財政民主主義の確立と納税に値する国家を目指して

―財政構造改革に向けた提言―

1996年12月10日
社団法人 経済団体連合会


  1. 豊かで活力ある経済社会の実現
  2. 国際化、価値観の多様化、経済の高度化が進展する中で、明治以来の「行政主導によるキャッチ・アップ型経済体制」はもはや立ち行かなくなっており、これまでのシステムを抜本的に改革し、市場原理を徹底した新たな経済社会制度を構築することが急務となっている。こうした中で、日本を豊かで活力の溢れた社会として次の世代に引き継ぐために、我々現役世代に与えられた課題は多い。なかでも、財政構造の改革は行政改革、社会保障制度改革、税制改革、経済構造改革とならぶ、いわゆる5大改革のひとつとして、閉塞感が高まりつつあるこの国を、我々が変革していけるかどうかを占う最も重要な課題になっている。

    我々は民主的規律、効率性、市場原理の導入、自己責任原則の徹底の4原則に基づいて、財政構造を改革していくことが求められているが、財政構造改革の究極の目標はあくまで経済・社会の活性化にあることを忘れてはならない。単に財政収支均衡を先行させ、国民・企業に安易な負担を求めては、民間活力を阻害し、将来にわたって「角を矯めて、牛を殺す」結果になる。国・地方を通じた規制撤廃・緩和、行政改革、歳出の抜本的見直し等により効率的で小さな政府を実現し、民間が十分活躍できる環境を整備することで、企業の国際競争力を向上させ、新産業・新事業創出への道をひらくことが出来る。こうした経済構造改革を伴ってはじめて歳入が安定し、財政健全化が達成できることを政府・財政当局は認識すべきである。企業、人が国を選ぶ時代において、国を「企業や人が納税するに値する国家」へ変革していかなければならない。一方、国民・企業の側においても行財政に何もかも依存するというこれまでの意識を改め、自己責任原則を徹底し、改革に向けた取り組みに積極的に協力し、国民が自らの税金の使途を主体的に決定する「財政民主主義」を実現しなければならない。

  3. 我々の求める財政の姿
  4. 21世紀にかけて、我々の求める財政とは、国民負担率の上昇を招くことなく、小さい規模で維持されなくてはならない。行財政に自己規律を求め、従来、官が担ってきた分野で、市場メカニズムを十分活用することにより、持続的成長が可能となる。同時に、わが国を高度成長期のフローを重視する社会から、ストックや創造性重視の社会に改革していかなければならず、そのために必要な社会資本整備や科学技術に重点的に予算を配分していく必要がある。

    財政はその機能、範囲について「官・民」、「国・地方」の役割分担が適切かどうか、その政策効果が十分に発揮されているかどうか、納税者である国民から不断に検証を受け、その期待に応えるものでなくてはならない。そのための当然の前提として、政府は国民に対し、常に財政に関する情報を提供し、説明責任を尽くさなければならない。このような観点から、現在の財政を検証してみると、極めて硬直的な公共事業、将来に不安を残す社会保障制度等の問題がみられる。しかも、これらの政策の是非・効果について、政府は国民が必要とする情報を開示しないばかりか、説明責任を怠っている。

    そこで我々経済界としては財政の構造改革に着手するにあたり、年次を定めた計画を策定し、その着実な実施を提案する。そのためには財政が常に膨張する傾向があることを念頭に置き、国民に向かって開かれた行政を確立し、世代間で不公平を生むことのないよう、聖域なく歳出構造を見直し、財政全体を中長期的に管理していくという手法を導入することが最も重要である。

  5. 10年間の財政再建・構造改革
    1. 440兆円を超す長期債務残高(国、地方)が示すように、今日の財政は危機的状況にある。わが国を活力ある経済社会として維持していくためにも、政府は10年を目処に財政を再建し、財政規模の適正化に取り組まなければならない。

    2. 政府は1997年度を初年度として、10年を3段階にわけて、短期、中期の計画を策定し、各段階毎に複数の目標を設け、その目標と進捗状況を対比することで、達成度を国民に明示すべきである。その場合、各期の計画は社会資本整備計画、社会保障制度の改革など歳出入構造改革の具体策を盛り込んだアクション・プログラムとならなければならない。

    3. わが国には現在、「特例公債からの脱却」と「公債依存度の引下げ」という財政健全化目標があるが、財政構造改革は国の一般会計の赤字縮減のみを目的としたものであってはならない。むしろ、現在の財政問題は、地方財政や財政投融資を含めた公的部門の過度の膨張とフローの財政赤字やストックとしての債務残高の累増に伴う世代間の不公平の拡大である。(政府の範囲と分類については補論1 2頁参照)
      これらを踏まえ、我々が掲げるべき財政構造改革の目標は、第一に、一般政府(中央、地方政府、社会保障基金)の「支出額の対GDP比率」である。この比率は現在34.5%と諸外国に比して大きなものとなっていないが、わが国特有の財政投融資(公団、公社等)を含めて考えると、公的部門の「支出総額の対GDP比率」は94年度では既に45.7%の規模に達している。(補論1参照)
      財政構造改革の第二の目標は、一般政府の「財政赤字や債務残高の対GDP比率(#1)」である。一般政府の財政赤字の対GDP比率は94年度時点で5.5%であるが、これを財政投融資を含めた公的部門にまで広げると7.2%に拡大する。また、OECD見通しの96年のわが国の一般政府の財政赤字対GDP比率は7.4%と更に悪化している。OECD見通しの96年の債務残高対GDP比率も88.8%と殆どの欧米各国を上回っている。これらの数値をみる限り、わが国はマーストリヒト条約の通貨統合基準(それぞれ3%、60%)を当分の間、満たすことが出来ない。
      なお、国民負担率(公的負担/国民所得)については、(1)財政赤字が考慮されていない、(2)分母は国民所得よりも国内総生産が適切である等財政構造改革の指標としての問題点が指摘されているが、国民にとってわかりやすく、安易な公的負担の増加を防ぐ利点がある等を踏まれば、上記2つの目標の補完的指標としての意義は大きい。
      いわゆる、プライマリー・バランス(#2)については財政構造改革の第一段階の目標として掲げていく意義は大きい。しかし、(1)公的部門の支出総額に歯止めがかからず、好況時はむしろ歳出拡大を招く惧れがある、(2)長期債務残高の削減が先送りにされる惧れがある等の問題点がある。

      (#1)但し、社会保障基金は除く
      (#2)国債費を除いた歳出と租税等との均衡
      (対GDP比率、%)
      目標とすべき指標94年度の数値
      (国民経済計算より)
      アクション・プログラムの目標
      支出総額一般政府34.5% 現状以上の肥大化を防ぎ、可能な限り小さくすべきである(補論1参照)
      公的部門45.7%
      財政状況財政赤字
      (注2)
      一般政府5.5%(7.4%)
      • 特例公債から2002年度までに脱却する
      • 縮減する(補論1参照)
      公的部門7.2%
      長期債務残高一般政府(88.8%)縮減する
      公的部門
      補完的指標国民負担率(注3)35.7%
      • 極力上昇を抑制する
      (注1)カッコ内はOECDの見通し(96年)
      (注2)数値はともに社会保障基金を除く
      (注3)国民所得比

      今後は、歳出構造改革、財投改革を通じ、公的部門の「支出総額対GDP比率」が現状以上に肥大化することを防ぎ、可能な限り小さくすべきである。一方、公的部門の「財政赤字や長期債務残高の対GDP比率」については、この縮減を目指し、特に特例公債から2002年度までに脱却すべきである。なお、具体的な数値目標は今後の検討課題であり、政府が責任をもって目標を設定すべきである。

    4. 財政構造改革を確実に実行し、改革の責任を明確にしていくために、数値目標の設定、計画の策定を政府に義務づける「財政構造改革法(仮称)」を制定する必要がある。

  6. 改革のための基盤づくりと必要な取り組み
  7. 財政構造改革を実現可能なものとするためには、(1)の情報開示や(2)の行政改革という改革の基盤をつくり、(3)以下の課題に取り組む必要がある。

    1. 情報開示と監視の徹底
    2. 政策の不透明性を排除し、財政民主主義を実現するため、行財政に関する情報公開、国民による監視の徹底が不可欠である。
      第一に情報開示については、財政活動においても、極力、民間の会計基準を適用し、その上で情報開示の拡充に努めなければならない。ニュージーランドでは公的部門の会計基準の改革が財政構造改革の決め手となったことを考えると、わが国でも財政に発生主義会計を統一的に導入していくとともに、資産・負債に関する正確な情報を開示していく必要がある。収益追求を必ずしも要請されない財政においては、民間以上に効率性による検証が必要であり、そのためには財務会計に加えて、企業会計にみられるような管理会計的手法の導入が有用である。
      また、従来から一部の公共事業に導入されている費用便益分析は全く不十分で、今後は全ての公共事業について、将来にわたってどの程度の維持・運営費用が生じ、また国民生活にどの程度の便益をもたらすのか、徹底した費用便益分析を行う必要がある。政府はこうした分析とともに、取りうる政策の選択肢を国民に示すことで、公的サービスが無料であるかのような錯覚を防ぎ、過剰な国民の要求を排し、適正な自己負担を求めることができる。
      第二に、充実した情報開示の下で国民による監視を強化していかなければならない。そのために、現行の行政手続法の一層の活用や情報公開法の制定により、行政の透明性を確保し、国民からの情報開示要求に行政がこたえる仕組みを早急に作っていく必要がある。行政活動を監視する総務庁行政監察局も会計検査院の協力を得て、活動を抜本的に拡充・強化していくべきである。更に、国会による監視を強化するため、衆参両院の調査室のような、既にある国会の調査機能を拡充・強化するとともに、必要に応じ、第三者機関を国会に新設すべきである。

    3. 行政改革と政府事業の民営化等
    4. 現在の中央省庁は細分化された縦割り組織により全体としての整合性を喪失して、機能不全に陥っている。時代の要請に対応して行政をより整合的に実施していくため、まず、国の機能を再整理した上で、官邸機能の強化に併せて中央政府をできるだけ大くくりに再編成していく必要がある。その意味で現在、行政改革会議で行われている作業に注目するとともに、橋本行革ビジョンの実現に大いに期待したい。
      また、本来、民を補完すべき役割の官が、最近は民を圧迫する、民の活動を制限するなどの弊害が目立っている。官民の役割分担を明らかにし、出来る限り市場原理に委ねるという原則に立って、政府事業、とりわけ郵便事業への民間参入、郵貯・簡保事業の分割・民営化や存在意義が不明確な財投機関とその実質的な子会社を廃止・縮小していく必要がある。
      また、海外の例にならい、わが国も政府資産に関する情報を開示した上で、政府が保有する必要のない資産の売却を進め、政府のスリム化を進めるべきである。

    5. 歳出入構造改革の基本的な方向
      1. 歳出の聖域なき見直し

        財政構造改革を具体化するには、社会保障制度、公共事業など個別分野についても聖域なしで見直さなくてはならない。経団連では既に社会保障制度については、「国民の信頼が得られる医療保障制度の再構築」等の提言をとりまとめているが、今後は公共事業、地方財政、文教、ODA、防衛、農業、中小企業対策等についても、次のような切り口で検討を進めていく。

        歳出構造改革の主な切り口具体的な基準
        1.政策目的の妥当性
        • 目的が今日でも妥当なものであるか。
        • 本来の目的と政策が整合的か。
        2.官民の役割分担の見直し
        • 民間部門の供給能力が向上し、もはや公的部門の関与が不要ではないか。
        • 公的部門の関与がむしろ民間活動を圧迫していないか。
        3.関与の水準・範囲の見直し
        • 財政が関与することは正当化されても、関与の水準・範囲が適切でないのではないか。
        4.行政・関与の効率性の見直し
        • 既得権益が生じていないか。
        • 非効率的な関与になっていないか。
        5.国・地方の役割分担の見直し
        • 国と地方の関与の度合いが適切か。
        6.世代間の公平性の確保
        • 世代間不公平を招いていないか。
        7.特定財源の問題
        • 特定財源の存在が硬直的な歳出をもたらしていないか。
        8.再分配政策(所得、地域間)の見直し
        • 所得再分配政策は行き過ぎていないか。
        • 大都市から地方への資金移転が行き過ぎていないか。

      2. 経済活性化のための税制改革

        歳出構造改革に併せて歳入構造改革にも取り組んでいく必要がある。
        経済を活性化するという観点から、消費に対する課税の比重を高めつつ、個人及び法人に対する所得課税の軽減を図り、負担と受益・給付の関係がより明確な税制構造に改革する必要がある。その際、安易に増税に依存するような税制改革とならぬことを原点とすべきである。
        また、財政構造改革を実施していく過程では、徹底した国民的議論を通じながら、財政再建と税制改革のあり方について引き続き検討していく必要がある。

    6. 責任ある予算編成
    7. シーリング方式の予算編成では、社会保障関係費や地方交付税交付金などの義務的経費の増加に歯止めをかけることができない。また、投資的経費についても、極めて硬直的な配分を見直すことができない。カナダでは公的分野の関与の基準を明示し、各省に歳出の有効性の再点検を行わせるべく、プログラム・レビューというゼロベース予算を採用し成功している。これにならい、わが国でもゼロベースの予算編成の考え方を入れるべきである。
      また、財政の計画と整合的な形で、国債費を除く歳出全体の伸び率を抑制する方式を採用する必要がある。財政における景気調整機能には限界があり、その機能に大きな期待をかけるのは現実的でない。なお、社会資本整備については、貯蓄率の高い現在のもとで、将来のグランド・デザインを踏まえて、着実に推進していくことが望まれる。
      責任ある予算の実現には、予算審議の充実と決算等を通じた国会による厳しい監視も必要不可欠である。国会の予算委員会における予算審議、とくに政府関係機関予算及び特別会計、財政投融資計画に対する審議は極めて不十分であり、結果的に、官僚主導の予算編成が政治的に是認されている。決算委員会で審議されるのは2年前の収支等であるが、予算に前年度決算の審議の結果を反映させられるよう、決算委員会の審議の迅速化を図るべきである。また、歳出の経済効果を行政に説明させる義務を負わせるとともに、会計検査院の検査をより実質化し、決算委員会の評価と併せて、予算編成に迅速に結び付ける。

    8. 廃止・縮小に向けた財政投融資制度の改革
    9. 財政膨張の歯止めを掛けるためには第二の予算とも呼ばれる財政投融資の改革が不可欠である。財投は戦後、社会資本整備、経済の近代化、高度化、国民生活の向上等に一定の役割を果たし、高度経済成長を資金面から支えてきた。しかし、経済・社会環境が成熟化していく中で、かつてのような意義は薄れ、財投機関によっては明らかに歴史的役割が縮小してきているものや、改善の見込みのない事業を続け巨額の債務を抱えている(国有林野事業特別会計、国鉄清算事業団等)ものがある。特に最近は、財投の原資の柱である郵便貯金が国の信用力や有利な商品性を背景に残高が200兆円を超えるまでに膨張しており、従来以上に「肥大化」が目立つことから、民業圧迫という批判も大きくなっている。
      財投制度を改革するためには、財政を有償的資金によって金融的に行うことの意義を問い直し、個別財投機関の存在意義をゼロベースで見直す必要がある。歴史的使命を終えた機関は廃止・縮小、民間が本来行うべき分野(住宅建設のための融資等)については撤退や民営化等の措置をとり、財投機関の整理・合理化を進め、財投資金によって対応する分野を厳選していくべきである。また、前述の財政の計画のなかに財政投融資に関する計画も盛り込んでいくべきである。その際、これら改革の第一歩として個別財投機関の資産・負債状況や金利変動リスクなど経営実態に関する情報を国民に開示すべきである。財投機関の経営が国民等による厳しい監視を受けるようになれば、不採算事業への投資の抑制につながる。

    10. 負担と責任が求められる地方財政
    11. 肥大化した地方財政を改革していくことも重要な課題である。地方自治体に財政民主主義が機能していないと言われる最大の原因は受益と負担の関係を希薄にさせている地方交付税制度にある。地方交付税制度は、地方が貧しい時代には基盤整備等を進める上で有効に機能したが、現在では多くの地域で受益が負担を大きく上回り、コスト意識や住民による監視機能の欠如によって、地方に過大な財政をもたらし、逆に中央政府の財政を圧迫している。
      地方自治体が自らの権限と負担と責任で財政を運営できるよう、地方分権を進め、全国画一的な考え方を改めることで、不足払い化した地方交付税制度或いは補助金制度を廃止を含め抜本的に見直していくべきである。その際、地方債起債の自由化も検討する。また、現在ある3,300の自治体の中には零細で行政機能を十分に備えないものも多い。中長期的には道州制も視野に入れ、地方自治体を例えば人口30〜50万人程度の自治体へと再編・統合し、国・地方の基本的な関係を見直し、思い切った行政全体のスリム化を図らねばならない。

  8. 改革を推進するための計画・アクション・プログラムの策定
  9. 財政構造改革を計画通りに進め、着実に目標を達成していくためには、手法を出来るだけ具体化し、それに何時までに取り組むのかを明確にした計画・アクション・プログラムを作成するとともに、改革の進捗状況を監視し、内閣総理大臣に対し必要な措置を勧告する第三者機関(例えば、財政改革会議)を設置する。計画・アクション・プログラムは開始時期を1997年度に設定し、その後の10年間を3つの段階に分けて、毎年改訂することが可能な計画として以下のように進めるべきである。(別紙「財政構造改革のアクション・プログラム」参照)

    1. 第1期:「緊急財政健全化計画(1997〜1999年度)」
    2. まず、財政民主主義を確立する上で最重要の課題である情報開示を徹底する。公会計基準を発生主義会計原則に改め、債務を明らかにするとともに、公的分野の関与の基準を示し、歳出の徹底した見直しを実行する。個別政策についても費用効果分析を義務づけ、あわせて政策の選択肢を示すことで、国民の財政への監視を強める。また、国と地方のあり方を検討し、地方交付税、補助金を削減の方向で見直す。「財政構造改革法(仮称)」を制定し、10年間での財政再建・財政規模の適正化を目指して、第1期の「緊急財政健全化計画」を策定する。
      その結果、プライマリー・バランスを97年度中にほぼ達成し、公的部門(一般政府+公的企業)の支出総額対GDP比率の上昇を抑制していく。

    3. 第2期:「財政再建計画(2000〜2002年度)」
    4. 目標及び計画等の達成状況を検証した上で、第2期のアクション・プログラムとして「財政再建計画」を策定する。橋本ビジョンにおける中央省庁の再編等の行政機構の改革を実施するとともに、存在意義が不明確な財投機関の廃止・縮小(子会社を含む)を断行する。
      その結果、特例公債から2002年度までに脱却し、公的部門の中でも中央政府の支出総額対GDP比率を引下げていく。

    5. 第3期:「財政規模適正化計画(2003〜2006年度)」
    6. 目標及び計画等の達成状況を点検し、2006年度の最終目標の達成を目指した第3期のアクション・プログラムとして「財政規模適正化計画」を策定する。歳出入構造改革、情報開示を引き続き徹底することに加え国・地方のあり方を根本的に見直し、地方交付税制度と補助金制度の廃止を含めた抜本改革を進め、地方自治体を再編・統合する。
      その結果、長期債務残高を縮小し、公的部門の支出総額GDP比率は現状以上に肥大化することを防ぎ、可能な限り小さくすべきである。因みに、公的部門の支出総額の対GDP比率を現状維持とし、国民負担率を45%程度とした場合、財政赤字の対GDP比率は3%程度に止まる。

  10. 「先痛再活(せんつうさいかつ)」の改革を
    1. 膨大な財政赤字が存在する一方で、巨額な貯蓄の存在により、財政赤字の弊害はまだ現れていない。しかし、現状を放置すれば本格的な高齢化・少子化社会を目前にして、いずれ公的部門の肥大化と財政赤字の弊害により、わが国経済・社会が疲弊していくことは明らかである。歳出に手を触れずに、現状の財政構造を放置していては、わが国の財政は深刻な危機に直面する。こうした中で将来の豊かな社会の実現のため、我々は、政府に対し財政構造改革目標とアクション・プログラムを策定し、それに沿って期限を切って着実に実施していくことを提言するものである。これらの改革を政治が実際の政治経済社会の中で如何に実現していくかが財政構造改革の最大の課題である。

    2. そのためには、まず、諸外国にみられるように、政治の強いリーダーシップと実行力に加え、財政に関する情報を徹底的に開示することで国民の協力と支援を得ていくことが大切である。政治が財政構造改革と整合的な政策を国民に示し、国民が痛みを乗り越えてその政策を支援することではじめて、財政構造改革が現実のものとなる。財政民主主義は、国民各層が財政に関する情報、受益と負担の関係に関する情報を共有した上で、政治的意思決定を民間が理解し、協力し、支援することで達成されるものである。

    3. び豊かで力ある経済社会を実現するために、ず苦を引き受ける」という『先痛再活(せんつうさいかつ)』の精神のもとで、政治、国民、企業が一体となって財政構造改革に取り組んではじめて、将来に向かって豊かな経済社会への道を切り開くことができると信ずる。

以  上


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