるため、有翼往還機の試験機(HOPE−X)の開発着手、ならびにH−IIAロケットの開発を加速させる。

    なお、新大綱に盛り込まれた中長期的プロジェクト(全地球観測システム、軌道上サービスシステム、完全再使用型輸送システム、有人宇宙活動など)については、時期を失することなく適切な時期に研究に着手すべきである。

  5. 宇宙産業の活性化の推進
  6. わが国の宇宙産業の現状をみると、欧米に比べ歴史が浅くプロジェクトが少ないことなどにより競争力に乏しく、本格的に海外市場に参入するに至っていない。

    今後、わが国が宇宙開発を円滑に進め、国力に相応しい国際的な役割分担を果していくためには、新大綱にも盛り込まれたように、宇宙産業が自立し内外において商業ベースでの活動を活発に行うことが不可欠となる。このため、前記重要プロジェクトを着実に推進するとともに宇宙産業の活性化を促進するため、以下の環境整備を行うべきである。

    1. 国の試験設備(スペースチャンバー、耐大音響試験設備等)の拡充とその使用料金の適正化
    2. 射場の整備ならびにロケット打上げの弾力化
    3. 宇宙開発の成果技術に関する平和利用原則の弾力的運用
    4. 国や宇宙開発事業団の保有する技術の移転推進
    5. 商業衛星打上げに係わる第3者賠償責任・補償等への法体制の整備

    産業界としても、宇宙開発部門の活性化に向けた企業努力を着実に進めていく所存である。

  7. 宇宙予算の早期倍増へ
  8. 昨年、科学技術基本法が成立し、科学技術振興に国が一丸となって取り組もうという気運が盛り上がっており、さらに近々、科学技術基本計画が策定される予定である。

    科学技術の先端分野である宇宙開発を一層推進する観点から、上記重要プロジェクトを円滑に遂行し、併せて宇宙産業の活性化を図るため、宇宙予算を飛躍的に増加(例えば、早期に5000億円に倍増)すべきである。

以 上


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